『サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う-』

『サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う-』

『サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う-』は2015年にWIN用として、
枕から発売されました。

幻で終わるかと思っていただけに、よく発売されましたね。

サクラノ詩

<概要>


ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・「幸福の先への物語」
春。世界的な美術家である父の死により、
天涯孤独となった主人公・草薙直哉は、
親友である夏目圭の家へと世話になることに。
そこには、直哉が通う学園の担任である夏目藍、
圭の妹で女優の夏目雫との交流が待っていた。
そして、新学期の到来と共に、遠い昔に転校した幼なじみ・御桜稟が、
再び直哉の前に現れる。
風に巻く桜の花びらの向こう、それは、約束されていた再会の如く――。
時の刻みが想いを重ね感情の奔流が形になるとき、そこで出会う光景とは?
物語の先にある幸福。その先にある物語の形――。
サクラノ詩は、立ち止まる人とその先を歩き続ける人々の物語。

凍結され続けていた、サクラノ詩プロジェクトがついに再始動。
「言葉と旋律」「幸福に生きよ」をテーマに書き上げられた
『素晴らしき日々~不連続存在~』のすかぢが、
そのテーマを踏襲しつつその先の物語である『サクラノ詩』を描ききる。
原画家には狗神煌、籠目を起用。
10年越しの物語が実力派スタッフによって結実する。
素晴らしき日々の先の話、梯子の上にある風景は、
それは反哲学的物語。ごく自然な日常の物語。

<ストーリー・ゲームデザイン>


本作に関しては長く凍結されていたということで、
長年に渡り待ち続けていた人もいるのかもしれません。
私自身は『終ノ空』をリアルタイムでプレイしていたタイプではありますが、
この作品の名が報じられた頃には関心が薄れてきていたこともあって、
あまり待ったという感覚はなく、
あぁ~あれ出るんだ、そういやそんなのあったよなという感じでしたが。
ともあれ、中々日の目を浴びる機会のなかった作品がようやく出せるわけで、
それ自体は非常に喜ばしいことでもあります。
またストーリー重視の作品が最近は減っていることもあって、
それで再び興味を持ったといったところでしょうか。

ストーリーに関しては、相変わらず他所からの引用は目立ちますし、
良く言えばライターらしいファン好みの内容と言えるのでしょうが、
悪く言えばまたかよと思えるような芸のない展開ともなるのでしょう。
もっとも今作では過去作と異なる路線を目指すということもあってか、
過去作よりは上記の傾向などが薄めになっていまして。
そのため『素晴らしき日々』のような路線を求める場合には、
少しもの足りなく感じてしまうのでしょう。

それでもメインシナリオに関しては、
最近の平均的なフルプライスゲーよりは充実していたように思います。
そもそも最近はストーリー性を軽視する傾向にありますし、
仮にシナリオゲーなんて言われる作品であっても、
前にどっかで発売されたエロゲーのテーマの焼き直しなんて作品も、
ざらにあるという現状ですからね。
芸術分野を扱った本作はエロゲの中では比較的珍しいと言えますし、
ライターの他のエロゲとは異なるものを作ろうという意思は伝わりますから、
それだけでも違ってくるように思います。

もっとも、私自身は疎いジャンルということもあり、
そうであるが故に結構楽しめたのですが、
その一方でライター自身の主張部分に新しさとか、
関心を抱くようなところはなかったわけでして。
だからもし詳しい人なんかがプレイすると、
既視感のあるストーリーに感じてしまうおそれはあります。
こういう無知な人ほど楽しめるような類の話は、個人的に楽しめたとしても、
それは主観的に好きだと言えるにとどまるのであり、
このストーリーが凄いとか良いとは断じて言えないのでしょうね。
まぁでも、従来からの傾向という点では、
何だかんだで過去作に準じるくらいには楽しめるのかな。

もっとも、本作はボリュームこそあるものの、
次作も意識していることもあってか、
いまいち盛り上がりきれないような、スッキリしない部分もありまして。
従って長編を読み終わった後に、それ相応の満足感を求めるようだと、
なんだか物足りなく感じてしまうでしょうね。

他方で、従来と異なるジャンルを描くという観点からは、
少なくとも本作は失敗だったのではないかなと思うわけでして。
ぶっちゃけ、読んでいて飽きるのですよ。
まだ最初は普通に読めるのですが、
エンタメ性に欠ける盛り上がりのない展開がだらだらと続くものですから。
どこまでもどこまでも薄められたスープを延々と飲まされるような感じで、
右肩下がりにこちらのテンションが落ちてくるのです。

またメインシナリオはそれなりに良かったとして、
そこにメッセージ性は感じられるにしても、
ヒロインごとの個別ルートからはメッセージ性は感じられないわけで、
メインシナリオを追う観点からは不要にも感じてしまいます。

即ちラストのメインシナリオに関しては良作と言えるとしても、
序盤や個別ルートなどは部分的に取り出してみると、
佳作・凡作・駄作と様々に感じられるのです。
じゃあ、トータル的にはどうなのか、全部足して割れば良いのかというと、
作品というのは、そのような単純なものではありません。
ゲームデザイン次第で良い部分だけが印象に残る場合もあるし、
逆の場合だって当然にあります。
そして本作で一番失敗しているところがあるとするならば、
それはゲームデザインなのでしょう。

そもそも純粋な恋愛ゲー・萌えゲーなら序盤の日常の積み重ねは必要ですが、
ストーリー性を重視する作品には不要なのですよ。
それなのに恋愛SLGや恋愛ADVの構造に引きずられた作品が増え、
つまりまともなストーリー構成すらできていないようなノベルゲーが、
WIN以降に溢れかえってしまったわけでして。
だから個人的にはWINゲーになってシナリオゲーが増えたとか言われると、
性質の悪い笑い話にしか思えないのです。
本作についても、前半はもっと削れるはずであり、
そうすれば飽きたりダレたりすることも減ったでしょうに。

もっとも、それでもこの前半があったとしても、
工夫次第ではもっと印象は良くなったはずです。
というのも、本作はノベルゲーの中でも、
周回することで選択肢が増えていくタイプの作品になります。
つまりだるい前半を、何度も見る羽目になるのです。
現在の女性向け作品では一発で飛ぶ機能が半ば標準化されていますが、
この辺の機能は男性向けでは遅れていて、
まだ搭載されていなかったり何の工夫もない作品も多いです。
ボリュームの多い本作ではスキップだけでは明らかに足りないのに、
その辺への配慮は何もなく、時代遅れな印象を抱くと共に、
だるさだけがより一層増してしまうのです。

また本作は、章単位で構成されている作品であり、
その途中の章で個別ルートに分岐していく構造になります。
そしてその個別ルートの出来に微妙なものがあるにもかかわらず、
メインシナリオにはロックがかけられており、
先に個別ルートを全て見なければならないという、
オールクリア必須構造になっています。
かかる構造の作品はゼロ年代前半に増加しましたし、
レビュアー受けしやすい構造なのかもしれませんが、
他方で周りでは、それがエロゲ離れを進行させた原因にもなっていたわけで、
つまりは諸刃の剣でもあるのです。
メインシナリオは良いけど、出来の悪い個別ルートもある場合、
もしオールクリア必須でなければ、
出来の良いメインだけをクリアして満足というのもありと言えるでしょう。
しかしオールクリア必須になってしまうと、
出来の悪い個別ルートを読むことが強制されることになりますから、
その部分の評価も全体の評価に考慮せざるをえないし、
場合によっては途中でギブアップというおそれも出てきます。
それでも、出来の良し悪しは別としても、
全部読ませることに強い必要性があるのなら、
かかる構造を採ることも理解できますけどね。
ループモノなんかがその典型で、だから一時期流行ったのでしょうし。
しかし本作の場合は、個別ルートに特別な意味合いはないですし、
混ぜられた伏線なぞは幾らでも分離可能ですから、
個別ルートを先にクリアさせる必要性が高いとは言えません。
先にメインシナリオをクリアできる構造にしても良かったはずです。
そうすれば、だれるおそれは更に軽減できたでしょうに。

最近はキャラゲーが増えたこともありますが、
好きなルートからクリアできる構造の作品が増えています。
またボリュームの増加に伴い、メインシナリオは本編で楽しみ、
サブの個別ルートはファンディスクでというのも増えています。
別途購入を要するファンディスク形式には個人的に少し抵抗もあるものの、
とりあえず一般論としては、メインを堪能して、
その上でお好みで個別・サブを楽しむというのが、
最近の風潮でもあると思うのですけどね。
そうした最近の作品と比べると、
どうしても本作は一昔前の構造というような古臭さを感じてしまいます。

<グラフィック>


その他の部分として書くべき点は、グラフィックになるでしょうか。
背景の構図とかが、個人的には気に入ったわけでして。
あれっと思って見てみたら、本作の背景は吉田誠治さんなんですね。

普段、キャラデザは誰だよってのは気にするけれど、
背景を誰が手掛けているのかとか、あまり気にしないですからね。
もちろん作品単位では良いなと思った場合も幾つもあるのだけれど、
大抵は作品単位で褒めるにとどまり、
誰が手掛けたかまでは把握しないままで終わってしまいます。
それで昨年までは名前を覚えていなかったのですが、
今年は偶然にも本作の前に『絶対階級学園』やら『いなかえっち』やら、
いろいろ目にする機会が重なったものですから。
それで腰の重い自分でも覚えた感じですね。

余談ですが、調べてみたら自分の好きな作品の背景、
結構吉田さんが手掛けていたんですね。
もっと早く覚えておけよ~自分、みたいな。
いやはや、失礼しました。

まぁ背景の構図が良くとも、作品ごとのイメージやキャラとの組み合わせや、
会社ごとの塗りなど、他にも様々な要因がありますからね。
本作の場合は、その上で描かれる立ち絵やその動き、
演出などが平凡であるため、グラフィック全体でとなると、
普通かそれ以下の作品かなという印象になってしまいます。
だから一概にグラフィック全てが良いとは言えないのですが、
それでもとりあえず構図に関しては個人的には気に入ったなと。

それから、CGの枚数的には特に問題はないのかもしれませんが、
芸術を題材にしたシナリオゲーのわりには、
そういうCGが少なかったよなと思うわけでして。
例えばバトルものだったら迫力ある戦闘シーンのCGが欲しくなるように、
ジャンルによって要求される場面は異なってくるはず。
本作のCGを見てみても普通の恋愛ゲーと何ら変わらないわけで、
もう少しシナリオに合わせたものが欲しかったなと思いますし、
その辺の不満は大きかったです。

<感想・総合>


総じて、とにかく古臭い作品だよなと。

いや、メインシナリオは長く凍結されてはいましたが、
その内容自体は別に色褪せてはいないのですよ。
まぁシナリオの見せ方が一時代前だよなって気はしますが、
それでもゲームを構成する他の部分次第では、
現代的な作品に思えたでしょう。
しかし演出関連は全体としては普通かそれ以下ですし、
システム周りも水準より劣っていますし、
ゲームデザインも作品に合っていませんし、
それでいて昔にはよく見たような構造であることから、
全体として非常に古臭く見えてしまったということですね。
メインシナリオの内容自体は良作になりうる可能性を秘めていたのに、
それ以外の部分が組み合わさることにより、
すっかり黴てしまった感じと言えるでしょうか。

う~ん、若いユーザーにね、これは今の感性には合わないよと、
もう古いよと言われるのは仕方ないとしても、
自分みたいなのに古いと思われるのって、果たしてどうなんだろうなと。
私なんか、今でも古い作品を漁っては、
そこから新しさを発見して一人で喜んでいるようなタイプですからね。
純粋に古い作品でも、その中に新しさを見出したりもするのに、
まさか新作やって古臭いという印象を抱くとも思いませんでしたよ。

とにもかくにも一昔前のシナリオゲーとか呼ばれた作品らの、
それらの悪い部分が凝縮、或いは強調されたような作品でした。
メインシナリオは良かった、
でも、だからこそユーザーは離れエロゲは衰退したのだと、
その一見矛盾するかのような言葉を具現化したような作品でしたね。

ランク:D(凡作)

サクラノ詩

DVDソフトサクラノ詩

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