『NO,THANK YOU!!!』

『NO,THANK YOU!!!』

『NO,THANK YOU!!!』は2013年にWIN用として、
parade.から発売されました。

フルプライスでお金を取るということは、こういうことなのだと、
同人やインディーズにはない魅力と、プロの仕事を見せつけられた作品でした。

NO,THANK YOU!!!

<概要>


ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・車にひかれてはじまった、長くて短い夏休み。
夏の訪れを間近に感じる6月のある日。
主人公は暴走車に狙われた男をかばって轢かれ、記憶を失う。
身元を示すものを持っておらず、当然頼る当てもないとあって、
責任を感じた男の元で働くことになった主人公。
連れて行かれたのは繁華街の外れにある小さなバー「sotano」。
表向きはこじんまりとしたジャズバーであるその店は、
もう一つの別の顔を持っていた。
警察や正規の探偵社には持ち込めない、キナ臭い依頼を扱う何でも屋。
従業員たちに「ハル」と名付けられた主人公は、
バーテンダー見習いとして働きながら、次第に店に深入りして行く。

<感想>


本作は女性向けの、いわゆる18禁BLゲームになります。

率直な感想を言うならば、あまり自分が楽しみきれた作品ではないのでしょう。
しかし、合う合わないで済まされる作品ではないし、
仮に自分に合いさえすれば最高の作品にもなりうる作品なのだと思います。

というわけで、先にマイナス面というか、
人によっては長所になるのだろうけど、自分は・・・って部分から入ります。
本作は、シナリオは良いのです。
癖もなく読みやすくて、熱狂的な信者を生むタイプではないだろうけれど、
テンポも良いから誰でも楽しめる類のテキストです。
ただ、物語の核心に入るまでの盛り上がり始めるのに少し時間がかかり、
男性向けゲーだったらトゥルールートとかもう一つ何か加えそうな部分がなく、
ラストの盛り上がりも少し足りないかなということで、
肝心の最初と最後の印象が少し弱めに感じたもので。
そのためストーリー全体は、それなりには良かったのだろうけれど、
特別印象深いとまでは言えないように感じたんですね。

ストーリーに関しては、1周クリアすることでルートが解放され、
同じキャラでも2周することに意味があります。
そうした構造が女性ユーザーには珍しく見え、
それもあって受けたのだろうけれど、
私はそういう構造に辟易して女性向けに興味を持ったくらいなので、
少なくともプラスには感じられなかったと。

それと、本作は総CGが3000枚超えとなっており、
枚数だけ聞くと凄い量に感じてしまいます。
もっとも一枚絵のちょっとした差分の違いという物が非常に多いので、
差分抜きの枚数は平均よりは多いものの、
それほど飛び抜けた枚数でもありません。
目パチや口パクもないし、特別なエフェクトもないので、
枚数のわりにはプレイしていて普通のノベルゲーって印象が強かったのかなと。

また本作は「NO,THANK YOU!!!ボタン」を押すことで、
フラグをへし折ることができるというシステムを採用しています。
しかし、たまにしか出て来ないもので、
立ちまくるフラグをバキバキ折りながら突き進むという作品ではなく、
このシステムに関してはオマケ程度でしかなかったのかなと。

あと、極めて主観的な話ですが、耽美な美少年やショタはOKだけど、
ガチムチのオッサンは、やっぱりちょっとつらいです。

以上が、人によっては長所になりそうだけど、
自分はそう感じられなかったポイントとなるでしょうか。

もっとも、ストーリーは好みの問題もありますからね。
上記のようにテキスト自体は楽しめましたし、
救いや安直でもハッピーを求める人には向いていないけれど、
現実的に行動するキャラたちにのしかかる重苦しい雰囲気は、
これはこれで他作品ではなかなか得難いものがありますし。

CGも私が思ったほど多く感じなかったというのにしても、
それは自分が差分込みより差分抜きの枚数を重視するからであって、
客観的な差分込みの分量は最大級のレベルで多いわけですし。
何せ300枚でも多い方なのに、
本作は3000枚以上で桁が一つ違うわけですから。
本作は毛のオンオフもありますし、
差分込みの細かい変化を重視する人ほど好印象になるのでしょう。

また「NO,THANK YOU!!!ボタン」も完全に機能しているとまでは言えないですが、
それでも多少の緊張感を生み出し、通常のノベルよりは楽しめますしね。

そして何より本作で凄かったのは、システム周りなのだと思います。
システム周りの発展に関しては、
これは男性向けと女性向けの両方をプレイする人なら分ると思うのですが、
異なる発展をしてきているんですね。
男性向けがファーストプレイでの快適さを第一に発展したのに対し、
女性向けは周回プレイやプレイ後でも楽しめるように、
長く作品を楽しんでもらえることを重視して発展したように、
個人的には思うわけでして。
だから男性向けでシステム周り完璧と言われる作品をやっても、
女性向けに慣れていると、幾つもの機能が欠けているように感じてしまいます。
逆も然りで、女性向けでシステム周りが完璧と言われている作品をやっても、
男性向けに慣れていると、細かい調整ができないなと感じてしまうのです。

本作は男性向けの最高峰のシステム周りの良さを有しつつ、
そこに女性向け特有の機能が幾つか追加された感じであり、
両者のシステムの良いところを融合させた作品と言えるのでしょう。
本作より前にも両方の傾向を有している作品はあるでしょうが、
一番多く網羅しているのは本作だと思います。
両方をプレイしている人なら、両方の良いところがようやくマッチしたと感じ、
一方しかプレイしていなかった人なら、
こんな機能もあるのかと、その親切さに驚くことでしょう。

まぁ、男性向けがとか女性向けがとか歴史的な部分から振り返らなくても、
単純に使いやすいのは良いですよね。
画像の大きさから各種調整までやれて、ボイスセーブもできるし、
クリア後には既読イベントを見ることができつつ、
自分の辿ったルートをチャートで確認でき、ヒント機能も搭載していると。
他にCGを拡大して鑑賞できたりもしますしね。
ファーストプレイでの快適さ、クリア後の再プレイのしやすさなど、
ここまで揃った作品はまずないでしょうね。

<総合>


私は最近は低価格商品や同人作品も好んでプレイしますが、
それはフルプライス作品に価格分の価値を見出せなくなったからです。
低価格商品の分量を単に水増しで増やしただけの作品も多く、
フルプライス作品として、その分の多くのお金を取るべき努力を、
作品から感じ取れることが少なくなったのですよ。
もちろん、ストーリーとかが自分のツボにきた場合には、
価格以上の感動を得ることもあります。
しかし私が高い価値を見出したとしても、
ストーリーを楽しめなかった他の人がいたら、
その人には何の価値も感じられないのでしょう。
ストーリーが合ったか合わないかで評価が決まってしまうような、
現状は極端に言えばそういう業界になってしまっています。

本作は、そこが違うんですよね。
総数3000枚を超えるCGに、ボリューム十分なエロとシナリオ。
購入意欲を湧きたてるゲームデザインに、
プレイ中の快適さを常に考えて設計されたシステム周り。
そしてクリア後も楽しんでもらえるよう、また再プレイもしやすいよう、
各種オマケやヒントも充実しているわけでして。
1000円や2000円で買える低価格作品や同人ではなく、
その何倍もする他メディアと比べても非常に高価なフルプライス作品。
時には紙芝居とも揶揄されるノベルゲーにおいて、
そこでフルプライスの価格をユーザーに出させるということは、
一体どういうことなのか。
その分の満足感を得てもらうために製作側がやれることは何か、
小説等にはない機能を盛り込み、
低価格商品では手が回らないところまで気を配ることで、
それらとは異なる、フルプライス作品としての価値を作り上げたと。
製作陣も、いろんなブランドの良い点を研究し取り入れ、
それでここまでやれれば、やりきったという気持ちで一杯だと思います。
またこういう作品を見せつけられてしまうと、
多少自分の好みでなくても、それは単に自分に合わなかっただけで、
物としては一流なんだと納得してしまうんですよね。
そこがストーリーが合わないと無価値になりうるノベルゲーとの違いであり、
それだけの説得力が、この作品にはあるのだと思います。

私自身は少しひっかかる部分もあったので、
それほど好きな作品でもないですけどね。
でも、ここまでやられたら、どれだけ低く見ても良作でしょうし、
一応現時点としては名作としておきます。

まぁ、本作は、ある意味危険なんですよね。
優れた同人作品をプレイしてしまうと、
フルプライス作品を購入するのが馬鹿馬鹿しく感じることがあります。
そのような商業キラーの作品があるとするならば、
本作は逆に同人キラーなのでしょう。
本作をプレイしてしまうと、
同人ゲーがあちこち欠けているものばかりに感じられ、
しばらくは同人ゲーを楽しめなくなってしまうおそれがありますから。

とりあえず、ガチムチのBLが好きな人は、間違いなく買いでしょう。
それ以外の人は、上述のようなプロの仕事、
今のノベルゲーの最高峰のシステム周りに興味のある人も買いでしょう。
それと、後はシリアスな展開をどれだけ好むかですね。
鬱だの胃が痛いだの言われている高評価の作品でも、
どうも最近のは温く、ユーザーに都合の良い展開があったりしますからね。
そんなまやかし物ではなくて、本当にリアルでのしかかるような鬱な作品って、
意外と評判が伸びないものですが、
もしそういうのに向き合いたいタイプの人であれば、
そういう人の方が本作は楽しめるように思いますね。

ランク:A-(名作)

AMAZON
NO,THANK YOU!!!

駿河屋
DVDソフトNO THANK YOU

ダウンロード版
NO,THANK YOU!!! dl

関連するタグ WIN /ADV /ノベル系 /


面影レイルバック   美少女万華鏡 -罪と罰の少女-  蒼の彼方のフォーリズム EXTRA1
カテゴリ「2013」内の前後の記事
トラックバック http://advgamer.blog.fc2.com/tb.php/2700-069711ec
| ホームへ戻る |