『俺嫁!?』

『俺嫁!?』

『俺嫁!?』は2017年にWIN用として、
WendyBellから発売されました。

TS系でありつつ、SF系でもあり、
久しぶりの掘り出し物でしたね。



<概要>


ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・
いまと変わらない近い未来。
少子化対策により、クローンの概念が見直され始めていた。
そんな中、人付き合いの下手な主人公神宮アキトは、
27歳童貞の誕生日を迎えていた。
「誕生日にメールもこない。
このままじゃ一生彼女もできないだろう…」
異性と付き合うプロセスと
協調性を強いられる交際が面倒くさいアキトは、
常々こう思っていた。
「価値観が丸ごと一緒の嫁が欲しい…と」
その時、舞い込んだ政府公式クローニングの話。
それは、自分のクローンを作り家族として扶養することだった。
「そうか!クローンで嫁を作ればいいじゃないか!」
駄目で元々と興味本位で申し込んだ
クローン作成の対象者に、見事選ばれてしまって…!?
ラボでスキャンを受けるために、
軽く麻酔を宛てられ眠りの狭間で、
明るい未来に想いを馳せる…。
だけど、実際は―「俺が女ーー!?」
記憶を引き継ぎ、
身体だけが女の子になってしまった‘俺’の物語。

<グラフィック>


さて、本作については、ずっと気になってはいたものの、
なかなかプレイする気にならなかった作品でもありまして。
メインヒロインが一人でありつつ、
そのヒロインのパッと見の外見に惹かれないとか、
なんかプレイする気になれず、後回しになっていたのです。

ただ、グラフィックに関して言うならば、
いざプレイしてみると、予想外に良かったです。
ヒロインの体つきがエロいというか、
裸に魅力を感じたのは随分と久しぶりのように思います。
それだけで十分な長所と言えるでしょうし、
本作の特徴と言えるでしょうね。

まぁ、少し崩れるところもあるので、
やや安定感に欠けるところはあります。
そのため、その点が気になる人もいるかもですが、
個人的には、肉体の美しさを感じた珍しさの方が上回り、
全体としてはプラスに感じました。

<ストーリー>


本作は一般にはTSないしTSF系作品、
つまり異性に性転換するタイプの作品になります。
とはいえ、一般的なTSものとも少し異なります。
あらすじを見て分かるように、
主人公がクローンを作ったところ、
そのクローンが美少女(アキラ)となり、
しかもそのクローンの方にも自我があるだけでなく、
主人公の元の記憶があるのです。
簡単に言ってしまうならば、例えば、「らんま1/2」の、
男らんまと女らんまが分離して夫婦になるみたいな、
そんな感じとなるでしょうか。
らんまの場合、そういう同人誌とか絶対あると思いますが、
同人誌だとHシーンばかりになると思います。
本作は、ストーリー性を強く増したことで、
全然別物の良さが出たというわけですね。

さて、上記の書き方だと、男の方が主人公っぽく見えますが、
実際のプレイでは、クローンである女性の方、
つまり「アキラ」視点で進むことになります。
最近のノベルゲーでは、複数のヒロインを用意し、
そのヒロインごとのルートを用意する作品が大半です。
しかし本作はそうではなく、アキラの行動により、
その後のアキラの人生が変わっていくというもので、
PC98時代のノベルゲーに良く見られたタイプと言えます。

アキラの行動により変わる結末、
つまりマルチENDのことになるのですが、
その内容としては、アキトとそのまま結ばれるもの、
他の男性と結ばれるもの、レズに目覚めるもの、
痴漢にあってそっち方面に目覚めるもの等、
TS系として考えられるようなシチュが、
いろいろ用意されています。
ただ、本作は、Hシーンも多いことは多いのですが、
いわゆる抜きゲーとして、
マニアックなシチュを堪能する作品ではありません。
上記のとおり、派生ルートでいろいろなシチュがありますが、
その多くはあっさりめだからです。
本作は本質的にはストーリー重視の作品であり、
決して抜きゲーではないという点は、注意する必要があります。

本作の一番の肝はストーリーであり、
その観点からは、先輩ルートとアキトと結ばれるルート、
その2つがメインになってくるのでしょう。
更に言うならば、先輩ルートがメインディッシュであり、
アキトルートがデザートのようなものでしょうか。
そのため、先輩ルートを先にクリアし、
アキトルートを最後にすることをおすすめします。

その先輩ルートですが、大まかなあらすじとしては、
アキトが幼馴染の女性とうまくいき、
花嫁として作られたはずのアキラが不要になり、
逆にアキラは職場の先輩と結ばれることになるというものです。
本作は、クローンということで、SFの要素もあります。
その設定部分や、キャラの心理描写が、
結構丁寧に描かれているわけでして。
特に心理描写は、本当に丁寧に描かれています。
心理描写の重要度はジャンルによってもかわるのですが、
TS系では特に重要になってくると思います。
普段の私は、ジャンルによっては心理描写を重視しませんが、
このジャンルに関しては重視しているところ、
本作はとても丁寧に描いているので、
それだけでも好印象といえます。
少し話がそれかけましたが、普通の男女の場合、
男に他の女ができたならば、多少の修羅場はあれども、
結局のところ、嫌なら別れてお終いとなります。
しかし、本作の場合、アキラは、
アキトの嫁となるために生まれてきたのです。
女として生まれたことにも戸惑いますが、
更に自分とHしなければならないとなると、
より一層戸惑うと思います。
そうは言っても、だからといって、
アキトが他の女性と密な関係になるということは、
それはそれでアキラの存在価値そのものの否定につながります。
その一方で、アキラはアキトの記憶も有していることから、
アキトの気持ちも十分すぎるほどに分かってしまいます。
この手のSF系作品において、
特定の目的のために生み出された存在が、
その存在価値を脅かす出来事により苦悩するというのは、
よくあることだと思います。
本作もその苦悩をしっかり描いている点で、
十分にSF作品なのです。
さらに、本作が同系統の作品の多くと異なるのは、
その特定の目的のために生み出された存在が、
作り手と同じ記憶や考え方をしているところにあります。
単に自分の存在価値を追求するだけなら難しくないですが、
なまじアキトとしての記憶も有するがゆえに、
アキラの苦悩は深まるわけでして。
この手のSF作品もいろいろありますが、
TSとこんなに相性が良いとは思いませんでした。
TS要素が加わることで複雑さが増し、
エロゲとしてのエロさを保持しながら、
ストーリー面でも新鮮な気持ちで楽しめました。

先輩ルートでは結局のところ、
その苦悩の先に、アキトと決別し、
先輩と結ばれる方向になるわけですが、
上記のとおり、丁寧に描かれていますので、
新鮮な気持ちで楽しみつつ、読み応えもありました。
ルートとしては、この先輩ルートが一番濃密でしょうね。
だから、メインディッシュなのです。
また、TS作品ではあるものの、上述したような内容なので、
どちらかというとSFとしての毛色が濃くなっています。

この先輩ルートをうけてのアキトルートなのですが、
内容としては、アキトとそのまま結ばれるものになります。
これだけだとシンプルに見えますが、
元々アキトが一人だと寂しい、でも交際は面倒として、
それで生み出されたのがアキラなんですよね。
このルートにより、アキトが初めて、
アキラを受け入れたわけですが、
当初の目的を考えると、果たして何が変わったのか、
ある意味何も変わっていないのだけれど、
ある意味将来に向かって大きく変わっているようでもあり、
とても考えさせられる内容だと思います。
そういう意味では、哲学的な作品ともいえるのでしょう。

<総合>


総合では、文句なしに名作と言えるでしょう。

TSでありつつ、SF的でもあり哲学的でもあり、
なによりストーリー展開が非常に素晴らしく、
まさか今になってこんな作品に出合えるとは思いませんでした。
ブランドの過去作や傾向からしても、
次に狙って出せる作品でもないかもしれませんが、
この作品に関しては、紛れもなく名作といえるでしょう。
マイナーなまま埋もれて良い作品ではありません。
当初の私みたいに、食わず嫌いの人がいたならば、
そしてストーリーを重視するというのであれば、
プレイする価値のある作品だと思いますね。

ランク:A(名作)

AMAZON


駿河屋


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