『ISLAND』

『ISLAND』

『ISLAND』は2016年にWIN用として、
FrontWingから発売されました。

『ひまわり』のライターによる6年ぶりの新作ということで、
発売前から注目していた作品でした。



<概要>


ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・
本土より遠く離れた南の島、“浦島”。
そこは豊かな自然に恵まれた、まさに楽園。
「いつまでも――こんな時間が続けばいいのに」
しかし複雑な過去を抱え込んだこの島は、
歴史から静かに消え去ろうとしていた。
島の風土病“煤紋《ばいもん》病”による本土との確執。
放棄され廃墟と化した“海上ステーション”。
五年前に“浦島御三家”を襲った三つの事件。
子供たちの間でまことしやかに囁かれる“神隠し”の噂。
そして、島に残された古の“伝承”――。
「お話ししましょう。この島に伝わる、悲恋物語を――」
島を救う鍵となるのは、御三家に属する“三人の少女”たち。
しかし彼女らにはまだ、島の行く末を変える力はない。
「この島はもう終わりだよ。救われっこねー」
そんな島に、一人の青年が流れ着く。 「……――今は、何年だ?」
未来から来たと主張するその青年は、島の因習なんぞ
くそ食らえとばかりに未来を変えるために孤軍奮闘し始める。
「待たせたな、俺が来たからにはもう大丈夫だ!」
だが彼には、別の目的があった。
果たして三人の少女たちは、この島は、世界は、
彼によってどう変えられていくのか――。

<感想>


冒頭で6年ぶりの新作と書いたのですが、
6年前の作品は『ひまわりアクアアフター』であり、
『ひまわり』の後日談を描いた作品でした。
そうなると、つまりライターである「ごぉ」さんの単独作品で、
完全オリジナルの新作となると、
2007年の『ひまわり』以来となってしまいます。
せめてあと一本だけでも構わないから新作がプレイしたい、
でも、これだけ年数が空いてしまうと、
もう無理なんだろうななどと思っていただけに、
ごぉさんの完全オリジナル作品がまたプレイできるというだけでも、
個人的には嬉しかったです。

本作は、物語上のジャンルとしてはSFモノであり、
更に言うならば、いわゆるタイムリープモノを、
ごぉさんらしく仕上げた作品となります。

私は時々、シナリオゲーという言葉が嫌いだと言うことがあります。
しかし、もし本当にシナリオだけに特徴がある作品であるならば、
それに対してシナリオゲーという言葉を用いることに対しては、
何ら問題はないと思っています。
私の場合、どちらかというと、90年代後半からゼロ年代前半にかけて、
即ち大量のにわかゲーマーが増えた時期に、
ストーリーとシナリオの違いも分からないまま、
自分が触れた作品を最良のものとして賛美する輩が苦手なのであり、
その輩が自分の好きな作品に用いる表現がシナリオゲーであることから、
それでシナリオゲーという言葉に警戒心を抱くようになったと。
また最近はそれに加え、シナリオゲーとヌキゲーという、
極めて杜撰な二分論で語る輩が増えたので、
その点からも非常に使いにくい言葉だなと思っています。

まぁ、個人的な感情を除いて言うならば、
ゼロ年代前半頃に、いわゆるシナリオゲーと呼ばれるような、
ストーリー・キャラ重視エロ軽視の恋愛ノベルゲーがいくつもあり、
その当時のユーザーが今はシナリオゲーがなくなったというのも、
度々目にすることがあります。
そういう人はアンテナの貼り方がおかしいか弱くなっただけであり、
また同人や一般ゲーのノベルなど、
商業フルプライス男性向けエロゲという枠を少し拡大すれば、
ストーリーの良い作品なんてのは10年代に入ってからでも、
何本も存在するのです。
本作もそうした中の一本であり、
エロゲではなく一般PCゲーになりますが、
ストーリーゲーとして十分に楽しめる作品になっています。
ぶっちゃけて言えば、ゼロ年代前半のほとんどの、
いわゆるシナリオゲーよりも本作の方が優れているのであり、
今はシナリオゲーがないだの何だのと言う人は、
こういう作品をプレイすべきなのでしょう。

というわけで、当時のいわゆるシナリオゲーの大半を上回っているし、
良作か否かという観点からは十分良作なのですが、
本作をプレイしていて若干気になることもありまして。

ごぉさんの代表作である『ひまわり』は、
非常に事実関係が複雑であり、かつ設定も良く練られていて、
つまりはプロットの優れた作品でした。
しかしながら同時に、そのプロットにキャラが縛られるのではなく、
各キャラの行動、その根底にある信念や想いが強い作品でもありました。
各出来事をつなぐ主人公らの行動に強い意志と想いが込められ、
一つの太い筋としてこちらにも伝わってきたわけで、
即ち『ひまわり』はストーリーの優れた、
ストーリー重視の作品でもあったのです。
むしろ優れたプロットをも上回るストーリーこそが、
ごぉさんの作品の魅力なんだと個人的には思っています。
ゲームとしては作品数が少ないですが、
小説の「かげろう」や「こもれび」なんかも読んでいると、
ますますそう思えてくるのです。

それに対して本作なのですが、本作も非常にプロットが練られています。
プロットが凝った作品としては、ここ数年でも屈指の作品でしょう。
しかし、あまりにプロットが強すぎてしまいました。
もちろん本作の各キャラにもそれぞれの想いがあるのですが、
プロットに振り回された感があり、
主人公の行動というストーリーの筋が細くなってしまったのです。
したがって『ひまわり』がストーリー重視の作品であるならば、
本作はプロット重視の作品となるのでしょう。

一般論としていうならば、プロット重視もストーリー重視も、
それは作品の傾向を示すだけにすぎず、両者に優劣関係は存在しません。
だからプロット重視であっても、十分に面白い作品も存在します。
ただ、上記のように私は、ごぉさんの作品は、
プロットを上回るストーリーが描かれた時に、
その真価が発揮されるように思うわけでして。
本作では、ごぉさんの良さが存分に発揮されたとは思えないのです。

まぁ、今日ではプロット重視もストーリー重視もシナリオ重視も、
異なる方向性のそれらを十把一絡げに、
「シナリオゲー」としてしまう人が多くいるのですが、
そうしたいわゆるシナリオゲーの中にあって本作は、
厳密にはプロット重視な作品を好む人に受けやすい作品なのでしょう。
プロットの優れたノベルゲーは少ないだけに、
その意味では評価されるのも十分に理解できるのですが、
個人的にはライターの良さが出しきれていないと思ったということですね。

それと、少し細かい部分も補足しますと、
本作はスロースタートというか、本筋に入るまでが長いです。
そのため、物語に感情移入するまでに少し時間がかかりました。
また、ある事実に対して、実は違ってました的などんでん返しが多く、
これではまたひっくり返されるだけかと思われかねず、
読み手の集中を阻害するおそれがあります。
この手の仕掛けは、大事な場面で絞って使うべきだと思います。
さらに、本作を出しているフロントウイングはエロゲブランドですし、
ライターだってエロゲを製作したことがあり、
本作にもエロシーンを入れられる場面があっただけに、
何でこれをエロゲで出さなかったのかという疑問も抱いてしまいます。
これらの事情は、私にはマイナス要因として映りました。
まぁ、一般ゲーにしたからこそ、
ヒロインの声優に田村ゆかりさんを起用できたのでしょうから、
音声重視な人には一般ゲーで良かったのでしょうけどね。

グラフィックはキャラデザとかは好みなのですが、
あまりインパクトのある場面はなかったですかね。
他に演出が優れているわけでもないので、
本作に対する印象もストーリーへの評価が直結しやすいと思います。

<総合>


結論は先取りしてしまった感がありますが、
一昔前の大半のいわゆるシナリオゲーは上回っているし、
今でもこれくらいプロットの凝った作品はほとんどないということで、
十分に良作と言える作品ではあるのでしょう。
いわゆるシナリオゲーに飢えている人には、
ぜひともプレイしてもらいたい作品だと思います。

ただ、ストーリーやキャラがそこに追いついておらず、
ライターの良さが出しきれていないと感じたこと、
グラフィック等その他の点で特に秀でた部分がないことから、
総合では名作に届かないといったところでしょうか。

まぁ、今回は新作がまたプレイできただけでも良かったです。
また次の機会があるならば、しっかりプロットを作ることは歓迎だけれど、
そこにあまり振り回されすぎないで欲しいかなと。
そうすれば、また名作も生まれるんじゃないかなと思いますね。

ランク:B(良作)



ISLAND

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プロット、ストーリー、シナリオなど、「シナリオゲー」と呼ばれるような作品にしても、何を重視してるかでまったく違いますね。

この作品について、私なんかは単純なもので、凝りに凝ったプロットに引き込まれて、途中の二転三転する事実にも翻弄されてました。

ここ数年、ここまで凝った作品も無かったと思いますし、自分の非常に好む類いの物語でした。

katanさんや他のプレイヤーの方々が言うような、「ISLANDはひまわりを越えられなかった」という見方については、今回の記事を読んで納得しました。

私は「ひまわり」の魅力について、凝ったプロットの方ばかりに注目してましたが、本当の魅力はキャラクター一人一人の想いの強いストーリーにあったのだなと遅くも気付かせて頂きました。

結局のところ、何を重視するのかって話なんでしょうけどね。

シナリオ(テキスト)重視ってのも理論上はありえるのだろうけれど、
本当に文章の上手い人は小説家で成功しちゃうだろうし、
でも実際にはそんな人は出てきていないし(精々ラノベ程度で)、
だから「シナリオ重視=自分の好み重視」となっているのが、
ノベルゲーユーザーの現実なんだと思います。
私がシナリオが良いだけでは名作と判断しないことが多い理由も、
シナリオが良いと思うことは極めて主観的な判断でしかなく、
客観性に欠けるからなんですよね。
もっともエロを重視したシナリオであれば、比較対象が官能小説家とか、
成年漫画家とかになるので、ハードルが下がってくることから、
こっちの方がシナリオの良さで名作判断しやすいかなと思います。

他方で、ストーリーやプロットが秀でている場合には、
シナリオの場合よりも名作と判断しやすいと思っています。
そしてエロゲの性質やこれまでの経験上、ストーリーの優れた作品よりも、
プロットの優れた作品の方が絶対数が少ないわけでして。
そうなると、希少なプロットの優れた作品は、
その1点を以て名作として良いように思えてきます。

結局、本作におけるプロットの良さと、
本文で書いたマイナス要因を比較した上で上記の結論になりました。
序盤の印象の悪さがなければ、結論も変わっていたと思います。
まぁ、あとはストーリーゲーなら些末な設定は不明でも構わないけど、
プロットゲーの場合には不明点が残らないようにハッキリ書くべきかなと、
個人的には思っているのですけどね。
でも、正直なところ分からないですね。
今後、再評価する可能性は十分あると思っていますし。

他の人の見解は全然読んでいないので分らないのだけれど、
本文で書いたような私の考え方からすると、
『ひまわり』の方が面白かったとなるのでしょう。
他方で、「私はプロットを重視します、特に壮大なものであれば、
より高得点になりやすいです」という基準を示し、
その上で本作を高く評価している人がいるならば、
その場合には本作が高く評価されることも十分に納得できます。
本作はプロット特化ゲーという結構稀な類の作品であり、
その点で人を選ぶ作品ではあるのだけれど、
特化した部分を好む人には最高にもなりえる作品ってとこなのでしょうね。

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