『戦国の黒百合 ~ふたなり姫と忍ぶ少女達~』
『戦国の黒百合 ~ふたなり姫と忍ぶ少女達~』は、
2017年にWIN用として、言葉遊戯から発売されました。
前作から5年。多くの人の期待と不安が入り混じったであろう新作は、
こちらの予想以上に素晴らしい作品でした。

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
本作は、戦国の黒百合シリーズの3作目になります。
直接の続編ですので、必ず過去2作をプレイしてから、
本作をプレイするようにしてください。
あらすじ・・・
戦国ふたなり百合ADV「戦国の黒百合」シリーズ第三章。
戦国時代。謎の薬によってふたなりと化した朔姫は、
強烈な性欲に抗えず欲望のままに少女達を凌辱していた。
やがて自分を見失い、少女達の前から姿を消した朔姫。
忍の少女達に守られながら、新しい土地で人目を避け暮らしていたが、
そこで朔姫と“同じ身体をした少女”と出会ってしまう。
次々と明らかになる衝撃的な事実を前に、
忍の少女達はどう動くのだろうか。
いや~一気に読み耽りましたね~
今世紀に入ってからの商業フルプライス作品のノベルゲーのような、
無駄な日常シーンとかそういうのが全然ありません。
最初からストーリーがどんどん進んでいきますので、
先が気になって読んでしまうのです。
そもそも本作は、フタナリ+百合という、極めて珍しい属性です。
そうなると、プレイするには、百合が大丈夫で、
なおかつフタナリもいける人でないと・・・ってのがあり、
必ずしも万人向けではないのでしょう。
そうした作品は奇をてらって作っただけとなりがちなのですが、
本シリーズは決して奇をてらっただけの作品ではありません。
百合とフタナリという属性が、
ストーリーに不可欠なものとして密接に絡んでくるのです。
18禁である必要性とストーリーとが一体となった作品、
これこそがアダルトゲームなんだよなと、
本作をプレイすることで、あらためて思いましたね。
もちろん、少年漫画にだって名作は多いし、
面白い少年漫画みたいなストーリーにエロを付けただけでも、
面白いエロゲにはなりうるのでしょう。
でもね、そうじゃないんですよ。
私の読みたいものは、そういうのではないのです。
漫画だって、アニメだって、小説だってあるのに、
何であえてアダルトゲームをやっているのか、
つまり私がアダルトゲームに求めているものは、
小説や漫画で表現しにくいアダルトなストーリーなのです。
その私の望みを充たしてくれるような作品は、
近年は減ってきています。
しかし、決してなくなったわけではありません。
そしてこのシリーズもまた、
私の望みを充たしてくれる作品の一つなのです。
久しぶりにアダルトゲームらしいアダルトゲームをプレイできて、
本当に良かったです。
さて、肝心の中身なのですが、
上記のとおり、本作はシリーズ3作目になります。
1作目が「起」で、2作目が「承」ならば、
本作はまさに「転」にあたるのでしょう。
過去2作において、男性以上の強さと気高さを備え、
圧倒的な存在感を放っていた主人公の朔姫。
しかし本作においては、まるでその影はなく、すっかり弱っています。
この作品、対比という点が非常に良く出ている作品なんですよね。
過去と現在というような同一人物間における対比であれば、
それは変化という言葉で表現され、
異なる人物間であれば、関係性という言葉で表現されるのでしょうが、
いずれにしろ、幾つもの対比が印象的かつ優れていた作品であり、
過去2作と本作における朔姫の違い、
彼女の変化したところ、或いはしなかったところは、
その最たるものなのでしょう。
他にも、本作においては、絹という少女が登場します。
絹は、朔姫より先に薬で男根が生えてしまった少女であり、
強い性欲を抑えられなくなっています。
その姿は、朔姫が恐れていた未来の自分の姿であり、
朔姫は彼女に優しく接することによって、
自分を慰め、また現実から逃れようとすることになります。
また、本作では、前半では朔姫と絹が中心なのに対し、
後半は蔓と棘の二人の忍が物語の中心になります。
「対」の存在のようでいて、
実は朔姫にとってそうでなかった二人の関係。
これまではあまり描かれていなかった二人の忍の関係が、
本作では濃く描かれています。
個人的には棘が好きなんでね、棘の辛そうな姿はこたえましたね。
さらに、人であることに価値を見出せず、
犬のように忠実に朔姫に仕えてきた蔓。
その彼女が人として生まれた意味を知り、
守りたいものがあると、自分の存在理由に気付いた瞬間、
そして同時にそれがもう叶わないと悟ったわけでして。
人であることを捨てて生きてきた彼女が、
実は一番人でありたかったのだと本心に気付いたところなど、
本当に胸が痛くなりました。
そして、誰よりも人間らしかった朔姫が人ならざるものになっていき、
人でいて人でない存在だった蔓が、朔姫を守りたいと思うことで、
人でありたいと強く願うようになる皮肉。
蔓の願いが実るのか、誰しも気になるところでしょう。
その一方で、信長の周りでこれまで頑張ってきた朔姫の代わりに、
その朔姫の抜けた穴を埋めるようにして孤軍奮闘し始めた濃姫。
その姿は、かつての朔姫を彷彿させるものでした。
濃姫が、このまま朔姫と同じ道を辿ってしまうのかは、
信長ならずとも気になるところです。
本作は、こうした、
意図がハッキリとした対比が幾重にも重なることで、
個々の対比から生じる強いメッセージ性と、
ストーリーや世界観の厚みとを両立させているのです。
本作には、意表を突くどんでん返しとか、
大掛かりな仕掛けがあるわけではありません。
一つ一つの設定はシンプルなのです。
しかし、それらが重なり合うことで、
厚みと深みの増した内容に昇華しているわけで、
それだけでも上手く考えて作っているなと、
本当に感心してしまいます。
エロゲにありがちなプロットの凝った作品とは異なるのだけれど、
違う意味で、プロットの非常に良く練られた作品と言えるのでしょう。
そしてまた、そのような小難しいことを抜きにしても、
とにかく読んでいて辛く、胸が痛くなる物語でした。
それから、このようなプロットを破綻することなく維持できたのは、
ストーリーとキャラ、テキストが優れていたからなんでしょうね。
プロットが凝った作品の場合、
えてして主人公の言動や行動理念に矛盾が生じがちです。
つまり、プロットは良いけど、
それをつなげたストーリーが駄目ということですね。
そしてエロゲの場合、鬱で重い展開にしたいがために、
主人公に不可解な言動をとらせる作品が多々あり、
大抵の場合、ヘタレ主人公だから仕方ないみたいな、
理由にならないような理由で済まされたりします。
つまりゼロ年代以降のシナリオゲーと呼ばれる作品の場合、
テキストはそこそこ書けているのですが、
ストーリーが駄目な作品が多いんですよね。
(まぁ、だからこそのシナリオ(テキスト)ゲーなのであり、
そもそもシナリオゲーという言葉自体、
元々一種の皮肉も込められて生まれたようなものですしね。)
本作の場合、主人公やキャラの根本に、
しっかりとした一本の芯が通っており、
その言動に不可解な部分がないのです。
もちろん物語の中で、キャラに変化が生じることもありますが、
それにはそれだけの理由がきちんと描かれているので、
読んでいて何の違和感も抱きません。
その結果、主人公らの言動という一本の太い筋ができあがり、
つまりはストーリーがそれだけ優れているとなるわけです。
また、そのように個々のキャラに芯が通っていることや、
何気ない会話の楽しさなども相まって、
キャラの印象も強くなっているわけです。
個人的には、本筋とずれますが、
秀吉とねねの夫婦漫才は楽しかったですね。
一人元気な棘は見ているだけで嬉しくなりますし、
濃姫のお茄子は、人気投票やったら誰か絶対入れるだろと思いますし、
適度に笑えるところがあるのも相変わらず良かったですね。
このようなキャラの表現を直接担うのがテキストであり、
本作は癖もなく誰でも楽しめると思います。
エロゲテキストの場合、大抵は個々人の好みの範疇におさまるので、
私はテキスト云々はあまり言わないようにしています。
しかし本作は、くどくせずシンプルに書いているのに、
それでもこちらが涙を流しそうになったことからすると、
上手いと言わざるをえないのでしょうね。
年月が経とうとも完成させようとする、
作者の作品に対する愛情はひしひしと伝わってくる、
そして朔姫たちが本当にいるかのように丁寧に描写を重ねている、
でも、それらがくどくなって空回りしないように、
無駄は削ぎ落してシンプルにできるところはシンプルにする。
それって、言葉にすることは簡単だけれど、
なかなかできることではないですからね。
本当に良く出来ていたと思います。
さて、朔姫に異変をもたらした原因も分かったことで、
全体のストーリーも大きく進展しました。
朔姫は今後どうなるのか、
前作までの中心だった柚々や蕗姫はまた絡んでくるのかなど、
気になる点もまだまだ残っているのであり、
できるだけ早く続きが読みたいものです。
このシリーズ、初代が発売された頃は、
高品質なCGに音声付きの同人ノベルということで、
それだけでも珍しかったものです。
ただ、1作目から7年になりますし、
その間に周りの同人ゲーもレベルアップしましたからね。
本作のCGや音声は相変わらず良かったのですが、
その部分だけを切り取って判断した場合、質だけでいうならば、
相対的には前作ほどのアドバンテージはないのでしょう。
もっとも、ゲームにおいては、
絵や音はそれぞれで分離しているのではなく、
テキストとの相乗効果により何倍もの効果を生み出せます。
本作では、蔓の最後のシーンのように、
ストーリーと相まって凄く印象的な場面もあり、
一枚一枚の絵のインパクトは十分にあります。
また、今回は基本CGも30枚以上あります。
この枚数は価格からすれば十分に多い量といえますので、
グラフィック等の総合的な満足度という観点でも、
十分と言えるのでしょう。
本作単独で見ても、十分に名作と呼べるでしょう。
初期値をどこに設定するかで点数は人により異なるでしょうが、
1よりも2、2よりも3と、
作品ごとに面白くなっていっているとの印象は、
おそらくプレイしたほとんどの人が共通すると思います。
ストーリーでこれだけ楽しめた作品も久しぶりなので、
そういう意味では傑作扱いでも良かったのかもしれませんが、
まだ作品の途中であること、技術的な進化等は少ないことなどにより、
傑作評価は完結編にとっておきたい・・・と思っていたのですが、
相対的な観点から、やっぱり傑作としておきます。
かつて、マリみてファンたちの間で、
「レイニー止め」という言葉が生まれました。
今私は、その時と同じ気分になっているのであり、
なおかつ、レイニー止めの時以上に、
今後待たされることも確実なのでしょう。
古参の商業エロゲファンは、
『ランス10』が発売されたら引退するという人も結構います。
私も、商業のフルプライス作品は、
遅くとも来年には発売されそうな『ランス10』が発売されたら、
もう未練はないように思いますし、
引退するんじゃないかなと思っています。
しかし、同人は別でして。
少なくともこの戦国の黒百合シリーズが完結しないうちは、
引退したくともできないでしょう。
できれば私のゲーマー寿命が尽きる前に、
完結編が発売されることを望みます。
ランク:AA-(名作)

関連するタグ WIN /ADV /ノベル系 /
春ゆきてレトロチカ AMBITIOUS MISSION 蒼の彼方のフォーリズム EXTRA2
2017年にWIN用として、言葉遊戯から発売されました。
前作から5年。多くの人の期待と不安が入り混じったであろう新作は、
こちらの予想以上に素晴らしい作品でした。

<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
本作は、戦国の黒百合シリーズの3作目になります。
直接の続編ですので、必ず過去2作をプレイしてから、
本作をプレイするようにしてください。
あらすじ・・・
戦国ふたなり百合ADV「戦国の黒百合」シリーズ第三章。
戦国時代。謎の薬によってふたなりと化した朔姫は、
強烈な性欲に抗えず欲望のままに少女達を凌辱していた。
やがて自分を見失い、少女達の前から姿を消した朔姫。
忍の少女達に守られながら、新しい土地で人目を避け暮らしていたが、
そこで朔姫と“同じ身体をした少女”と出会ってしまう。
次々と明らかになる衝撃的な事実を前に、
忍の少女達はどう動くのだろうか。
<感想>
いや~一気に読み耽りましたね~
今世紀に入ってからの商業フルプライス作品のノベルゲーのような、
無駄な日常シーンとかそういうのが全然ありません。
最初からストーリーがどんどん進んでいきますので、
先が気になって読んでしまうのです。
そもそも本作は、フタナリ+百合という、極めて珍しい属性です。
そうなると、プレイするには、百合が大丈夫で、
なおかつフタナリもいける人でないと・・・ってのがあり、
必ずしも万人向けではないのでしょう。
そうした作品は奇をてらって作っただけとなりがちなのですが、
本シリーズは決して奇をてらっただけの作品ではありません。
百合とフタナリという属性が、
ストーリーに不可欠なものとして密接に絡んでくるのです。
18禁である必要性とストーリーとが一体となった作品、
これこそがアダルトゲームなんだよなと、
本作をプレイすることで、あらためて思いましたね。
もちろん、少年漫画にだって名作は多いし、
面白い少年漫画みたいなストーリーにエロを付けただけでも、
面白いエロゲにはなりうるのでしょう。
でもね、そうじゃないんですよ。
私の読みたいものは、そういうのではないのです。
漫画だって、アニメだって、小説だってあるのに、
何であえてアダルトゲームをやっているのか、
つまり私がアダルトゲームに求めているものは、
小説や漫画で表現しにくいアダルトなストーリーなのです。
その私の望みを充たしてくれるような作品は、
近年は減ってきています。
しかし、決してなくなったわけではありません。
そしてこのシリーズもまた、
私の望みを充たしてくれる作品の一つなのです。
久しぶりにアダルトゲームらしいアダルトゲームをプレイできて、
本当に良かったです。
<ストーリー>
さて、肝心の中身なのですが、
上記のとおり、本作はシリーズ3作目になります。
1作目が「起」で、2作目が「承」ならば、
本作はまさに「転」にあたるのでしょう。
過去2作において、男性以上の強さと気高さを備え、
圧倒的な存在感を放っていた主人公の朔姫。
しかし本作においては、まるでその影はなく、すっかり弱っています。
この作品、対比という点が非常に良く出ている作品なんですよね。
過去と現在というような同一人物間における対比であれば、
それは変化という言葉で表現され、
異なる人物間であれば、関係性という言葉で表現されるのでしょうが、
いずれにしろ、幾つもの対比が印象的かつ優れていた作品であり、
過去2作と本作における朔姫の違い、
彼女の変化したところ、或いはしなかったところは、
その最たるものなのでしょう。
他にも、本作においては、絹という少女が登場します。
絹は、朔姫より先に薬で男根が生えてしまった少女であり、
強い性欲を抑えられなくなっています。
その姿は、朔姫が恐れていた未来の自分の姿であり、
朔姫は彼女に優しく接することによって、
自分を慰め、また現実から逃れようとすることになります。
また、本作では、前半では朔姫と絹が中心なのに対し、
後半は蔓と棘の二人の忍が物語の中心になります。
「対」の存在のようでいて、
実は朔姫にとってそうでなかった二人の関係。
これまではあまり描かれていなかった二人の忍の関係が、
本作では濃く描かれています。
個人的には棘が好きなんでね、棘の辛そうな姿はこたえましたね。
さらに、人であることに価値を見出せず、
犬のように忠実に朔姫に仕えてきた蔓。
その彼女が人として生まれた意味を知り、
守りたいものがあると、自分の存在理由に気付いた瞬間、
そして同時にそれがもう叶わないと悟ったわけでして。
人であることを捨てて生きてきた彼女が、
実は一番人でありたかったのだと本心に気付いたところなど、
本当に胸が痛くなりました。
そして、誰よりも人間らしかった朔姫が人ならざるものになっていき、
人でいて人でない存在だった蔓が、朔姫を守りたいと思うことで、
人でありたいと強く願うようになる皮肉。
蔓の願いが実るのか、誰しも気になるところでしょう。
その一方で、信長の周りでこれまで頑張ってきた朔姫の代わりに、
その朔姫の抜けた穴を埋めるようにして孤軍奮闘し始めた濃姫。
その姿は、かつての朔姫を彷彿させるものでした。
濃姫が、このまま朔姫と同じ道を辿ってしまうのかは、
信長ならずとも気になるところです。
本作は、こうした、
意図がハッキリとした対比が幾重にも重なることで、
個々の対比から生じる強いメッセージ性と、
ストーリーや世界観の厚みとを両立させているのです。
本作には、意表を突くどんでん返しとか、
大掛かりな仕掛けがあるわけではありません。
一つ一つの設定はシンプルなのです。
しかし、それらが重なり合うことで、
厚みと深みの増した内容に昇華しているわけで、
それだけでも上手く考えて作っているなと、
本当に感心してしまいます。
エロゲにありがちなプロットの凝った作品とは異なるのだけれど、
違う意味で、プロットの非常に良く練られた作品と言えるのでしょう。
そしてまた、そのような小難しいことを抜きにしても、
とにかく読んでいて辛く、胸が痛くなる物語でした。
それから、このようなプロットを破綻することなく維持できたのは、
ストーリーとキャラ、テキストが優れていたからなんでしょうね。
プロットが凝った作品の場合、
えてして主人公の言動や行動理念に矛盾が生じがちです。
つまり、プロットは良いけど、
それをつなげたストーリーが駄目ということですね。
そしてエロゲの場合、鬱で重い展開にしたいがために、
主人公に不可解な言動をとらせる作品が多々あり、
大抵の場合、ヘタレ主人公だから仕方ないみたいな、
理由にならないような理由で済まされたりします。
つまりゼロ年代以降のシナリオゲーと呼ばれる作品の場合、
テキストはそこそこ書けているのですが、
ストーリーが駄目な作品が多いんですよね。
(まぁ、だからこそのシナリオ(テキスト)ゲーなのであり、
そもそもシナリオゲーという言葉自体、
元々一種の皮肉も込められて生まれたようなものですしね。)
本作の場合、主人公やキャラの根本に、
しっかりとした一本の芯が通っており、
その言動に不可解な部分がないのです。
もちろん物語の中で、キャラに変化が生じることもありますが、
それにはそれだけの理由がきちんと描かれているので、
読んでいて何の違和感も抱きません。
その結果、主人公らの言動という一本の太い筋ができあがり、
つまりはストーリーがそれだけ優れているとなるわけです。
また、そのように個々のキャラに芯が通っていることや、
何気ない会話の楽しさなども相まって、
キャラの印象も強くなっているわけです。
個人的には、本筋とずれますが、
秀吉とねねの夫婦漫才は楽しかったですね。
一人元気な棘は見ているだけで嬉しくなりますし、
濃姫のお茄子は、人気投票やったら誰か絶対入れるだろと思いますし、
適度に笑えるところがあるのも相変わらず良かったですね。
このようなキャラの表現を直接担うのがテキストであり、
本作は癖もなく誰でも楽しめると思います。
エロゲテキストの場合、大抵は個々人の好みの範疇におさまるので、
私はテキスト云々はあまり言わないようにしています。
しかし本作は、くどくせずシンプルに書いているのに、
それでもこちらが涙を流しそうになったことからすると、
上手いと言わざるをえないのでしょうね。
年月が経とうとも完成させようとする、
作者の作品に対する愛情はひしひしと伝わってくる、
そして朔姫たちが本当にいるかのように丁寧に描写を重ねている、
でも、それらがくどくなって空回りしないように、
無駄は削ぎ落してシンプルにできるところはシンプルにする。
それって、言葉にすることは簡単だけれど、
なかなかできることではないですからね。
本当に良く出来ていたと思います。
さて、朔姫に異変をもたらした原因も分かったことで、
全体のストーリーも大きく進展しました。
朔姫は今後どうなるのか、
前作までの中心だった柚々や蕗姫はまた絡んでくるのかなど、
気になる点もまだまだ残っているのであり、
できるだけ早く続きが読みたいものです。
<グラフィック等>
このシリーズ、初代が発売された頃は、
高品質なCGに音声付きの同人ノベルということで、
それだけでも珍しかったものです。
ただ、1作目から7年になりますし、
その間に周りの同人ゲーもレベルアップしましたからね。
本作のCGや音声は相変わらず良かったのですが、
その部分だけを切り取って判断した場合、質だけでいうならば、
相対的には前作ほどのアドバンテージはないのでしょう。
もっとも、ゲームにおいては、
絵や音はそれぞれで分離しているのではなく、
テキストとの相乗効果により何倍もの効果を生み出せます。
本作では、蔓の最後のシーンのように、
ストーリーと相まって凄く印象的な場面もあり、
一枚一枚の絵のインパクトは十分にあります。
また、今回は基本CGも30枚以上あります。
この枚数は価格からすれば十分に多い量といえますので、
グラフィック等の総合的な満足度という観点でも、
十分と言えるのでしょう。
<総合>
本作単独で見ても、十分に名作と呼べるでしょう。
初期値をどこに設定するかで点数は人により異なるでしょうが、
1よりも2、2よりも3と、
作品ごとに面白くなっていっているとの印象は、
おそらくプレイしたほとんどの人が共通すると思います。
ストーリーでこれだけ楽しめた作品も久しぶりなので、
そういう意味では傑作扱いでも良かったのかもしれませんが、
まだ作品の途中であること、技術的な進化等は少ないことなどにより、
傑作評価は完結編にとっておきたい・・・と思っていたのですが、
相対的な観点から、やっぱり傑作としておきます。
かつて、マリみてファンたちの間で、
「レイニー止め」という言葉が生まれました。
今私は、その時と同じ気分になっているのであり、
なおかつ、レイニー止めの時以上に、
今後待たされることも確実なのでしょう。
古参の商業エロゲファンは、
『ランス10』が発売されたら引退するという人も結構います。
私も、商業のフルプライス作品は、
遅くとも来年には発売されそうな『ランス10』が発売されたら、
もう未練はないように思いますし、
引退するんじゃないかなと思っています。
しかし、同人は別でして。
少なくともこの戦国の黒百合シリーズが完結しないうちは、
引退したくともできないでしょう。
できれば私のゲーマー寿命が尽きる前に、
完結編が発売されることを望みます。
ランク:AA-(名作)

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2017-08-05