アダルトゲームの歴史 1983年

アダルトゲームの歴史 1983年

今更だけれど、アダルトゲームの歴史を振り返ってみる。

第1回目の今回は、1982年以前も視野に入れつつも、実質的な国内のアダルトゲーム元年である1983年を扱う。

<アダルトゲームとは>


アダルトゲームには、美少女ゲーム、18禁ゲーム、エロゲー・・・などと、さまざまな呼称があり、その時々で主流となっている呼称も変化していくのだが、基本的に現在では18禁の扱いがなされている作品を指す。

現在ではエロゲー、エロゲと呼ばれることが多いが、これも呼称のの一つにすぎない。18禁指定される理由はエロの有無に限られないことから、エロゲなんだからエロがあるべきという指摘は、そもそも的外れであることを、最初に指摘しておく。

ところで、現在では18禁指定がされているかが基準となるわけだが、そもそも80年代には、18禁の指定とか区分自体が存在しない。
したがって、この時代のゲームの場合、何がアダルトゲームであるかについても必ずしもはっきりしないのである。

また、上記のそれぞれの言葉も、大体は同じ範囲を指しつつも、厳密には微妙に含まれる範囲が異なっていることもあるため、論者により、場合によっては論者の都合の良いように、意図的に捻じ曲げて解釈されることがあった。その論者によるズレをできるだけなくすべく、ここでは一応アダルトな要素を含んだ作品と広く捉えていくことにするが、それでも考え方は人それぞれなので、アダルトゲームに含まれるタイトル数も人によって異なりうることは、事前に理解してもらいたい。
さらに、アダルトゲームブランドの作る一般作もあり、それらを含めて語る方が分かりやすい場合もあるので、ここではそのような作品も含めて語っていくことにする。

<過去のコラムの反省点>


歴史云々とは直接関係ない部分でもあるので、私の以前のコラムを読んでいない人や、すぐに内容に入りたい人は、ここは読み飛ばして構わない。

さて、以前にもコラムとして、歴史のさわりのようなものを書いたことがあったが、その際に大きな反省点が2点あった。
1つは歴史の途中から書き始めたことで、書かれていない部分を前提知識として有していない人には、いまいち分かりにくかったこと。
もう1つは、一応気兼ねしてあえてタイトルとか、直接的な表現を避けたことである。

それでも分かる人は分かったようであるが、そうでない人の中には、一般論ばかりに感じた人もいたかもしれない。
つまり、以前の記事はわかる人には分かるけれど、そうでない人は置いてけぼりな内容でもあったのである。
今回はそれを反省して、もう少し具体的に、そして最初から書いていきたいなと思った次第である。
分量的にも多くなるだろうから、分割して少しずつ、1回あたり10枚分を目安に掲載していこうと思うが、最終的な規模及び完走のメドはたっていない。
そもそも需要がないだろうにもかかわらず、書きたいから書くという側面が強く、それでもどこかで何かの役に立つこともあるかもしれないので、趣味の一環としてではあるものの、少しずつ進めていきたいと思う。

<方向性>


歴史ということで、年表だのタイトル名だのをただ並べる方法もありうるのかもしれないが、それでは面白くないし、あまり意味がない。個別の各論的な話ばかりに終始するのも、少なくともこのサイトでは全く意味がない。なぜなら、ここはレビューサイトでもあり、年代別に各作品の紹介はしているからである。
したがって、総論というか、全体的な流れを追うことを主にしながら書いていきたいと思う。

ところで、アダルトゲームの多くは、昔からADV(アドベンチャーゲーム)なのだけれど、一般モノでは他ジャンルに人気を奪われて作品数が減っていくこともあり、ADVの歴史がアダルトゲームの歴史と被る時期もかなり存在する。
そこで必要に応じ、ADVの説明も交えながら進めることにする。

もちろん、RPGなど他のジャンルもたくさんあるのだが、RPGやSLGはゲームデザインに関して言えば一般モノの後追いが多く、違いや特徴はストーリー等の他の部分でという作品が多い。
そうすると、あらためて細かいシステムの違いを説明する必要性を、あまり感じない作品が多いことから、結果的にあまり細かい説明はしない方向で進むことになる。

歴史を順に追うということで、つまりは過去の事実を書いていくことになるのだけれど、歴史は点と点の関係ではなく、大半がつながっている。
だから、全てがここから変わったとか、あれもこれもこの作品から始まったというようなゲームは、少なくともアダルトゲームには存在しないと考えた方が賢明なのだろう。
過去からつながるものがあり、そこに新たなものが加わっていくのだ。
また、歴史は本来事実を書くものだが、同時に後世の都合の良いように改ざんされることが多い。
それでも現代の例えば国内の歴史の研究者はより正確な事実の把握を目的としているのだろうが、アダルトゲームの場合は昔の権力者と同じように、信者が自分の都合の良い方にもっていくための道具にすることが多く、それにより事実が改竄され、読んだ後の人の認識が次第に摩り替わっていくケースが多々ある。
そのため、私が書く内容も、ある面では当然のことしか書いていないのだけれど、ある面では最近一般的になりつつ誤った見解に真っ向から反する場合もある。

ちなみに、順を追うことで新たに自分でも見えてきたところもあるので、これまでに書いたことと微妙に言い回しが変わっている場合には、基本的にこちらが最新の私の見解と考えて構わない。
それと、総論的な全体なの流れから書いていくので、名の挙がった作品が必ずしも名作とは限らない。
したがって、自分の好きなタイトルでも名の挙がらないものもあるし、全く評価していなくても必要に応じて挙げる場合も存在する。
何でこのタイトルがないんだってことも多くなっていくだろうが、趣旨から理解してもらいたい。

<元祖>


さて、アダルトゲームの元祖が何であるかについては、正直なところ、定義次第だろっていう思いが強い。
最初期のADVはテキストADVであり、画面にテキストしか表示されないが、例えばそのテキストの中に一つだけSEXとか出てきたとして、だからアダルトゲームなんだと言われても、あまりピンとこない人も多いと思うからである。
ここはどうしても、人によっても異なってくるのだと思う。

とりあえず、1982年に発売された作品として名前が挙げられることが多いのが、『ナイトライフ』(光栄)と『野球拳』(九十九電機)である。

一応それ以前にも、例えばハドソンの『野球拳』がある。
一応画像らしきものも見たので、アダルトゲーム扱いで良いのだろうが、その作品以外にも、上記のようなテキストADVにエロ描写が含まれている場合など、定義次第で結論が異なりうるのであり、これ以上の検討は不毛なのかもしれない。
個人的には、『ナイトライフ』(光栄)と『野球拳』(九十九電機)あたりから語り始めれば、それで十分だと思う。

<ナイトライフ>


というのも、例えばラノベに関しても、何がラノベなのかについて、人によって意見が変わりうる。その一つの考え方に、ラノベとして発売しているレーベル単位で考えるものがある。
そのような視点で考えると、WIN以前はPC98が主であり、その前はPC88が主となる。じゃあPC88で元祖は何かと考えると、まず検討すべきは『ナイトライフ』だからである。

もっとも、『ナイトライフ』自体はゲームというよりも、今日のHはどうするかみたいな、日常におけるHを管理・サポートする実用系ソフトという存在であった。
そのため、アダルトな内容も扱った「ソフトウェア」という、「最広義におけるアダルトソフト」であることは間違いないものの、アダルト「ゲーム」に属するのかについては、大いに疑問が残る。

もちろん、ナイトライフにも若干のゲーム性を見出すことは可能だが、現在のユーティリティソフトなどの多く見られる実用系ソフトにだって、何かしらのゲーム性はあるし、そもそもナイトライフはゲームであることを主目的に作られていないので、ゲーム扱いすべきでないように思える。
結局は定義次第となるので、断定は避けるものの、個人的にはウルトラマンに対するウルトラQのように、前史的な意味で参考扱いにするのが相応しいように思う。

<野球拳>


完全にアダルト「ゲーム」と呼べる作品という観点からは、むしろ『野球拳』(九十九電機)の方が実質的な元祖に相応しいのだろう。

また、同年には『ロリータ 野球拳』も発売されており、この作品はタイトル通り野球拳をして、ロリな女の子を脱がす作品だった。
そしてこの作品を構成する要素である、「野球拳」と「ロリ」は、翌83年にも大きな影響を及ぼすことになりる。

<1983年 総論>


1983年には手元の集計で23本、多少の前後はあるだろうが、いずれにしろ20本強ほどのアダルトゲームが発売されている。

ジャンル的には、「その他」やETCと表現されやすい、ミニゲーム的な作品が過半数を占める。
イメージとしては、ちょっとしたミニゲームをやって、そのゲームに勝ったらご褒美にHなCGが見られるって感じになるだろうか。

そのETC系の中でも、一番作品が多かったのが野球拳タイプであり、具体的には『美少女ひっぱがしゲーム』『マリちゃん危機一髪』『プレイボーイ』『セーラー服と野球拳』『ロリータシンドローム』が挙げられる。
多数を占めるジャンルという意味では、1983年を象徴するジャンルと言える。

野球拳の他には『みゆきthe勝負師』『ロリコンめくり』『アダルトルーレット』といったカード系の作品や、『女子大生プライベート』のようなパズル作品もあった。

83年のPCは、当然ながらあまり性能が良くないのだけれど、『聖子ちゃんSOS』『聖子ちゃんパート2』『おーい!かぐや姫』といったSTGもあった。
本数とすれば僅かに3本なのだが、年間の全発売タイトルに占めるシューティングの割合が一番多いという点では、この年の特徴とも言えるのかもしれない。

RPG及びSLGとしては、中間的な存在として、光栄の『団地妻の誘惑』の存在が挙げられる。
この作品は、プレイヤーがセールスマンとなって、団地の人妻に避妊具を実演販売する作品である。
3Dダンジョン風の団地の中を移動し、団地に住む人妻と会話をすることでゲームが進行する。会話はコマンドに対応したボタンを押すもので、選択タイプとも言える。
そういう観点からはコマンド選択式のADVにも近いのだけれど、パラメーターが多数あり、会話に伴うその数値の変動や、ランダム性がゲームの進行において大きな鍵を握るため、ゲームジャンルとしてはADV+SLGであったり、むしろ端的にSLGに分類されることの方が多い。
もっとも、移動して武器を用いた戦闘の代わりに、口頭での駆け引きがなされるということで、直感的な印象としては、レベルアップのないRPGをイメージするのが最も近いのかもしれない。
いずれにしろ、中間的なシステムといえるのだろう。
当時はまだ、今とは逆にジャンルが明確に分離されていなかったことから、複数のジャンルにまたがるという意味でも、83年らしい作品と言える。

この作品に関しては、あの光栄が、かつてはアダルトゲームを作っていたということで、ネタにもされやすい反面、当の光栄ではすっかり黒歴史扱いになっている。しかしながら、まだゲーム機でのSLGやRPGが存在せず、PCでも数が少ない状況ということを踏まえれば、アダルトゲーム内にも、一般ゲーに勝るとも劣らない作品があったということで、大きな意味を有しているように思う。
少なくとも、単なるミニゲームの枠から抜け出たゲーム性を、この時点で既にアダルトゲームが有していたことの証拠とは言える。

現在までの通算では最も多いであろうADVは、『ロリータ2』をはじめとしてCSKとPSKを中心に何本か発売された。ジャンルとしては、コマンド入力式ADVが大半となる。
コマンド入力式ADVの詳しい説明は次回の84年分にまわすが、ここではとりあえずテニスのラリーのような、打ったら返ってくるという構造と、野球拳のようなETC系とは異なりテキストによってゲームが進行するということを理解してもらいたい。
ところで、ゲームの基本がテキストにより進行するということで、そこにはスト-リー性が生まれる。
即ち、程度はともかくとして、アダルトゲームに何かしらのストーリー性、そしてプレイヤーが物語を楽しむという概念が生まれたのは、この年からと言えるのだろう。

<元祖ノベルゲー?>


こうしたコマンド入力式ADV中心の83年のアダルトゲームにあって、一際異彩を放っていたのが『女子寮パニック』であった。
まずこの作品は、完全にリアルタイムに進行するので、リアルタイムアドベンチャーと言える。
内容的には女子寮に潜入するもので、3DRPG風にプレイヤー視点で女子寮内を移動することになる。

具体的な行動に関しては、画面に表示された4択の中から選ぶことになる。
よって、当時のADVのようなコマンド入力式ではない。
次に考慮すべきはコマンド選択式のADVと言えるのかだが、後の汎用メニューを用いた、いわゆるコマンド選択式ADVとも異なるので、ここは定義次第とも言えるのだけれど、見方によれば『オホーツクに消ゆ』より先の、コマンド選択式になるのだろう。

見方という点では、前述のようにコマンド入力式は、ラリーやキャッチボールのような構造を採る。
これはコマンド選択式ADVも同様である。
直接入力するか、入力すべきコマンドが事前に画面に表示され、そこから選ぶかの違いでしかないからだ。
他方、ノベルゲームと呼ばれる作品では、選択肢を選ぶことでダイレクトに次の展開に進む。
私見ではあるが、この部分がADVとノベルゲームとの、最大の違いとなる。

本作はオホーツクのような汎用タイプのメニューを用いず、その場面ごとに文章で表示された選択肢の中から行動を選び、それによりダイレクトに次の展開に進む。
つまり、実質的な構造から見た場合には、ADVよりもノベルゲームに近いものがあるわけで、プレイヤー主体のノベルゲームと考えることもできる。
私見では、表面上はコマンド選択式に見えるものの、その本質的な構造からすれば、行動概念を伴ったノベルゲームと捉えるのが、本作には一番相応しいと考える。
いずれにしろ主流であるコマンド入力式とは大きく異なる、斬新なアイデアだったと言える。

<1983年 ストーリー>


以上が1983年におけるゲームデザインの特徴となるのだが、ストーリー上のジャンルに着目すると、野球拳やカード・パズル系のゲームを中心に、脱衣系が多数派だった。

また、この手の多くがロリキャラを用いていたことから、80年代中盤の作品はロリだらけという印象も強くなったのかもしれない。
しかしながら、20本以上ある83年のアダルトゲームの中にあって、炉利ゲーはPSKの作品たちと、他所では『ロリータシンドローム』くらいしかない。個人的には、この事実から炉利ゲーが流行していたと結論付けることには疑問が残る。
今は二次オタなら皆PCを持っているが、当時は非常に高価であり、二次オタでもPCを持っている方が少なかった。違う目的でPCを所持する人の方が多く、アダルトゲームを購入する層と二次オタが重ならないのである。両者が重なるのは、WIN95以降の90年代後半からと言えるだろう。
したがって、オタク文化の流行や考え方を80年代のPCゲームに当てはめることは事実にそぐわないし、ミスリードを生じさせかねない非常に危険な発想だと思う。

むしろ『緋牡丹お竜』『大奥マル秘物語』のような映画を元にした劇画風作品や『団地妻の誘惑』『女子大生プライベート』など、金のあるオッサンらをターゲットにしたような作品の方が数は多いし、売上的にも良かったのではないかと、個人的には思う。

さらに、『女子寮パニック』や『アタックひろこちゃん』のように、女子寮などのどこかの建物に潜入するというのも、1つの特色と言える。
本数的には決して多くはないのだが、現代ではほぼ滅び去ったジャンルだけに、この年の1つの特色として目立つように思う。

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