『運命予報をお知らせします』

『運命予報をお知らせします』

『運命予報をお知らせします』は2013年にWIN用として、
ヨナキウグイスから発売されました。

同人サークル「宴」メンバーの商業デビュー作であり、
「今」の業界に対するアンチテーゼとなる作品でした。

運命予報をお知らせします

<概要>


ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・紫明学園の女子の間では、
「赤い糸メール」と呼ばれるおまじないが流行っていた。
とあるアドレスへメールを送信すると、
同じ学園内の誰かの携帯電話にメールが着信する。
その人物こそが送信者の運命の相手であり、
「赤い糸メール」が繋げた相手と結ばれることが出来たなら、
永久に幸せになれると噂されている。
そんな中、ヒロインたちの所属する執行部に、一件の投書が舞い込んできた。
「赤い糸メールの真実を検証してくれませんか」表面上は、淡々と。
内新では、きゃあきゃぁとはしゃぎながら、彼女たちはメールを送る――
一方、クラス内でも孤立していた主人公は、
怠惰な学園生活に終止符を打つため、臨時庶務選挙への出馬を決意する。
学園のためだとか、学生のためだと、
崇高な使命感はなく、ただ充実した学園生活を送りたくて、彼は立候補した。
その折、彼の元へ何通かメールの着信した。
執行部の彼女たちが送った「赤いメール」が
今まさに立候補を考えていた主人公のもとへ、着信したのだった。
それも、ヒロインすべてのメールが、彼の元へ届いたのである。
当然、彼女たちは「赤いメール」をただの悪戯と判断し、呆れられたり、
怒ったり、笑われてしまったり――何事もなかったように、日常は進んでいく。
運命なんて、現実に存在するはずがない。
赤いメールなんて、単なるおまじないの一つにしか過ぎないのに。
それでも、誰かを運命の相手だと提示されてしまったなら、
意識してしまうもの、しかたがなくて。
一度繋がれた赤い糸は、急速に距離を縮めていく。

<感想>


さて、どう書いたものか。
この作品について真面目に書こうと思ったら、かなりの長文になるのでしょう。
しかしその一方で、一言で簡単に説明もできてしまうわけでして。
即ち、本作は「アンチエロゲー」なのだと。

最初は頑張って書こうかとも思ったのだけれど、
長文書いても、たぶんそれ程、変わったことは書かないと思うし、
細かい部分は他所の考察に任せてしまおうと思います。

だから簡単な説明だけになってしまいますが、
本作はいわゆる恋愛ゲー(萌えゲー)になります。
構造面では、いわゆる普通の恋愛ゲーと異なり時間軸が一本です。
つまり物語が進行すると、一人のヒロインとの関係が深まっていき、
そのヒロインと結ばれれば当然そこでENDとなります。
しかし、そのヒロインを主人公が選ばずに振った場合、
そのヒロインはフェードアウトせずに登場し続け、
振った後の物語として話が続いていきます。
構造的に、ラスボス的なメインヒロインを選ぶためには、
他のヒロインを振り続けるって感じですね。
その点が今の一般的な恋愛ゲーとは異なるものの、
逆にあまりエロゲに詳しくない人ならば、
基本的には普通の恋愛ゲーに感じるのでしょう。

しかし同時に本作は、今のエロゲの恋愛ものによく見られる点、
それはテンプレであったり、お約束だったり、
言い方はいろいろあるのでしょうが、
そうしたものに対する批判、アンチテーゼ的な内容の作品なのです。
おそらくエロゲの恋愛ものをたくさんプレイしている人ほど、
エロゲとはこういうものだというイメージがあると思います。
そういうものだと割り切って受け入れる人もいれば、
いろいろ疑問に思っている人もいると思うのですが、
そうしたお約束に正面から挑みつつ、
ライターの恋愛観を盛り込んだ作品なんですね。
だから今の恋愛ゲーのお約束要素を一つずつ検討していくと、
膨大な量になってしまうわけです。
その一方で、本作は恋愛ゲーでありながら、
お約束的展開に異を唱えるわけですから、
一言でアンチエロゲと言ってしまうこともできるわけですね、

本作に盛り込まれている個々の内容については、
共感するって意見も、そうでないって意見もあるのでしょう。
でも、私は自分が共感するか否かは、ぶっちゃけ関係ないよなと思うわけで。
こういうアンチエロゲ的作品は問題提起だけで終わっている作品もありますが、
内容は何であれ、単に問題提起するだけでなく結論まで、
ライターなりの恋愛観をきちんと盛り込んでいるだけでも、
相対的に同系統の他作品より優れているように思います。

また、こういう作品はメタ的構造にして、
作中のキャラがプレイヤーに直接語りかける物が多いです。
でもね、ライターが自分の考えを主張したいだけならば、
コラムでも何でも良いのですよ。
主張を上手く物語内に昇華できていない物など、創作物としては最低でしょう。
だから私は最近のこの手の作品を酷評することが多いのですが、
あくまでも主張を物語内に昇華できずに安易にメタに頼るのを嫌うだけで、
お約束的要素に異を唱えること自体は大いに歓迎するのです。
本作はアンチエロゲ的な内容を多分に有しつつも、
それらをきちんと物語内に昇華していますので、
相対的に同系統の作品の中では最上位クラスの好印象を抱きました。

まぁ、とは言うものの、本作も若干メタ的な言い回しはありますからね。
個人的には、そういう言い回しを完全に排除して、
完全に物語内に昇華しきっていれば名作扱いだったかもしれませんし。
実際、本作の内容とライターの実力であれば、
言葉を少し変えれば、それも十分実現可能だったと思いますしね。

ただなぁ、これを書いちゃうと多くのユーザー批判になりかねないので、
少し躊躇ってしまうのですけどね。
今のユーザーは、テキストで過剰なまでに書かないと、
きちんと理解してくれないと、以前そう言っていたライターもいるように、
露骨に描写しないと現在は内容を把握してもらえない恐れがあるのです。
だから本作も若干のメタ的な言い回しがあるから、
アンチエロゲ的な要素に気付けた人もそれなりにいるのだろうけれど、
完全に物語内に昇華していたら、気付ける人は激減してしまうでしょう。
そう考えると私の好みや評価は別として、
作品としては本作程度の言い回しは必要だったのかなと。
実際のところ、それでも足りないくらいですしね。
2013年には他にもアンチエロゲ的な作品がありましたが、
一部でユーザーが反応したのは、
露骨にユーザーに語りかける類の作品でしたから。
余談になっちゃうけれど、考察系サイトなどで、
露骨な問題提起だけの作品であれこれ語るサイトよりも、
本作のような作品を見つけ出し掘り下げて考えるサイトの方が、
個人的には非常に好感が持てますね。

さて、何だかアンチエロゲ的な話題ばかりになっていましたが、
そもそも興味を持ったのは本作の題材に対してではありません。
まぁ何だか、こういう作品も何本もプレイしている気もしますが、
違う部分に興味を持ってプレイしたら、結果的に・・・ってことなのです。
本作の場合の興味を持った理由は、
サークル「宴」のメンバーによる商業デビュー作だった点にあります。
『Minstrel -壊レタ人ギョウ-』など何作かありますが、
一般PCゲーの同人ということでサークルの知名度自体は高くなかったと思います。
でもテキストが非常に良くて、読んでて楽しかったんです。
だから本作にも興味を持ったわけだし、
実際にプレイしても終始楽しかったですしね。
アンチエロゲ云々に全く気付かなかったとしても、
普通の恋愛ゲーとしても十分楽しかったです。

ただ、本作には主人公・ヒロインよりも存在感のあるサブキャラが登場し、
神のように主人公に介入してくるんですね。
これはアンチエロゲ的観点からは意味があったのでしょうが、
普通の恋愛ゲーとして楽しむ場合には、
手の平で遊ばれているようで、それが少し引っかかってしまいましたけれど。

また、本作の原画は、ジャンルによっては良い味も出すのですが、
恋愛ゲーとしては少し癖があるので、
それで萌えゲーを望む人には好き嫌いが分かれてしまうかもですね。

<総合>


同系統の作品の中では最高峰ということで、楽しかったです。
従って、アンチエロゲという点を重視して、
名作扱いすることも可能なのでしょう。

ただ、正確には「近年の恋愛ゲー」、
ゼロ年代以降の恋愛ゲーのお約束に対するアンチテーゼでしかないのです。
本作がメタっぽい切り口もしていたから、
それで今回はアンチエロゲ的な方向で語ってみましたが、
それがなければ私は「一昔前の恋愛ゲーみたいな作品」と紹介していたでしょう。
近年の多様性が失われた恋愛ゲーしか知らない層にとっては、
本作はアンチエロゲになるかもしれませんが、
エロゲとはこういう物という思い込みを有していない層にとっては、
別にアンチエロゲでも何でもないんですよね。
そのため、総合でも良作としておきます。

最後に、同人時代及び本作と名作に近い良作を続けているだけに、
本作の発売時点では次作の期待できるブランドだったんですけどね。
この記事を書き終えてから掲載するまでの間に、
ライターの次作が発売されたのですが・・・
『紙の上の~』は少し厳しいことも書くと思うし、
あれをプレイしちゃうと次作が期待できるとは言えなくなったわけで。
その辺が何とも微妙なのだけれど、本作に限って言うならば、
十分面白かったですね。

ランク:B-(良作)

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