アダルトゲームの歴史 1994年 その2

アダルトゲームの歴史 1994年 その2

アダルトゲームの歴史を振り返るシリーズの第26弾ということで、
1994年の2回目になります。

前回の続きで、今回も主にゲームデザイン・システム部分の話になります。

前回は『同級生』に似たシステムから見ていきましたので、その路線の延長上から今回も見ていきます。

さて、どこまでが『同級生』の延長かというのも、含めようと思えばいろいろ含まれてしまうので難しい部分があるのですが、とりあえず特に大きな特徴の1つに挙げられるのが時間の概念なのでしょう。
時間の概念のある、即ち人々が時間に沿って生活する街の中を動き回り、そこの住人たちとの触れ合いを楽しむ。それが『同級生』のストーリー面に含まれていた最もベースとなるコンセプトだったわけです。そのストーリー面における本質部分を継承したと言えるのが、『ようこそシネマハウスへ』でした。
『ようこそシネマハウスへ』の主人公は映画監督であり、まずは街の中を移動し原作を作ってくれる人、脚本を書いてくれる人、主演してくれる女優など必要な人材を集めて、全て揃ったら映画を作成していくことになります。ストーリー的な観点で語るならば、この人材を集める過程でのいろんなキャラとの会話が楽しかったのです。こういう部分はストーリーの本筋を追うことや恋愛にしか興味のない人からは軽視されやすいところでもあるのですが、『同級生』や『ようこそシネマハウスへ』を通じて、いろんなキャラとの会話からその世界観に浸ることに楽しみを見出していた人たちがいたことは忘れて欲しくないものです。そしてそういう姿勢を理解できない限り、この2作の面白さは本当には理解できないのでしょう。
かようにストーリー的な楽しみ方は根っこの部分で一緒だったのですが、『ようこそシネマハウスへ』にはキャラを直接移動させる要素はなく、マップ上から移動先を選択するタイプになっています。また画面クリックの要素もありません。そういう意味では『同級生』よりも簡略化されているのです。その代わり、集めた人材や脚本を使って映画を作り、作って出来上がった映画を見たり、映画で得た収益で次につなげたりと、ゲームシステム面では異なった楽しみ方を追加しています。同じ原作でも脚本家によってシリアスからポルノといろいろありますし、何度も遊べます。おそらく古今通じて遊べるアダルトゲームのADVとしては、今でも筆頭格にあるのでしょうね。

複合的なシステムということでもう1つ挙げておきますと、『怪傑NIKKI』も変わっています。舞台は近未来なのですが、タイムリープにより過去にやってくることができます。そして未来の技術により、書かれた日記を書き換えることで未来を変更することができてしまうのです。そこで主人公は過去に戻り、不幸な未来の待つ女の子の日記を書き換えて幸せにすることが目的となります。
具体的にはプレイヤーはまず、対象となる女の子の部屋に侵入し、女の子の日記を探し出すことになります。このパートは画面をあちこちクリックすることで進行するP&C式となっています。そして日記が見つかったら、日記を読んで重要な部分を改編します。改編はどういう内容にすべきか3択が表示されますので、そこから選ぶ形式になります。つまり前半がP&C式ADVで、後半がノベル式になるわけです。複合的なシステムでありつつ、システムがストーリーに上手くマッチしていますし、歴史改編という題材的にも面白い試みのゲームでした。
変わっているという点では『ツーショットDiary』もあり、これはテキスト欄の虫食いを推理して、表示された非常に多くの語句群の中から正解を探し出し埋めていくゲームでした。

次にノベルゲームを見てみますと、93年にまたノベルゲームが復活し始めたことで、94年に最もADVの中で勢いが増していったのがノベルゲームだったのではないでしょうか。代表的なところではエルフの別ブランドであるシルキーズは『野々村病院の人々』を発売していますし、他を見渡してもD.O.が『雑音領域』を作り、姫屋ソフトが『Ash.(アッシュ)』を作っています。
構造的な部分を見てみますと、以前も書いたように基礎となる設定から様々な展開に枝分かれし、その展開に応じていくタイプがこの頃の多数派であり、『雑音領域』や『Ash.(アッシュ)』はこのタイプに属します。『野々村病院の人々』も事件の解決という目的があることから、事件解決という大きな幹があり、そこから派生していく点は同様です。しかし、EDの中にはヒロインとの個別EDも含まれており、今日のヒロインごとの個別EDタイプ的な側面も有しています。更に進めたのが『愛姉妹』で、『愛姉妹』では特別な目的もありませんし、どのヒロインを追いかけるかでEDも変わってきますから、かなり個別EDタイプに近くなったと言えるでしょう(もっとも『愛姉妹』は分岐が選択肢によって行われるということであり、基本的な進行はコマンド選択式になります。)。

もちろん展開が変わっていくことを楽しむのではなく、1本道系の読ませる類のノベルもあるのですが、いわゆるストーリー重視みたいなものはコマンド選択式に多く、読ませる系統のものは『ふぇち』のように特定の属性に特化したゲームや、『リビドー7』のようなエロ特化なげームに多かったです。ここは意識の違いみたいなもので、今ならコマンド選択式にしたら古臭いとしてノベルより低く見られるでしょうが、当時は逆に1本道ノベルだとゲームじゃないと低く見られがちでしたので、ストーリー重視の大作でノベルという手段が選ばれにくかったのです。そう思うと、時代の変化って大きいですね。

そのコマンド選択式ADVなのですが、しっかりコマンドを用意して何度もクリックさせる必要のあるものから、『アラベスク ~少女たちの織りなす愛の物語~』や『ここは楽園荘』のようにノベルとの境界線上にあるものまで、それこそゲームによって傾向がバラバラです。PC-98はコマンド選択式の時代のように思われがちですが、実は今のノベルゲーほどの圧倒的割合を占めるわけではなく、特に94年はノベルゲームが増えていることからも、更にその割合は減少傾向にあります。ただ、皆の記憶に残りやすかったり名作と語り継がれやすいストーリー重視のゲーム、94年で言えば『DESIRE』や『AmbivalenZ -二律背反-』のようなストーリー重視のゲームががっちりしたコマンド選択式で作られることが多いために、コマンド選択式の印象が強くなりやすかった面はあるのでしょう。
ノベルとの境界線上にあるゲームに関しては、表示されるコマンドは2個程度で、増減により場所によっては1個、そしてそのコマンドも2回くらい選択すれば進めるゲームなどもあるわけで、実質的なノベルとの違いがかなり曖昧なゲームも増えているんですよね。そういうゲームはもう既にコマンド選択式としての面白さの追求は放棄しているわけですし、設計段階で既に総当りが前提のものも多く、コマンド選択が時間稼ぎの機能しか有していません。そうなると総当りと揶揄されても仕方ないのでしょうし、ノベルに移行する過渡期の存在に見えてしまうのは否定できないでしょうね。

こうした違いはP&C式ADVにも当てはまるわけで、例えば『リザレクト』などはピンポイントでたくさんクリックしなければならないことから、非常に高難易度になっていました。
その一方で『TO☆FIVE ~夏の扉の向こうに君を見つける~』は一応画面クリックによって進行すると言えるのですが、1画面でクリックできる場所は1ヶ所しかなくあちこち画面クリックする楽しみはありませんし、サクサク進んでいきますので、選択肢の文字を絵に置き換えただけのようで、プレイ感覚は限りなくノベルに近いです。

ところで、94年のゲームを見ていると、コマンド選択式やノベルゲームのテキストの表示の仕方もいろいろありえるんだなと思えてきます。今主流のノベルゲームのほとんどは、画面全体に絵が表示されて、画面の下段に3行ほどのテキスト欄が設けられ、絵の上にテキスト欄が表示されています。
こういう形式は後の年代になるほど画一化されていくのですが、好意的に解釈するならば統一され最適化された結果となるのでしょう。しかし批判的に解釈するならば、作品ごとにアレンジもできない怠慢でしかないとも言えるのです。
ライターには本来その数だけの個性があるはずであり、もちろん3行スタイルが自分にはベストなのだという人もいるでしょうが、中にはもっと行数が増えることで個性が活きる人もいるでしょう。また単なる行数だけでなく、画面の活用の仕方で何倍にも魅力的に表現できる人もいるでしょうし、本当に才能のあるライターほど物語にあった表現方法を作れるのではないでしょうか。
話を画面の表示方法に戻しますと、例えば『野々村病院の人々』では下に3行のテキスト欄が設けられ、テキスト欄の上に画像が表示され、テキストと画像は重なっていません。他方、『闇の稜線』では全画面に画像が表示され、画面下段に半透明のテキスト欄が重ねられています。『アラベスク』もそうですね。『ジョナサン』は一応画面クリックで進行するものの、選択肢のテキストを画像に置き換えた構造とも言え、これもノベルの一形態としてありえるのでしょう。『TO☆FIVE ~夏の扉の向こうに君を見つける~』も同様の形式なのですが、画面の右側に主人公の姿が表示され、そこから出ている吹き出しに主人公の心理描写が表示されます。テキスト欄は会話など外部に表示されたものを扱い、外面的なものと内面的なものを別々に扱っているわけですね。

グラフィック面を他に見てみますと、ソニアは『VIPER-V10』のようにVIPERシリーズを続けていますし、この年はVIPERシリーズだけでなく『ゴイス』や『ゼニス』のようにアニメーションをうりにした他ブランドのゲームも増えてきたことが特徴として挙げられるように思います。

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