『シャムロックの花言葉』

『シャムロックの花言葉』

『シャムロックの花言葉』は2018年にWIN用として、
DOLCEから発売されました。

ブランド前作に続くダーク系の作品であり、
今の男性向けエロゲとしては珍しいタイプの作品でしたね。



<概要>


ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・
助けてくれた。傍に居てくれた。
すがった手を放さないでくれた。
だから私は、あなた達だけは絶対に見捨てない――。
「最近、北校の雪宮七華が
色んな男と歩いているのを見かける」
そんな噂がまことしやかに流れていた。
七華の親友である佐倉恋子は、
噂の真相を本人に確認しようとする。
絶対しているはずがない。幼い頃からずっと見てきた友人が、
学校が変わったくらいで変わってしまうはずがない。
しかし、1年ぶりに再会した七華の様子は、どこか違っていた。
「私たちの値段って、どれくらいだと思う?」
何かを嘲笑うような口調。
伏せた目線の先に、七華は何を見ていたのだろう。
それから、七華は恋子を避けるようになる。
確かな異変を感じ取った恋子は、
噂の中心地である夜の駅前へと向かう。
その一歩は、救いに向かった一歩だったのだろうか。
歪んだ音を立てながら、
街の影にある世界が少女たちを誘っていく……

<感想>


本作には普通のエロゲのような、男性主人公はいません。
最初は恋子視点でストーリーが進行し、
まつり、亜希、七華と、計4人のストーリーが描かれ、
最後の七華で一つのストーリーとして収束していきます。

4人それぞれのシナリオは、理由はばらばらですが、
どれも少女が援交をすることになり、
やがて深みにはまっていくというものです。
援交が絡んでいることで、Hシーンの数は多く、
いわゆる抜きゲーと比べても、遜色ありません。
しかし本作は、明らかにストーリー重視の作品であり、
90年代でいうところの、ダーク系作品になります。
ブランド前作の『カサブランカの蕾』も同系統の作品であり、
そういう意味では、ダーク系作品を作るというのが、
このブランドの特徴なのでしょう。

さて、ダーク系という点では、過去作と共通するのですが、
上記のとおり本作に男性主人公がいない点で異なります。
近年の男性向けエロゲには、
女性主人公の作品がほとんどなくなりました。
確かに、プレイヤーの大半は男性なのでしょう。
そうなると、男性主人公を置くことに、
何の疑念も抱かないユーザーも多いかもしれません。
もちろん、主人公自身のストーリーが描かれるのであれば、
男性主人公で全く問題ありません。
しかし、近年のエロゲの場合、
テーマがヒロインに従属しているというか、
ヒロインの個別ルートに入ると、
ヒロインのストーリーが描かれるのであり、
主人公のストーリーになっていない作品が結構あります。
そういう作品らの場合、ヒロイン視点で描けば、
もっとダイレクトに濃密に描けたはずなのに、
なまじ男性主人公を介してしまったがために、
どこか間接的でぼやけた表現になってしまっています。
それが近年の、いわゆるシナリオゲーの致命的な欠点であり、
今のエロゲに男性主人公を置かなければならないのであれば、
それが今のエロゲにおける、
シナリオゲーの限界でもあるのでしょう。
本作には、男性主人公がいないことから、
今の平均的ユーザーには受けにくいのかもしれません。
だから世間一般の評判の伸び悩むと思うし、
その点で人を選ぶ可能性はあるのですが、
その代わり、男性主人公をなくしたことで、
少女たちの心情がダイレクトに描かれていますし、
男性主人公がヒロインと出会ってからの日常描写みたいな、
水増しのような要素もないので、
簡潔に必要なことだけが描かれ、
とてもテンポ良く最後まで一気に読むことができました。
少なくともこの作品に関しては、作品の完成度という点では、
この構成で正解だったと思います。

本作は、悪い方に悪い方にと流れていく展開が,
丁寧に描かれており、
基本的には良質な作品であると思います。
もっとも、『カサブランカの蕾』にあったような、
ラストのインパクトのようなものがなく、
いまいちパンチに欠けるわけでして。
そうなると、前作と比較して、次のことが言えるのかなと。
そもそも、ダーク系作品というもの自体、
90年代までは人気もあり作品数も多かったものの、
ゼロ年代に入ってからは急激に減って、
一時は絶滅しかけていましたので、私は好きですが、
今のユーザー全般にうけるものなのかは分かりません。
でも、少なくとも90年代までほどの支持は得られず、
ある程度は人を選んでしまうのでしょう。
ただ、そうはいっても、『カサブランカの蕾』の場合、
男性主人公という平均的エロゲと同じ構造をとっていますし、
ラストにインパクトのある要素も盛り込み、
平均的エロゲユーザーにうけやすい構造もとっていました。
しかし本作には、そうした要素もないわけですから、
おそらく前作以上に人を選んでしまうのではないかなと。
したがって、前作の方が平均的エロゲユーザー向けなので、
未プレイの人には、まず前作をすすめます。
そのうえで、本作をプレイして面白いと思った人には、
ぜひとも乙女ゲーのプレイをおすすめしたいと思います。

どういうことかと言いますと、
確かに本作は、今の男性向けエロゲとしては、
とても挑戦的な構造をとっているように思います。
ただ、確かに男性向けエロゲとしては、
あまり見かけなくなった路線ではあるものの、
視野を少し広げてみると、
こういう女性主人公でダーク系のシナリオ重視っていうのは、
今は女性向けの乙女ゲーとして発売されているわけでして。
そういう意味では、本作のような構造の作品は、
今でも決して珍しくないのです。
まぁ、女性主人公のダーク系とひと言で言っても、
女性ユーザーを対象に作った作品と、
男性ユーザーを対象に作った作品とでは、
微妙にニュアンスが違ってきます。
また、単純に、いきなり乙女ゲーに手を出すということ自体、
ハードルが高いと感じる男性ユーザーもいるでしょう。
そう考えると、まずは本作をプレイしてみて、
こういう方向性の作品もありだよなと感じたならば、
乙女ゲーにも手を出しやすいように思うわけでして。
つまり、作品そのものの楽しさのほかに、
男性ユーザーと乙女ゲーをつなぐ架け橋になりうるのではと、
本作にはそういう価値もあるように思うのです。

<総合>


総合ではギリギリ良作としておきます。

今の平均的男性向けエロゲの構造にどっぷりつかっている人には、
本作には馴染みにくい部分も多く、
佳作程度かそれ以下に感じるかもしれません。
逆に、乙女ゲーもガッツリプレイしているヘビーユーザーも、
それはそれで物足りなく感じるところがあり、
佳作程度に感じるように思います。
しかし、上記のように、本作には架け橋としての価値があり、
今のエロゲ市場でこういうのを出してきたという点で、
そこは十分評価に値すると思いますね。

ランク:B-(良作)





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