アダルトゲームの歴史 1987年 その2

アダルトゲームの歴史 1987年 その2

アダルトゲームの歴史を振り返るシリーズの第6弾ということで、今回は1987年の2回目になる。

前回は総論やノベルゲームについてが中心だったが、今回はゲームの中心であるゲームジャンルやスト―リーの傾向について扱う。

<ゲームジャンル>


ゲームジャンルとしては他にも、1987年にようやくRPGが誕生した。
例えば、『私立探偵MAX』はコマンド選択式のADVにRPG風の戦闘が加わったものであり、光栄作品に良くあった複合的な系統の延長線上にあたるものであることから、広義ではRPGに含まれるとしても、純粋なRPGとまでは言えないのかもしれない。
しかし、『アマゾネス』(スタークラフト)は普通にRPGと呼べる内容であり、純粋なアダルトのRPGとしてはこれが初となるように思う。

他には、アダルトゲームのADVにおいて、ゲーム性を重視する傾向は、美少女ゲームと呼ばれる『天使たちの午後』登場以後になってからは薄くなっていたのだけれど、当然例外だって存在する。
例えば『アマゾネスの秘宝』は、冒険・探索タイプのコマンド選択式のADVであるが、インベントリーを用いたアイテム使用の要素を加え、総当りを防ぎつつ攻略性を高め、なおかつ考えて行動すれば無駄なコマンドを繰り返す必要がないなど、随所に工夫された作品だった。

<コマンド選択式における90年代と80年代の違い>


ここで少し補足として、具体的にはコマンド選択式ADVの良し悪しと難易度の関係という話になるのだろうが、コマンド選択式だって当然いろいろ存在する。

例えば、PC-98末期のコマンド選択式はコマンドの数が少なく、その代わりに同じコマンドを何度も選択する必要があるものが多い。
そのため、どうしても総当りに頼る面があり、また作る方もテキストを読んでもらうべく、総当りが前提のように作られたものも多く存在した。だから総当りと揶揄されることも多かったといえる。

他方で、80年代のこの頃のコマンド選択式は、コマンドの数が非常に多かったりする。
つまりイメージとしては、昔のコマンド選択式ほどコマンドの数が多く、その数が次第に減っていったというのが、コマンド選択式の変遷となるのだろう。

そして、80年代のコマンド選択式の中にも、そのたくさんのコマンドを総当りさせるような構造のものがあることは否定できない。
もっともそれは、当時においては一概に否定されるばかりのものでもなかったことは理解すべきなのだろう。
今とは価値観がまるで正反対かもしれないが、例えばRPGだって、今はレベル上げが作業プレイとして敬遠される傾向にあるが、80年代や90年代半ばまでは、そのレベル上げや難易度の高さをゲーム性と考える人が多数存在していたことも事実である。
ADVだって同様で、中々先に進まない難易度の高さがゲーム性と考えられた部分は否定できないからである。

そういう価値観が支配する中では、難易度の低いものはゲーム性がないとして否定されてしまう。
だからそのような価値観が当時の多数派だとするならば、私のゲーム性に関する考え方は当時としては少数派なのかもしれない。
私がゲーム性が高いと評するものは、コマンドの総当りを強いられる高難度のゲームではなく、詰まった場合の救済手段として総当たりも方法の一つとして残しつつも、「プレイヤーがやることの出来る自由度は高くありながら、プレイヤーの創意工夫によりサクサク進む事も可能」なゲームだからである。

『アマゾネスの秘宝』は、最悪の場合は総当りで切り抜けることも可能だ。
しかし、それは馬鹿な人用の非常手段であり、あまり効率的ではない。
この作品では、コマンドの数自体は非常に多いものの、少し考えればどのコマンドを選択すべきかが分かるし、難しそうな部分ではヒントコマンドみたいなものも存在する。
そして正解のコマンドを選択すれば、すんなりと次の展開に進めることから、総当たりをする必要もない。
クリアするには、総当りするよりも考えて自分で答を見つけ出す方が早いわけで、自分の努力の結果がきちんと反映されるのである。プレイ感覚的には後の『遺作』をコマンド選択式にしたような感じでもあり、個人的にはと限定するが、ゲーム性の高い遊べるゲームがまた登場したと言えるのだろう。

<ストーリー>


前回書いたように、ノベルゲーがストーリーをメインに据えていないとなると、じゃあストーリーを中心にしたゲームはこの年になかったのかと思う人もいるかもしれないが、答えはノーである。ノベルゲームではなく、コマンド選択式ADVにストーリーの良い作品が存在したからである。
むしろここで、ようやくストーリー重視と呼べる作品がいくつか出てきたわけで、それが1986年との最も大きな違いであり、1987年の最大の特徴とも言えるのだろう。

具体的には、上記の『ザ・病院』の他に、『殺しのドレス』(フェアリーテール)や『DNA』(HOT・B)がその筆頭格と言えるだろうか。
どれもコマンド選択式のADVであり、繰り返すが、ストーリー重視はコマンド選択式のADVで、CG重視ならノベルゲームでというのが、1987年の傾向だった。

ストーリーの優れたアダルトゲームと言えば、例えば1985年の『軽井沢誘拐案内』(ENIX)などがある。
しかし、これらは、一般ゲーがアダルト要素も含み、アダルト領域にも踏み込み取り込んだような、少々イレギュラーな作品でもあった。
また『軽井沢誘拐案内』は、堀井氏が作ったことからストーリーも良かったというだけで、ゲーム全体のコンセプトとしてはストーリーよりも、むしろゲーム性を重視する作りだった(後半がマップ上からの移動方式になっていたり、ADVとしてのゲーム性の出し方やRPGの実験などゲーム部分にいろいろ模索した形跡が見える)。

即ち、ストーリー「も」優れたゲームは存在していても、ストーリーの内容「だけ」で勝負しようとした作品はなかったともいえる。
ストーリー重視という表現も曖昧かもしれないが、ストーリーが良かったからストーリー重視だとか、ストーリーが稚拙だからストーリー重視でないという基準では、読み手の主観で全く異なりうるのでフェアではない。
したがって、ここでは、作り手がストーリーを中心にしようとした姿勢が、ゲーム全体から客観的に見られる作品を指すものとする。

かかる視点に立った場合、『殺しのドレス』も『DNA』もシステム的には平均的なコマンド選択式ADVである。
そこに他ゲームとの違いはなく、システムの差で勝負したとは思えない。
また、可愛い絵やキャラもなく、CGやエロで勝負って作品でもない。
その代わりに他作品よりストーリーの分量を増やしていたことから、明らかにストーリー重視の姿勢が見てとれる。
白黒画面の『ザ・病院』などは、もっと露骨に示していることから、言うまでもない。

このように解した場合、じゃあ『エルドラド伝奇』(ENIX、85年)はどうなるのと言う反論もありえよう。『エルドラド伝奇』も高評価を得た最大の要因はストーリーの良さにあったからである。
確かに、システム等の他の要素抜きにして、純粋にストーリーの良さだけで評価されたアダルトゲームという観点からは、おそらく『エルドラド伝奇』が初になるのだろう。
もっとも、『エルドラド伝奇』の場合、冒険モノ・ファンタジーモノとしての評価が第一であって、エロさを伴う部分はむしろマイナスに評価されていた。エロがあるが故にかえって一部で不当に低く見られた部分が大きく、エロを入れることに抵抗のない人には高く評価されたのである。
そのため、ストーリーの優れた作品ではあったものの、少なくともアダルト性を活かしたストーリー重視ではなかったのだ。

1987年の作品は1985年の作品とは違うのだという点を強調するならば、『殺しのドレス』はエロさゆえのアダルトゲームではないものの、手首から血が滴るOPに千切られた小指のアップなど、子供には見せられない猟奇性も伴ったアダルトな雰囲気を纏った大人向けのミステリーであるが故のアダルトゲームだったわけで、アダルト性を活かしたストーリー重視という点で、これまでと大きく異なるのである。上記のように『エルドラド伝奇』は冒険モノだし、『軽井沢誘拐案内』は殺人事件でなく誘拐事件だから、そこが違うのである。

そういうわけで、1987年の作品を好意的に解釈するならば、一般ゲームとは路線を異にするアダルト性を活かしたストーリーを有するゲームが登場した年となる。
ちなみに、『殺しのドレス』は後のエルフの社長・蛭田昌人氏の作とも言われており、テキストも良好だった。

<ストーリー傾向>


さきほど、好意的に解釈した場合と限定をつけて表現しているのだが、これには理由がある。

当時の作品を振り返ってみると、『殺しのドレス』は推理モノであり、他にも『いけにえの街』『ロリータバイオレンス』(何れもスタジオパンサー)、『ラブチェイサー』(チャンピオンソフト)、『ザ・病院』(PSK)など推理モノであったり完全な推理モノではないにしても、何かしら事件性を有するミステリー・サスペンス風の作品が増えており、これが87年の特徴として挙げられる。

それ故、ミステリー系が好みの人には良かった年なのだけれど、ミステリー系は当時は一般PCゲーにも非常に多かったジャンルでもあった。
『DNA』はSFであるが、これまた一般PCゲーに多いジャンルである。
つまり、そのジャンルをアダルトっぽく再構成したとは言え、広い意味でのジャンルは、基本としては一般モノの流行路線がベースにあって、そこにアダルト性を融合させたとも捉えることができるのである。
そのため、完全に一般PCゲーと異なる路線を歩みだしたとまでは、まだ言えないのだ。
そうした理由から、アダルト性は部分的でもあり、だから好意的に解釈すればと限定をつけたのである。

さて、上述のようにミステリー・サスペンス系が増えたことが、前年との比較では一番の特徴と言えるのは間違いない。
しかし、全てのゲームの傾向が一気に変わるわけでもないし、単純に数の上では、前年からの影響を受けた作品の方が多数派と言えるように思う。
具体的には、『悪女伝説2』(ドット企画)『MAJOサンドラ』(グレイト)『真夜中のラブコール』(全流通)のように、ナンパものは根強い。
特に『女子大生交際図巻』(ビクター音楽産業)は、ナンパのコマンドも豊富であり、『TOKYOナンパストリート』(ENIX、1985)から続く正統派ナンパゲームの後継作と呼べるだろう。美少女はあくまで攻略の対象ではあるが、それでも少しずつキャラとしての個性が付きだしたのも、この頃になると思われる。

一方で、前年からCG集の類が増えたこともあり、女の子の体験談や告白であるとか、女の子をとにかく脱がせることを目的としたストーリーも非常に多く、数の上ではこれが最多になるのではないだろうか。

ストーリーに関しては他にも、前年は部分的にアダルト性を活かしたマニアックなシチュも生まれ始めていたが、1987年のマニアックな路線としては、『妖姫伝』(HOT・B)が挙げられる。
『妖姫伝』は伝奇、或いはB級オカルトといった雰囲気の作品であり、1987年には一般PCゲーでは幾つかあったものの、それでも比較的まだ馴染みのないジャンルだったといえる。小説とかでも、80年代においては伝奇は決してマイナーではなかったのだけれど、90年代前半には冷え込み、小説でも勢いが失われている。当然ながら、ゲームでもほとんど見かけなくなったものである。だからかこそ、90年代半ばに再登場したときには新鮮に見えたのだろう。
もっとも、『妖姫伝』で一番インパクトがあったのは別の部分で、具体的には鬼畜というかグロ方面を打ち出したゲームでもあったことが非常に大きい。
もしかしたら他にあるかもしれないけれど、四肢切断の達磨状態にされるヒロインを見たのは、おそらくこのゲームが初だったのではないかと思う。

ストーリーの良し悪しは読み手の主観で変わりうるものだが、少なくとも『妖姫伝』や『殺しのドレス』の登場により、エロCGを見ることがゲームの目的でない、ストーリー性を持ったアダルトゲームが登場したのは間違いないといえる。

ところで、80年代においては、ゲームは男性がプレイするケースが多く、ましてや主人公はプレイヤーの分身というイメージも強く、両者が近い関係にあったことから、一般ゲームはほとんどが男性主人公だった。
それに比べると、この時期のアダルトゲームにおいては女性主人公の作品も結構あり、一般ゲームと比べると、その女性主人公率の高さは際立っていると言えよう。
これは、アダルトゲームにおいて、主人公とプレイヤーの分離が早かったことも理由として挙げられるのだろう。
具体的には、テキスト付きCG集の類は女の子が一人で告白ってケースが多かった。ADVでは複数のキャラが登場することから、女の子が主人公のADVだと必然的にレズな内容を含むことになる。80年代後半にはレズゲーが結構あり定番ジャンルとして定着していくのだが、1987年の『天使たちの午後2~美奈子~』はその先駆け的立場にあったと言える。

<まとめ>


1987年は、ストーリーの『殺しのドレス』にグラフィック・キャラの『悪女伝説2』、ゲーム性の『アマゾネスの秘宝』といった感じで、異なった方向性でそれぞれが突出していたように思う。
異なる方向性で優れた作品が登場したことで、アダルトゲームもようやく本格的に軌道に乗ったと言えるのではないだろうか。

繰り返しにもなるけれど、1987年は、基本的には1986年の流れを受け継ぎ拡大しつつ、アダルト性を活かしたストーリー重視作品や今でも通じそうな美少女らしい美少女が登場し始めた年であり、アダルトゲームが多様化した年だったといえる。

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80年代後半にはレズゲーが結構あったとのことですが、
具体的にどのようなタイトルがあったのでしょうか?
よろしければいくつか教えていただきたいです。

レズ主体の作品、一部にレズシーンの含まれた作品がごっちゃになっていますが、禁断のパラダイス、SLOPE、あずさ108事務所、ポッキー、トリロジー、あぶないてんぐ伝説、ブルームーン・ストーリー PART1 、REVIEW、サッちゃんの大冒険、ドッキン美奈子先生などがあるでしょうか。
いろいろ忘れてきているので、他にもあると思いますけどね。
とりあえず、女性主人公の作品はレズ要素が含まれる確率が高いように思います。

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