アダルトゲームの歴史 1990年 その2

アダルトゲームの歴史 1990年 その2

アダルトゲームの歴史を振り返るシリーズの第12弾ということで、今回は1990年の2回目になります。

前回は主にゲームデザイン・システム面を扱いましたので、今回はグラフィックやストーリー面を扱っていきます。

さて、グラフィック面を見てみますと、90年は1つの転機だったように思います。80年代のアダルトゲームの多くはPC-88用でした。それが91年にはほとんどがPC-98用になっています。前年である90年はちょうど移行期であり、両方が混在していました。いち早くPC-98用に対応したブランドは、PC-88時代の200ライン・デジタル8色から400ライン・アナログ16色へ制作の幅が拡がったことでより綺麗なグラフィックを作れましたし、PC-88にしても末期ゆえにグラフィックの質が向上していったのです。この90年から91年頃にかけて高品質なグラフィックで多くのファンを生んだのが、『CAL』を始めとするバーディソフトでした。

グラフィック関連と言うことで、もう1つ注目すべきなのが『宇宙翔るビジネスマン』になるでしょうか。PC-88のADVは基本的に画面の下部に3行ほどのテキスト欄があり、その上にグラフィックが表示されていました。それ自体は基本的に今のADVと変わりありません。
しかし今のADVがCGの上にテキスト欄をかぶせているのに対し、PC-88及びPC-98のADVの多くは基本的にテキスト欄の上のスペースだけでグラフィックを表示していたのです。更に多くの場合は、枠でグラフィック表示部分が囲まれていたのです。だから実際に表示されるCGは、ディスプレイ全体に比べてかなり小さくなっていました。
後にリーフのビジュアルノベルがヒットしますが、あれは文字を画面全体に表示したことよりも、全画面を使ってCGを表示することでインパクトが増したことが大きかったのかなとも思うわけでして。その全画面によるCG表示をこの年に行ってインパクトを増したのが、『宇宙翔るビジネスマン』だったのです。
もっとも『宇宙翔るビジネスマン』は、画面全体を文字が覆うわけではありません。その場面ごとに、あまり重要でないであろう位置にテキスト欄が画面全体の4分の1ほどの大きさで設けられていました。多くのADVのように下部固定ではないのです。高さがあるので3行以上も表示できますし、長文表示に向くという画面全体を覆うタイプの利点は共有できます。それでいて大事な部分は文字で覆われないことから、画面全体を覆うタイプにある絵が見辛いというマイナスもありません。ADVにおけるグラフィック表示という意味では、検討の価値のある手法の1つと言えるでしょう。

ストーリー面は、傾向としてはゲームジャンルでRPGが大幅に増えた関係で、ファンタジーモノが増えています。特に『闘神都市』はどんでん返しも含めたストーリーの良さが評価されると共に、ヒロインのクミコもまた高い人気を得ました。
RPGのストーリーとしては、もう1つ珍しい傾向があります。家庭用ゲーム機のゲームでも一般PCゲーでも、RPGの題材はファンタジーかSFが大半です。それでも近年はそれ以外の題材も出てきていますが、80年代なんて本当にファンタジーかSFのどっちかという状況でした。ストーリー重視のRPG自体が89年頃から出てきたようなものですから、FT・SF以外で物語を楽しめるRPGなんてのは、コンシューマーや一般PCゲーでは皆無に近かったのです。しかしながらアダルトゲームでは、『帰り道は危険がいっぱい』『ベロンチョ身体検査』のように現代や学園を舞台にしたRPGがあったわけです。需要がどれだけあるのか、ゲームジャンルとしてRPGを選択することが正しいのかはともかくとして、FTやSF以外のRPGを求めるならアダルトゲームしかないという点では、アダルトゲームはオンリーワンに近い存在だったと言えるのでしょう。

それ以外では、結構ばらけている感じが強いです。『DE・JA』は蛭田氏によるADVで、『リップスティックアドベンチャー』の後継的な作品と言えるでしょうか。『リップスティックアドベンチャー』はCG集のデータをごく一部ではあるものの再利用して作られたことから、ゲーム作りに若干の制約も生じていました。
『DE・JA』にはそのような制約がないことから、より自由に制作できたのでしょう。『DE・JA』はミステリー仕立ての冒険モノなのですが、かかる物語のジャンル的にも、考古学者の主人公で実際に内面的な精神年齢も高く描かれている点も、近年のアダルトゲームからすれば珍しい路線になるかもしれません。
同じく社会人が主人公という点では『宇宙翔るビジネスマン』や『世界でいちばん君がすき』があり、『世界でいちばん君がすき』はミステリー仕立てという点も共通しています。もっともこちらは芸能界を舞台にしており、女の子成分高めで軽い感じになっています。
この作品のように何かしら事件があってそれを追いつつ、その過程で女の子と仲良くなっていくというのは、この頃の1つの傾向であり、他には『ルージュ -真夏の口紅-』『ウォーターフロントアドベンチャー』などがあります。
その事件性をもっと局地的で何かの問題を解決する程度に薄めつつ女の子との触れ合いを強調して学園モノにしたのが『PURE2』であり、もっと端的に学園モノとして恋愛要素を高めたのが『天使たちの午後3 番外編』でした。同じ学園モノでもレズにしてしまったのが『SLOPE』で、NTRや鬱ゲーにしてしまったのが『ピアス』になるのでしょう。プレイして後味が悪いというか鬱になるという意味では『ピアス』は先駆け的な立場にあるのでしょうが、寝取られに関してはシーンとしてはあるものの、その部分を楽しませる意図がないことから、寝取られゲーの元祖と捉えるのは少し難しいかもしれませんね。
ラブコメ要素に事件性を組み合わせた新傾向が出てくる一方で、『きゃんきゃんバニー スペリオール』のように伝統のナンパモノも健在。もっとも同じナンパモノでも年々少しずつ変化しているわけで、最初期の頃のナンパゲームが攻略対象たる女性の個性が薄かったのと比べると、前年の『きゃんきゃんバニー』はキャラクターの設定がしっかりなされるようになります。そして『きゃんきゃんバニー スペリオール』では初代よりもストーリー性を強化してきているのです。単にHシーンを見ることを目的としたナンパゲームから次第にキャラをきちんと作るようになっていき、出会いに至る過程でストーリー性を強化していくのが1つの流れであり、こうした流れが後の『同級生』につながっていくことになります。
他には『ザ・デート』は実写キャラを用いつつ、リアルでのデートを指南するデートシミュレーターとの目的も兼ねていました。これらが1人に絞る方向性であるのに対し、『毎日がえっち』は何人斬れるかという反対の路線。それら広い意味でのナンパモノの対極に位置するのが、一人の女性を自分好みに染め上げる『ピュア・マイ・ドール』になるでしょうか。
特殊な路線ではアニメをゲーム化した『うろつき童子』に館モノの『BEAST』、写真撮影を目的とする『アウトサイドストーリー』などもありました。
恋愛を主目的としたりラブコメ中心のもあるのですが、今のストーリーモノのように恋愛をベースにしつつそこに何かを加えるという見えない縛りはないことから、もっと自由に作った感じでもあり、どの作品も少しずつ方向性がずれていたように思います。

90年は冒頭でも書きましたがとにかくRPGが多く、他にもSLGやACTも多めで、ADVの占める割合が減って表面的にはゲーム性を求めた作品が増えた年でした。その理由はいろいろあるのかもしれませんが、1つはコマンド選択という構造でゲームとして楽しませることに限界が見え始めたことや、前年からシナリオ重視のADVが増える過程でコマンド選択部分が簡略化され、そのままではクリアに必要な時間が短縮化されてしまうことが挙げられます。
クリア時間が短くなることに対処する方法も幾つかありますが、入力式から選択式に移行する際にも大きくわけて3つの手法がありました。1つはストーリーの分量を増やすものであり、1つは新たなADVとしてのゲーム性をつけることであり、1つはRPGのように他ジャンルを混ぜたり移行することです。
最後の1つは堀井氏がかつて『軽井沢誘拐案内』でADVにRPG要素を付加したり、その次には『ドラクエ』を制作することで完全にRPGに移ってしまったりした路線になりますね。今回の場合、前2者の方向性も91年には見え始めるのですが、90年の時点では3つ目が選ばれることが多かったのでしょう。
何で3つ目が選ばれたのかに関しては、当時がRPGブームであったこともありますし(コンシューマーではFF3とドラクエ4が揃い踏みした年でしたし、アダルトゲームでもドラゴンナイトが大ヒットした翌年でした)、PC-98でゲームをする人が増え始めたことも大きかったのでしょう。
大衆向け、或いは総合的なエンターテイメント機としての役割を担ったPC-88に対し、初期のPC-98はビジネスでの活用が目的とされており、音源もつまれていなかったものでした。それが次第にPC-98へと中心が移っていき、ゲームも楽しめる環境が次第に整ってきたのです。そして同時期のPC-88とPC-98とではPC-98の方が処理能力が高く、複雑なプログラムも組みやすかったことから、以前よりRPGなども作りやすくなったのでしょう。

そういう周辺的な要素を見てみれば、90年のRPGの増加は増えるべくして増えたものなのかなと思います。
何れにしろ表面的にはRPGの増加によりゲーム性重視に転じたように見えるのですが、前回も書きましたように、じゃあその作品は具体的にどこで勝負しているのかと個々の作品を実質的に見た場合に、ゲーム部分の新規性で勝負したゲームはほとんどなかったように思うわけで、個人的には全体としてシナリオ重視の傾向の方が強かったように思うのです。

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