セカンドノベル ~彼女の夏、15分の記憶~

セカンドノベル ~彼女の夏、15分の記憶~

『セカンドノベル ~彼女の夏、15分の記憶~』は2010年にPSP用として、
日本一ソフトウェアから発売されました。

商業作品として10年ぶりですね。

ゲームジャンル:ノベル系ADV

セカンドノベル

長き沈黙を経て復活した、深沢豊さんの手がけたゲームでした。

最初に知ったときは、あれ何かみたことあるような設定だなと思いました。
でも、ライターの名を見て納得するとともに、興奮もしてきたものです。
というのも、2001年に深沢豊さんが『True Color,』の制作を発表していて、
ファンは長い間発売を待っていたんですね。
結局そのゲームは発売されなかったのですが、
その『True Color,』の設定に似ているのです。
つまり『True Color,』のアイデアを練り直して、
ゲーム機向けに作り直したのがセカンドノベルだったわけです。
まぁ、何であれもう一度深沢作品をプレイしたいという人は、
結構多かったと思うのですよ。
だから出るというだけでも嬉しかったわけですね。

さて、肝心の中身なのですが、
ヒロインである綾野さんは高校時代に事故で脳に障害を負い、
現在では15分しか記憶を保てません。
綾野さんには事故の直前に自殺した幼馴染がおり、
主人公とは共通の友人でした。
社会人になり久しぶりに綾野さんと再開した主人公は、
当時の事件の真相に迫るため綾野さんから話を聞いていくというのが、
基本的なゲームの流れになります。
もっとも、綾野さんの記憶は15分でリセットされますからね。
彼女から話を聞いて、それを主人公がカードという形でメモにとり、
リセットされた彼女にそのカードを見せてこれまで語った内容を理解させ、
更にその先を語ってもらうことになります。
厄介なのは彼女の話には現実だけでなく虚構も混じっており、
真相にたどり着くには、主人公が聞いた情報から真偽を見極め、
適切な選択を行う必要があるのです。

つまりプレイヤーは選択肢を選ぶ他に、
集まったカードから適切なものを選び、
これまでのあらすじを構築する必要があるわけで、
ストーリーモードで話を聞いた後に、
フラグメントモードでこの作業をすることになるってわけです。
まぁ形は若干変わっていますが、結局は複数の選択肢の中から選ぶわけで、
ノベル系のADVであることには変わりないのでしょう。
そういう狭義のゲーム性的な部分では、
他のノベル系ADVと何ら変わらないのだと思います。

でも、そういう観点だけでこの作品を見るべきではないのでしょう。
どの物語や設定にも相応しいシステムがあるのであり、
またどのシステムにも相応しい物語や設定があるのだと私は思います。
同じようなゲームばかりが続くと辟易して嫌気がさすのも確かですが、
中世ヨーロッパ風のファンタジー世界がRPGに多いのも、
コマンド選択式ADVに推理物が多かったのも、
それはそれで説得力があったということですね。
何れにしろ大事なのはシステムとストーリーは連動すべきであって、
そのストーリーに即したシステムが用いられるべきであり、
或いはシステムに即したストーリーが綴られるべきということです。
オホーツクなんかにしても、画面にコマンドがあるという点では、
既に別のゲームがあったわけです。
それなのに実質的な元祖として評価されているのは、
推理ものとして必要な要素を纏め上げ再構築したからなのでしょう。
他のADVにしても、過去の名作には、
ストーリーに合ったシステムであるものが多いです。
よくストーリー重視などと言いますが、
ほとんどのストーリーは小説に及びません。
絶賛されているからプレイしてみたら、
どっかの小説のネタを流用しただけみたいなのも多いですし。
音や絵って言っても、だったら映画やアニメで良いだろとなります。
しかしそのストーリーがシステムと一体化し、
プレイヤーの介入と結びついた物語であるならば、
また違った感動が生まれてくるってものでしょう。
小説や映画では味わえない満足感、
それを感じるには総合的なゲームデザインこそ大事なように思います。
でも、最近はADVでそれができる人がほとんどいないわけでして。
まずノベル(立ち絵にときどき1枚絵)という構造ありきになっていて、
ここは違う手法があるだろと思ってもただ読ませるだけで終始するので、
どうしても不満が出てくるんですよね。
(もちろん、今のノベル形式に相応しい内容もあるわけで、
傾向としてはむしろそっちの方が多いと思います。
しかし、それはそれでシステムの枠にストーリーを嵌めた感じになり、
ストーリーの幅が自然と狭くなっているのです。
結果的に似たような作品が増えるわけで、
これはこれで今のノベルゲーが抱える最大の問題でもあるのでしょう。)

セカンドノベルは、上記のようにやっていることは選択肢を選ぶだけです。
綾野さんから語られる内容にも、
学生時代の何気ない出来事やたわいない話が多いですし、
劇的な事件や盛り上がる要素もありません。
なのでストーリー本筋だけならば、
私はそれほど大したものでもないと思います。
でも、この設定にはこのシステムこそが最適だったわけで、
プレイヤーが主人公と一体となって話を聞きそして考え、
あらすじを積み重ねることで綾野さんの物語を完成させるのであり、
それにより小説で読むのとは異なる感動が生まれてくるのだと思うのです。
最近のADVの多くに最も欠けている部分だけに、
これは高く評価されて然るべきだと思いますし、
これだけで深沢さんがゲームを作った意義もあるというものです。

しかし、一方でゲームデザインだけが全てでないのも確かでして。
深沢さんは書淫の時もストーリー全体の構成は抜群だったのですが、
テキスト自体はわりと平坦で特別優れていたわけでもありませんでした。
セカンドノベルも起伏に乏しいテキストですので、
ここで若干人を選んでしまうのかなと思います。
まぁ、本作のコンセプトを理解し賛同している人であれば、
一緒に積み重ねていく過程が楽しいのであり、
そうなると起伏の乏しさも気にならないどころか、
むしろ雰囲気の良さにも感じ取れてくる人も出てくるでしょう。
しかしあまり賛同できない人、
ストーリー本筋だけに目がいってしまう人だと、
あらすじ作りもストーリー進行の妨げとなる作業にしか見えないでしょうし、
そうなると起伏の乏しさがマイナスにしか見えなくなるように思います。
そういう意味では、ストーリーを読みたいだけの人には、
あまり向いていないようにも思いますね。

その他のグラフィックやサウンドも普通でしたし、
結局ゲームデザイン以外は普通な作品でもあるんですよね。
まぁ、明確な特徴はあるわけですから、
名作と言っても不思議ではないのかもしれません。
ただ、どうしても書淫ほどには思えないわけでして。
書淫もラストのあの瞬間、構成の妙だけの作品でしたが、
でもその部分に関しては非の打ち所がない絶大なインパクトがありました。
セカンドノベルもゲームデザインは優秀なのですが、
若干操作が煩わしかったり改良の余地は残っていたわけで、
長所としてのインパクトがやや欠けるんですよね。
そんなわけで、総合では良作ってところでしょうか。
今回は出ただけでもありがたいというのが第1ではあるのですが、
もう少し早く、それこそ2001年頃ならまた違ったかもしれないわけで、
ちょっと遅かったよなというのもまた率直な感想なのでしょう。
今、こういう視点でADVを作れる人が少ないだけに、
これで終わりなのではなく今後も作り続けて欲しいものですね。
(っていうか、オマケ本で名の知れたライターが一杯関与してますが、
深沢さんが監督として総合的な構成・デザインを考え、
個別の文章はテキストに評判のある人に書かせたら、
それが一番良いのではとか思ったりもするんですけどね。)

ランク:B-(良作)

セカンドノベル



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