『臨界点 -CRITICAL POINT-』

『臨界点 -CRITICAL POINT-』

『臨界点 -CRITICAL POINT-』は1998年にWIN用として、
Sweet Basilから発売されました。

松崎健一氏が原作ということで話題になっただけでなく、
グラフィック・演出も非常に優れた作品でした。

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<概要>


ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・舞台は近未来の西暦2037年。
主人公・大隅レイジは元戦闘機パイロットの情報部大尉。
月面基地「ムーンベースD-02」に技術顧問の肩書きで派遣されるのだが、
本当の任務は作業効率の大幅な低下を続ける基地の特別査察。
即ち、原因不明のトラブルが相次ぐ基地内で、
何かしらの工作が行われていると判断した上層部により、
極秘調査任務を与えられたのだ。
だが、到着早々に彼は、基地内に渦巻く異様な状況を目の当たりにする。
基地のCIC(中央情報センター)で一人の女性隊員がいきなり服を乱し、
銃を片手に迫ってきたのだ。セックスを強要する彼女は、
手近な男性隊員と異常な行為に耽る。
事件は女性隊員の射殺及び男性隊員の巻き添え死という結末を見るが、
異常事態はそれだけでは治まらなかった。

<ストーリー・ゲームデザイン>


本作はアニメの脚本家の松崎健一氏が原作を担当しています。
時代が時代なので、知らない人も増えてきているかもしれないけれど、
例えば『機動戦士ガンダム』の脚本・設定・SF考証、
『超時空要塞マクロス』の脚本・シリーズ構成を手がけた人で、
経歴を調べれば有名な作品が次々に出てきます。
上記代表作を見れば分かるように、SF作品に強い方と言えるでしょう。
私も詳しいところまでは知らなかったのだけれど、
ガンダムにおけるスペースコロニー、ミノフスキー粒子、
ソーラ・システムなどの各種SF設定を行ったのも彼のようですし。
つまりガンダムを理論・設定面で支えたわけで、
彼がいなかったら、今日のガンダム人気はなかったかもしれません。

そしてその松崎氏が原作を手がけたSF作品が、本作というわけですね。
もっともガンダムやマクロスのようにロボットが派手に動き回る作品ではなく、
本作は月面基地内だけを舞台とした、こじんまりとした作品です。
ストーリーは分岐により多岐にわたるのですが、
基本的には閉鎖空間におけるサスペンスものですね。
そこに狂気が絡んできたりするわけです。
もちろんアンドロイドネタなど、
SF作品の定番ネタも各種盛り込まれていますので、
SF好きの方が楽しめる作品ではあるのでしょう。

ただ上記のように一番の根幹が閉鎖空間でのサスペンスということもあり、
過度にSF要素に期待すると、逆に肩すかしに感じてしまうと思います。
極論を言うならば、必ずしもSFである必要もなかったかもしれませんし。
じゃあ松崎氏を起用した意味はあるのかと思うかもしれませんが、
SFだけが全てではないですからね。
むしろストーリー作りよりも、設定作りにこそ真価のあるような方ですから。
本作は様々なタイプのストーリーへと分岐していくのですが、
各ストーリーの幅は広いしバラバラなのだけれど、
最初に判明している状況から無理なく展開されていくわけでして。
これは基礎となる設定がしっかりしているからこそ、
そこから派生した個々のシナリオが多岐に渡っていても、
破綻することなくしっかりと纏まったのでしょう。
アダルトゲームのライターの中には、テキストが自分に合う人も一杯いますし、
個々のシーンでは楽しめることも多いです。
その一方で、どうも基礎となる部分に弱さを感じることも多く、
それで作品全体となると薄っぺらく感じたことも多々ありました。
本作は、その基礎となる部分がしっかりしているわけで、
設定作りに定評のある松崎氏が原作を担当したということは、
派手なSF要素とかなくても十分に意義があったと言えるように思います。

とかくSFというジャンルはディープなファンが多く、
中途半端な物では批判を受けてしまいます。
アダルトゲームのSFものに満足いかない人もいるでしょうが、
そんな人でも本作なら楽しめるように思いますね。

キャラも様々なタイプがいて個性的ですし、
いろんな属性も盛り込まれていますし、シナリオも読みやすいですしね。
もっと注目されても良さそうなんですが、
発売当時の状況を考えてみれば、
私みたいなタイプはともかくとして、一般的には注目されにくかったのかも。

というのも、当時は既に恋愛ゲーが大人気でしたし、
もちろん抜きゲーに相当する陵辱ゲーも人気だったのだけれど、
純愛ゲーと陵辱ゲーという二分化が始まりだした時期でもありました。
二分化が進むということは、
それ以外のジャンルがマイナー化していることでもあります。
90年代後半からシナリオ重視の時代へなんて言う人もいるけれど、
90年代後半のWIN用作品でシナリオが良いとされるのって、
萌えキャラを前提としつつジャンルは恋愛ものばかりですからね。
それ以外のジャンルが消えていっただけに、
そんな偏りの進行と多様性の減少が進んでいく時代に対し、
それでシナリオ重視になっていったなどと言われても、
性質の悪い冗談にしか見えません。
まぁその辺は置いておくとしても、純愛が主目的でなく、
かと言って陵辱が主目的でもない、本作のようなSFものは、
WIN95で入ってきた新規ユーザーには注目されにくかったのでしょう。

逆にPC98時代からのユーザーだと、
こういう内容の作品は好きだと思うのですけどね。
ただこの場合、今度はゲームシステムがネックになってくるのでしょう。
本作は上記のように、ノベルゲームになります。
具体的にはクリックで読み進めつつ、
二択の選択肢から選ぶことにより、物語が分岐していきます。
PC98時代のゲーマーの場合、WIN95になって萌え・恋愛ものばかりになって、
それで離れていった人も多いですが、
ノベルゲーが嫌で離れていった人も多いですからね。
今のユーザーはノベルゲーが好きでやっている人ばかりなわけだし、
PC98時代から今現在もやっているって人でも、
その人は間違いなくノベルゲーが楽しめる人ばかりです。
私にしても、ノベルゲーを楽しめているからこそ、いまだにやっているわけだし、
たぶん数えたら名作扱いしたジャンルで一番多いのもノベルゲーでしょう。
そういうノベルゲーが好きな人ばかりが集まった場所では、
昔のコマンド選択式とかよりノベルゲーの方が、
進化して面白いと言われるでしょうが、
人の価値観なんて時代によっても人によっても異なるわけでして。
入力式や選択式やP&C式は楽しめても、
ノベルゲーはつまらないと感じる人も昔は多かったのです。
だから98時代からのユーザーだと本作の物語の内容的にはOKでも、
ジャンルがノベルゲーってだけでプレイする気がなくなる可能性は強かったと。

また、本作にもヒロインごとのENDはあるのですが、
メインヒロインが眼鏡娘ですからね。
これでは一般受けはしないでしょう。
だから結局、流行路線とは異なるSFストーリーものでも楽しめて、
なおかつノベルゲーも楽しめるという人だけが興味を示すわけであり、
当時はそういう人はかなり少なかったのだと思います。

<グラフィック・サウンド>


本作はボイス付きでした。
いわゆるシナリオゲーでは、まだ音声は付かないことも多かった時期なので、
これは比較的珍しいと言えるのでしょう。
時期が時期だけに、音声があるってだけでプラスになる人もいたでしょうが、
内容的に本作を好みそうなユーザーって、
ボイスが欲しいと思う人と被らないように思うので、
音声があることの良さをあまり理解してもらえなかったかもしれませんね。

そして何より、本作をプレイして驚かされたのはグラフィックでした。
まず本作では立ち絵に目パチ口パクがあります。
音声のある作品では欲しい機能だけに、これは嬉しいですね。

ところで、目パチ口パクのある作品でも、
一枚絵になると目パチ口パクがなくなり、それまでに動きのあったものが、
盛り上げるべき一枚絵のあるシーンで逆に動きがなくなることが多々あります。
最近では立ち絵の動きが増えてきましたが、
やっぱり一枚絵になると全く動きがなくなる作品が大半です。
だから一枚絵で動きのある作品を私は好むのですが、
驚いたことに本作は一枚絵でも目パチ口パクがあるのです。
まぁ全てのシーンというわけではないのですが、
本当にここぞというシーンでは、
一枚絵でキャラに口パクなどの動きがあるのです。

一枚絵で動きがあると、やっぱり迫力があって良いですね。
本作発売から既に15年以上が経ちましたが、
いまだに動きのない一枚絵が大半ですから。
本作は塗りも良いですし、グラフィックに関しては、
最近の普通のノベルゲーよりも本作の方が良くみえるくらいです。
ここのポイントは大きいですね。

<感想・総合>


システム周りが少し弱いかなという点を除けば、非常に優れた作品でした。
話題性という観点からはストーリーの方なのだろうけれど、
実際にプレイしてみると、演出の方の良さが際立っていましたね。

こだわりの作品といった感じで、作りたい物を作り込んだのでしょうし、
そういう作品は私の好むところでもあるのですが、
今回ばかりは、もうちょっとユーザーに媚びても良かったのかなと。
上述のように本作のストーリーを好む層と本作のシステムを好む層が、
いまいちマッチしておらず、せっかく出来が良いのに、
マイナーになることが目に見えた作品ですからね。
まぁ私は楽しんだから良いけれど、
ただ埋もれさせるのは勿体ないなと思ってしまいます。

最後に。
ゼロ年代前半は、後にアニメやラノベなど他媒体で活躍する人を輩出したと、
それで凄い時期だったみたいに言う人を時々見かけるのですけどね。
それってどうなんだろうと。
今現在エロゲを作っている人でも、後に他で活躍する人もいるでしょうし、
ゼロ年代前半と現在の比較は現在の段階ではできないでしょう。
そもそもゼロ年代以降は、優れた人材は他媒体に出ていくだけであり、
他媒体から大物が参加してくることはありません。
ゼロ年代に入ってからのエロゲというものは、
アニメやラノベへとステップアップするための前座、
ないし踏み台の様な存在になっています。
90年代までは、本作のような超有名脚本家が参加することもありましたし、
他作品では有名アニメーターが参加したり、
誰でも知っている超有名声優が名前を伏せて参加している作品もあったわけで、
他媒体からの参加・挑戦が結構あったんですよね。
逆に輩出という点では、90年代のライターで直木賞を取った人もいますし。

下を見れば変なのもいるけれど、他所からの大物の流入もあるということで、
私からすると90年代というのは、
サッカーで例えるならスペインリーグやプレミアリーグのような印象を受けます。
他方でゼロ年代以降というのは、
オランダリーグとかポルトガルリーグみたいに見えるんですよね。
無名のクリエイターを見つけ出すことも面白いけれど、
既に他媒体からの参入がなくなり、
優れた人材が出ていくだけになったゼロ年代前半が、
私には良い時期だったとは思えないわけでして。
90年代のように、いろんな所からいろんな人が参加できるような時代に、
そして他媒体の人が参加したいと思えるような魅力を持つ業界に、
またいつかなって欲しいなと思いますね。

ランク:A(名作)

臨界点

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