蜜柑

蜜柑

『蜜柑』は2001年にWIN用として、
シーズウェアから発売されました。

ジャンル:ノベル系ADV 属性:館 ホラー 狂気

蜜柑

『蜜柑』って言われても、作品のイメージが沸かないかと思います。
これは未完にかけた言葉なのですが、まずは商品説明を引用させてもらいます。

「古本屋「蜜柑屋」に入った主人公は、
本棚を見ると自らの未完の小説「虚ろなる器」を見付ける。
ヒロインのイメージが浮かばない事から、
筆を止めてしまっていた未発表の小説で、続きを書こうとすると、
まるで自分が物語の世界に入り込んだかのように想像の世界が目前に広がる。
登場するヒロイン達は彼の描いた物語のままに行動するが、
その物語の中に登場しないはずの第2のヒロインが現れる。
彼女だけは彼の予期せぬ行動を取り、
その存在はやがて物語に波乱を呼んでいく。
何故居るはずの無い彼女が存在し、何故「虚ろなる器」は未完なのか…」

もしかしたら天下を取れていたかもしれないブランド、シーズウェア。
EVEをはじめとした代表作や特に演出面等で高い技術を有しながらも、
相次ぐバグ騒動でユーザーの多くにそっぽを向かれた感じでしたが、
そのシーズウェア末期に出された本作は、
良い意味でとてもシーズウェアらしい作品でした。

さて、本作はいわゆる館物に該当するのでしょう。
シーズウェアの出発点と言えば『禁断の血族』であり、
館物ブームの火付け役となった作品です。
シーズはその後も禁断の血族シリーズを発売していますからね、
館物のブランドってイメージを持っている人も結構多かったかと思います。
久しぶりの館物となった本作は、
原点回帰のような懐かしさを感じさせてくれましたね。
もちろん館物としても良く出来ていましたし、
ここは面目躍如ってところでしょうね。

また舞台は基本となる現代があって、
そこから架空の3つの世界を堪能することになります。
同じ外見のキャラが何度も役柄と設定を代えて出てくるので、
そのあたりは『XENON』にも似ていたでしょうか。

どこか暗めの雰囲気は、WIN95時代の初期の頃の作品のようでもありました。
また、ストーリーの構造に変化をもたせるあたりは、
90年代後半の『かぜおと、ちりん』などのような、
それら意欲作に似た雰囲気でもありました。

WINDOWS以降のシーズのCGは質の高いものも多かったです。
それは本作も健在で、質は高かったですね。
ただ、バグが頻発していた頃はアニメーションも多かったですが、
本作ではアニメーションはありません。

そのかわり、バグ頻発時代が嘘のように、
本作のシステムは快適に作られています。
地味ではありますが、先の教訓を活かして丁寧に作られた作品でした。

地味…本作は端的に表現すると、地味なんですよね。
グラフィックの色調が抑えられていることもありますが、
とにかく全体的に地味な印象が強いのです。
加えて突飛で奇抜なキャラとかもいませんので、
アクの強いキャラと萌えを求める人には物足りないかもしれません。

しかし、ストーリーもグラフィックもサウンドも、
どれも落ち着いた感じではあるものの、非常に高レベルだったわけでして。
そして1つ1つが高レベルなだけでなく、
全体の調和が非常に良く取れていました。
それぞれの要素が単独で主張するというのではなく、
互いに別の要素を引き立てあうって感じなんですよね。
なので、プレイしていてとても雰囲気が良く感じられたのです。

項目を立ててレビューをすると逆に見落としがちな部分ではありますが、
各要素が絡まりあうことで生じる全体の調和や雰囲気。
それこそが本作の最大の魅力なのであり、
言い換えれば完成度の高さという表現になるのでしょう。

総合ではかなり名作に近い良作としておきます。
全体の調和は非常に良いものの、
ストーリーのラストだけが少々ぼやけてしまった点と、
完成度より個性を重視する私には、
本作だけの強烈な個性があと一歩足らなく感じたものですから。

とは言え、いつもの基準だと良作止まりってだけで、
評価以上に好きな作品でしたね。
名作扱いでも良いと思いますし。
この派手さはないけど何か好きなんだよな?って感覚は、
プレイした人なら理解してもらえるような気がします。
どちらかというと、初心者に今すぐやれってタイプのゲームではなく、
もう一通りやって少し飽きてきたって頃にやると、
あぁ?こんなゲームもあるんだ、
こういうのもあるならまだゲームも捨てたもんじゃないって思わせる、
そういう類の作品のように思いますね。

いろんな意味でこれまでのシーズの歩みを象徴したかのような作品でした。
しかし、これだけ良い内容なのに、
再びシーズが脚光を浴びることはありませんでした。
度重なるバグで完全にそっぽを向かれたのか、
それとも作風が萌えを中心とした流行から逸れてしまったことが大きいのか。
原因は幾つも挙げられるので断定はできませんが、
結果的に本作がマイナーな存在で終わってしまったことは確かなわけです。

つくづく、このゲームがもっと早く出ていればと思わざるを得ませんね。
そしたら、シーズはもっと違った展開もありえたでしょうに。
好きなブランドだったし一時期はとても勢いがあっただけに、
本当に勿体無かったですね。

ランク:B(良作)

DL版
蜜柑

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3つの架空世界のキャラの性格がそれぞれ違うのが面白かったです。
一番好きなのは現実世界の杏先生でした。
架空世界ではどれもなんか冷遇されてる感じがしたのですが
それも複線だったと分かった時にテンション急上昇しましたね。
シナリオライターが複数いたのでそこまで考えているとは思いませんでした。
カレー作りに来るシーンは一番お気に入りです。
この作品から紫苑みやびさんと春日アンさんの演技力に注目するようになりました。

こんばんは、コメントありがとうございます。
>3つの架空世界のキャラの性格がそれぞれ違うのが面白かったです。
そうですよね。
今度はどんな展開になるのだろうかと、新鮮にプレイできたのは大きかったです。
恥ずかしながら中々声優さんの名前を覚えられないのですが、どれも作品にマッチしていましたし、全体的にとても良かったですね。
ライターも複数でストーリーも複数なのに、ほとんど気になりませんでした。しっかりと全体の纏まりも図られていて、そういったところが魅力なんでしょうね。

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