『大正×対称アリス episode1』

『大正×対称アリス episode1』

『大正×対称アリス episode1』は2015年にWIN用として、
Primulaから発売されました。

主人公である百合花の存在感が、とにかく際立った作品でしたね。

大正×対称アリス episode1

<概要>


ゲームジャンルはノベル系ADVになります。
episode1とあるように、本作は全4作の中の最初の作品になります。
尚、このEP1では、
「赤ずきん」と「シンデレラ」の二人のルートが収録されています。

あらすじ・・・鏡を通り抜けたら、そこは全てがあべこべな世界でした―
貴方は気がつくと、真っ黒な世界をさ迷っていました。
貴方には記憶がありません。自分が何者なのかも、名前すらも分かりません。
真っ黒な世界は貴方以外誰一人としておらず、
貴方は不安と淋しさで胸がいっぱいになります。
そんな時、貴方は一人の少年と出会います。
輝く金色の髪に美しい碧眼を持つ少年の名は「アリス」。
「アリス」は貴方を見るなり、貴方を「ありす」と呼びます。
どうやら、彼も記憶を失っており、
「アリス」という名前以外何も思い出せないようです。
困った貴方は、嫌がる「アリス」を連れ、再び世界をさ迷います。
やがて、貴方とアリスは水晶で出来た大きな大きな鏡を見つけます。
鏡の中は和と洋が混じり合った不思議な世界で、貴方は懐かしさを覚えます。
そうして、貴方とアリスが鏡を覗き込んでいると、
通り抜けて鏡の国へと入り込んでしまいます。鏡の国では、
性別が逆転した童話のキャラクターが貴方を『ヒロイン』として迎えます。
鏡の国で各童話の『ヒロイン』となった貴方は、
ちょっぴり不思議で歪な物語を、
ちょっぴり歪んだ童話の主人公たちと紡ぐことになります。
果たして、この物語の行く末はどうなってしまうのでしょう?

<キャラ>


碧眼の少年アリスから「ありす」と呼ばれた女性こそが、
本作の主人公である百合花(名前変更可)になります。
この百合花の存在感が、とにかく圧倒的な作品でした。
何でもこなせて、凄く利発で、行動力のある少女。
しかも指ぱっちんしながら英単語を口にし、妙なハイテンションのまま、
相手の懐の中にズカズカと踏み込んでいきつつ、
攻略対象の男どもを掌の上で踊らせるような女の子でして。

キャラの合う合わないは個々人により異なるでしょうが、
とりあえずこういう女の子をゲームで見ることは、まずないよなと。
普段私が多くプレイする男性向けノベルの場合、
主人公の内面にズカズカと入り込めるヒロインがいるとしても、
それはいわゆる白雉系の天然ヒロインばかりです。
そもそも設定上は利発なヒロインがいたとしても、
大概は男性ユーザーの都合に合わせて、
肝心な部分では設定を無視したような馬鹿キャラに成り下がります。
仮に利発さを維持しているヒロインがいるとしても、
一歩引いた感じの大人しいキャラになってしまいます。
本作の百合花のような広い意味での賢さと行動力の双方を備えつつ、
相手を翻弄して、妙なハイテンションで切り込んでくるキャラというのは、
本当に珍しいように思います。

とにかくアクの強い主人公ですので、
主人公と自分を同化しようとするタイプのプレイヤーだと、
少々抵抗が出てくるかもしれません。
その意味で少なからず人を選ぶ作品ではあるのですが、
個人的には凄く気に入りました。
この記事を書いている段階では、2015年で最も印象に残ったキャラですね。
うん、ホント、良いな~この娘。
本作はいわゆる乙女ゲームになるのですが、
ノベルゲームの大半を占める男性向けノベルでは、
現状では絶対に生み出せないヒロインと言えるでしょう。
このヒロインと出会えただけでも、個人的には非常に掘り出し物でした。

ただまぁ、百合花の個性が強いですし、
それだけでなくストーリーの構造レベルで、
既にプレイヤーと完全に切り離された存在ですからね。
こういう作品の場合、主人公であっても音声があった方が良かったかな。
もしプレイヤーの分身のような主人公なら音声なしでも構いませんが、
本作はストーリーレベルで分離しているだけに、
百合花の声があった方が作品の魅力が更に増したと思うのですけどね。

<ストーリー>


episode1とありますように、4分割された中の最初の作品になります。
各作品自体は低価格商品であり、本作には「赤ずきん」と「シンデレラ」の、
計二人のルートが収録されています。
本作は一般的なフルプライス作品よりはボリュームが少ないものの、
ミドルプライス作品並のボリュームがありますので、
価格からすればむしろ多い方と言えるでしょうね。

そして内容なのですが、本作はいわゆる乙女ゲームとなります。
有名な童話をモチーフにしつつも、鏡の国であべこべになっているので、
攻略対象である赤ずきんもシンデレラも男性です。
二人は細かい方向性では全然異なるのですが、
端的に広く説明するならば、どっちも駄目男です。
これ、乙女ゲー的にはどうなんだろうねw
いや、シナリオを読んでいれば百合花とお似合いだなとは思えるので、
キャラ同士のカップリングとして割り切って読める人は良いのですが、
問題は主人公に感情移入して、
男性キャラとの恋愛に浸りたいタイプの人ですね。
その場合、顔だけは良いけれど中身は駄目駄目な野郎たちを前にして、
作品に入っていけるのかなって疑問に思うのですよ。
主人公のアクの強さも相まって、少なくとも普通の乙女ゲーではありません。
従って、その点は事前に注意する必要があるのですが、
個人的には普通の乙女ゲーでないからこそ楽しめたとも言えますね。
そういう作品ですので、
むしろ男性の方がすんなりと楽しめるかもしれません。

本作は普通のノベルゲーで言うところの、
一部キャラの個別ルートしか収録されていないので、
全体的な謎は残っていますし、
タイトルの「大正」って何?って状況でもあります。
その辺に関しては、おそらく後の作品で解明されていくのでしょう。
いずれにしろ物語全体については判断することができないので、
あくまでも収録された各ルートのストーリーが評価対象になります。
各ルートはそれぞれの童話を大胆にアレンジしているものの、
それでも本質部分は残していまして。
これは上手く再構成したなと思いましたね。
単に童話をモチーフにしてしまうと、
先がどうなるのかという楽しみがなくなるおそれがあるのですが、
本作ではそういうこともなく、
久しぶりに物語に集中して読みふけった気がします。

物語に集中できたというのは、
個々のシナリオ・テキストが良かったというのも大きいでしょうね。
上記のように利発で行動力のある主人公らによる会話は、
読んでいて楽しいだけでなくテンポも非常に良かったです。
それで一気に楽しめたのでしょう。

グラフィック


グラフィック・サウンド・OPも高品質で雰囲気も良かったです。

ただ、価格を考慮しても、平均より少しCG枚数が少なかったですね。
年齢制限ありの作品だとHシーンで枚数を取られますので、
イベントCGの分量という点では年齢制限有りの作品と変わらないでしょう。
そのためプレイしていて極端に少なく感じることもないのですが、
客観的に枚数が少ないことは確かと言えるでしょう。

<感想・総合>


CGの量が少ないこともあってか、ゲームをしているというよりも、
良くも悪くも面白い小説を読んだというような印象が強い作品でした。

全4作の中の最初の作品ということで、
それを単独で評価するのも難しいのですが、
総合では暫定で良作としておきます。
CG枚数がもう少し多いか、或いは主人公に音声があれば、
本作がたとえ4分割の最初であっても文句なしに名作扱いだっただけに、
客観的な部分での不足が少し惜しかったですね。
それでもヒロインの魅力が圧倒的なので名作扱いでも構わないのですが、
それは一応後の作品にとっておくことにしましょう。
後続の作品でこれはと言えるのがあれば、それを名作扱いにし、
後続の作品が本作の枠から抜け出られないようであれば、
遡って本作を名作として再評価するかもといったところでしょうね。

分割作品は待たされるのが嫌で本来は好きではないのだけれど、
本作は年内に全て発売されるようでして。
これを掲載する段階では既に3作目が発売されており、
残すはラストエピソードを待つだけとなっています。
本作のようなきっちり計算された分割作品であるならば、
一年を通じたお楽しみとして遊べますし、
それであれば不満も特にないのかなと。
少なくとも自分は、こういう形式ならありだと思えます。
とにもかくにも百合花が魅力的であり、
自分にとっての2015年は『大正×対称アリス』に染まった一年だったと、
少し早いですがそんな風に振り返れるかもしれませんね。

ランク:B(良作)

大正×対称アリス episode1

大正×対称アリス episode1[限定版]

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