アダルトゲームの歴史 1988年 その2

アダルトゲームの歴史 1988年 その2

アダルトゲームの歴史を振り返るシリーズの第8弾ということで、今回は1988年の2回目になる。

前回はストーリーであるとか演出的な方面を主に扱ったことから、今回はゲームデザインやシステム方面を見ていくことにする。

<RPG>


前回も書いたのだけれど、88年のアダルトゲームと言うと今の視点からずば抜けて知名度が高いと思える物は2本ではないだろうか。その内の1本が、今回扱う『カオスエンジェルズ』(アスキー)になる。
簡素化された紹介だと、下手したら『天使たちの午後』(JAST、1985)の次にこのタイトルが出てきたりする。だからADVとして『天使たちの午後』が出てきた、RPGとして『カオスエンジェルズ』が出てきたと言われると、なるほどそういうものかと納得してしまうこともあるだろうと思う。

しかし、これらは必ずしも元祖なわけではない。
『天使たちの午後』に関しては既に85年のところで扱っているのだけれど、『天使たちの午後』以前にだってコマンド入力式ADVであるアダルトゲームは多数存するし、コマンド入力式の出来としても天午後以上のものは幾つも存在する。あくまでも「美少女」を用いたのが初なだけにすぎない。
それで以後の「美少女ゲーム」の観点からは『天使たちの午後』から語られやすいのだけれど、「コマンド入力式ADV」という観点からはそれまでのアダルトゲームの傾向を受け継いでいるのである。
『カオスエンジェルズ』だって同様である。ADVだかSLGだかRPGだか分類の難しい光栄系は83年からあるし、コマンド選択式ADVに戦闘要素がついたゲームもある。
もっと絞って純粋なRPGという観点からも、87年に『アマゾネス』が発売されている。
したがって、『カオスエンジェルズ』も元祖ではないのである。

では、なぜ『カオスエンジェルズ』ばかりが有名になったのかというと、それには幾つか理由がある。
理由の1点目は、単純にゲームとして面白いこと。
88年はファミコンではドラクエ3が発売された年であり、パーティ戦闘があたり前な時代にあって、『カオスエンジェルズ』のシングルでの戦闘は極めて単純である。しかし凝ったダンジョンの作りなどにより、総合的なゲームとしてはかなり遊べた構成だったのである。
もっとも、この1点目は、面白いのかという個人の主観にかなり依存する。それは、あまり好ましい基準とはいえない。面白いか否かを理由にするのは、本来はフェアではないのだろう。ノベルなんかにしてもそうなのだけれど、以前のゲームにはろくなのがなかったと決め付けつつ、自分の好きなゲームを起点に語りだすケースもたまに見かけるが、そんな基準では人によってバラバラになってしまうからである。だからこの1点目については、そういう声もあったよっていう参照程度に解しておくのが良いように思う。

次に2点目。これが、個人的に最も大事と思う点でもあるのだけれど、それはストーリー・設定とゲームシステムが上手くマッチしていることである。
何でもかんでもノベルゲーで構わないという最近のプレイヤーには最も理解してもらえない視点かもしれないが、昔のプレイヤーはゲームシステムとストーリーや設定が上手くマッチしているかという側面も非常に大事にしていたように思う。だから一見同じようなADVでも、作品ごとに細かい部分を変更していたのだろうし。
『カオスエンジェルズ』では、敵に女モンスターが多数登場してくる。そしてその女モンスターを倒すと、襲うことができた。
ゲームの途中にとってつけたようにエロ要素を入れるのではなく、エロという目的とゲームシステムとが上手く融合できていたからこそ、「アダルトゲームとしてのRPG」という一般モノのRPGにはない新しい形態として、その存在意義が高く評価されたのだと思う。

3点目は、個人的には軽視しているところでもあるけれど、人によっては大事なのかなと。
即ち、女の子モンスターを倒して襲うという構造が、後のアダルトゲームのRPGに多用されたことにある。最近はあまり見かけないように思うので、あまりピンとこない人もいるかもしれないけれど、PC-98時代まではこういう作品をわりと見かけたものである。
個人的には、後に類似作が出たか否かで『カオスエンジェルズ』の価値に違いが生じるとは思わない。
しかしアリスソフトの『闘神都市』など他の有名作でも用いられることにより、こういうシステムがあるんだよ、その起源を辿ると『カオスエンジェルズ』になるんだよと、たとえ未プレイであっても多くの人がその名前まではたどりつきやすいですし、どんなゲームであるかも想像が容易である。そのため、知名度の高さの維持という観点からは、この点が大きなウェイトを占めていることは確かなのだろう。

ここまでは代表作ということで『カオスエンジェルズ』を中心に語ってきたのだけれど、『カオスエンジェルズ』に限らずRPGの数自体が増えたというのが、88年の大きな特徴と言えるだろうか。
87年にもRPGは一本あったのだけれど、88年は『カオスエンジェルズ』以外にも『ザ・タワー・オブ・ドラゴン』『スティルソード for ADULT』『とらわれペンギン』『システィライア』『ドラゴンプリンセス 迷宮の魔道士』が発売されたことから、ユーザーの側に複数の中から選ぶという選択の幅が生まれたことになる。複数のRPGを楽しめたという点では、実質的なアダルトゲームにおけるRPG元年と言えるのかもしれない。

<ゲームシステム・ADV>


またRPGの他にも、『極道陣取り』『ギャル・ウォーズ きゃぴきゃぴるん』というSLGも発売されたし、『あっぷる・くらぶ1』を始めとしたテーブルゲーム・クイズゲームの類も多数発売された。
全体の中に占める割合ではADVが最多なのは変わらないのだが、それでも発売タイトルの内の半数が非ADV系だったというのも、大きな変化と言えるように思う。
88年は、一般ゲーにしてもそうなのだけれど、全体的にADVの比率が下がった年のように感じたものである。

もっとも、いくら前年より比率が下がったとは言え、それでもADVが最多であることも事実である。その内訳を見てみると、コマンド入力式のADVも数本残ってはいるものの、その約半数はコマンド選択式のADVであり、残りの約半数がノベル系のADVという比率になっている。
前年はコマンド選択式ADVが多数だったことを考えると、比率的にはノベルゲームの躍進が目立つ。

具体的には、『ラブリーホラー おちゃめなゆうれい』『やりたい放題』『艶談・源平争乱記 いろはにほへと』『艶談・徳川興隆記 ごらくいん』『女子高生アイドルおさな妻奮戦記』『セーラー服いけない体験告白集』(以上、全流通)、『わが青春の妖怪屋敷』(ドット企画)、『ドッキン美奈子先生』(テクトハウス)、『魔剣士KUMIKO』『媚少女NORIKO』『堕天使KYOUKO』(以上、システムハウスOH!)が挙げられる。

『女子高生アイドルおさな妻奮戦記』『セーラー服いけない体験告白集』あたりは、一本道で読み進めつつCGを見るだけといった感じである。『魔剣士KUMIKO』『媚少女NORIKO』『堕天使KYOUKO』も基本は一本道なのだが、選択肢次第でゲームオーバーにもなり、若干のゲーム性が加えられている。
『セーラー服いけない体験告白集』なんてのは、タイトルから中身も想像しやすいと思うのだけれど、女子高生のHな体験をプレイヤーが読むという構造になっている。ノベルゲームというのも、結構捉え方はいろいろあるのだけれど、その中に、プレイヤー主体で行動するのではなく、「読み物」という読むことへの変化が従来のADVの相違点として挙げられることがある。『セーラー服いけない体験告白集』なんかは、プレイヤーと主人公を完全に分離させた作品であり、まさに読み物と言えるのだろう。

ところで、88年の一般PCゲームでは、システムサコムが「ノベルウェア」と題して、『DOOM』『シャティ』『ソフトでハードな物語』と、次々に「読ませること」を主目的にしたゲームを発売していく。
プレイヤーが遊ぶものとしてのADVだけでなく、読み物としての新たな方向性を明確に意識しだしたのが、この88年と言えるのだろう。

まぁそうは言っても、敏感な人とか柔軟に対応できる人はその時点ですぐにこういう意識や方向性を感じ取ることができたのだろうが、新しい発想はすぐには理解してもらえなかったりするものである。
例えば懐古とかって言われる80年代からのゲーマーって、RPGで言えばレベル上げとか難易度とか、今のゲーマーに作業うぜぇ~って言われそうな部分に価値を見出したがる人が多い。そのような傾向はゲーム全般に当てはまって、ADVでも難易度が高かったりコマンド選択がシビアなゲームに価値を見出す人が多かったのである。つまり、今と価値観そのものが違うのである。
そういう高難度を求める当時の価値観の下だと、サクサク進めるようなノベルゲームってのは、出来損ないのADVであるとか、もはやこんなのゲームではないって判断されがちだったのである。かくいう私自身も、近年になって80年代のノベルゲームを再評価しただけあって、元々はかなりノベルゲームの否定派だったし。
それでも、プロの小説家の小説を基にしたシステムサコムのノベルウェアシリーズは、それなりに根強いファンも生んだのだけれど、熱烈なファンであっても少数であることには変わりないのだろう。
ノベル、特に読み物である場合、好きな人は好きなんだけれど、やっぱりこれはゲームなのかと抵抗のある人も多い。だから熱烈なファンはいても少数派ってのは、アダルトゲームがほとんどノベルになる時代になるまで続く傾向と言えるのでしょう。

読み物ではない、「ゲームブック」的な分岐を楽しんだり攻略を楽しむという意味でのノベルゲームもあるわけで、例えば艶談シリーズでは、途中の展開も変わり「マルチストーリー」と呼べる構造になっている。
『艶談・徳川興隆記 ごらくいん』は豊臣側についたり徳川側についたり、途中の展開次第で家光の乳母が違う人に変化したり、秀頼の父親が自分に変化したりと展開の幅も増え、80年代のノベルゲーの代表作と呼べる出来に仕上がっていた。
また、『ラブリーホラー おちゃめなゆうれい』は自力では困難なくらいに難易度が非常に高く、ノベルゲームであっても、今までのようなCG集もどきの簡単な物ではなく、ゲームとしてのやり応えがあった。
全流通は、アダルトゲームにおけるノベルゲーの先駆けということで、非常に目の付け所は良かったのだけれど、中にはボリュームの少ないCG集もどきの作品も多く、金返せレベルのハズレ率も高かったブランドである。
加えて、上述のような価値観の違いというのもあって、今ならコマンド選択式は面倒だからノベルゲーの方が良いという意見が圧倒的なのだろうが、当時は全くの正反対だったのである。同じコマンドを繰り返し選択するのもゲーム性の高さの証という風潮も少なからずあったのだ。つまり、この当時はすんなり先に進めるノベルゲームというものは、必要以上に低く見られがちだったことから、ADVのファンからもとても厳しく見られてしまうという不遇な一面もあったといえる。
他方で、難易度の高い『ラブリーホラー おちゃめなゆうれい』のようなノベルゲームもあったのだけれど、ここら辺はやっぱりユーザーの天邪鬼なところでもあるのだろう。例えば、コマンド選択式の場合ならば、いくら難しくても、最後は総当りのような救済策のあるゲームも多く、なんだかんだでクリアできたものである。しかし、ノベルゲーの難しいものなんかだと、ましてや昔はネットなんかで情報を得ることもできないし、また周りにはPCを持ってる人自体少ないことから、雑誌に攻略記事がないような作品だと、自力でも攻略できない場合には、情報がないために放置ってなるわけで、これはこれで忘れられやすくなる。
かように、この年にはノベルゲーはいくつも登場していたのだけれど、ユーザーに理解してもらうには、まだ時代がちょっと早すぎたといえるのだろう。

他にも、数字合わせADVの『韋駄天いかせ男』という奇ゲーもあったが、システム的には大体そんなところだろうか。

<結>


以上のように、88年のアダルトゲームは、『カオスエンジェルズ』を始めとするRPGの普及などにより、非ADV系の作品が増えた年であり、ADVにおいても、マルチストーリーのものが登場することで全般的にゲーム性が向上した年といえよう。
他方で、前回扱ったように、「実質的なヒロイン」の概念の登場により、一般ゲーとは異なる路線を歩みだし、ジャンルの幅も広がった年であった。また演出面も向上したし、多方面で進化した年と言えるように思う。

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