ネクロノミコン
『ネクロノミコン』は1994年にPC98用として、
ハードカバーから発売されました。
シナリオを重視したフェアリーテールの新レーベルであり、
その第1弾となる作品でした。

アイデスにはフェアリーテールというブランドがありますが、
そのフェアリーテールも作品の傾向に合わせ、
幾つかのレーベルを作っていました。
ネクロノミコンはその中の一つである、
ハードカバーというレーベルから発売された作品でした。
まぁそうは言っても、
大抵の人はデッドオブザブレインとかマリンフィルトとか、
そういった路線の延長上で捉えていたと思いますけどね。
同じフェアリーテールであっても、
その路線が他の作品らとあまりに雰囲気が異なりすぎるから、それで以後は、
ハードカバーという別レーベルとして発売したってところでしょうか。
ハードカバーは確かストーリーを重視するレーベルだったはずですが、
他のレーベルと比べると失敗した感がやや強かったように思います。
それなりに評判を得たのがこのネクロノミコンのみで、
後は芳しくないものばかりでしたから。
そしてそのネクロノミコンにしても、
捉え方の面で結構難しい部分を伴った作品でした。
まずレーベルが強調する肝心のストーリーなのですが、
実はここが問題だったりするのです。
タイトルからも分かりますように、
ネクロノミコンはクトゥルーの雰囲気の強い作品です。
オカルトとエロスが融合し、いかにもアダルトゲームっぽくて、
雰囲気も良かったんですよね。
だから一部ではかなり人気でしたし、
一般的にはクトゥルー系が好きな人向けとされています。
ただ、これは「クトゥルーのような雰囲気」が好きな人向けなのであって、
「クトゥルーそのもの」に深いこだわりがある人向けではないわけでして。
どういうことかと言うと、本作は設定のかなりの部分を、
ラヴクラフトの「インスマウスの影」に頼っています。
それでいてやや中途半端な出来に仕上げてしまったものですから、
クトゥルーの熱烈なファンからすると、
劣化コピーを読まされたように感じてしまうおそれがあるのです。
私は当時インスマウスの影を読んでいなかったので、本作に対しても、
少し終盤が物足りない雰囲気ゲーとの認識程度だったのですが、
事前に読んでいたらもっと批判的だったかもしれないし、
何れにしろプレイする人は注意が必要な作品なのでしょう。
っていうか、極端な話、途中まで真似でも良いよ、
そこにプラスアルファしてぐわっと盛り上げてくれるのなら。
けど、下地があるのに尻つぼみの消化不良に終わるってどういうこと?
ってことなんですよね。
ゼロ年代に入ってからのシナリオゲーと呼ばれるもので、
某所で点数が高そうなのに私は酷評と言う場合も幾つかあります。
そういう作品の多くは、どっかから設定を借用したような読み物は、
全く評価に値しないと考えるからです。
だからもしこの作品も完全な読み物であったならば、
私は間違いなく酷評して終わったと思います。
しかしそうじゃないから、
冒頭で書いたような捉え方が難しいとなるわけですね。
具体的には、シナリオ以外は頑張っていたのです。
アイデス全盛期はMUSEのサウンドなしには語れないのであり、
この作品でもサウンドが良い影響を与えていました。
また、この作品は結構というか、かなりグロかったんですね。
OPからして妊婦のボテ腹を斧で切り裂いていますし。
グロ系のグラフィック目当てでは結構満足できましたし、
そもそもCGは非常に高品質である上に、枚数も非常に多かったんですね。
何でも数百枚規模であったらしいです。
このグラフィックだけでも元が取れてしまいます。
つまりシナリオ重視で、
特にシナリオのオリジナリティを重視すると辛くなるのですが、
あの原作の持つ雰囲気を上手く映像化させた作品と捉えれば、
まだクトゥルーがさほど普及していない時期だけに、
非常に貴重でありがたい存在だったとも言えるのです。
その時点で別物として褒める気持ちも分かりますが、
それでもまだ絵と音だけだったら、個人的にはまだ足りないと思います。
更なるプラスアルファとして、『ネクロノミコン』は単なるノベルではなく、
システムは一応P&C式のADVというか、
画面クリックをベースにコマンド選択が混ざった形になっています。
ここはね、画面クリックは反応する箇所が枠で示されますので、
どこをクリックできるのかわからないという問題はありません。
なのでそういう意味でのストレスはないのですが、
クリックできる箇所を探す楽しみは減りますし、
部分にヒットしない場面は背景をクリックする扱いになり、
何か画面クリックを用いたコマンド選択式のような作りでしたね。
普通のコマンド選択はコマンドが文字なのですが、
それを単に絵に置き換えた感じで。
だから一見するとP&C式のようでありながら、
プレイ感覚はコマンド選択式という形になりました。
ストレスがたまらないことは良いことなのですが、
あまりP&C式の意味がないような感じで、
作りとしては上手くなかったように思います。
まぁそれでも単なる読み物よりは、臨場感が増して良いですけどね。
こういう構造ですので、
シナリオをゲームとして再構成したと言えるほどには至っていないのかなと。
しかしグラフィック・サウンド・ゲーム性というそれぞれの要素が相まって、
合わせ技でストーリーのマイナス分を払拭した感じですかね。
以上のように、クトゥルーの原作に深いこだわりがある人で、
かつシナリオにしか興味のない人には薦められないゲームだと思います。
でも、それ以外の人は結構楽しめちゃうんですね。
個人的にはこのシナリオはやはり褒めるべきでないし、
むしろマイナスだと思うのですが、
グラフィック・サウンド・ゲーム性をトータルで考えると、
シナリオのマイナスも吹っ飛んでしまうように思うわけでして。
総合では名作と呼べるほどに独自な存在にまでは達していないのだけれど、
それでもあの世界観を十分にゲーム化させたものとして、
良作にしておきたいと思います。
ランク:B-(良作)

WIN版

関連するタグ PC98 /ADV /
春ゆきてレトロチカ AMBITIOUS MISSION 蒼の彼方のフォーリズム EXTRA2
ハードカバーから発売されました。
シナリオを重視したフェアリーテールの新レーベルであり、
その第1弾となる作品でした。

<概要>
アイデスにはフェアリーテールというブランドがありますが、
そのフェアリーテールも作品の傾向に合わせ、
幾つかのレーベルを作っていました。
ネクロノミコンはその中の一つである、
ハードカバーというレーベルから発売された作品でした。
まぁそうは言っても、
大抵の人はデッドオブザブレインとかマリンフィルトとか、
そういった路線の延長上で捉えていたと思いますけどね。
同じフェアリーテールであっても、
その路線が他の作品らとあまりに雰囲気が異なりすぎるから、それで以後は、
ハードカバーという別レーベルとして発売したってところでしょうか。
ハードカバーは確かストーリーを重視するレーベルだったはずですが、
他のレーベルと比べると失敗した感がやや強かったように思います。
それなりに評判を得たのがこのネクロノミコンのみで、
後は芳しくないものばかりでしたから。
<ストーリー>
そしてそのネクロノミコンにしても、
捉え方の面で結構難しい部分を伴った作品でした。
まずレーベルが強調する肝心のストーリーなのですが、
実はここが問題だったりするのです。
タイトルからも分かりますように、
ネクロノミコンはクトゥルーの雰囲気の強い作品です。
オカルトとエロスが融合し、いかにもアダルトゲームっぽくて、
雰囲気も良かったんですよね。
だから一部ではかなり人気でしたし、
一般的にはクトゥルー系が好きな人向けとされています。
ただ、これは「クトゥルーのような雰囲気」が好きな人向けなのであって、
「クトゥルーそのもの」に深いこだわりがある人向けではないわけでして。
どういうことかと言うと、本作は設定のかなりの部分を、
ラヴクラフトの「インスマウスの影」に頼っています。
それでいてやや中途半端な出来に仕上げてしまったものですから、
クトゥルーの熱烈なファンからすると、
劣化コピーを読まされたように感じてしまうおそれがあるのです。
私は当時インスマウスの影を読んでいなかったので、本作に対しても、
少し終盤が物足りない雰囲気ゲーとの認識程度だったのですが、
事前に読んでいたらもっと批判的だったかもしれないし、
何れにしろプレイする人は注意が必要な作品なのでしょう。
っていうか、極端な話、途中まで真似でも良いよ、
そこにプラスアルファしてぐわっと盛り上げてくれるのなら。
けど、下地があるのに尻つぼみの消化不良に終わるってどういうこと?
ってことなんですよね。
ゼロ年代に入ってからのシナリオゲーと呼ばれるもので、
某所で点数が高そうなのに私は酷評と言う場合も幾つかあります。
そういう作品の多くは、どっかから設定を借用したような読み物は、
全く評価に値しないと考えるからです。
だからもしこの作品も完全な読み物であったならば、
私は間違いなく酷評して終わったと思います。
しかしそうじゃないから、
冒頭で書いたような捉え方が難しいとなるわけですね。
<感想>
具体的には、シナリオ以外は頑張っていたのです。
アイデス全盛期はMUSEのサウンドなしには語れないのであり、
この作品でもサウンドが良い影響を与えていました。
また、この作品は結構というか、かなりグロかったんですね。
OPからして妊婦のボテ腹を斧で切り裂いていますし。
グロ系のグラフィック目当てでは結構満足できましたし、
そもそもCGは非常に高品質である上に、枚数も非常に多かったんですね。
何でも数百枚規模であったらしいです。
このグラフィックだけでも元が取れてしまいます。
つまりシナリオ重視で、
特にシナリオのオリジナリティを重視すると辛くなるのですが、
あの原作の持つ雰囲気を上手く映像化させた作品と捉えれば、
まだクトゥルーがさほど普及していない時期だけに、
非常に貴重でありがたい存在だったとも言えるのです。
その時点で別物として褒める気持ちも分かりますが、
それでもまだ絵と音だけだったら、個人的にはまだ足りないと思います。
更なるプラスアルファとして、『ネクロノミコン』は単なるノベルではなく、
システムは一応P&C式のADVというか、
画面クリックをベースにコマンド選択が混ざった形になっています。
ここはね、画面クリックは反応する箇所が枠で示されますので、
どこをクリックできるのかわからないという問題はありません。
なのでそういう意味でのストレスはないのですが、
クリックできる箇所を探す楽しみは減りますし、
部分にヒットしない場面は背景をクリックする扱いになり、
何か画面クリックを用いたコマンド選択式のような作りでしたね。
普通のコマンド選択はコマンドが文字なのですが、
それを単に絵に置き換えた感じで。
だから一見するとP&C式のようでありながら、
プレイ感覚はコマンド選択式という形になりました。
ストレスがたまらないことは良いことなのですが、
あまりP&C式の意味がないような感じで、
作りとしては上手くなかったように思います。
まぁそれでも単なる読み物よりは、臨場感が増して良いですけどね。
こういう構造ですので、
シナリオをゲームとして再構成したと言えるほどには至っていないのかなと。
しかしグラフィック・サウンド・ゲーム性というそれぞれの要素が相まって、
合わせ技でストーリーのマイナス分を払拭した感じですかね。
<総合>
以上のように、クトゥルーの原作に深いこだわりがある人で、
かつシナリオにしか興味のない人には薦められないゲームだと思います。
でも、それ以外の人は結構楽しめちゃうんですね。
個人的にはこのシナリオはやはり褒めるべきでないし、
むしろマイナスだと思うのですが、
グラフィック・サウンド・ゲーム性をトータルで考えると、
シナリオのマイナスも吹っ飛んでしまうように思うわけでして。
総合では名作と呼べるほどに独自な存在にまでは達していないのだけれど、
それでもあの世界観を十分にゲーム化させたものとして、
良作にしておきたいと思います。
ランク:B-(良作)

WIN版

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2013-01-12