アダルトゲームの歴史 1991年 その3

アダルトゲームの歴史 1991年 その3

アダルトゲームの歴史を振り返るシリーズの第15弾ということで、今回は1991年の3回目になります。

今回はストーリー面の話を扱います。

ストーリー面は、ADVに決定的な流行がなく分散している上にRPGが多いこともあり、数の上ではファンタジーモノが一番多いのではないでしょうか。
病院で目が覚めたら記憶を失っていた主人公が恋人を探すという『いまどき純情物語』のように現代モノのRPGがある点は前年同様ですが、その代わりADVでも『CAL2』のようなファンタジーモノでストーリーの良さでも評判になった作品がありますので、総数としてはRPGの数に近いだけのファンタジー作品があったと思います。

特徴的なのは、1つは『ランス3 リーザス陥落』でした。設定が拡がりファンタジーモノとして本格的に動き出した点でシリーズとしても非常に大きな意義を持つ作品でしたが、シリアス一辺倒でない笑える要素を含んだファンタジーは存在自体が非常に貴重でした。
ライトノベルでは90年に『スレイヤーズ』に刊行されだしたばかりで、こういう系統がまだ弱かったのです。ライトノベルの歴史にまで踏み込むと話が逸れる上に長くなってしまうので簡単に書いてしまいますが、スレイヤーズ以前のラノベに入ると呼ばれるものは大人向けの小説を子供向けに易しく書き直したものであったり、少年少女の成長を描いたジュブナイルばかりだったのです。そこにスレイヤーズが登場することで、キャラを立てることを重視した流れやコメディ系の作品が増えていったわけですね。ゲーム機等ではRPGブームでファンタジーブームでしたがシリアス路線が多く、それにしたって厳しい人に言わせればハヤカワFTの焼き直しが多く、海外の本格ファンタジーモノの翻訳版を読めば十分っていう見解もありました。しかし翻訳の関係でギャグの意味が伝わらないなど、コメディ系はどうしても弱くならざるを得ず、手薄だったわけです。そのため家庭用ゲームのシリアス風ファンタジーには辛口で駄目だしばかりの人であっても、ランスにははまるというのはよく耳にしたものです。
もう1つは『ブランマーカー』になります。男の子が多くプレイする家庭用ゲーム機のRPGでは男性主人公がほとんどなのですが、レズゲーも多いアダルトゲームでは縛りも少なかったのか、『ブランマーカー』では女の子を主人公にしていました。以後女戦士モノは1つの定番になりますが、その先駆け的存在と言えるでしょう。
またファンタジーの亜種というか西部劇風の世界だったのですが、バーディソフトからは『ジョーカー』も発売されました。バーディソフトは上記の『CAL2』が一番の代表になるのでしょうが、この頃最も勢いのあったブランドかもしれませんね。グラフィックが別格だったのはもちろんのこと、シナリオもサウンドも非常に高く評価されていましたから。内部分裂で消えていってしまったのですが、それがなければ業界の勢力図は全然違ったものになっていて、バーディソフト中心ということもありえたかもしれないですね。

今だと一番の主流である恋愛系は、『キミだけに愛を…』のように一部では存在するのですが、基本的にあまり需要がなかったのでしょう。恋愛はメインではなく、『天使たちの午後4 ゆう子』や『星の砂物語』のような事件がまずあり、解決に至る過程で従的に描かれるものが多かったのかなと。
また馬鹿ゲーもインパクトのあった年で、『電脳学園4 エイプハンターJ』は猿害に関する異常なまでの細かい設定を作り上げ40ページ近くにもなる教科書風の小冊子を付属し、さすがにガイナックスは違うなと強烈な存在感を発揮しました。もう1つは『はっちゃけあやよさん3』ですね。あやよさんが死んでしまい、天国で菩薩さまとかに犯されまくるというぶっ飛んだ内容でした。

かように基本的には分散しているのですが、それでも91年はSFの年でした。SFモノというのは技術の進化とも関係しているように思うわけで、80年代後半の一般PCゲームのADVでは、『ジーザス』『スナッチャー』『サイオブレード』のようにアニメーションを多用した演出を重視するゲームが増えています。映像の進化を見せ付けるためにはSFという題材がやりやすかったのかなと思うのですが、この時はアダルトゲームはこの波に乗りませんでした。ENIXやコナミは高い技術力で演出を重視できたのでしょうが、アダルトゲーム業界ではまだそれだけの体力がなかったのかもしれません。
しかしPC-98の時代になり、以前よりやれることが増えて、グラフィックの項目で紹介した『ドラゴンアイズ』のような絵の動きや質で勝負するところが増えてきたわけで、それで舞台としてもSFが増えていったのかなと。だからアダルトゲームにおけるSFモノの増加というのは、技術が進化していったことの証明でもあるように見えるのです。
91年をSFの年であるというのには、1つはそのような象徴としての側面があります。しかしもっと単純に、ストーリー重視で優れたゲームが出てきたことも挙げられます。ジェットコースターゲームとは『コズミックサイコ』に付けられた表現でしたが、怒涛の展開に感動的なラストにと、『ナイキ』と『コズミックサイコ』(共にカクテルソフト)がストーリーの面では別格でしたから。
『ナイキ』は宇宙空間を舞台にしたレースモノでもあり、そこに皇女の誘拐事件も絡んでおり、2重に緊張感の漂う作品でした。他方で『コズミックサイコ』は現代の予備校生の主人公が未来に飛ばされて宇宙戦争に巻き込まれるという作品でした。そのため方向性はかなり異なるのですが、広い意味では両者ともSFモノと言えるのでしょう。
ここは、比較すると面白いのかなと思ったりするのですが、アイデスのストーリー重視の作品の代表作は、上記の『ナイキ』であり『コズミックサイコ』になります。他方で同じくストーリーに定評があった物の中に蛭田氏のゲームがあり、この時点では『DE・JA』や『リップスティックアドベンチャー』があります。翌年を先取りしても『DE・JA2』も『DE・JA』の続編ですから、方向性は同じになります。
この両者がどう違うかなのですが、蛭田氏の場合はADVであることを前提にゲームを作っています。つまり会話による言葉のキャッチボールのような構図ですね。その中でウィットに富んだジョークと軽妙な会話がコマンド選択式という構図にピッタリ当てはまり、言葉の応答を楽しんでいるうちに少しずつストーリーが展開していって、最後にインパクトのあるどんでん返しが待ち構えていたりするわけです。
それに対しカクテルソフトの2作品は、一応はコマンド選択式であるものの、かなりノベルゲームに近い構造をしており、ストーリーがポンポン進行していきます。それに合わせるかのように次々にイベントが発生し、怒涛の勢いで一気にユーザーを先に導いていきます。
蛭田氏が遊び心や脇道にそれる横の展開に魅力があるとするならば、カクテルソフトの2作は縦の突破力にこそ魅力があり、ゲームにドラマティックな展開を求めるのであれば、カクテルソフトの2作の方に軍配が上がるように思います。少なくとも、今のユーザーにはカクテルソフトの2作の方がうけるでしょう(但し、ヒロインが非処女だったりするので、別の意味で非難はされそうですが)。
当時のユーザーの中にも『ナイキ』や『コズミックサイコ』を絶賛する声は結構あるのですが、どちらかと言うと当時は80年代的なADVとして遊べるものを好むユーザーが多数であり、コマンド選択式にマッチした蛭田氏的なテイストが好まれたのでしょう。「良い」と感じる基準が、今と昔で異なるということなのです。

ここまで私は、ゲームデザイン部分もかなり書いてきました。
しかし中にはストーリーしか興味のない人や、シナリオ重視のゲームしかプレイしない人もいるでしょう。特に近年は多いと思います。もちろんそれはそれで1つの楽しみ方だし、個人で遊ぶ分には何ら問題ありません。
ただストーリー重視ならストーリー重視で、注目すべき作品や、やるべき作品があると思うのですよ。2011年を例に取ると、『大帝国』や『神採りアルケミーマイスター』は確かに売れています。そして2011年の作品のゲーム性を総括する場合には、この2本は内容の賛否はともかく対象としては必須でしょう。しかしストーリー重視の人がこれら2本だけプレイして2011年のストーリーは駄目だったとかって総括するのは、どう考えても変ですよね。
エルフやアリスのゲームは人気売上共に年を代表する作品が多いし、ストーリーの優れているものも多いです。でも、基本的にゲーム性も重視しているんですね。当時はゲーム性も重視する人が多いから、それで支持が伸びた面が大きいわけですし。
だけどストーリーだけに絞って考えるならば、もっと比較の対象に相応しい作品・ブランドはあるのです。その代表がカクテルソフト・フェアリーテールを擁するアイデス(独立当時はキララ。91年に社名変更。後のF&C)です。ストーリー重視の作品が多い、或いはストーリーに新しい風を持ち込むことが多かったアイデス作品は、ストーリーの流行や変遷の面では80年代後半から90年代前半を常にリードしてきていました。ストーリー重視の人がその観点からアダルトゲームの歴史を振り返るならば、エルフではなくアイデスにこそ着目すべきなのです。個々の作品に関しては賛否あるのは当然ですが、それでも少なくともアイデスに触れないで80年代後半から90年代頭を振り返ることはありえないし、『大帝国』や『アルケミーマイスター』で2011年のストーリー全般を語るくらい論外なのだと思います。『天使たちの午後』を作ったのがジャストで、ジャストから独立したのがキララ(後のアイデス)でした。そのキララから独立したのがエルフなのですが、再三書いていますようにこの一連の動きが当時のアダルトゲームにおける主流の変遷とマッチしていると言えるように思います。

というわけで1991年は終わりですと言いたいのですが、実はゲーム外の事情である意味最も看過できないことが起きてしまいます。いわゆる沙織事件と呼ばれるものです。
詳しい事に興味のある人は各自調べてもらうとして、簡単に説明すれば京都でアダルトゲーム(これが『沙織』でした)を万引きした中学生の事件に端を発し、それまで規制のなかった市場に規制の波が押し寄せたわけです。それでいわゆるソフ倫を作って18禁シールを貼って区分けするようになったわけですね。この事件の関係で、各社が自主規制せざるをえなくなります。事件は91年の11月なので91年は一部ゲームに影響を与えたのみで済んだのですが、この騒動は翌92年のゲームに大きく影響してくることになるのです。

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