アダルトゲームの歴史 1992年 その3

アダルトゲームの歴史 1992年 その3

アダルトゲームの歴史を振り返るシリーズの第18弾ということで、
1992年の3回目になります。


今回はゲームデザイン・システム面について見ていきたいと思います。

ADVとRPGを足した数が発売タイトル数全体における約半数というのは、前年と同様です。しかしRPGは前年までは20本以上あったのに対し、92年はその半数近くに減っており、その分ADVが増加した計算になります。
原因は正確にはわかりませんが、その中の1つとしてADVでもある程度のゲーム性や分量を確保する目処が立ったことから、あえてRPGに依存する必要性がなくなってきたことは挙げられるように思います。

ゲームデザイン・システム部分ということで、まずはノベルゲームなのですが、昨年同様に少ないですね。まだこういうのは評価されにくいし、うけない時代だったのでしょう。おそらく91年と92年が最も少なかった時期ではないでしょうか。ユーザーの認識から考えても、事実上一度途絶えたと言っても過言ではないのかもしれません。
皆無ではありませんので一応少ない例を拾ってみますと、『シャルム』は完全に読むだけです。5本のショートストーリーがあるのでオムニバスとも言えるのでしょうが、最初にどのストーリーを読むかを選ぶだけで、あとは1本道です。ゲームの構造がノベルになっているだけでなく、主人公とプレイヤーも完全に分離されていますね。
『鏡 -mirror-』もノベルゲームですね。ルート数こそかなり少ないですが、選択肢で若干の展開の違いを楽しみつつ、後は読み進む作品です。規模の違いこそあれ、やっていることも見た目も今のノベルゲームと一緒です。

直接にはゲームデザインというよりも画面内の配置の問題になるのですが、画面を覆うテキストの話を少々。繰り返しになるかもしれませんが、画面を全て文字が覆うか否かはノベルであるか否かと関係がありません。そもそも一番最初の頃のテキストADVは画面全体をテキストで覆っていたわけですからね。覆っていたけど、コマンドで入力して進行するからコマンド入力式ADVと呼ばれたのです。その後グラフィックを見せることが中心になり、テキスト欄は画面の下部に配置されることが増えましたが、ゲームやテキストの方向性により作品ごとにアレンジされることも度々ありました。
例えば『Dr. STOP!』(アリスソフト)では、イベント時には右半分にグラフィックが表示され左半分にテキストが表示されたりしますが、通常時はコマンドが右の4分の1弱に表示され、それ以外のスペースはテキストで覆われることになります。画面の上から下までテキストで覆うのがノベルというのなら、これもノベルゲームになりますよね。でもコマンドを選択するという基本構造があるからコマンド選択式のADVと言われるわけです。
因みに、当時のアリスは他所がやるならうちはやらない、他所がやらないならうちでやるという傾向がありました。元々はADVも多数作っていたのですが、他社がADVばかり作るようになったことから、RPGやSLGの割合が増えていったわけですし。この理念はADV内部でも同様で、当時各社がグラフィックに力を入れCG枚数や高画質をうりにするケースが増えたことから、それに反してグラフィックは極力控えめにしつつテキストの量を増やすことと質の良さで勝負しようとして作られたのが『Dr. STOP!』なのです。ノベルゲームは読ませようという意識を持たせた点が従来のADVと異なるのだとの見解もありますが、この作品もテキストを前面に押し出すことで読ませることを意識したゲームと言えるでしょうね。私は基本的にゲーム形式で区別するので、このゲームはコマンド選択式のADVと表現しますが、もし読ませることを意識させた点にノベルの意義があり、そこで区別するというのであれば、これなんかもノベルと言えるのではないでしょうか。何れにしろアリスはPC-98時代に西の横綱と言われるほどになり、それ以前にPC-88時代から作ってきた最古参の1つなのですが、いつの時代も流行路線のど真ん中からずれている印象が強いのは、最近は少し違うようですが、少なくとも当時はそうした社風があったからなわけですね。
『Dr. STOP!』のように画面の大半を文字が覆うのは珍しいケースかもしれませんが、部分的というならば『ヌーク』では基本は下画面にテキストが表示され、上画面に天の声が表示される「天の声システム」を採用していました。天の声はヒントでもあり、ナレーターでもあり、言わば進行役みたいなものです。コマンド入力式時代などは主人公とプレイヤーがほぼ一体でありつつ、ゲーム進行を促すためにプレイヤーに語りかけるようなメタ的な部分を多く含んでいたものでした。そういう厳密には説明が難しいメタ的な部分を天の声と割り切って表示させたシステムと言うことができるでしょう。
他には、『秘密の花園』では画面下部が主人公のテキストで、画面上部に他のキャラ用のテキスト欄を設けていましたね。

少しずれたので元に戻りまして、コマンド選択式ADVは「みる」「きく」といった汎用メニューを用いるタイプと、個別の選択肢を選ばせるタイプの両方がありました。『RED』や『My eyes!』が後者になります。
機能的には普通のコマンド選択式ではあるものの、キモイ顔の部位をクリックさせる(きくであれば、顔の耳の部分をクリックする)『蘭丸』は意味はないけどインパクトだけはありました。『蘭丸』は、面白いか否かはさておき、無駄に98らしさは伴ったゲームでしたね。
新しい部分では、『秘密の花園』ではどのヒロインと行動するかで進行に影響が生じました。視点変更を伴わないことからマルチサイトではないものの、キャラを切り替えることで進行に変化が生じるということで、マルチサイトを伴わないザッピングシステムと言えるでしょう。このようなザッピングは『新・鬼ヶ島』や『マニアックマンション』にありましたが、それらは主人公キャラの交代であり、こちらは相棒の交代なので、ゲームにおける機能は一緒ではあるものの、若干異なる亜種ってところなのでしょう。
ザッピング関連という事ではもう1件あります。
『スウィートエンジェル』は基本はRPGのようにフィールド内を直接移動させる移動式ADVになります。こういう移動式ADV自体比較的少ないのですが、主人公は憑依する能力があり、いろんなキャラに憑依することでゲームが進行します。こちらも視点変更を伴わない形でキャラを随時切り替えるわけで、マルチサイトを伴わないザッピングシステムと言えるでしょう。ザッピングシステムは後にマルチサイトシステムと半ばセットのように扱われることが多く、それで両者が混同されて語られることも多いのですが、当初はわりと切り離されて用いられていたのです。
もう1つ変則的なゲームとしては、相手の好みから48の体位を当てる『48夜物語』というのもありました。

他方、P&C(ポイント&クリック)式ADVの代表格は一応『DE・JA2』になるのでしょう。ストーリーの良さで92年を代表するADVと認識されている作品ですが、P&C式というシステムの観点からは若干変則的でした。簡単に言うと、コマンド選択式とP&C式を併用していたのです。
この評価に関しては難しいところもありまして。91年のところでも書いたのですが、コマンド選択的な要素を廃して直接画面内の対象をクリックすれば進行できるように、シンプルな構造にするのが世界的な流れなのです。そしてエルフは91年の『ELLE』でそれを成し遂げているのです。
とすると、選択式と併用しつつアイコン方式による画面クリックを採り入れた『DE・JA2』は、世界レベルで考えれば明らかに時代の流れに逆行しているように見えます。だからこの変化は退化だと捉える人がいても不思議ではないし、私個人としても『ELLE』方式のままの方が好きではありますしね。
じゃあ何でこういう変化をしたのか。これは蛭田氏に言わせると、当時のユーザーに合わせたということみたいなんですね。つまり『ELLE』のような1クリックで進行するタイプはP&C式に慣れた人ならあまり問題ないのですが、慣れていない人だとどこをクリックすれば良いかが分からず、つまって先に進めないという状況に陥りがちなのです。ヌルゲーや親切なゲームに慣れ、ちょっとでも自分がつまると作品のせいにされがちな現在ほどではないにしても、いつの時代も自分の思考が足らないのをゲームのせいにする人はいますからね。
海外のADVはP&C式ばかりですので、ユーザーも慣れたコアな人が多いです。しかし日本ではエルフが導入したばかりですので、慣れていない人の方が圧倒的に多いわけですね。コマンド選択を併用すれば「みる」「きく」で大体の部分は進行しますので、途中でつまって進めなくなる事態を回避しやすくなるのです。RPGでもドラクエ2に比べて3では難易度が下がっています。ジャンルの初期は初心者にも配慮すべき視点が必要なのだと考えるならば、『DE・JA2』における変更も十分説得力はあるのかもしれません。
それと、ゲームデザインとはずれますが、『DE・JA2』はクリアに30時間近くかかりました。当時のADVは数時間で終わるケースが多かったものですから、それだけにこの大ボリュームは圧倒的だったのです。おそらく発売当時では最長でしょう。ボリュームが多いと必然的につまるポイントも増えますから、それで個々の場面における難易度を下げる必要性があった、逆に言えばストーリーとボリュームで満足させられるという自信があったからゲーム部分で難易度を上げる必要がなかったということなのかもしれません。
P&C式は他にもあります。前回既に書いているので省略しますが、『ドラキュラ伯爵』ではインベントリーを用いてアイテムを使うタイプであり、より海外のADVに似た雰囲気を有していました。

変則的なADVとしてはアンジェの『KISS』があります。マップ上から移動先を選ぶのですが、ここでは移動先以外の背景もクリックして反応を楽しむことができ、部分的にP&C式になっています。移動先では基本的にコマンド選択式になるのですが、キャラとの会話では選択肢の連続でありその好感度で決定されますので、ここだけ見ればノベルゲームっぽくもあります。説明しだすとややこしいのですが、簡単に言えばその場その場で最も相応しいシステムを用いたってことです。
もっともこのゲームがゲームデザイン面で話題になったのはこれらの部分ではなく、ヒロインごとに個別エンドがあったことでした。今の恋愛ゲームでは個別エンドの存在は当り前です。そしてマルチエンドというもの自体も80年代からあったのですが、当時はストーリーの展開に応じたEDだったわけですね。そこにストーリーの展開ではなくヒロイン単位のEDを初めて用意したのが『KISS』だったということです。

ADVに関してはもう1本絶対に触れるべきゲームがあるのですが、量の関係で次回で扱います。

なので後はADV以外なのですが、SLGではカードゲームを用いつつストーリー性を高めた『レッスルエンジェルス』『レッスルエンジェルス2 トップイベンター』が発売されました。
またSRPGの『DALK』では、1000階にも及ぶやり込み要素が話題になりましたね。
RPGは前年より勢いがなくなっているのですが、王道路線では『ミラージュ』があり、変則的なところでは『復活祭 ~アスティカーヤの魔女~』が学園内を舞台にした大ボリュームゲームということで異彩を放っていました。

以上のように、細かい部分では結構いろいろシステム的に凝っているゲームはあります。
しかし良くも悪くも細かい部分での変更やバージョンアップであり、完成度は高まりつつも、新しい流れみたいなのは感じ取れなかったのかなと。
どちらかというとストーリー面の変化で差異を設けたゲームが多かったというのが92年全体を通じた印象なのですが、その印象を根底から覆してしまうような大作が年末に発売されたわけで、そのゲームについては次回扱うことにしたいと思います。

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