化石の歌
『化石の歌』は2000年にWIN用として、
age(アージュ)から発売されました。
SF風の館物であり、
アージュの作品の中では一番好きかもしれませんね。

ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
もっとも館内で移動場所を選択する、行動を伴ったタイプでもありました。
舞台となるのは、全銀河に広がっていた人類社会が衰退し、
資源も技術も失われていった時代になります。
未来が舞台であることから、
よくSF物として紹介されることも多いのですが、
必ずしもSF部分はメインではありません。
SF部分に関する細かい設定面はゲーム中で語られず、
説明書内に書かれていることも多いです。
広くパッケージ全体で考えるので私自身は特に気にならなかったのですが、
人によってはゲーム内できっちり書くべきと感じる人もいるでしょう。
仮に構わないと考えても、作中に書かれていないくらいですので、
あくまでも設定として物語の土台の一部にすぎず、
物語の中枢ではないのでしょう。
記憶を失った主人公は、同じく記憶を持たない少女と共に、
館に招かれます。
そこで「人形」と呼ばれる擬似生命体に感情を与えるという、
調律師としての役割が与えられます。
謎を秘めた館で行われる肉欲の宴。
次第に巻き込まれる主人公。
一般的な館モノとは異なり、
SF風味なエッセンスが加えられているものの、
基本的には館モノと捉えた方が良いかと思います。
主人公は調律師の役割を与えられたことから、
人形に感情を与えるのが仕事になります。
その人形の調律のために、装置で仮想空間を利用することになります。
その仮想空間内にて様々な物語を体験しますので、
全く異なるショートストーリーの集合体、
或いはオムニバスADVの変形バージョンとも言えるのでしょう。
そういう意味では、
オムニバス系が好きでいろんな物語を見たい人にも向いています。
館物として見た場合、特別目新しい要素はなかったかと思いますが、
館物好きが好みそうな要素はそつなく盛り込んでありました。
なのでこの類の作品が好きならば、まず楽しめるかと思います。
とはいえ特別目新しい要素はなかった書いてしまうと、
よくある館物の2番煎じじゃないの?って思う人も出てくるでしょう。
でもそれは「館物」としての要素の話であって、
物語自体に新鮮さがあることとは話が別です。
つまり、ここで前述のエッセンスとしてのSF要素が活きてくるのです。
過去の因縁のような古い時代の印象の館物と、
近未来的なSF要素が絶妙なバランスで融合し、
それによって新鮮な感覚をプレイヤーに与えてくれたのです。
このSF要素はそれだけに留まるわけではありません。
アージュと言えば今でもグラフィック・演出にこだわる印象が強く、
本作でも画面のエフェクトの良さが大きな長所となっています。
『君が望む永遠』でブレイクしたので君望以降の作品が有名ですが、
前年に発売された本作だってエフェクトは良いのですよ。
いや、恋愛ADVの君望では蛇足気味・過剰気味に感じたものですが、
SFチックな本作ではピタリとマッチしていたので、
むしろ本作の方が使い方が上手かったと言えるでしょうね。
また、グラフィック面だけでなくサウンド面も良かったです。
サウンドの良いゲーム、
音声の良いゲームというのはこれまでもありましたが、
サウンドと音声が高いレベルで融合した国産のアダルトゲーは、
この当時はまだほとんどなかったように思います。
どちらかが秀でていると、もう片方が消されてしまうのですよ。
まだ作り手が慣れていなかったのか、サウンドと音声が被ってしまうのです。
サウンドは良いのにリメイクで上書きするように音声を追加して、
かえって本来のサウンドの持つ良さが打ち消された作品を、
それまでに何度も見てきました。
(そういう作品でも何でも安易に音声付を薦めるような人がいたから、
一時期は声オタみたいな人に嫌悪感を持っていたりも。
今はそういう偏見は薄れていますが、それでもどのゲームでも、
音声が付けばそっちの方が良いみたいな安易な発想は、
絶対に間違っていると思います。)
サウンドと音声が上手く噛み合った作品がなく、
本当に良いサウンドと音声というものは、
ノベルゲーでは両立しないのかとすら思いかけ始めていただけに、
これは嬉しい発見でもありましたね。
この作品における最大の収穫は、
まさにこの部分にあると言っても過言でないでしょう。
音も絵も良く、館物としての雰囲気も抜群。
EDも非常に綺麗な映像で終わることもあり、
個人的にはアージュで最もお気に入りの作品だったりします。
名作と言えるだけの魅力も十分にあったのですが、
惜しむらくはストーリーが若干物足りなかったでしょうか。
確かに館物の要点は抑えていて雰囲気は良いし、
EDも含めた単発のイベントには良いものも多いです。
しかし、全体のストーリー自体は若干描写不足だったりして、
他の部分と比べると弱いかなって感じました。
好きな作品ではあるのですが、その点が惜しい作品でもありましたね。
ランク:B(良作)

化石の歌 AMAZONで詳細を見る

駿河屋
関連するタグ WIN /ADV /ノベル系 /
消えた世界と月と少女 少女グラフィティ 少女と年の差、ふたまわり。
age(アージュ)から発売されました。
SF風の館物であり、
アージュの作品の中では一番好きかもしれませんね。

<概要>
ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
もっとも館内で移動場所を選択する、行動を伴ったタイプでもありました。
舞台となるのは、全銀河に広がっていた人類社会が衰退し、
資源も技術も失われていった時代になります。
未来が舞台であることから、
よくSF物として紹介されることも多いのですが、
必ずしもSF部分はメインではありません。
SF部分に関する細かい設定面はゲーム中で語られず、
説明書内に書かれていることも多いです。
広くパッケージ全体で考えるので私自身は特に気にならなかったのですが、
人によってはゲーム内できっちり書くべきと感じる人もいるでしょう。
仮に構わないと考えても、作中に書かれていないくらいですので、
あくまでも設定として物語の土台の一部にすぎず、
物語の中枢ではないのでしょう。
記憶を失った主人公は、同じく記憶を持たない少女と共に、
館に招かれます。
そこで「人形」と呼ばれる擬似生命体に感情を与えるという、
調律師としての役割が与えられます。
謎を秘めた館で行われる肉欲の宴。
次第に巻き込まれる主人公。
一般的な館モノとは異なり、
SF風味なエッセンスが加えられているものの、
基本的には館モノと捉えた方が良いかと思います。
<ストーリー>
主人公は調律師の役割を与えられたことから、
人形に感情を与えるのが仕事になります。
その人形の調律のために、装置で仮想空間を利用することになります。
その仮想空間内にて様々な物語を体験しますので、
全く異なるショートストーリーの集合体、
或いはオムニバスADVの変形バージョンとも言えるのでしょう。
そういう意味では、
オムニバス系が好きでいろんな物語を見たい人にも向いています。
館物として見た場合、特別目新しい要素はなかったかと思いますが、
館物好きが好みそうな要素はそつなく盛り込んでありました。
なのでこの類の作品が好きならば、まず楽しめるかと思います。
とはいえ特別目新しい要素はなかった書いてしまうと、
よくある館物の2番煎じじゃないの?って思う人も出てくるでしょう。
でもそれは「館物」としての要素の話であって、
物語自体に新鮮さがあることとは話が別です。
つまり、ここで前述のエッセンスとしてのSF要素が活きてくるのです。
過去の因縁のような古い時代の印象の館物と、
近未来的なSF要素が絶妙なバランスで融合し、
それによって新鮮な感覚をプレイヤーに与えてくれたのです。
<グラフィック>
このSF要素はそれだけに留まるわけではありません。
アージュと言えば今でもグラフィック・演出にこだわる印象が強く、
本作でも画面のエフェクトの良さが大きな長所となっています。
『君が望む永遠』でブレイクしたので君望以降の作品が有名ですが、
前年に発売された本作だってエフェクトは良いのですよ。
いや、恋愛ADVの君望では蛇足気味・過剰気味に感じたものですが、
SFチックな本作ではピタリとマッチしていたので、
むしろ本作の方が使い方が上手かったと言えるでしょうね。
<サウンド>
また、グラフィック面だけでなくサウンド面も良かったです。
サウンドの良いゲーム、
音声の良いゲームというのはこれまでもありましたが、
サウンドと音声が高いレベルで融合した国産のアダルトゲーは、
この当時はまだほとんどなかったように思います。
どちらかが秀でていると、もう片方が消されてしまうのですよ。
まだ作り手が慣れていなかったのか、サウンドと音声が被ってしまうのです。
サウンドは良いのにリメイクで上書きするように音声を追加して、
かえって本来のサウンドの持つ良さが打ち消された作品を、
それまでに何度も見てきました。
(そういう作品でも何でも安易に音声付を薦めるような人がいたから、
一時期は声オタみたいな人に嫌悪感を持っていたりも。
今はそういう偏見は薄れていますが、それでもどのゲームでも、
音声が付けばそっちの方が良いみたいな安易な発想は、
絶対に間違っていると思います。)
サウンドと音声が上手く噛み合った作品がなく、
本当に良いサウンドと音声というものは、
ノベルゲーでは両立しないのかとすら思いかけ始めていただけに、
これは嬉しい発見でもありましたね。
この作品における最大の収穫は、
まさにこの部分にあると言っても過言でないでしょう。
<総合>
音も絵も良く、館物としての雰囲気も抜群。
EDも非常に綺麗な映像で終わることもあり、
個人的にはアージュで最もお気に入りの作品だったりします。
名作と言えるだけの魅力も十分にあったのですが、
惜しむらくはストーリーが若干物足りなかったでしょうか。
確かに館物の要点は抑えていて雰囲気は良いし、
EDも含めた単発のイベントには良いものも多いです。
しかし、全体のストーリー自体は若干描写不足だったりして、
他の部分と比べると弱いかなって感じました。
好きな作品ではあるのですが、その点が惜しい作品でもありましたね。
ランク:B(良作)

化石の歌 AMAZONで詳細を見る

駿河屋
関連するタグ WIN /ADV /ノベル系 /
消えた世界と月と少女 少女グラフィティ 少女と年の差、ふたまわり。
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2013-06-08