『めぐり、ひとひら。』

『めぐり、ひとひら。』

『めぐり、ひとひら。』は2003年にWIN用として、
キャラメルBOXから発売されました。

エモーショナルノベルということで注目した作品でしたね。

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<概要>


ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・主人公はごく普通の男の子。
人とちょっと違うモノが見えてしまうがゆえ
世間から異端の目で見られることも多く、
彼の唯一の救いは妹の「こま」の存在であった。しかし彼女は今はいない…。
主人公を守るため3年前に死んでしまったのである。
彼が人生にちょっと疲れて訪れたひなびた田舎町、
そこで出会ったのが古い寂れた「ゆかり神社」の神様「結乃由姫命」であった。
縁結びの神である「由(ゆえ)」は主人公の願いである妹との再会をかなえるため、
ご神体にこまの魂を封じ込め彼女は再び主人公の前に姿をあらわす。
そこに主人公を兄と慕う許婚や刀の精やメイドの幽霊など
おかしなメンバーが自然と集まり、共同で暮らすことになる。
片田舎の寂れた神社で突如訪れたにぎやかな家族のような生活をはじめる
主人公…。あとに訪れるあんな出来事があるとは露とも知らずに…。

<感想>


たぶん今だと原画にもライターにもファンがいると思うので、
それぞれの観点から語られることも多いのでしょう。

本作の原画は「のり太」さんで、最近の絵は非常に好きなのだけれど、
好きになったのは『処女はお姉さまに恋してる 2人のエルダー』辺りからで、
それ以前の絵は本作を含めて、ぼってりした感じで特に印象に残らなかったです。

ライターは「朱門優」さんで、本作は伝奇ものなのですが、
良くも悪くも朱門作品なのかなと。
ファンなら楽しめると思うし、そうでなければ普通って感じで。
ただ伝奇ものとしては楽しめるとしても、
本作は共通ルートが大半で個別が非常に少ないことから、
恋愛ものとしては期待できない作品です。
また主人公が非常にヘタレなので、
しっかりした主人公の恋愛ものを求める人とは、
非常に相性の悪い作品と言えるように思います。

それ以上の詳しい部分は他所に任せちゃうとして、
今回書きたかったのは、むしろゲームデザイン面の話になります。

本作はテキストが画面全体を覆うタイプのノベルゲーであり、
時にはビジュアルノベルと呼ばれる類の作品になります。
この辺は何とも皮肉な話でして、
ビジュアルの表示の仕方にこだわるからビジュアルノベルだとすると、
いろいろ工夫された本作は、まさしくビジュアルノベルなのでしょう。
でも、単に絵の上にテキストを重ねただけという表面だけ模倣したような作品は、
安易にビジュアルノベルと名付けちゃったりもするけれど、
本気で考えて工夫して進化させたと自信がある作り手からすれば、
そんな過去の遺物と一緒にすんなやって気持ちもあるのでしょう。
だからでしょうか、本作ではビジュアルノベルではなく、
エモーショナルノベルと名付けられています。

さて、そのエモーショナルノベルなのですが、
基本は画面全体をテキストで覆うというタイプになるものの、
これだとキャラの表情の変化がテキストで隠されてしまい、
見えなくなってしまいます。
そこで本作ではキャラが登場すると、テキスト欄が左右にずれます。
つまり画面の端に立ち絵が表示され、その横にテキスト欄があるわけですね。
これならキャラの細かな変化も隠されずに、きちんと見ることができます。
つまりビジュアルノベルの欠点を克服した、進化したノベルとなったのです。

・・・って、思うのは、この時期に始めた人なんだろうなぁ。
確かにメーカー側の説明なんかを見てみても、発端はビジュアルノベルであり、
その欠点を克服しようとして、できたのが本作みたいなんですけどね。
でもそれで出来上がった物、即ち立ち絵の脇にテキスト欄って、
それって『メッセンジャーフロムダークナイト(MFD)』(1995)だよねと。
つまりMFD最強ってことですね。
一応こっちの方が凝っているから進化したのだとしても、
システム上の着眼点から考えるならば、
本作はビジュアルノベルの発展型というよりも、
MFD路線の後継ないし発展と言った方が適切なのかなと思ったりも。
まぁビジュアルノベルの上手かったのは、
CSで人気のサウンドノベルを真似てみましたって宣伝と、
同人作家らにうけるキャラ作りであって、
それ以前の他社のノベルゲーの方が、
システムやゲームデザインは優れていましたからね。

ところで、私は以前、不思議に思っていたことがありまして。
ビジュアルノベルをエロゲにおけるノベルの起源みたいに語る人がいて、
そんな中に立ち絵の表情の変化を重視する人がいたのが、
もう不思議で不思議でしかたなかったのです。
まだ違う観点からビジュアルノベルを推すのなら、
納得のしようもあったのかもしれませんが、
立ち絵や表情の変化を重視していてビジュアルノベルはないだろうよと、
私なんかは思ってしまうのでね。

もう少し詳しく言うと、キャラの表示とテキスト欄の配置の工夫というのは、
ある意味答えのない永遠の課題でもありまして。
80年代からいろんなブランドが試行錯誤を繰り返していたわけです。
初見の人用に補足しておくと、紙芝居とかゲームブックと評される、
実質的なノベルゲーは80年代から存在していましたし、
メーカー自らが「ノベル」と称したゲームもPC98初期の頃に既にありました。
それで、キャラの表示に合わせてテキスト欄の場所を動かしてみたり、
立ち絵を端に表示させその脇にテキスト欄を表示させたりと、
いろんなパターンの作品があったわけですね。
そうした中で、コンソールで人気のサウンドノベルを模倣して、
キャラにテキストを被せただけのビジュアルノベルが出てきたわけで。
まぁビジュアルノベルもいろいろ工夫しているので利点はあるのでしょうが、
でも少なくとも立ち絵の変化を重視する観点からは、この形式はないでしょう。
過去の他の工夫されたノベルより、明らかに劣りますもん。
現にビジュアルノベルの欠点を克服しようとして作られた本作は、
結局はVNより昔のMFDや全流通とかの作品と同じことをしているわけで、
つまりビジュアルノベル以前のノベルゲーの良さを認めただけとなるわけですし。
もっと言えば、本作がいろいろ工夫しているにもかかわらず、
あまりエモーショナルノベルというものは注目されていません。
キャラに合わせてテキスト欄を右に左にと大した意味なく動かしているけれど、
だったらもう下に表示しちゃえと思った人が多かったのではないでしょうか。
それならキャラが隠れる心配なんかないですからね。
ゼロ年代に入ると画面全体をテキストで覆う形式は減りましたが、
それはキャラを重視する美少女ゲーでは当然なのでしょう。
サウンドノベルはゲーム機の性能がショボかった時代の、
苦肉の策でしかないのであって、
あの形式を神聖視する必要も固執し他で使用する意味なんてのもないのです。

ついでに先の疑問に話を戻すと、ビジュアルノベルを起源に語り出す人って、
結局はそれ以前のPCの作品を知らないので、立ち絵を重視しても、
その矛盾に気付いていなかったということが大半のようでして。
調べてみて、何だ~と思ったものでした。

まぁ本作に関して言うならば、形式面は目新しくないものの、
エフェクトとかも頑張っているので、
同時期の他のノベルゲーより演出面は満足できたのですけどね。
ただレイアウトなど基礎的な部分から工夫して頑張って作ったわりに、
そこを評価してくれる人や語ってくれる人が少ないようで、
それでちょっと報われないかなというのはありましたが。

本作は、もう一つ工夫している点がありまして。
それが選択肢になります。

例えばコマンド選択式ADVなんかにしても、
ゲーム機の作品とかアダルトゲームでも有名作しか知らない人だと、
コマンド選択式って「みる」とか「はなす」とか、
そんな短いコマンドの中から選ぶものと思っている人も多いでしょう。
しかしファミコン時代の末期には終焉を迎えたような、
そんなゲーム機のコマンド選択式ADVとは異なり、
アダルトゲームでは長い時間をかけて成熟していきましたからね。
短い汎用コマンドでは場の雰囲気に適した表現することはできないし、
プレイヤーにも分かりにくいだろうということで、
ノベルゲーの選択肢のように長文の、
かつ場面ごとにアレンジしたコマンドを用意する作品が幾つも登場しました。
この辺は、私のPC98ゲーの感想を読んでくれている人だと、
すんなりと理解してもらえると思うのですけどね。
見た目が今のノベルゲーの選択肢と変わらないから、
ゲーム画面だけでは今のノベルゲーと判別がつかず、
これはコマンド選択式なのかノベルゲーなのかどっちなのかと、
人によっては意見の分かれる作品って結構あるのですよ。

少し脇道にそれかけましたが、ここで言いたいのは、
作品ごとに適したシステムを用意しようとか、
特にユーザーに分かりやすくしようという観点からは、
コマンドとか選択肢とかって個別具体的になっていくってことです。
ノベルゲーの選択肢も長めの文章のものもありますが、
中には擬音だけで意味が分からないものや、
選択肢の結果がプレイヤーの意思通りとなるのかわからない物も多いです。
そこで本作は、そんな中途半端な選択肢をやめて、
実際に後に続くテキストの冒頭をプレイヤーに表示します。
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従来の選択肢より長くなり、かつ続きの展開が直接表示されることで、
プレイヤーの意思を、より反映させやすくなったと言えるでしょう。

私は、この点は非常に良かったと思います。
まぁホラーとかの驚かせたり次の展開をよませたくない様なジャンルでは、
この方法では身も蓋もなくなってしまうので、
そういう一部のジャンルには適さず、
必ずしも万能な方法とまで言えないのは確かです。
しかし意中の相手のルートに進むだけを目的とした恋愛ゲーなら、
これで良いと思うのですよ。
せっかく選択肢を選んでも、その展開は全く望んでいないよということもあり、
セーブ&ロードを繰り返すことってよくありますからね。
そんな人が多いから、クイックセーブとかの機能も出てきたのでしょうし。
だったら次の展開を事前に表示して、
プレイヤーに望む展開を選ばせてしまえという本作の発想は、
私は少なくとも恋愛ゲーでは十分ありだと思うし、
他の作品でも真似してほしいくらいだと思っています。

もっとも本作に関しては残念ながら、
このせっかくのシステムを有効に活用できていなかったのかなと。
本作は異常に選択肢の数が多いにもかかわらず、
ストーリーの大半が共通ルートですからね。
そもそも選択肢の存在自体、必要性を疑われるような作品だったものですから。
だから続きの文章を見せられても、後の展開に差がないことから、
あまり違いが感じられないことも多いですし。
だったらずっと読むだけにして、
ラストに2・3個だけ選択肢を用意してくれた方が良かったのにと、
そう思った人も多いでしょう。
あまり変化がないものだから、展開を先読みする必要性もなかったわけで、
それでシステムが活かせなかったのです。

<総合>


ストーリーの感想を大幅に省略しても、
それでも言いたいことが結構ある作品なので、
ある意味印象深い作品ではあったのでしょうね。

ちょっと主人公が合わなかったこともあり佳作としておきますが、
主人公がまともなら最低でも良作でしたし、
個別も共通部分と同じ濃度で書かれていたら、
名作扱いしていたかもしれません。
そう思うと、ちょっと勿体ない作品でしたね。

ランク:C(佳作)

めぐり、ひとひら。

ダウンロード版
めぐり、ひとひら。 dl

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このゲームは、ハマりました(笑)
和風伝記物が好きだったので、その要素を一通り網羅しているこのゲームはうってつけでしたね。
神社、神、目に宿る力、中国から流れてきた妖怪、巫女さん、いやホントてんこ盛り。
文章には引き込まれ、OPの歌もかなり好みでした。

もっとも、キャラデザは、顔は好みだが身体の書き方と男の書き方がイマイチってのが、自分の評価でしたね。
主人公の、行動力の異常な無さにいらつく面もありましたが、スーパーサブの地元の土地持ち舎弟さんと各ヒロインがカバーしていたのでそこは及第点で。

キャラメルボックスは、ストーリー的にはこの作品と、あえかなる世界の終わりにが自分の中では二大巨頭でしたね。
おまけでとっぱら、うつりぎ、シャマナ。
エロ限定なら間違いなく雨芳恋歌ですが(笑)
他の作品は、正直自分には合いませんでした。

他の作品は合わなかったとなると、
看板作品とも言える「おとぼくシリーズ」も駄目でしたか。
個人的には「2人のエルダー」が好きで、
キャラメルボックスは今はそのイメージになっていますが、
女装モノなんで、どうしても合う合わないは出やすいですかね。

この作品も、題材的には伝奇モノで誰でも楽しめそうですが、
朱門作品は好き嫌い分かれやすいみたいですし、
そうしてみるとキャラメルボックスって、
結構癖のあるブランドと言えるのかもしれませんね。

いや、申し訳ない。
プレイはしたのですが、ちょっと合いませんでしたね(笑)
女体化まで行けば結構好みだったんですが(爆)
プールイベで幽霊の力で一瞬、って部分でなんだよそれ、と思った記憶があります。
2は、1で切ってしまったので購入してないです。
まあ、ただ、アリスマチックよりはおとぼくの方が面白かったですよ。
ヒロインの一人の、勝ち気少女が邪魔くさくてイライラする場面がありましたが(爆)


> プレイはしたのですが、ちょっと合いませんでしたね(笑)

一般的な代表作は、という意味で書きましたが、
私自身も初代おとぼくはあまり楽しめなかった方ですw

> 2は、1で切ってしまったので購入してないです。

ただ、それでも2の方は楽しめたので、
未プレイであれば、いつかやってみてもらいたいように思いますね。

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