1/1彼氏彼女
SMEEから発売されました。
総論としては、いつも通りの楽しさではあるのだけれど、
SMEEらしさとか、いろいろ考えるほど難しい作品ですね。
<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
あらすじ・・・『男のモテ期は3度ある』
クラスメイトにそう言われ、何の根拠もなくそれを信じてみようと思った、
ある冬の日。
俺は一人で、ずっと自身の恋愛について考えていた。
彼女は欲しい。しかし恋愛は、俺にはハードルが高すぎて難しい。
そう考える根拠は3つある。
一つは『出会い』
純粋に運によるものが大きく、こればかりは努力するにしても難しい。
二つ目は『タイミング』
意中の相手が現れても、好きになったタイミング、好意を告げるタイミング。
恋愛には常にこの『タイミング』がついてまわると思う。
そして三つ目は『ただ彼女が欲しいわけではない』
という俺自身の気持ちだった。
彼女は欲しいが、ちゃんと恋愛という名のステップは踏んでいきたい。
そんなロマンが俺の乾いた心にもしっかりとあった。
果たしてこんな俺にも、本当にモテ期が3度も来るのだろうか?
世界は常に、毎日様々な選択と決定に満ちている。
俺はそんな広い世界の中で、自分の運命を努力でもってたぐり寄せていきたい。
そんなことを漠然と思う、学園に通って2年目の冬だった。
<感想>
SMEEらしさをどこに求めるのかは、人によって異なるのかもだけれど、
もしそれがヒロインの描き方であるとするならば、
おそらく本作にもSMEEらしさを感じることができ、
楽しむことができるように思います。
個々のテキストとかをみても、いつも通り楽しめましたからね。
また、本作のヒロインは学生から社会人までとなっており、
比較的高めの年齢層にになっていますので、
その点がプラス査定となる方もいるでしょう。
個人的にも、ヒロインの年齢の幅を広げた点は好印象でした。
個人的には、目パチ口パクがある点も、
地味なところにも手を抜かない姿勢を感じられ好印象でした。
賛否が分かれるとすれば、そのゲームデザインになるでしょうか。
本作は、いわゆる脱落方式になっています。
具体的には、まず学生編が始まり、そこに登場するヒロインを選択すると、
そのヒロインとのルートに入っていきます。
他方で、そのヒロインを選ばない場合には、時代が数年飛んで、
20代前半の社畜編が始まります。
ここではヒロインが2人いて、どちらかを選べばそのヒロインのルートへ、
どちらも選ばなければ、また時代が数年飛んで、
今度は20代後半の社会人編が始まります。
いわゆる脱落方式は、こういう呼ばれ方こそ最近出てきたものですが、
このような構造の作品自体は昔から存在していました。
この方式を用いる作品のほとんどは、メインとなるストーリーがあり、
その途中でifとして、ヒロインらとの派生EDが用意されているものであり、
つまりはストーリー重視の作品に使われてきた方式でした。
本作は、特にメインとなるストーリーがあるわけではないですし、
キャラゲーに分類されるタイプの作品でしょうから、
このような作品で脱落方式を採用することは、かなり珍しいと思います。
これまでほとんど脱落方式が採用されなかった理由は単純で、
キャラゲーで脱落方式を採る理由がないからです。
特に本作の場合、そのヒロインを選ばないと、一気に時代が数年も進みます。
そのため、プレイヤーが置いてきぼりにされてしまいます。
やろうとした狙いは分からなくもないのですが、
もう少し各時代のつなぎを丁寧にした方が良かったのではないでしょうか。
ちょっと唐突すぎたように思います。
結果として、3つの時代の恋愛ストーリーが同梱された、
オムニバス作品のようになってしまいました。
こうしたゲームデザインには凄く疑問を持ちましたし、
オムニバスならオムニバスで、そう割り切ることができていたら、
恋愛以外のジャンルを混ぜることもできたでしょう。
中途半端なオムニバスもどきということで、
クリア直後の印象はかなり悪かったです。
ただ、記事を書くにあたり、ふと思ったことがありまして。
本作は、確かに出来の悪いオムニバスもどきのようでもありますし、
作品の完成度としては低いと言わざるをえないのですが、
時代をばらけさせることにより、一般的なキャラゲーにありがちな、
無駄にだるい共通ルートをなくすことは出来ているのです。
キャラゲーを含めた恋愛系のノベルゲーは共通ルートがだるいよ、
最初からヒロインとの個別ルートだけでも良いよと考える人もいるでしょうし、
それでキャラゲー等が好きになれない人もいるでしょう。
そういう人であれば、だれる共通ルートのない本作ならば、
楽しむことができるのではないでしょうか。
そう考え直すことで、本作に対する印象は少し良くなりました。
<評価>
個々のテキストを読むと十分に楽しめる作品であり、
ブランドのファンなら満足できる内容といえるでしょう。
他方で、ゲームデザインとしては疑問も残る作品であり、
更に上を目指すのであれば、複数の時代を扱った過去の名作を参考に、
1本筋の通った何かを用意すべきでした。
SMEEは他所のブランドよりゲームデザインで工夫を加える傾向があり、
ここが他所よりプラスになりこそすれマイナスにはならないというのが、
私の抱いているSMEEらしさなわけでして。
本作はその部分でマイナスになりこそすれプラスにならないことから、
私的にはSMEEらしさを感じない作品となってしまったのです。
以上から、総合では佳作とします。
まぁ、無駄に長い共通ルート排除へ向けた動き自体は、
私は大いに賛成するところでして。
本作にはまだまだ改善の余地はあるでしょうが、
今後のエロゲは、本作を改良したような方向性に向かっていくのかなと、
そんな風にも思いました。
歴史なんてものは、ある意味結果論ともいえるわけで、
もし数年後のエロゲに共通ルートがなくなっていて、
その時にSMEEが大手ブランドになっていたら、
分岐点は本作だったとか言われている可能性もゼロではないかもですね。
ランク:C(佳作)
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