『流れ落ちる調べに乗せて』

『流れ落ちる調べに乗せて』

『流れ落ちる調べに乗せて』は2009年にWIN用として、
影法師から発売されました。

同サークルのデビュー作であり、
以前紹介した『闇を奔る刃の煌き』の後の話となります。

流れ落ちる調べに乗せて

<概要>


ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・――精々振り回されるがいい――
文明開花より数十年。大国との戦争を終え、平穏な日々が訪れた頃……。
『獅子舞』が評判のとある町にて、
数百年前の『異形を巡る戦い』が残した因縁が幾重にも重なり、
結び付き、やがてひとつの流れとなる!
普通だった筈の少女、呪いを抱えた講師、己を知らぬ人形師、裏側で生きる女。
同じ町にて同じ町を過ごす、四人の主人公達が織り成す四つの物語。
全ての因縁が交差する時、彼等が目にするモノとは――?

<感想>


影法師の作品としては本作がデビュー作であり、
以前紹介した『闇を奔る刃の煌き』が2作目になります。
両者は主人公や時代は異なるものの、話はつながっていて、
本作の前日譚が『闇を奔る刃の煌き』となります。

作品としては、どっちを先に読んでも構わないので、
興味を持った方から読めば良いのでしょう。
異能関連を最初から理解し、或いは発売順に読んだ方が良いだろと思うなら、
本作を先にとなると思います。

こういう作品の場合、大抵は私も発売順にプレイするのを薦めるのですが、
このシリーズに関しては、『闇を奔る刃の煌き』を先の方が良いのかなと。
時系列的には『闇を奔る刃の煌き』の方が先になりますし、
それと詳しくは後述しますが、本作の方が癖が強いので、
それで本作からプレイすると、
中には楽しめない人も出てくる可能性もあるかなと思いまして。
或いは、本作は楽しめても、
それで疲れて次に手を出さないで終わったりという懸念があるからです。
『闇を奔る刃の煌き』の方がすんなりと入っていきやすいですし、
それではまった人ならば、誰がすすめなくとも、
絶対に本作に手を出したくなりますからね。

なので、シリーズ未プレイの方は、
まず『闇を奔る刃の煌き』の記事を読んでみてください。
そこにこのサークルの特徴なども書いてありますし、
記事を読んで、或いはOHPの説明などを見て、
面白そうかなと思ったら、先にそちらをプレイしてもらいたいと思います。
まぁストーリー重視と思っているプレイヤーなら、
『闇を奔る刃の煌き』をプレイせずに何をプレイするんだと、
そんな風にも思ってしまいますけどねw

さて、ここから本作の特徴に入りつつ、上述した本作の癖にも触れたいなと。
まず本作の良い点として、次作は完全な一本道になっているのですが、
本作では4人の主人公の物語になっており、
それらは好きな順にいつでも切り替えて読むことのできる、
いわゆるザッピングゲームとなっています。
まぁ、ゲーム性の観点からザッピングが活かされているわけではないので、
読んでいる最中に主人公をころころ変える人はいないと思いますけどね。
精々4人の物語を、自分の好きな順で読めるってくらいで。
もっとも、同時期に展開される4人の主人公の物語を読むことで、
ストーリーの全体像を多角的に捉えることができますし、
マルチサイトの作品としては十分に機能しています。
その意味では、次作よりゲームらしい構造を有していますし、
マルチサイト系の作品が好きな人にはオススメです。

それとね、4人の物語をどれから読んでも構わないということは、
それぞれの物語がきちんと独立性を有しているということであり、
同時に、一人の物語を読んだだけでも、きちんと話が通じるということです。
よく伏線が凄いとかいわれる作品をプレイするのですが、
男性向けノベルゲーの場合、単に事実を隠して意味不明にしておき、
後のルートで解明されるというものが多いです。
私は、そんなの伏線でも何でもないだろと思ってしまうし、
最初に読んで意味不明な文章は単純に読んでいて楽しくないです。
本作は、きちんと分るように話が進んでいきますので、
どこから読んでも楽しめるわけですね。
それでいて多角的に表現することで、
あぁ~あの時のあのキャラの態度は、こういう他の意味もあったのかと、
隠された複数の意図を読み取ることができ、物語の深みが増してくると。

このマルチサイト構造は次作より明らかに良い点ですし、
他にも次作は夫婦の立志伝という方向性が強くなっているのに対し、
本作の方が異能の成分が強めになっていますので、
伝奇・異能系の話が大好きな人は、本作の方が好みに合いやすいでしょう。
また、次作での因縁の決着が、本作でなされますしね。

というわけで、本作には次作にはない良い点も複数あるのですが、
問題は癖の方ですね。
一つは、このサークルの良さはシナリオ(テキスト)にあると思いますが、
その良さは次作の方が徹底ないし洗練されているのです。
上記のように、本作には無駄に隠すようなことはないのですが、
それでも主人公だけが先走りプレイヤーが置いて行かれる場面が、
若干ですが本作にもありまして。
また特にバトルシーンなどで、本作の方が少しくどいのですよ。
まぁ、それでも他のノベルゲーよりは面白いのだけれど、
本作だけだったら、次作をプレイした時に感じたような、
このテキストは上手いなという印象は抱かなかったかもしれません。

もう一つは、グラフィックに関してですね。
本作はノベルゲーであり、他所との違いは立ち絵の代わりに、
短冊形のフェイスウインドウを用いていることが挙げられます。
これについては、次作の感想の記事でも褒めているので、
詳しくはそちらを読んでもらいたいですし、
基本的な利点は本作でも同様なのでしょう。
ただ、次作がフルカラーなのに対して、本作は白黒なのです。
だから本作も短冊ウインドウを用いた演出は良いのだけれど、
白黒画面が地味に見えてしまう可能性は否定できないのでしょう。

下手に先入観を持たない方が次作を楽しめるというのもありますが、
以上の癖があることから、
個人的には次作を先にプレイして欲しいと思ったわけですね。

4人の物語については、ここでは深入りしません。
以前の次作の感想で存分に書いて、
何かもう、思い残すことはないなとか勝手に満足しちゃったものですからw
細かいあらすじなんかはOHPにも載っていますしね。
とりあえず、次作ほどのインパクトはないにしても十分面白いですし、
上記に様に多角的に描かれるなど、異なった良さもありますからね。
次作を楽しめた人ならば、間違いなく楽しめると思います。

因みに設定資料集によると、人気投票での1位は「犬」だったようで。
こういうノベルゲーで主人公でもヒロインでもない、
そもそも人間ですらないキャラが1位を取る作品は、
他に『EXTRAVAGANZA』や『自律機動戦車イヅナ』などもあるように、
経験上、アタリになることが多いように思います。

<総合>


基本的に私は、発売時の状況で判断するべきと考えるタイプなんですけどね。
でも本作の場合、製作者は何も強制していないのですよ。
例えば他のノベルゲーのように、
こういう順番で読めってロックされ強制された場合、
それでいて後から補完する物が出てくると、
だったら先にそれをやれと抵抗を感じてしまいます。
しかし、本作にはそれがないんですよね。
どうぞ好きな順序で読んでください、
そしてそれで印象が変わるなら、それもまた良しって感じで。
だから次作を先に読んで、それで抱いた印象を元に本作を語るのも、
この作品に限ってはありなんだと思います。
そういうのも全部ひっくるめた上で設計されているのが、本作なのですから。

一応本作の発売時を基準に、次作がなかったものとして考え、
総合では良作としておきます。
でも、シリーズ全体を通した上で、
上記のような観点から本作を名作と言うことも十分ありえるかと思います。

まぁ、何度も繰り返しますが、とりあえずは次作の方ですね。
そっちをやって楽しかった人は、
誰が反対しても本作をプレイしたくなるでしょうから。
何年ぶりかに設定資料集まで買ったシリーズですが、
それだけの満足度を有している作品でした。

ランク:B(良作)

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