紫影のソナーニル What a beautiful memories

紫影のソナーニル What a beautiful memories

『紫影のソナーニル -What a beautiful memories-』は、
2010年にWIN用として、Liar Soft(ライアーソフト)から発売されました。

スチームパンクに少女漫画っぽい雰囲気が加わり、
新たな魅力がありましたね。

紫影のソナーニル -What a beautiful memories-

<概要>


ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・20世紀初頭、西暦1907年。
私たちの知るものとは異なる時代、
私たちの知るものとは異なる歴史を歩んだそこには、
無数の蒸気機関が充ちていた。
異常発達した蒸気文明が生み出す排煙は見る間に天を埋め尽くし、
人々から青空を奪い去った。
中でも、最も空が暗いとされる場所があった。
永劫に続く灰色雲と雨に覆われた廃墟、旧重機関都市ニューヨーク。
5年前に発生した《大消失》と呼ばれる原因不明の災害によって
全土が廃墟と化したかつての摩天楼、
合衆国政府によって完全封鎖され、
現在では人影のひとつもないその都市へと、
ひとりの女・エリシアが足を踏み入れる。ひとつの目的を持って。
災害の中心地とされる旧マンハッタンへと向かって、
女は静かに歩み始める。

<感想>


桜井光さんが作るスチームパンクシリーズの第5弾。
シリーズの各作品は直接には繋がってないので、
どの作品からプレイしても大きな支障はありません。
しかし大元の世界観は共通していますので、
他作品をプレイしていると、より世界観を理解できるって感じですね。

このシリーズはとにかく世界観の良さが一番の特徴であり、
同時に生命線でもあるわけですが、
その世界観を表現するグラフィックやサウンドが、
毎回抜群に良いのです。
つまりは雰囲気に酔いしれることのできるゲームなわけで、
このグラフィックやサウンドの良さは今回も健在で良かったです。

今回はホイールマウスにも対応したりと、
ライアー作品の弱点であるシステム面での改善もされていますし、
世界観を存分に堪能するための外堀作りは十分だと言えるでしょう。

もっとも、幾ら世界観を表現する手段が良くても、
その肝心の世界観が駄目なら話になりません。
ここは個人の好みもあるでしょうが、
独自の桜井ワールドが完全に作り上げられていますからね、
これはファンタジーとして十分に評価できるかと思います。
細かい独自の用語も出てきますが、
その辺もフォローされてありますし問題はないでしょう。
今の日本のADVでここまで出来る人がどれくらいいるのかと考えると、
余計にも貴重に思えてきます。

もっともシリーズも5作目になると、
そろそろ飽きてくるのではという心配も出てきます。
しかし、世界観は一緒でも毎回テーマ等が違いますので、
単純に世界観が共通だからという理由だけでの心配は、
たぶんないでしょう。

まぁ、そろそろ頃合だとも思いますし、
新しい分野に行っても良いんじゃないかとは思いますけどね。
何故頃合かって言うと、
ストーリーそのものに問題があるからなんですね。
いや、決して悪くはないし、普通に楽しめるんですけどね。
毎回テーマ等は変えているとしても、世界観が素晴らしいことと、
ストーリーそのものが良いことはまた違います。
小説でも、ファンタジーの名作が文学的観点からは無価値な場合も、
決して少なくありません。
ファンタジー物の評価は如何に独自の世界観を構築できるかにあり、
ストーリーの流れの評価とは異なってきますから、
見方によっては印象がガラッと変わってくるのです。
そして本作も世界観は優れているのですが、
ストーリー自体はわりと普通なんですよ。
ちょっと分かりにくかったり曖昧だったりする部分もありますので、
細かい部分にいろいろこだわる人や、
世界観ではなくストーリーで評価しちゃう人には、
おそらくこのシリーズは向いていないでしょう。
でも、細けぇことはいいんだよ、その世界に浸れればって人ならば、
きっと楽しめるのではないでしょうか。
良くも悪くも、このシリーズはそういうものなんだと思います。
だからこそ生じる問題もあるわけで、
即ちストーリーそのものでなく世界観が良い作品で、
その世界観をシリーズ過去作で既に堪能した場合、
もう新しいのをやる必要がないのではという懸念が出てくるのです。
そうなってくると、もともと独自の要素が強い上に、
文章も読みやすい方ではなかったですからね。
何か凄いんだろうな~とは思いつつも、
それがストーリーを読み進めたいって意欲に繋がらないんですね。
マンネリとまでは言いませんが、
まぁこんなもんだろうってことで、大体の想像がついちゃうのです。
私もインガノックの頃は素直に凄いなと思いましたが、
シャルノスの頃には飽き始め、4作目はプレイもしていません。
熱心なファンならまた別なのでしょうが、
そうでなければこういう反応も珍しくないかと思います。

しかし本作はプレイする気にもなれましたし、
実際にプレイしてもかなり楽しかったわけでして。
それはなぜかと言うと、キャラが以前より前面に出てきたからです。

ってか、ぶっちゃけリリィが可愛すぎるわけで、
リリィ可愛いよって思ってるうちに、
自然に先に進んでるんですよね。
キャラの良さという面では、文句なしに今回が1番良いでしょう。
もちろん、キャラは見た目だけではなく、
多くはテキストで描写されるわけです。
今回はテキストも以前より読みやすくなっていますから、
それでキャラにも愛着が沸けたんでしょうね。

ただ、このキャラ重視への路線の変化に対しては、
もう少し補足が必要でしょうか。
キャラの要素が強まったといっても、
いわゆる萌え系とは違うわけでして。
どちらかというと、ノリや雰囲気的には少女漫画チックです。
私は少女漫画も好きでその登場人物も好きになりやすいので、
それで入りやすかったという面もあるでしょう。
なので、逆に少女漫画にアレルギーのあるような人は、
もしかしたら抵抗を感じてしまうかもしれませんね。

とは言うものの、全体としては今回は結構間口が広くなっています。
以前はファン御用達、合わないやつは出ていけ的な雰囲気もあって、
初心者にはとっつき辛い感じも少なからずありました。
今回もライター独特のくどさはまだ残ってはいるものの、
これまでよりはわりと入りやすいので、
シリーズ初心者の入門用としてもいけるように思います。

<総合>


総じて、従来の魅力・長所はそのまま維持しつつ、
とっつき辛さという短所をなくしてきた作品と言えるでしょうね。
まぁ、シリーズも5作目になりますからね、維持しているとは言え、
従来からの長所における個々のインパクトは薄れていますが、
キャラの可愛さやテキストやシステムの補強もあわせて考えると、
合わせ技で名作と言って良いのではないでしょうか。
多くの部分が高水準で総合力は高い作品ですし、
2010年を代表する内の1本と言えるかと思いますね。

テキストやキャラレベルを維持しつつ、
これまでと同品質の新しい世界観で、
そこにちょっとゲーム性も加えられれば、
一気に傑作にもなりうる気がしますね。
つまりはこれまでの良いとこ取りをすれば良いわけで、
ここの制作陣なら決して不可能ではないと思います。
そういう意味では、
次にも期待の持てる名作と言えるのではないでしょうか。

ランク:A-(名作)

紫影のソナーニル -What a beautiful memories-

紫影のソナーニル

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