90年代のADVの話 その3

90年代のADVの話 その3

さて、話が脱線し続けているので少し元に戻しますが、ジョー・スパークスは単なるムービーの垂れ流しでシナリオを見せるのではなく、ヴァーチャルリアリティの構築に比重を置いていました。それはヴァーチャルヴァレリーからも分かると思います。
ヴァーチャルヴァレリーはぶっちゃけヒロインとHをするゲームなのですが、ジョー・スパークスのかかわった初代ではHの他に様々な部分をクリックをできるようにしたりすることで、空間的な広がりをプレイヤーに感じさせたものです。
しかしジョー・スパークスが去った後に発売された続編では、メインであるヒロインとのHにだけ照準が絞られました。そこにはジョー・スパークスのヴァーチャルリアリティへのこだわりのようなものがなかったのです。

今のADVは…というとどうしてもアダルトゲームの話にならざるを得ないのですが、恋愛系のノベルが大半です。恋愛を基盤に置いたゲームが大半であることも、読ませることがメインのノベルが大半であることもそれはそれで構わないのですが、「恋愛」と「ノベル」をベースに置きつつも、もっとプレイヤーの取りうる行動の幅を広げたり、シナリオという縦のラインだけでなく横のラインを重視しても良いように思うんですけどね。それこそが他の媒体と異なるゲームならではの特徴なのですから。
まぁ誰かのルートに入ると他のヒロインが出なくなったりする現象に何年にも渡って慣らされたことなども相まって、そういう視点が今ではプレイヤー側にも欠けていますからね。せっかく気合を入れて作ってもスルーされてしまうでしょうから、作る人がますますいなくなるという悪循環になっているのでしょう。

で、ジョー・スパークスはリアクター社でスペースシップワーロックを作ったのですが、その後サンフランシスコにポップ・ロケッツという会社を設立します。そこで3年半かけて制作したのが『トータルディストーション』でした。
仮に、とにかく俺の考えたシナリオを読んでもらいたいというのならば、作るゲームもノベル系のADVばかりになってしまうでしょう。
もしジョー・スパークスがムービーだけを作りたいのであれば、新作も当然ムービーを見せることに重点を置いたインタラクティブムービーとなっていたはずです。
しかし上述のように、ジョー・スパークスが関心を抱いていたものはヴァーチャルリアリティの構築であり、その目的のためにはADVであることにこだわりはないんですよね。
だから『トータルディストーション』も大雑把にはADVでありインタラクティブムービーの中に一応含まれるとは言えるものの、一般的なインタラクティブムービーとはかなり異質な内容になったのでしょう。

細かい部分に関しては次回で扱いますが、トータルディストーションは簡単に言えば映像編集を主目的としたゲームでした。WIN95が登場した頃にはそういう類のソフトは何本かありますし、その部分に特化した物もあります。
だからジョー・スパークスも特化する道を選ぶこともできたはずなのですが、まだ仮想空間を作り上げるという部分に関心が残っていたのでしょう。トータルディストーションにはパーソナルメディアタワーという主人公の拠点があり、内部には寝室(寝ることで夢の中でミニゲームができる)や書斎(50弱の書籍がある)、体力回復のためのキッチン(材料を組み合わせることで料理を作れる)などがありました。こういう部分がジョー・スパークスらしいゲームの作り方だったように思います。

魅力的な仮想空間を作り上げることが第一であるからADVであることにこだわりはなく、部分的にはSLGでありRPGでありACTだったりします。もともとジャンルはプレイヤーが便宜上区分したものにすぎないので、ジャンル分け自体を嫌う人もいますし、それ以上に本当に作りたい物を作ってしまう人の作品の場合、既存のジャンルでは説明しきれないゲームを作ってしまうんですよね。
単に自分の好きなクリエイターを天才・鬼才と表現する人もいますが、個人的には既存の枠で説明しきれない物を作れる人が天才であり鬼才なんだと思います。
ジャンルというのはユーザーの好む要素を一定の基準から最大公約数的にまとめたものであり、こういうゲームがやりたいんだって場合には非常に役立ちます。だからその機能は決して無視できないし、またユーザーの希望に沿って職人的にきっちりゲームを作りあげてくるクリエイターも尊敬に値するし、えてしてそういう中に好きなクリエイターが多いのですが、自分が好きなのと天才か否かはやっぱり違うのでしょう。

90年代的な意味でのインタラクティブムービーをヴァーチャルヴァアレリーやスペースシップワーロックで作り上げ、周りが模倣しだした中でトータルディストーションで新たなヴァーチャルリアリティとインタラクティブムービーの方向を指し示す。
ジョー・スパークスはADVの世界における数少ない鬼才の一人だと思うのですが、その彼がその後目指した方向については次回ということで。

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