アダルトゲームの歴史 1992年 その1

アダルトゲームの歴史 1992年 その1

アダルトゲームの歴史を振り返るシリーズの第16弾ということで、
1992年の1回目になります。

1992年に発売されたアダルトゲームは、130本前後はあるようです。

数字的には前年との比較では横ばいか、やや増ってところでしょうか。
前年末に生じた沙織事件の影響で、アダルトゲームは最大の危機に陥ることになります。主にシナリオ面の方向性で業界を引っ張ってきたアイデスはここで方針を変更せざるを得ず、様々な方向を模索しだします。一方で、アイデスと異なる方向で進化を遂げていき年末に話題を独占したのがエルフでした。

さて、ゲームの内容に直接の影響はないだろうということでこれまであまり触れてきませんでしたが、『177』が国会で議論の中に登場しただけでなく、その後も別のゲームが条例にひっかかったり万引きがあったり大なり小なり事件はあったわけで、業界関係者自身も規制の必要性は既に感じていました。そこにきて沙織事件ではゲームの発売元であるキララやジャストの家宅捜索にまで発展し、逮捕者まで出てしまったのです。
その時点ではパソ協により18禁シールを貼る程度の対応だったのですが、92年7月にガイナックスのゲームが宮崎で有害図書指定されたこともあり、ソフ倫の発足に至ったわけです。より細かいことは各自で調べてもらうとして、ここで重要なのは一連の動きによって一部でエロを自粛せざるをえない状況に陥ったということです。全般的に見ても、92年はもっともアダルトゲームにおけるエロが薄くなった時期かもしれませんね。

ここで、ここまで業界の中心を担ってきたアイデスのゲームを見ていきましょう。具体的にはカクテルソフト・フェアリーテール名義で発売されたゲームたちになりますが、アイデスは80年代後半からストーリー重視の姿勢を強めています。だからエロを重視しない方向への転換と言っても、どちらかと言うと新たなストーリーの方向を模索していた部分が強いと思います。

例えば『狂った果実』はコマンド選択式のミステリーものになるのですが、登場人物が次々と殺害されていき、ストーリーの基本ライン自体は火サスのノリなのですが、その中にグロイというか残忍なCGが加えられたことで近年でもトラウマになるゲームとして何かと話題になりやすいです。
もっとも、それらのCGが印象深くなりえたのは緻密なテキスト描写があったからであり、一方でラストではこれまでとは正反対の幼稚な絵が描かれ、その狂気に惹かれた人の方が多かったのではないでしょうか。
このゲームはその残酷さと幼さの中に宿る狂気という点でアダルト性を追求したものであり、Hシーンにおけるエロという観点からはかなり薄くなっています。まぁこういうのがあるから、92年頃って抜けない鬱ゲーの多かった年ってイメージの人も結構いると思いますし。

『夢二 浅草奇譚』では大正時代の実在の人物をアレンジしつつ、絵を描けなくなった画家が女の本質を追い求めながら自分探しをするという、文学寄りの大人な雰囲気を感じさせる方向を追求しています。
この作品ではグラフィックもセピア調にして落ち着いた雰囲気を演出していますし、更にストーリーで勝負という雰囲気になっています。
ただ、そのわりに最後でもう1つ掘り下げが足りないなと思ったら、どうやら自主規制の関係で薬物絡みの話を丸ごとカットせざるをえなかったようです。ここら辺にもギリギリの狭間で苦悩する姿勢がうかがえますね。

アダルト性を少し緩和させた路線で登場するのが『デッド オブ ザ ブレイン』。これはナイトメアシリーズの第1弾として恐怖を追求したホラー作品で、エロでもなく内面的な狂気でもなく、暴力性でアダルト性を表現しようとしたゲームになりますね。

もっとエロ要素を廃し一般作扱いのゲームも作ります。と言いつつ2時間ドラマに含まれるサービスシーン程度のアダルトな部分を残しつつ作られたのが、『殺しのドレス3』。
このゲームは刑事が主人公のミステリーモノであり、PC-98のアダルトゲームは何かしらの事件性を帯びたゲームが非常に多いのですが、ここまで実直に推理モノを作ったケースも、ありそうでいて実はほとんどないわけでして。家庭用ゲーム機や一般PCゲーの推理モノも絶滅した時期だけに、逆にインパクトは強かったです。

もっとエロから離れた路線もあり、『電撃ナース』ではコアなネタを多用したパロディ路線を追求し、そのぶっ飛んだ内容で熱烈なファンを生みました。

また映画を意識したような路線もあり、それが『新宿物語』でした。
こちらもセピア調の画面で、ちょっと古めの映画を意識したんですかね。立ち絵を廃し全て一枚絵で進行し、重要部分では一枚絵の連続させることで動きを付けて惹きつける手法を採用しています。
同じセピア調でも『夢二 浅草奇譚』では背景に立ち絵が中心でしたので、絵の使い方が全然異なるものになっており、両者を比べると方向性の違いがハッキリ見て取れます。
内容的には広い意味での青春モノ。エロシーンを必要としないからか、青春モノでありつつ恋愛的側面を一切絡めていないのが特徴的でした。

逆に恋愛色を強めた作品もあり、それが『卒業写真/美姫』になります。
これは『卒業写真』と『美姫』の2作品のカップリングで、オムニバスの方向も模索したとも言えますが、より重要なのは『卒業写真』の存在なのでしょう。
恋愛ゲームは主流ではないものの既に登場していましたが、悲恋モノというのは非常に珍しかったです。その切なく重い一言一言がユーザーの心を掴み、根強いファンも生みました。
恋愛ゲームと呼ばれるものは多くが結ばれるまでを扱っているのですが、このゲームは付き合っている男女を描いているゲームであり、個人的にはより恋愛ストーリーっぽさを感じたものです。

同じ恋愛モノでもハッピーエンド系の作品もあり、また結ばれるまでの過程を描いた、ナンパゲームの延長上から生まれたのが『きゃんきゃんバニー4 プルミエール』でした。シリーズとしては4作目にあたるのですが、これまではヒロインを攻略することが主目的であり、ナンパゲームとしての側面が非常に強かったんですね。もちろん作品ごとにストーリー性も向上していたのですが、同時に難易度も上昇していきましたし。
この4作目ではゲーム部分を簡略化して簡単にクリアできるようにしつつ、その代わりにヒロインとの交流やストーリー性を更に高めて恋愛色を強めてきています。
因みに、スワティが初登場した作品であり、PC-98時代全体を通じて非常に人気の高いキャラとなりました。

アイデスはストーリー中心だったとは言え、ストーリーに頼らない方法も模索していたわけで、『蘭丸』はADVにRPGが混ざった形式でしたが、内容もありとあらゆるものをとにかく突っ込んでみましたって感じの、非常にカオスな作品になっていました。良くも悪くもというかむしろ悪い意味の方が強くなってしまうかもしれませんが、ある意味とってもPC-98時代のアダルトゲームらしいゲームだったかもしれません。

『ドラキュラ伯爵』は吸血鬼が主人公のホラー要素を含んだ復讐劇。吸血鬼というかヴァンパイアで西洋が舞台なので、伝奇ではありません。
こちらは国内では前年に登場したばかりのP&C式ADV。91年のところでも書いたのですが、以後もP&C式ADV自体は何本もあるものの、大抵は画面をクリックする要素しかありません。インベントリータイプでアイテムを集めて駆使するというのが海外のP&C式の特徴なのですが、そういうゲームは非常に少ないんですね。その点、『ドラキュラ伯爵』ではインベントリータイプになっており、これは非常に珍しいです。
加えて前述のように主人公がドラキュラであることから、吸血行為を行います。これを人間でいう性行為に見立てたわけで、Hという直接的な表現によらないエロスの追求もなされていたわけです。

これらが、92年にアイデスが各ブランドを通じて作ったゲームになります。作品数がとても多いのですが、どれも全く被っていないですよね。良く捉えればアダルトゲームの多様性が一気に拡がったのであり、捻くれた見方をするならば、なりふり構わず必死に模索する混迷っぷりが如実に表れているようです。
もちろんこれが業界の全てというわけではありませんが、92年のアダルトゲーム事情としては決して避けることのできない1つの側面ではあるのでしょう。
まぁアイデスの場合は大手だけにシステム面の変化も加えてきているのですが、基本的にはストーリーの方向性の模索の方が強いわけで、そういうシナリオ重視やエロを捨てた一般化の動きは他ブランドでも見かけることができます。
例えばバーディソフトの『My eyes!』なんかがそうですね。こちらは主人公の涼子とシャチのギギの交流を中心に描いた作品であり、これまでにはない雰囲気になっています。

ある意味凄いのは、ハート電子になるでしょうか。『風へ 翼よ、愛あるところへ』という伝書鳩調教SLGという唯一無二のゲームを作っており、もはや美少女すら捨てています。女の子ロボを育て小説家を育てボクサーを育てさせてきたら、もはや鳩を育てることも同列なのでしょうか。
そういや2011年には同人で『はーとふる彼氏』なる鳥が恋愛対象の恋愛ゲームも出ているわけで、世の中って思ったより深いのかも。
ハート電子は相変わらず発想だけは抜群なのですが、何れにしろこのブランドに見えている世界は、我々凡人と全然異なるのかもしれません。ここの企画担当と大手ブランドの作り込みが合わされば、きっと凄いものもできたでしょうに。
最後の鳩はアダルトゲームを語る上では少々反則っぽいのでこの場には不適切かもしれませんが、いろいろ一般化の動きもあったことや混迷っぷりは伝わるのではないでしょうか。恋愛ゲームももちろんあったものの、今のような圧倒的多数ではないし、シナリオ自体も恋愛に縛られない分だけいろんな類のものがありえましたし、また同じブランド内でも全然毛色の異なるゲームが出てくることもざらだったのです。

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