『まいてつ』

『まいてつ』

『まいてつ』は2016年にWIN用として、
Loseから発売されました。

従来の路線を捨ててE-moteを採用した本作。
Loseの新しい可能性を追求するとともに、
同年のノベルゲームはここまで進化したのだと証明する作品でした。



<概要>


ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・
鉄道車輌を制御する人型モジュール・レイルロオド。
旧帝鉄8620系蒸気機関車のトップナンバー機、
8620の専用レイルロオドであるハチロクも、
他の数多のレイルロオドたちと同様、大廃線に伴って廃用され、
長い眠りについていた。大廃線による鉄道事故で家族を失くし、
隈本県は御一夜市の焼酎酒造、右田家の養子となった少年、右田双鉄。
長じて帝大へと進学した彼は、第二の故郷を、
工場誘致による水汚染から救うべく、御一夜へ帰還。
そこで偶然にハチロクを目覚めさせ、そのオーナーとなる。
双鉄とハチロクとは、それぞれの目的を達成するため、
行方不明になっている蒸気機関車8620の捜索を決意。
双鉄の義妹で絵描きの日々姫、
御一夜市長兼御一夜鉄道社長ポーレットらと力をあわせ、
8620復活を目指し、奮闘努力を重ねていく。

<総論>


E-moteを採用することに、一体どれだけの意味があるのか。
Loseが従来の路線を捨てて本作でE-moteを採用すると聞いたとき、
最初に思ったのはそのことでした。
確かにE-moteは、技術力の乏しかったブランドでも、
立ち絵の動きを加えることができるわけですから、
そういうブランドには非常に有効なツールと言えるのでしょう。
しかしLoseは、そうではありません。
過去作では非常に多くのCGを用い、細かく動かし、
もちろん目パチ口パクなども完備で手抜きがなく、
演出関係においては業界最高峰でもありました。
だから既に有している自前の技術だけで十分なのであり、
E-moteに頼る必要はないのです。
しかしそのブランドが、これまでに培ってきた技術を捨てて、
既に他所のブランドが採用しているE-moteを用いると言ったわけです。
これは、なかなかできないことです。
後追いとなるだけに既に目新しさはなく、
それでいて先に使用されている作品を超えられるのかという、
完成度が求められますからね。

他方で、この試みには個人的には期待もありました。
従来の方向性では、エロゲとしては優れた演出と言えても、
言い換えれば劣化アニメないし動きの乏しいアニメでしかありません。
仮にその方向性を進んでいったとしても、
それはゲームである必要性の否定につながるだけであり、
作品としての発展の可能性は残されていないように思います。
業界最高峰の演出を有したLose内の過去作を、
新しい挑戦で超えることができるのか、
そしてゲームとしての新しい可能性を見出すことができるのかが、
個人的には非常に気になる作品だったのです。

そして実際にプレイした結論としては、
Loseは新しい可能性への挑戦に成功したと言えるのでしょう。

<グラフィック>


まずは肝心のグラフィックから入りますが、
そもそもE-moteは、決して派手な演出を行うものではありません。
キャラの動きをリアルなものとして表現するのに適しているのであり、
プレイヤーに動きが自然だなと思わせること、
動きに違和感を抱かせないが重要になってきます。
ところが、他所のE-moteを用いた作品を見ていると、
確かに立ち絵の動きは自然で素晴らしいものの、
一枚絵(イベントCG)になると普通の静止画になってしまい、
これまで自然に動いていたキャラが、
ストーリー上の大事な場面で逆に動きが止まるという珍現象が生じ、
違和感を抱く作品が幾つもありました。
キャラの動きの自然さを表現するはずのシステムで、
プレイヤーに不自然さを感じさせてしまうのでは、
完全に本末転倒です。
これでは、E-moteを用いる意味がありません。
その点が、過去のE-mote使用作品に対する大きな不満でした。

それでは本作はどうなのか。
結論としては、上記の過去のE-mote使用作品に対する不満は、
本作にはありませんでした。
一枚絵でもE-moteを使用し、目パチ口パクもあり、
立ち絵の状態から重要な一枚絵のシーンまで、
一連のグラフィックがこちらに違和感を抱かせることなく、
自然に動いているのです。
この点において本作は、過去のE-mote使用作品を超えましたし、
ようやくこの技術をきちんと使用し、
良さを十分に発揮した作品が出てきたといえるのでしょう。

ところで、本作においては、丸い枠の中に顔だけが表示される、
いわゆるフェイスウインドウが多用されています。
これ、ゲーム序盤から頻繁に出てくるのですが、
最初に出てきた時には何の意図があるのか理解しきれませんでした。
そもそも従来のLose作品は非常に動きがあり、
一般には演出が優れていると言われていましたが、
悪くいうと劣化アニメないし動きの乏しいアニメでもあり、
だからこそ私は否定的だったんですよね。
あの方向性を追求しても、行きつく先は、
だったらアニメで良いじゃんってことになりますから。
本作におけるE-moteの採用は、そしてフェイスウインドウの多用、
しかもそのウインドウには作品に合わせた枠を用いたことも加えると、
少しでもアニメとは異なる方向での演出を模索したのかなと、
即ち従来の劣化アニメ路線からの決別の意思表示なのかなと思えます。
だからフェイスウインドウの本作における有用性自体は低くとも、
そういう意思表示の意味合いとしては重要な意義があるのかなと、
プレイし始めていたときは思ったものです。

ただ、プレイしていると、少し見方も変わってきまして。
登場キャラの増える本作では、立ち絵をずら~っと並べるより、
フェイスウインドウの方が適している場面もあります。

また、一枚絵にフェイスウインドウを加えることで、
重要な場面を強調しつつ多角的にも表現することを可能にし、
重要な一枚絵における臨場感を増すことにも成功しています。
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即ち立ち絵と一枚絵だけでなく、
それらにフェイスウインドウを組み合わせることで、
本作は更なる演出の強化に成功していると言えるのでしょう。
もっとも、序盤のように特に必要性も感じない場面もあるので、
このフェイスウインドゥも完全に使いこなしているとまでは言えないし、
ここはまだ次回作で十分な伸びしろがあると思います。

<システム>


Lose作品の特徴として、システム周りの充実が挙げられ、
この点は本作も同様です。

例えば、本作には動画におけるシークバーのようなものがあり、
シーンの進行度を確認することができます。
こういう機能は、時間の限られた人にはありがたいですね。

また、本作にはTipsがあり、しかもキャラがしゃべってくれます。
これは鉄道車両に関する専門用語が多い本作において、
ユーザーをサポートする機能を有しますし、
さらには少しでもユーザーが介入できる場面を増やすことで、
ゲームらしさを表現することにもつながります。

ところで、大量のCGによるアニメ路線の作品を作るブランドは、
Lose以外にも存在します。
それらブランドが劣化アニメ化への道を進んでいく一方で、
LoseはTipsや今回のE-mote採用することにより、
演出とゲームらしさの両立を図るのだという、
他所とは異なる道を歩むという姿勢を明確に示せたように思いますね。

他にも細かいシステム周りも充実していたと思うのですが、
一つ難点を挙げるとすると、
ちょっとUIが独自の進化をしていまして。
他社とは少し使い勝手が異なることから、
初めてここの作品をプレイした人は、
少し戸惑うかもしれませんね。

<キャラ>


日々姫が可愛かったw

2016年におけるノベルゲーの現在を示すという意味で、
できるだけ多くの人にプレイしてもらいたい本作。
でも、必ずしも万人向けではなくて、
結構ストーリー・キャラに癖があるので、
薦めにくい部分もある作品なんですよね。

まずヒロインなのですが、ほとんど炉利です。
このブランドは炉利好きには最高なのですが、
炉利が苦手な人にはやりにくいように思いますね。

例えば上記の日々姫は主人公の義理の妹なのですが、
E-moteによる演出の効果も相まってその仕草も可愛らしいし、
隈本弁も可愛いと思ったので、
私には非常に好印象なポイントとなりました。
しかし日々姫は方言を恥ずかしがって言い直すので、
結果的に同じことを二度言う場面が多く、
日々姫に良い印象を抱いていないと煩わしく感じるかもしれません。
他のヒロインにしても言動が幼かったりするので、
炉利属性のない人にはまどろっこしく感じてしまい、
感情移入しにくいおそれはあると思います。

また主人公も非常に落ち着いたキャラでして。
屑な部分や厨二な部分がないことから、
私は非常にプレイしやすかったのですけどね。
典型的なエロゲ主人公と異なりますし、
エロゲユーザーの多くを占めるであろう、
10代から20代前半のプレイヤーにはうけにくいキャラなのかなと。

<感想>


上記以外の点として、
ストーリーは基本的にあらすじを見れば分かるかと思います。
無駄な部分もなく、テンポよくプレイできました。

ただ、楽しめはしたのですが、少し淡々としていて派手さがなく、
全体的に盛り上がりに欠けていた感じですね。

もっとも、盛り上がりには欠けているのだけれど、
問題に対してきちんと論理的に会話で解決しようとする姿勢や、
強引な事件や展開で局面を打開するのではなく、
自然に感じられる流れを保とうとした姿勢は、
個人的には非常に好印象でした。

とは言え若いユーザーには、多少強引であったり、
ご都合主義であってもド派手に展開した作品の方がうけるんですよね。
そういう意味では、本作は大人向けとなるのでしょう。

<総合>


燃える厨二展開もなく、いちゃラブもなく、
主人公も展開も落ち着いていて、
内容的には10代とかの若いユーザーには受けにくい作品だと思います。
その意味では大人向けの作品と言えるのだろうし、
お子様向けみたいな作品に辟易している人に向いているのでしょう。
でも、それでいて極端な炉利偏重作品ですので、
炉利もいけるという年齢高めの変態紳士向きということになり、
その点でどうしても人を選んでしまう作品ではあります。

しかし、現状においてノベルゲームはここまできたのだと、
後世に対し残すべき作品なのでしょうし、
その点で意義のあった作品だと思いますね。

ネット上で、最近の作品も知らずに、
いつまでも紙芝居から~とか言っているような輩には、
こういう作品をさせれば良いのですよ。
お前がありがたがっている10年前の作品には、
こういうのはないだろうって。

Loseの選択は正解だったと思いますし、
この方向性で可能性をさらに追求していってもらいたいものです。

ランク:A(名作)



まいてつ

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カテゴリ「2016」内の前後の記事





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3Dでもアニメでもなく、2Dの美少女キャラが立ち絵・一枚絵を含めた全ての場面で自然に動き続けるゲームがやりたいというのが、私の長年の夢のひとつでした。

しかし、2000年代はそういったキャラクターの動きといった演出面の進歩に乏しく、私が夢見た地点にはなかなか到達しない状況でした。それから何年も経過し、長年望んだその夢を叶えてくれたのがこの作品でした。

いや~全てのシーンでここまで自然な動きを表現するのは、作る側としてはかなりの労力だったと思います。スタッフの方々ご苦労様です。

リアルな動きで話しかけてくるキャラクターにはやはり愛着がわきますね。自分も日々姫が可愛くて可愛くてしょうがなかったです。2016年で一番好きなキャラクターです。

システム関連も充実してましたし、ストーリーも安定していて、これといって不満はなかったです。

2016年時点で美少女ゲームはここまで進化してるんだということを知らしめるには最適の作品でしたし、私の願望を具現化してくれた作品でもありました。

この作品は既存の方法の完成度を飛躍的に高めた作品であり、
そうであるがゆえに、必ずしも斬新というわけではなく、
したがって未知のものに出会ったときのような衝撃が少ないんですよね。
だからガツンとくるような、強烈なインパクトはやや欠けるわけでして。
なので、現時点では傑作にギリギリ届かずと判断したのですが、
正直なところ今でも非常に迷っています。

> 3Dでもアニメでもなく、2Dの美少女キャラが立ち絵・一枚絵を含めた全ての場面で自然に動き続けるゲームがやりたいというのが、私の長年の夢のひとつでした。 
> しかし、2000年代はそういったキャラクターの動きといった演出面の進歩に乏しく、私が夢見た地点にはなかなか到達しない状況でした。それから何年も経過し、長年望んだその夢を叶えてくれたのがこの作品でした。

これはまさしく私もそうで、
本作はノベルゲーの一つの到達点に至った作品と言えるのでしょう。
そこを評価すれば、傑作でも良いような・・・
まぁ、私は結構評価を変える方ですし、
その中には再評価の度に点が下がっていく作品もあれば、
逆に上がっていく作品もあります。
本作は完全に後者に属する作品ですので、
そのうちこっそりとかえているかもしれませんw

まぁでも、そんな小さいことはどうでも良いことであり、
過去の実績を捨てる決断をしたこと、
本作をきちんと作り込んできたことに対して、
スタッフには感謝したいものですね。

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