殻ノ少女

殻ノ少女

『殻ノ少女』は2008年にWIN用として、
Innocent Greyから発売されました。

「原点回帰!古き良き時代のアドベンチャーゲームを」との触れ込みで、
昔からのADV好きとしては期待したくもなるってものですが…

殻ノ少女

古き良きなどと言い出すといろいろ勘違いしそうな輩も出てくるのですが、
ゲームは基本的にはノベル系のADVになります。
その基本的構造の中に部分的に、
画面クリックとマップ上からの場所移動が混ざっていたのです。
確かに画面クリックや移動の要素は最近では珍しいので懐かしかったし、
基本部分をノベルにしたことで、
同じ所を何度もクリックする手間を省かせようという配慮も良かったです。

ただ、その矛先が従来のADVが抱えていた不満点の解消に向きすぎ、
従来のADVの持つ魅力を引き出す方向には向いていませんでした。
移動できる場面は限られていますし、
画面をあちこちクリックして反応を味わう楽しみとかもなかったんですね。
昔のシステムを用いて古き良きADVをと言えば、
私のような者が釣れるとでも思ったのでしょうか。
(まぁ、おもいっきり釣られてますけどw
そういう意味では、セールス的には成功なのかもしれません。)
表面上は再現しているようにも思いますが、本質的な部分において、
制作陣は昔のADVの面白さを解していないのではないでしょうか。
…というと、少し言いすぎなのかな。
例えばチーズの好きな人には、濃厚なチーズケーキの方が好まれます。
でもチーズの苦手な人に薦める場合には、
チーズ臭さを感じさせないケーキの方が向いています。
好きな人には癖を活かした物が、
苦手な人には癖を感じさせない方が向いているのです。
嫌がられるおそれのある部分を削ることに傾いた本作は後者にあたり、
好意的に解釈するならばノベル以外に免疫のない人に対し、
違うものの良さも感じ取ってもらうおうとした作品となるのでしょう。

まぁ、どう解釈したところで本作に好きな人を唸らせるものはなく、
満足はできないんですけどね。
でも不満点はあるものの、基本的には楽しめました。
過去の素晴らしい作品と比較するから辛くなるのであって、
最近の読むことを強制されるノベルゲーよりはよっぽど良かったですし。
やっぱり、自分で行動を決められるってのが良いですよね。
システム面は昔のシステムを復活させてくれたから万歳などと、
懐古主義的に安易に褒めることは決してできないし、
むしろ昔の良い物を知っているからこそ余計にも厳しくなってしまうのですが、
それでも他のノベルゲームよりは楽しめる、
簡単に言えばそんなところですね。

またグラフィック・サウンドはこのブランドの最大の特徴でもありますが、
相変わらず良好です。
グラフィック・サウンドはこれがっていうのではなく、
トータルでの雰囲気作りという側面が抜群なんですよね。
だから、ついついプレイをしたくなるのです。

ここまでは全面的ではないにしろ、基本的には良い感じです。
問題はストーリーなんですね。
本作は乱歩・横溝・京極的な雰囲気を有した推理物で、
個人的には好きな路線を全部混ぜたような、
ストライクゾーンど真ん中な雰囲気であります。
ぶっちゃけ、京極作品をエロゲでやったらこうなった、
という作品ですからね。
オマージュ自体好き嫌いが分かれますが、
個人的には好きな路線の雰囲気をなぞる分には良いのです。
ただなぁ…パクリ云々は定義次第で人それぞれなので、
あまり煩いことは言わないですけどね。
一番肝心な部分とかがモロに似ていると、
やっぱり萎えちゃうんですよね。

この作品に限ったことでもないのですが、
ゼロ年代前半に高く評価されたノベルゲームって、
どっかから設定やネタを借用したようなものが多くって。
それを知らない層が持て囃しただけで、
ゼロ年代はストーリー重視で良い作品が多かったなどと言われると、
悪い冗談にしか思えません。
アダルトゲームに良いストーリーの作品があるのも確かだけれど、
本作なんかをミステリーファンに薦めたら失笑されるだけでしょう。
今はストーリー重視が廃れたって言うけれど、
単に借用するのをやめたら今に繋がったってだけでしょうに。
ある意味、ゼロ年代後半より性質が悪いです。

まぁ、たとえ模倣でも、そこからゲームとして昇華してあれば、
それはそれで楽しめちゃうものなのですが、
本作に関しても上記のように、
上手くゲーム性を取り入れたとまでは思えないわけでして。

また本作にはグロも一杯出てきて、これまた好みな要素です。
ここを上手く表現できていたら、昇華に繋がったのかもしれません。
しかし、何か違うわけでして。
というのも、ポンとグロい死体画像を出されても、
あんまりピンとこないのですよ。
検索かければその手のが一発で出てくる時代だけに、
余計にもテキスト面での一工夫が欲しかったものです。
しかもそのグロも段々ぬるくなっていきますし。
グロを用意しとけばOKとでも思ったのでしょうか。

ストーリーにしろシステムにしろ、
何かいろんな部分で本物の表面をなぞっただけの勘違いした作品という印象でした。
名画の模写やコピーを見たときのような気分ですね。
ストーリーだけなら完全に駄作レベルでしょう。
でも全体を漂う雰囲気の良さによって、
途中まではす~っと普通に遊べちゃうんですよね。
不満も多く書きましたが、その良さも決して忘れてはならないわけで、
総合では凡作としておきたいと思います。
雰囲気を高く評価してギリギリ佳作でも構わないようにも思うのですが、
結局どの要素も代替が利いてしまうので、
元を取るほどの何かを得たとは思えないものでね。
私の場合は好きな路線だからそれなりに楽しめたけれど、
好きな路線だからこそ厳しく見てしまったって感じです。
基本的に雰囲気ゲーな上に何も知らない方が楽しめる作品なので、
あまり細かいことは知らずにこの雰囲気に上手く浸ることができたなら、
結構楽しめてしまうのではないでしょうか。

本作に関しては厳しい評価となりましたが、
基本的にこういう雰囲気は好きですし、
それ以上に現在のアダルトゲームでは貴重ですしね。
また単なる読み物でなく一工夫加えようとする姿勢自体も好きなだけに、
次はきちんとしたオリジナルでしっかり作りこんで欲しいなと、
そんな頑張ってもらいたいと思わせる作品ではありました。

ランク:D-(凡作)

ダウンロード版
殻ノ少女

関連するタグ WIN /ADV /ノベル系 /


面影レイルバック   美少女万華鏡 -罪と罰の少女-  蒼の彼方のフォーリズム EXTRA1
カテゴリ「2008」内の前後の記事





管理者にだけ表示を許可する

ドラマCDはラノベ系のミステリーものとしてまとまっており聴ける構成になっていると思いますが本作は色々と詰め込もうとして煮詰め足りなかったのかなと。
ドラマCDも原作もシナリオ担当者は同一ですので。
ゲーム部分の捜査システムは往年の名作を幾つかプレイしてどうプレイヤーに操作させ場面展開すると作業プレイとしてではなくゲームを進める楽しさとして受け止めてもらえるかのゲーム研究が足りないと感じました。
うっかり選択したら一風変わった展開にもっていきおまけ要素的なものとか捜査系ゲームをやりこんでる人向けのものが確かに欲しかったですね。katanさんが求めるのはそういうことではないのかもしれませんが。
キャストオーデションをしただけあってミステリーものとしてキャストと登場人物がベストマッチしていただけにシナリオとゲーム部分が残念な作品でした。

ドラマCDは知りませんでしたが、そっちの方が良いのであれば、ゲームに最初から上手く盛り込んで欲しかったですね。
私の求めるものってのは、特定の何かではないし、自分では結構ハードル低いと思うのですよ。
新しいことは例えちょっとでも考え出すのは大変ですからね。だから新鮮さを感じられれば甘くなりやすいです。
逆に、問題点があって、既に解決する手法が過去のゲームに幾つも出ているのに、その問題点を放置って場合には厳しくなりがちです。だって素人の私でも分かる部分に対処しないのは、研究が足りないだけですから。
まぁあとは、多くの人は自分好みっていうのは高得点になるのでしょうが、私の場合は過去の作品から普通に想像しうる範囲を超えたかの方が大事になってきます。なので、名作と言いつつあまり好きでない作品も多いし、想像の範囲内であるが故に良作にとどめたけど主観的には大好きって作品も多いですしね。
このブランドは全体的な雰囲気は良いわけで、ただの2番煎じブランドには終わらない武器をきちんと持っていると思います。それだけに、その武器を壊してしまわないよう他の部分も大事にしていってくれれば、いずれ良い作品も生まれる可能性はあるでしょうね。

| ホームへ戻る |