『サナトリウム・オブ・ロマンス (ピーチアップ6)』

『サナトリウム・オブ・ロマンス (ピーチアップ6)』

『ピーチアップ6』は1990年にMSX2用として、
もものきはうすから発売されました。

その中に収録されている『サナトリウム・オブ・ロマンス』は、
元祖泣きゲー的存在であり、MSX2屈指の名作ADVとしても有名でしたね。

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<概要>


最近ではほとんど見かけないように思いますが、
PC88やPC98の頃にはディスクマガジンと呼ばれる形式のソフトが、
結構多く存在していました。
当時の書籍なんかでも、ADVやRPGとかと並んで、
ディスクマガジンも一つの枠として扱われていましたしね。

ディスクマガジンは物にもよるのですが、
概ねオリジナルのミニゲームが数本に、
商業作品のデモや体験版が収録されているという構成でした。

『ピーチアップ』はMSX2用のディスクマガジンであり、
奇数月に発売されていました。
発売元は「もものきはうす」で、『ぷよぷよ』で有名だったコンパイルの、
アダルトゲーム専門ブランドになります。

そして6作目である『ピーチアップ6』には、
『サナトリウム・オブ・ロマンス』『ピンクダイナマイト』
『数当てゲーム・もっと大きいよ』という3本のオリジナルゲームと、
エルフの『ドラゴンナイト』の後取り体験版が収録されていました。

『数当てゲーム・もっと大きいよ』は文字通り数字当てゲームで、
正解すると女の子が一枚ずつ服を脱いでいきます。

『ピンクダイナマイト』は、80年代に流行した記憶ゲーム、
『サイモン』をアダルトゲームにアレンジしたものです。
まぁ、「サイモン」って言われて即座に分かる人がどれだけいるか謎ですが、
調べたら復刻版とかいろいろ出ているんですね。
これは4つのキーの光る順番を覚えて、順番通りに方向キーを押し、
正解すると女の子を脱がせることができるという内容でした。

<サナトリウム・オブ・ロマンス>


そして肝心の『サナトリウム・オブ・ロマンス』です。
MSX2のオリジナルADVというのも少ないのですが、
MSX2オリジナルでは唯一の名作であるとか、
最初の名作であるとか、言い回しは人により多少異なるものの、
MSX2を代表するオリジナルADVである点に関しては、
疑う余地がないのでしょう。

泣いたという人もいましたし、今風に言うのなら泣きゲーになるでしょうか。
昔はレッテル張りに抵抗を示す人も多かったですから、
そんな風に言う人はいなかったでしょうが。
泣きゲーと言うと、今だと泣きに特化し泣きが長所の作品なのだと、
肯定的に捉えてもらえるのでしょう。
しかし昔は泣きゲーと言ってしまうと、泣き要素しか見る価値のない、
そんな一点しか取り柄のない欠陥と捉えられかねないですから。
ギャルゲーにしても、今なら可愛い女の子の出てくる作品という感じで、
肯定的に捉えられています。
しかし元々は、女の子しか取り柄のない欠陥だらけの作品として、
馬鹿にする対象でしかなかったですからね。

確かに、何でもかんでも安易に○○ゲーと言ってしまう近年の風潮に対しては、
個人的にも少々苦々しく思っています。
シナリオゲーと思った作品は抜けなくても文句言わないのに、
ダーク系のストーリー重視作品に対し、
ダーク系の設定ってだけで勝手に抜きゲー扱いして、
抜きゲーなのに抜けないとか言い出すのを見ると、馬鹿としか思えないですから。
まだ製作者が言うのならともかく、ユーザーが勝手に何々ゲーと決め付け、
それでいて何々ゲーならこうであるべきなのに違うから駄目とか、
それって最初にお前が勝手に決めつけた時点で間違っているじゃんって、
そんなケースを何度も目にして、馬鹿馬鹿しく思ったものですから。
結局どういう作品なのかを見極めようとせず、事前に自分が勝手に予想し、
その予想に沿わぬ展開は駄目と言っているようなもので、
近年のこういう風潮は何とかならないかと思ってしまいます。

とは言え、80年代は80年代で、面倒臭いユーザーもいますけどね。
過度なカテゴライズは良くないと思いつつも、
多少の簡易表現は読む方にも便利だと思うから、
私も「コマンド選択式ADV」とか「ノベル系ADV」って表現は用います。
でも、それにすらケチを付けてくる人もいますから。
で、ケチを付けてきた当人は長々説明した上に最後はぼかして~って、
それで上手くやったつもりかもしれないけれど、
こっちからしたらそれじゃあ長いだけで何の説明にもなってないよと。
しかも、ぼかして終わってどうすんだと。
細かい事情を知らない人には意味不明でしょうが、
とりあえず古参の中には、そんな理解不能な面倒臭いのがいるのですよ。
で、そんな面倒臭いのがいるから、
安易に泣きゲーとは言わない方が良いのだろうけれど、
あえて今風に言うのなら「元祖泣きゲー」みたいなものなんだと思います。
まぁ同時に、百合ゲーでもあるんですけどね。

さて、本作は汚染された空気に耐えられない少年少女たちを収容した、
山奥のサナトリウムから物語が始まります。
少女らはサナトリウムから出ることになるも、
やがて一人力尽き、二人力尽きとなっていくわけでして。
4人の少年少女らの心理描写を中心とし、
彼女らの生と死に対する葛藤や、狭間で揺れる苦悩を描いた作品だったのです。

アダルトゲームではあるものの、
これまた今風に言えば、完全にシナリオゲーですね。
ストーリー・シナリオの良いADVというもの、
ADVに限らずゲーム全般で考えても良いのですが、
これまでにもストーリーやシナリオの良い作品は幾つも存在します。
しかしストーリーと言っても種類・ジャンルは一杯あるわけで、
それまでの作品でストーリーが良い物というのは、
ミステリーとして優れているとか、
ファンタジーやSFとして優れているとか、そういうものばかりでした。
生とは?死とは?という内容で、泣けるような切なさを持つ作品というのは、
本作以前にはなかったのではないでしょうか。
それだけに、その存在感が際立っていたのです。

それと本作で泣いた人、或いは泣けるまではいかなくとも、
その切なさが心に響いた人ってのはかなりいると思うのだけれど、
元々が定価3800円の低価格商品であり、
しかもその中のミニゲームの一つとして収録されている作品ですからね。
だから大長編の凄い規模のストーリーが展開されるってわけではありません。
でも、短時間でもプレイした人の心を掴めたのは、
その幻想的なグラフィックの醸し出す雰囲気と、
抜群のサウンドの相乗効果があったからなのでしょう。
後に泣きゲーで有名になるkeyの作品にしてもそうですが、
感情に訴えかけ、人の心に響いてくるADVって、
シナリオそのものが良いってよりも、
むしろ秀逸なサウンドの存在が大きいケースが多いですからね。
シナリオ重視って言うとテキストにしか興味を示さない人もいるけれど、
感動したと言われる作品をテキストだけで判断するのはナンセンスであり、
本作にしても、あのグラフィックとサウンドあってこそなのだと思います。

<総合>


これは、今でも珠玉の短編としていけそうに思いますが、
発売時期とかも考慮すると更に凄味が分かるのかなと。

『同級生』以前にシナリオの良いアダルトゲーはないなんて言っている人に、
マジでこういう作品をやらせてみたいよなって思います。
こういうのをプレイもせずに、勝手に決めつけるなよって。
優れた絵と音とテキストの相乗効果で楽しませるノベルゲーって言っても、
そんなのは本作が既に実現していることを、
その方向性を後追いしているだけですからね。

私の評価は、たぶんこれでも辛い方だと思うわけで、
本作はこの時期のアダルトゲームの中でも、
特にシナリオと雰囲気の優れた作品でしたね。

ランク:A(名作)

ピーチアップ6

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