『ORATORIO ~海より青い夏の彼方で~』

『ORATORIO ~海より青い夏の彼方で~』

『ORATORIO ~海より青い夏の彼方で~』は2004年にWIN用として、
UNCHAINから発売されました。

演出面の秀逸な作品であり、
ADVの可能性を広げた衝撃的な作品でした。

ORATORIO

<概要>


ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・黎明大学で地球物理学を専攻する学生“久遠漣(主人公)”は、
夏になり、毎年恒例の樺楠島にある箕臼火山の調査合宿に参加することになった。
樺楠島は、漣の故郷であり、14年前の箕臼火山の噴火のときに父を失い、
初恋の女の子とも離れ離れになってしまっていた。
この箕臼火山の調査は、漣にとって、亡き父の墓参りをする機会でもあった。
そんな調査合宿が間近に迫ったある日、漣が所属する研究室に、
14年前の日付がされた箕臼火山の温度変化等が記されたファックスが届いた。
最初は、たちの悪い悪戯かと思っていたが、その日を境に
樺楠島の観測機から送られてくるデータにも異変が現れるようになっていた。
そうした不穏な動きを見せる箕臼火山の調査に赴いた漣ほか
黎明大学地物専の面々だったが、
データに現れるような異常を肌で感じることはなかった。
しかし、そんな彼らの足元が、わずかに震えていることを、
まだ誰も気づかずにいた……。

<グラフィック>


この作品について語る場合、グラフィックの話は避けて通れないのでしょう。
本作では立ち絵だけではなくイベントCG、
つまり一枚絵にも目パチ口パクがあります。
立ち絵での目パチ口パクを実装した作品というのは、
90年代よりもゼロ年代以降の方が少なくなっています。
それだけに立ち絵に目パチ口パクがあるだけでも好印象なのですが、
一枚絵でも実装されている作品は非常に珍しいと言えるでしょう。
特に本作の発売された2004年時点でとなると他にないかもしれないし、
あったとしても非常に少ないと思います。
動きのある作品、演出の良いとされる作品は多々ありますが、
そのような作品であっても私の場合、
一枚絵での動きの乏しさに興醒めすることが多いわけでして。
重要でもないシーンで表情の変化等いろいろ動きがあるのに、
大事なシーンでピタッと動きが止まるって、
どうにも不自然に感じてしまうのです。
「ノベルゲーは絵と音とテキストが融合し~」って語る人は多いけれど、
とりあえず絵と音の融合を考えるならば、
特に口の動きなんかは大事だと思うのですけどね。
本作はその問題をクリアしているだけでも素晴らしいと言えるでしょう。

もっとも本作は、それだけではありませんでした。
最近は立ち絵の豊富な作品も増えてきていますし、
枚数が少ないよりは多い方が賑やかですからね。
それはそれで進化だとして私も褒めることも多いし、
その気持ちに偽りがあるわけでもないのですが、
同時に内心では「本当に意味あんのそれ」っていう気持ちもあるわけでして。
立ち絵をパタパタと動かして、
そういう作品に対しすげぇ~って褒める人もいるけれど、
挙動不審な私の友人みたいなタイプならともかく、
普通の人間は会話時にむやみにパタパタ動かないですからね。
ずら~っと横並びに表示されたキャラが、
その立ち絵が大した意味なく動くたびに、逆に不自然さが目立ってしまい、
これは作り物・虚像であるのだと突き付けられる気分になってしまうのです。
まぁそんなことを言い出したら、大抵のエロゲが不可になるので、
暗黙の了解と割り切って普段はいちいち書かないのですけどね。

しかし一部の作品、そしてそこには当然本作も含まれるのですが、
画面内に空間がきちんと表現されているのです。
一般的なエロゲのように立ち絵をただ横に並べるのではなく、
主人公も含めた、その場にいる全てのキャラがきちんと空間内に配置されていて、
会話時にもそのキャラの方を向くんですね。
アニメや映画では当たり前なのだけれど、
それをきちんと行っているアダルトゲームってのは、かなり少ないです。
oratrio01.jpg

もちろん、限られた画面内に空間的な広がりを持たせようとすると、
一画面には収まらないわけでして。
だから2画面分くらいの幅でキャラを配置して、
パノラマ画像にしているのです。
そして誰かと会話する際に、そのキャラの方を選択すると、
右に左にと背景ごと画面が動くのです。
oratrio02.jpg

会話時には人の顔を見て話せとは言うけれど、
いつも一緒にいる友人らとの会話では、
話しながらも好き勝手な方向を見ているものです。
そういうリアルさを表現している作品は少ないのだけれど、
本作では会話中にも視点をあちこち動かせますし、
その間にもしゃべっているキャラは目パチ口パクありで話しているわけですから、
他のアダルトゲームにはない臨場感とリアリティが生まれているのでしょう。
そして任意に動かせることが、同時にアニメや映画にはない、
ゲームだけの臨場感も生むのです。

<サウンド・音声>


この臨場感ないしリアリティという部分では、音声の役割も無視できません。
本作をプレイし始めてすぐに感じたことでもあるのですが、
とにかくキャラ同士の掛け合いが楽しいなと。
それは会話の中身という部分も当然あるのだろうけれど、
むしろセリフとセリフの「間」とか、中身以外の部分も大きいのかもしれません。

アニメなんかだと、声優さんたちが一堂に会して収録します。
人間同士の生のやり取りがあるから、単に台本を読み上げるのではなく、
相手のセリフに応じて微妙に演技を合わせていくわけで、
だから掛け合いが楽しくなるわけですね。
しかしゲームの場合、通常は台本を渡して声優ごとに個別に収録します。
そのため、相手の動きに応じた演技というものがしにくくなりますし、
テンポも損なわれてしまいます。
最近は演じる方もノウハウが蓄積されたのか、
それとも単にプレイヤー側がこんなものかと慣らされたのか、
こういうことを言い出す人は少なくなったけれど、
ゲームに音声が付き始めた頃は、
この点を指摘してゲームの音声化に難色を示した人もよく見かけたものです。
余談ですが、そういうこともあるからこそ私は、
何でもかんでも音声を付ければ良いって言う人を見ると、
この人は本当は音声について理解していないのではと思ってしまうのです。

まぁ、場所を確保して声優さんを全員集めてなんて、金がかかりますからね。
デメリットは分っていても、ゲームでは実現が難しかったのでしょう。
しかし、どうも本作は個別撮りではなく、一堂に集めて収録したようで。
だからでしょうか、「間」を含めて心地良く感じたんですよね。

また、アダルトゲーマーには音声を求める人が多いし、
音声がないだけで否定的に捉える人もいるのですが、
読ませるテキストと話させるテキストって本来は異なるわけでして。
だから一般ゲーでは昔はノベルゲーに音声を入れるなって人も結構見かけたし、
音声を気にせず小説っぽく書いた方が、
良さを発揮できるライターも多いと思うんですよね。
少し話がずれかけましたが、ここで言いたいのは、
従来のテキストは必ずしも音声に適しているとは言えないってことです。
細かい機微など分らない人は、
リメイクとかで旧作にも何にでも音声を入れろと言うのだけれど、
音声を入れれば良いってもんじゃないのですよ。
音声を入れるってことは、それに即してテキストも変えなきゃダメなのです。
その辺で私なんかは、ゼロ年代前半の作品に違和感を覚えた作品も多かったし、
じっくり読ませるテキストと音声必須化の流れは融和的でないと思えるから、
シナリオ重視なんてのが廃れたのも、
私は音声必須化も大きな要因の一つと考えちゃうのですけどね。
ついでに、だから上記の点と相まって、
何でも音声付ければOKと考える人の意見は自分は信用ができないんですけどね。
もっともこの辺は最近は意識しなくなったので、
ゼロ年代半ば頃までの作品に対して妥当する話となるのでしょうけれど。
そういう状況の中、本作の場合は、じっくり読ませる美文ではないけれど、
完全に音声でしゃべらせることを意図したテキストになっているので、
当時の作品にしては珍しく何の違和感もなく楽しめたのでしょう。

それと、通常のアダルトゲームなんかだと、
キャラが一杯いても順番に話します。
誰かがしゃべっていると、他のキャラは律儀に順番待ちしているわけですねw
まぁ、それも暗黙の了解としてプレイヤーは納得しているのですが、
一つの部屋に皆が同じ目的でいるとは限らないですからね。
あっちで話す人もいれば、こっちで話している人もいるというのが、
本来は自然なわけでして。
本作はそれも表現していて、キャラがめいめいに発現している場面もあり、
またそれがパノラマ画像と連動しているから、
臨場感やリアリティを増しているのです。

<ゲームデザイン>


ストーリー・ゲームシステム・グラフィック・サウンドなど、
これら全てが有機的に結合している作品ほど優れていると思うし、
またそういう作品ほど個別に分解して説明するのも難しいのですけどね。

本作は、基本的にはノベルゲーになります。
そしてオートモードが推奨というより、
「オートモードが標準」なものとして設計された作品でもあり、
同時に私がオートモードで違和感なくプレイできた、
現時点で「唯一」の作品でもあります。

最近のノベルゲーなんかでも、ほとんど読み進めるだけの作品も多く、
オートモードでプレイする人もいるのでしょう。
もちろんそれで満足できるのなら問題はないのかもしれませんが、
どうも私は違和感があってオートモードは利用しません。
それには理由が幾つかあるのだけれど、
一つは会話はまだしも地の文の所でまどろっこしく感じてしまうことや、
オートモードの「間」が自分のペースに合わないことなどが挙げられます。
本作はノベルというよりドラマに近い構造で、
モノローグや一部の説明箇所はあるものの、
大半はキャラ同士の会話で成り立ちます。
作中に地の文がほとんど存在しないことから、
地の文によりテンポが損なわれることがないのです。
また上述のように音声が全ての「間」を計算して収録されているので、
オートモードに任せてしまった方が、より自然なプレイができるのです。

このオートモード前提の構造は、ゲームシステムにも活かされています。
本作は上述のように、パノラマ画像で視点を任意に移動できます。
自分の好みで意味なく視点を変える場合もありますが、
誰と会話するかを選ぶために視点を動かすことが中心なので、
視点を動かす動作はゲーム中に必須なんですね。
もしこの動作を読み進めるためのクリックをしながらやるとなると、
非常に面倒になってしまうでしょう。
また本作は選択肢も時間制限有りなので、
クリックで読み進めながら視点も動かしつつ時間内に選択肢もとなると、
プレイが更に面倒になってしまうおそれがあります。
しかし本作は基本的な進行をオートに委ねることで、
視点変更と選択肢選びに余裕が生まれ、楽しむことに専念できるのです。
加えてオートで進行するからこそ、そのリアルタイムに進行する中で、
時間制限有りの選択肢も活きてくるといえるのでしょう。

そして実はここが一番肝心な話なのですが、
動きの豊富な作品、演出の優れていると言われる作品が出る度に、
私はその演出面の良さを褒めはしつつも、
同時に動きの乏しいアニメと変わらないのではという危惧もしています。
とって付けたようなエロに動きの豊富さだけがうりの作品ならば、
もう最初からアニメで構わないわけでして。
だからそういう作品を、手放しで褒めることができないんですね。
豊富な動きがゲームであることと連動して初めて、
本当の意味で凄いと褒めることができるのです。
本作はオートモード前提の作品であり、
それだけだったらアニメかドラマで良いってなりそうなのだけれど、
パノラマ会話を導入することで、
プレイヤーをゲームに介入させているわけでして。
本作の手法が唯一無二のものとは言えないし、まだまだ改良の余地もあるし、
他にも方向性・手法はあるのかもしれません。
それでも本作は、少なくともただ見るだけのアニメの劣化版ではない、
ADVとしての新しい方向性・可能性を示してくれた点は確かであり、
それは私が常に有している疑問に答えてくれたものと言えるのでしょう。
この点において、本作は非常に高く評価されて然るべきと考えるのです。

<ストーリー・キャラ>


ストーリーそのものは、火山調査に赴いたら、
そこで思わぬ事態に遭遇したというものであり、
凄く凝っているとか泣けるというものではないし、
キャラも流行りの萌え系とはかけ離れていますからね。
今はもちろん当時の観点からも、
平均的なエロゲユーザーに好まれる作品とは、ちょっと違うのかなと思います。
時期的なものもあるのだけれど、ゼロ年代前半辺りから、
突飛で現実には存在しないようなキャラたちによる、
日常でありえそうな展開の作品が好まれましたからね。

本作はむしろ逆で、人によってはトンデモと言われそうな、
ありえない事態に遭遇してしまいます。
もしこれを非常識なキャラでやられたら、
それこそ電波な作品になっていたのかもしれないけれど、
本作のキャラは普通で現実的なんですよね。
普通の、実際にそこら辺にいる学生同士の会話って感じなのです。
だから逆に、それがアダルトゲーム的には珍しくもあるのだけれど。
まぁ、選択肢とかで下ネタは多めですけどねw
何せ最初の選択肢が「おはよう」と「おまん○」の2択ですから。 
でもとりあえず、他のエロゲがアニメや漫画に近いならば、
本作はTVドラマに近い感じであり、
それだけで雰囲気が違うなと思えたものです。
こういう感覚を抱けるADVって何年遡る必要があるだろうかと、
それくらい同時期の他のADVと雰囲気が違うんですよね。

それと、主人公らの遭遇する事態や理論こそ一部トンデモっぽいけれど、
火山島での観測実習の描写などにはリアリティを感じられるわけでして。
ちゃんと調べたのか、それとも製作側に経験者がいたのか。
こういう部分が適当な作品も多いだけに、ここはかなり好印象ですね。

そしてキャラの言動や調査がリアル路線だからこそ、
思わぬ事態に遭遇しても地に足の着いた展開として楽しめるのでしょう。
発生する出来事まで完全リアル路線で地味に調査して帰ってこられても、
それはそれで物語としてはつまらないですからね。
リアルなキャラたちが突如非日常に巻き込まれてしまうこそ、
そこにドラマが生まれるわけですし。

まぁ、こういうのは80年代的ADVとか洋ゲーのADVとか、
他媒体での物語とかでも良くあるのですが、
ゼロ年代以降のアダルトゲームでは少なくなっているわけで、
裏を返せば一般的なエロゲの方が変な気もしますけどね。

ついでに、キャラについて補足しておくと、
プレイして一番印象深かったのはヒロインでも主人公でもなく、
主人公の先生に当たる後藤教授でしたw
いや、おもいっきりオッサンなんだけどね、
何かやたらと名言残していくものですから、キャラ的に一番濃いのですよw

<感想・総合>


何でこんな作品が埋もれているのかというくらい面白かったし、
興味深い点も得るものも多かったです。
それこそ、他の演出の良いとされる作品の全てが陳腐化するくらいで、
10年経った今でも本作より明らかに上といえる作品が、
アダルトゲームに存在するのかってくらいです。

ただ、パノラマ会話は終盤には少なくなりますし、
本作のシステムは本作で完成されたものとは思えないんですよね。
まだ改良の余地はあったと思うし。
そのため名作であることは間違いないとしても、
最初は傑作(85点以上)に一歩及ばずと考えました。
っていうか、傑作と言ってしまうよりも、
傑作の一歩手前と評した方が本作らしく誉れに思えるのです。
何か 2軍のファンタジスタ的な感じで。
それで次回作への期待も込めた、最高の84点としていたのだけれど、
やっぱりこれ、唯一無二の魅力を持った作品なんですよね。
その点を素直に再評価し、現在は傑作と考えています。

もう一作あれば、本作以上の大傑作が生まれたかもしれないのですが、
結局UNCHAINは本作一本だけだったんですよね。
本作発売当時の私は今と違って様子見などせず、
意欲的だと思えるデビュー作には特攻することも多かっただけに、
発売時に購入して次回作へ貢献できなかったことは非常に心残りです。
このような作品をスルーしてしまった当時の自分を本気で恨んでしまいますし、
売れずに埋もれたことが悔しくもあります。

なので、ここからは少し、売れなかった理由についてというか、
当時自分がスルーしてしまった理由について、
当時の状況を踏まえながら書いていきます。

UNCHAINの製作ブログに書いてあるのですが、
ウン千ウン百万の製作費に対し、本作の宣伝費は10万円しかなかったそうです。
これはさ、絶対に時期が悪かったよなと。
90年代中頃までの年間の発売本数が少ない頃であれば、
発売される全ソフトをチェックする人も少なくなかったでしょう。
私も全てチェックしていた時期もありますし、
発売本数が少ないと店頭で目立つ期間も長いですしね。
また昔のオタってのは、今話題の作品に乗り遅れるなというのではなく、
他人が知らない良い作品をまっ先に発掘しようという考えも結構ありまして。
同人だろうと何だろうと、どこからか上手く探し出してくる人もいたんですね。
しかしそういう新しい物を求める人、探し出す嗅覚に優れた人ってのは、
大体2003年頃までにアダルトゲームの現状に絶望して去っていったんですよね。
まぁ黙々とプレイし続けていた私みたいなのは一杯いたかもですが、
当時ネットや雑誌などで発言力があった人で、
嗅覚に優れていると思われた人は皆していなくなってしまったわけで。
私にしても、2002・2003年頃に業界の将来を期待できなくなり、
自分でチェックするのが弱くなりましたしね。
そういう意味では、誰かによる発掘を待つには遅かったのです。
ネットにしても、今のように常時接続で調べ放題という時代ではなかったし、
ブログなどでHPの知識などなくても容易に長文をかける時代でもなかったし、
そのくせネットで何でも知ることができるような変な幻想もあったり、
雑誌に頼る頻度も減り始めたりで、漏れが生じやすい状況でもあったのでしょう。
そもそもゼロ年代前半の話題作なんてのは、
信者や後の新規ユーザーは作品の質が良いから話題になったと思いがちだけれど、
実際にはこの時期の話題作ってちょっと特殊なんですよね。
何とか連合とか言ったりして、
ゼロ年代前半はユーザーとブランドが一番結びついていた時期でもあり、
この時期に伸びていったブランドってのは、
イベントなど何かしら宣伝活動に積極的なところばかりです。
有名になるには、宣伝こそが重要な時代だったんですよね。
中にはレビューサイトにただでゲームを配ってたブランドも幾つもありましたし。
また発売タイトルが非常に増え、新規参入作品は埋没しやすくもありました。
他にもいろいろ挙げられるでしょうが、
今だと過度な宣伝はステマとかってイメージダウンにもつながりますし、
動画サイトなどの発展もあり、メーカーとユーザーの間よりも、
ユーザー間のつながりの方が発展していますしね。
とりあえず言いたいのは、
おそらくアダルトゲームで作品を知ってもらうという観点からは、
長いアダルトゲームの歴史の中でも2004年前後が、
「最も宣伝を要した時期」だったということです。
その時期に宣伝費10万円では、
埋もれるべくして埋もれてしまうのも仕方なかったのかもしれません。
仮にサンプル画像を見たとしても、本作は登場キャラの半数以上は男性ですし、
その男性キャラも主人公なんかはBLゲーっぽい容姿をしていますので、
中にはこれBLゲーかと勘違いして避けた人もいたかもしれないですしね。

ところで、発売後長い間本作をプレイしていなかった私ですが、
発売前に本作のことを知らなかったかというと、必ずしもそうでもないのです。
2004年時に『ORATORIO ~海より青い夏の彼方で~』という作品が出ることは、
発売前から既に知っていたのです。
私は特徴のありそうなデビュー作品は発売日に買って、
そのブランドを応援することも多かったのですが、
それなのに本作をろくに検討せずスルーしてしまった理由は、
実はタイトルにありまして。
つまり当時の私が買いそびれた理由は、
タイトルが『ORATORIO』だったからなのです。
当時って、「同○会何とか」とか、「ダ○ーポ何とか」とか、
サブタイトルを変えた派生版が増えていまして。
2000年に『ORATORIO』って他ブランドの作品があり、
2000年のそれは雑誌に体験版を付けたり宣伝もしっかりしていたので、
私はそっちの印象が強かったんですね。
2000年の『ORATORIO』は私は良いとは思わなかったけれど、
思いの外ヒットして派生版が出るのだろうかと思ったわけでして。
続編でブランド名が異なることも十分にありうる業界ですし。
派生版やリメイクで全く絵が変わってしまうことも十分ありうる業界ですしね。
だから勝手に派生版か何かと思い込んで、スルーしてしまったのです。
まぁ私が買ったところで1本増えるだけにすぎませんが、
同じ様な誤解をした人がいないとも限りませんからね。
製作者は作品のタイトルにこだわりもあるのかもしれませんが、
今後何かしらゲームを作る人も含めて、
近場で同じタイトルになる事態は避けた方が良いです。
変な誤解で売上が減る可能性もありますから。

口コミ機能が減退した時期に売れ線と異なる作品を、
他に似たタイトルの作品がある中で宣伝なしに発売したわけですからね。
これじゃあ、どれだけ面白くても埋もれてしまうでしょう。
隠れた名作はこうして生まれるのだという、
まさに見本のような作品でもありました。

本作を一言で表現すれば「異端」であり、
それを真面目に書こうと思うと当時の種々のエロゲ事情から掘り返す必要があり、
非常に長くなってしまいそうなのでね。
これ以上の長文を書くのは面倒なので、ここで終わりにしますが、
最後にもう一つ言っておきたいことが。
アダルトゲームのグラフィック・演出の進化であるとか、
或いはADVの構造などに興味がある人ならば、
少なくとも本作はやっておけと言いたくなるわけでして。
コラムなどで演出云々を語る人が本作に触れていれば、
私ももっと早くプレイできたのにと、完全な逆恨みも入ってしまいますけどねw
その一方で、エロゲの演出云々を語る人で本作に触れていない人の話は、
もう全く参考にならないなと半ば本気で思ってもいます。

個人的には出会えて良かったという満足感もありますが、
それ以上にリアルタイムで買いそびれたことへの後悔が強い作品でありました。
こういうことは近年は感じることがなくなっていたのですが、
それくらい珍しく、時間が巻き戻せたならと心底思った作品でしたね。

ランク:AA-(名作)

ORATORIO

ORATORIO~海より青い夏の彼方で~

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リトルウィッチのFFDは洗練されたシステムって感じでしたが、こちらは何か力技感が溢れてた記憶が。(ファイル数がやたら多い、セリフや場面の切り替えでロードが入ってもたつく等)

確か公式サイトで配布されてたような気がするテーマソングが名曲だったり、無停電電源装置(UPS)を、(むていでんでんげんそうちかっこゆーぴーえす)と発音。しかもそれを複数キャラが連呼しているのがネタなのかマジなのか分からなかったりと、妙に記憶に残る作品でした。

掛け合いも面白いし、売れなかったのが残念でなりません。同ブランドが次回作を出せるだけの資金を回収しきってくれていれば、あるいは文句なしの名作が生まれていた可能性も・・・。

いつもに増して気合の入った記事ですね~。

本作は知名度の低さの割りにメチャクチャ面白かったです。
埋もれてしまう要因が重なりすぎた不遇な作品のようですね。
本当に演出面ではこの作品レベルのものはほとんど見受けられないですよね。
キャラクターのやり取りも自然で面白いですし、
何より後藤教授が良いオッサンすぎますw
どんだけ名言を生み出してんですか、この人はww

本作はまったくエロゲー製作のノウハウの無い人たちが
集まって作ったらしいですね。
それが良い意味で、このような非エロゲ的な作品が出来上がったのでしょう。

アダルトゲームの型をことごとく破った奇跡的な作品だと思いますし、
多くの製作者にお手本にしてもらいたい作品ですね。

残念ながら、本作についてレビューしてるサイトは少ないですし、
私もこのブログを読んでなかったら一生触れないままだったでしょう。
katanさんには本当に感謝しています。

>通りすがりさん

> セリフや場面の切り替えでロードが入ってもたつく等
結構高スペックを要するゲームでしたからね。
それで遅く感じたのかも。最近のPCとかだと、全く気にならないですよ。

> リトルウィッチのFFD
方向性が全く違いますからね。
平面的なFFDに立体的なオラトリオって構造的違いもありますが、オラトリオが新しい方向性を目指したのに対し、FFDは目新しいものではなかったので、既存の作品から洗練させて初めて意味が出てくると言えましたから。

> むていでんでんげんそうちかっこゆーぴーえす
これはわざとみたいですw

> 掛け合いも面白いし、売れなかったのが残念でなりません。
もう一本作って欲しかったですね。本当に残念でした。

> yukimuraさん

> いつもに増して気合の入った記事ですね~。

長くなっちゃいました。
今後、これ以上長い記事は出て来ないです。

> 本作はまったくエロゲー製作のノウハウの無い人たちが集まって作ったらしいですね。 それが良い意味で、このような非エロゲ的な作品が出来上がったのでしょう。 アダルトゲームの型をことごとく破った奇跡的な作品だと思いますし、多くの製作者にお手本にしてもらいたい作品ですね。

漫画家を目指すなら漫画以外の物を読めという話もありますが、良い作品を作りたいのなら、違う世界にこそ触れるべきなのでしょうね。本作はエロゲ業界に染まっていない人たちが作ったからこそ、他にはない作品になりえたのでしょうし。

> 残念ながら、本作についてレビューしてるサイトは少ないですし、私もこのブログを読んでなかったら一生触れないままだったでしょう。katanさんには本当に感謝しています。

面白い作品ですが、扱っているところは本当に少ないですよね。
もっとも、たとえ少しだとしても、今もあるだけマシなのかもしれませんが。
これまでに扱ったゲームの中にも、非常に面白いにもかかわらず扱っているのは私だけみたいな作品も幾つかありますし。特に古い作品なんかは、昔はレビューとかあったはずなのに、掲載しているサイトが消滅することで失われるケースも多々あります。
そういう埋もれていく作品が惜しくて始めたこのブログですが、やっぱり興味を持たれるのは有名作のようで、気合を入れて書いても、マイナー作は読まれる数が少ないのが現状だったり。まぁ有名だろうと無名だろうと、ここをきっかけにゲームをプレイして楽しんでもらえたのなら、こちらも嬉しいですけどね。
私もyukimuraさんのコメントをきっかけにプレイしてはまった作品もあり感謝しています。それを機に今年は後回しにしていた作品を積極的にプレイすることで、他にも面白い作品に巡り合えましたし。まぁここ最近、乙女ゲーとBLゲーばっかで思考回路が少し変になっていましたがw
年内は今年発売分が多めになりそうだけど、年明けからはマイナーな良作を少しずつ掲載していきたいと思っています。

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