『Her Story』

『Her Story』

『Her Story』は2016年にPC用として、
Sam Barlowから発売されました。

実写による役者の熱演や、
キーワードを検索し自分で考える構造で話題になった作品ですね。

hers39837d.jpg

<概要>


オリジナル版は2015年の発売であり、
非公式の日本語パッチなども制作されていましたが、
2016年に正式な日本語対応版が発売されました。

ゲームジャンルは、コマンド入力式ADVになります。
或いは映像が主体であることから、
インタラクティブムービーないしFMV系のADVとも言えます。

本作の舞台となるのは1994年。
とある男性が行方不明になったことから、
その妻が何度も事情聴取を受けます。
その記録動画がデータベースとしておさめられ、
プレイヤーはそのデータベースから動画を検索して閲覧し、
真相を探ることになります。

<感想>


本作において、プレイヤーが行うことは極めてシンプルです。
単語を入力して検索し、データベースから出てきた動画を見て、
そこから得た情報を元に、また新たな単語を入力するの繰返しですから。

本作において、明確なストーリーというものはありません。
プレイヤーが検索結果に出てきた動画を見て、
それを元にストーリーを自分の中で組み立てることで真相に迫り、
そうして自分の中で積み重なっていったものがストーリーなのですから。
積み重ねていく過程は人によって異なるのであり、
言い換えれば自分だけの体験を楽しむ作品といえるのでしょう。
したがって、プレイヤーの体験を重視するという点で、
今流行りの傾向に合致しているといえます。

本作はミステリーものになりますが、
自分の中で真相を考えるという構造は、
より推理ゲーらしさを感じさせてくれます。
また検索で打ち込む単語を考えるという要素も、
推理ゲーらしさを感じさせてくれます。
まぁ、そういう意味では、楽しさの根本部分は、
80年代のコマンド入力式ADVの推理ものと同じなんですよね。

もっとも、より近いゲーム形式としては、
90年代のPCゲーなのでしょうけれど。
そして90年代の同系統のPCゲーをプレイしているか否かで、
本作に対する印象も変わってくるように思います。
というのも、動画が主であるADVという観点からも、
データベースから情報を見るという構造の観点からも、
ハッキリ言うと新しい部分はありませんでした。
もう少し何かしら追加された部分があるかと期待していただけに、
ちょっと残念でしたね。
この手のADVは90年代のPCゲームに幾つかあったので、
最近増えている90年代ADVの模倣作品の一つくらいにしか、
個人的には思えなかったです。

もちろん、仮にゲームシステム的に同じことをやっているのだとしても、
現代的なガジェットを用いることで、
現代の新たな作品として再構成されてあるのならば、
個人的にはそれでも高く評価していたでしょう。
しかし本作の舞台は94年であり、
表示される画面も使うインターフェースも、
良く言えば昔懐かしいものとなるのでしょうが、
悪く言えば古臭いわけでして。
従前から特に洗練された部分もなく、少なくとも、
そこには新しさも進化も感じることはできなかったです。

また、本作の評価される理由の一つに女優の熱演があります。
この点は、私も良かったと思うし、
だから私は昔からムービーのある実写ゲーが好きなのです。
(逆に、言い換えるならば、動かない実写ゲーは論外です。)
もっとも、役者の熱演が見られる作品は、
国産家庭用ゲーム機のADVではかなり少ないですが、
ADV全体で考えればないわけではないですからね。
それに実写ムービーの良さだけで評価される時代も、
もう十年以上前に過ぎたことだと思うし、
この点だけをもって高く評価するわけにもいかないのでしょう。

<総合>


本作は一昔前を舞台にしている点や、
プレイヤーに考察させる要素がある点において、
悪く言えば古臭く、良く言えば、
懐古扱いされるような一昔前のADVファン向けの作品なのでしょう。
その意味で、steam向きとも言えるのだろうし、
今の国産ノベルゲー市場に反感を持つような、
オールドファンの楽しめる作品です。

その一方で、ADVといえばノベルゲーであるとか、
コマンド選択式ADVしか知らないような人には、
目新しく見えたことでしょう。
そして、そういうユーザーは結構多いと思うんですよね。
ADVの系譜みたいなものを言わせると、
最初の方は家庭用ゲーム機のADVの名前ばかり挙げて、
自分がエロゲデビューした頃からPCゲーの名前ばかり挙げる人とか、
結構多いですからね。

それらを総合すると、本作を楽しめる人というのも、
わりと多いのだろうなとは思います。
特に今のノベルゲーに興味を失いつつも、
80年代90年代のPCゲーに触れてこれなかった人なら、
ピンポイントでツボにくる可能性もありますし。

ただ、やっぱりこれは、
昔のPCゲーを知らなかった人が楽しめるものであり、
また、数百円という低価格だからこそ、
それで評価される部分も大きいのだろうなと。
そして、洋ゲー、インディーズ系作品について、
ADVユーザーも世代交代しているんだということなんでしょうが、
ゼロ年代以降の国産エロゲ市場みたいに、
知らない人にうければ勝ちみたいになってきている現状は、
少なくとも私はあまり芳しくないよなと思ってしまいます。

まぁ、役者の演技とか見ていて楽しめたのも確かなのですが、
作品全体としては、もう一工夫、
何かしらのアレンジを加えて欲しかったので、
その辺はちょっと残念でした。

ランク:C(佳作)

関連するタグ WIN /ADV /コマンド入力式 /


面影レイルバック   美少女万華鏡 -罪と罰の少女-  鬼と花妻
カテゴリ「2016」内の前後の記事





管理者にだけ表示を許可する

トラックバック http://advgamer.blog.fc2.com/tb.php/3138-a6644f03
| ホームへ戻る |