『MYTH』

『MYTH』

『MYTH』は2008年にWIN用として、Circletempoから発売されました。

同名の洋ゲーもあるのですが、今回は同人ゲームの方になります。

MYTH

<概要>


ジャンルはノベル系のADVになります。

あらすじ・・・
影、ミツメル――。
遠い未来の世界。全ての人類から「影」が消滅した世界。
物語は主人公・田辺命人が、平和な毎日の繰り返しの中で
一人の少女を見つける所から始まる。
その「異質」な少女には、あるはずの無い「影」が伴っていて――

<はじめに>


長くやっていると、作品名が重なる物が幾つかありまして。
洋ゲーと被る本作は、その理由だけで最初はプレイを躊躇したものでした。
もっとも洋ゲーのMYTHの方はジャンル的にやや私の守備範囲外でしたし、
本作は評判も良さそうなので、それで注目した作品でしたね。

最初に、プレイして真っ先に連想したものは、独眼竜正宗でした。
遅すぎた英雄、正宗。
本人の力量が凄くても、時代の趨勢が決まった後では、
もうひっくり返すことができないのでしょう。

本作の発売は2008年であり、現時点で既に発売から5年以上経過しています。
私は本作を発売当時から知っていたし、
同人ゲーにもストーリー物目当てで注目していたんですよね。
私は同人ゲー歴こそは少々長い方かもしれませんが、密度は薄いと思います。
1本はまると、しばらくは気を付けているのですが、
コンスタントに面白い作品が出るわけでもないので、
次第にアンテナが弱くなってしまうからです。
もっとも2006年には『ひぐらしのなく頃に解』があり、
内容に対しては正直ガッカリしたものの、話題性は非常に高かった作品です。
翌2007年には『ひまわり』があり、個人的にも凄く楽しめた作品でした。
フルプライス作品のストーリーの良い作品が減ってきた時期でもあり、
ストーリー・シナリオを求めるなら今後は同人の時代だと考えた人もいたはず。
私もその一人であり、そんな中で2008年に出たのが本作でした。
2008年の代表作、ひいては同人のヒット作の流れを受け継ぐのはこれかなと、
個人的には予想していたんですよね。
『ひまわり』も重い内容ですが、CS化や移植が何度もされていますし、
メディアミックス展開もなされています。
ひぐらしは、言うまでもないですよね。
それを考えると本作のその後の展開の少なさは、
どうも予想とは異なってしまったようで意外に感じてしまいます。

もう、こういう作品は受けないのでしょうか。
本作が発売されたのが2008年ではなく、
それより5年前の発売なら、きっと大きな話題作になっていたし、
更に5年前の98年辺りに発売されていたら、伝説になっていたかもしれません。
知名度が伸びないのは現在は購入できる環境が乏しいこともありますが、
とにかく出るのが遅く時代に間に合わなかったのかなと、
それで内容とは全く関係ないにもかかわらず、
独眼竜正宗を思い浮かべてしまったというわけです。

<ストーリー>


さて、5年前なら話題になった、10年前なら伝説にもなりえたと評した理由は、
そのストーリーにあります。
プレイしたのが大分前で、細かい部分は忘れてしまったこともあり、
詳しい考察などはファンや詳細な他所のサイトに委ねます。
一応大雑把に表現すると、多層構造の複雑な世界観を持つ作品であり、
いわゆる考察好きな人向け、或いはインテリ向けであるとか、
難解と呼ばれる作品を好む人向けのゲームになります。

ゼロ年代後半には、こういう作品はすっかり減ってしまいました。
時代的にあまりうけなくなったのかもしれませんが、
ゼロ年代前半までは好んでいた人も多かった系統ですよね。
また泣きゲーで有名なkeyの原点とも言える『ONE』は、
当時は口コミで支持者を増やしていったのですが、
あの頃のコアなファンが最も注目していたのは泣きでもギャグでもなく、
「永遠の世界」と呼ばれる考察必須の不思議な世界構造にありました。
オタクの本質が昔と今とで変化したのかは知らないけれど、
少なくとも90年代後半頃のアダルトゲーマーには、
考察のしがいのある作品はそれだけで非常に高く評価されたものですし、
それが話題性や売り上げにもつながったものです。
当時のユーザーで今はエロゲをプレイしない人は、
おそらく今の主流の作品をプレイしても楽しめないのでしょう。
しかし逆に本作をプレイしたら、こんな物もあったのかと、
きっと楽しめると思うのですけどね。
今のエロゲーは~なんて愚痴っぽくなる人にこそ、
おすすめできる作品なのでしょう。

問題は同系統の他作品と比べてどうなのかですが、
私はこの手のジャンルは最初は好きだったにもかかわらず、
近年のアダルトゲームでは酷評するケースも結構あるわけでして。
酷評するケースは作品により異なるものの、
無意味に複雑にする必要はないという理由が多いです。
本作は、ED等もう少し分かりやすくても良いのではとは思うものの、
同系統の他作品のように無駄に複雑なわけではありません。
その点で序盤から入っていきやすかったし、好印象でもありました。

またストーリー構造の複雑さだけでなく、キャラも立っていますし、
グロ要素とか突然でビックリしたこともあり、インパクトもありましたからね。
予想外の展開にもなりますし、これだけの作品は滅多になく、
客観的にはこの手のジャンルの中でも凄く良くできた、
考えて作られた作品なのだと思います。

ただ、これは凄い作品だなと冷静に見る一方で、
どうにも個人的には楽しみきれない部分もありました。
その理由がハッキリしないので、感想を掲載せずにいたのですけどね。
全体の構成や個々のシーンは良いはずなんだけど、ちょっとくどいのかな・・・
ボリュームは十分にあるのだから、もう少しコンパクトに纏めてくれれば、
もっと素直に楽しめたように思います。
前半で少しだれかけますし、凝った構造の作品ですから、
忘れない内に一気に読み終えるくらいの量でも構わないと思いますから。
またラストを少しプレイヤーに委ねる傾向があるので、
「結」がややぼやけてしまった感じですかね。
もう少し分かりやすくした方が一般受けしたでしょうに。
もっとも、ここは完全に好みの問題なのでしょうね。
ぼかした方が考察できるから良いって人もいますから。

<グラフィック他>


音声はないのですが、サウンドは良いですし、
グラフィック演出面は同人レベルを超えています。
個々のシーンで見るとよく作ったなと思えるし、
価格を考えればCGの枚数も十分なのでしょう。

ただ、何事もバランスが重要だと思うわけでして。
CGの量も価格からすれば十分なのですが、
なまじフルプライス作品並のテキストボリュームがあるために、
1枚1枚のCGが登場する間隔は長めになってしまいます。
影のキャラは当然シルエットだけですし、
どうしても見た目の部分で少し寂しさも感じてしまうわけでして。
そのため演出関連は長所だとは思うものの、
それ程大きなポイントとはなりませんでした。

<システム>


ゲームとしては普通のノベルゲーなのですが、
章単位でのスキップなどシステム周りは良かったです。
並の商業作品より便利でしたから。
特に本作は人物関係が複雑になるだけに、
整理された人物相関図やノートがあったのは便利でした。
まぁ、それでも混乱はしちゃうんですけどねw
同人作品はシステム周りが貧弱な物が多いだけに、
完全に頭何個分か抜き出ています。

ただ、テキストが一文だけしか表示されないことも多く、
クリック回数が多めになっています。
これが私のはまりきれなかった一因ともなっているので、
その点だけは少しひっかかりました。

<感想>


演出良し、サウンド良し、ボリューム良し、
ストーリーも十分すぎるほどに凝っていると。
同人という枠で考えなくとも、十分に名作なのでしょう。
同人作品は尖った絶対的な長所はあっても、
その代わりに、どこかしら弱い部分がある作品が多いです。
本作のような全ての面で商業の水準を超えているのは、本当に稀でしょう。
ただ、ところどころで個人的に気になってしまった部分があるのと、
結局は過去の名作の後継路線の枠から抜けきれない面もあり、
それが傑作には及ばなかった理由となるでしょうか。

まぁ、評価なんてのは、絶対に幅がありうるわけでして。
私が気になってしまった箇所は主観的で些細な点でしかないし、
全く気にならない人もいるでしょう。
またこの手のジャンルは今の私はそれほど好きでもないですが、
昔から熱狂的なファンを生みやすいジャンルでもありますからね。
だからこれは自分自身が楽しいって想いよりも、自分はともかくとして、
これはかなり好きな人も絶対にいるなと思ってプレイしていました。
それ故に、5年早ければ絶対話題作・注目作となっていたと考えたわけですし。
今でも、もっと人気があっても良いはずなんだけどな~
私より楽しめるであろう人は、幾らでもいるでしょうに。
ネットの普及前は、それこそパケ絵だけで特攻とかザラでしたが、
今ってネットで情報収集できるわけでしょ。
それなのに何だか、こういう作品が本当に好きな人に行き届いていないようで、
その点は作品や潜在的なファンにとって不幸なことだと思ってしまいます。
今からプレイして熱烈なファンになる人も、絶対結構いると思うんだけどね。
まぁ、時代が変わったので10年前と同じようになるとは思えませんが、
10年前の『ONE』だって口コミで少しずつ売れたわけですし、
リーフの『痕』『雫』とかだって96年時にはそんなに売れていないですしね。
継続は力なりで、移植や再販を繰り返し、プレイできる環境を常に保つことで、
総プレイ数を増やしていったにすぎません。
本作の出来の良さ、潜在的なファンの存在を考慮すると、
このまま埋もれさせるのは勿体ないと思うし、
DL版など入手しやすい環境が整ってくれれば、
過去の同人の名作並に知名度も上がっていくだろうになと、
少し歯がゆくなってしまいます。
私が好きだからやってみろという作品ではないのだけれど、
物語に絵に音にシステムにと全ての面で抜かりのない作品ですし、
私以上に好きになる人は絶対にいるから、
この手のジャンルが好きなら、ぜひやってもらいたい作品ですね。

ランク:A-(名作)

MYTH

関連するタグ WIN /ADV /ノベル系 /


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カテゴリ「2008」内の前後の記事





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早速レビューして頂いて驚きです。
katanさんから良い評価を頂けて嬉しいです。

この作品は非常にインパクトがありました。個人的に2008年のベストです。
久々に考察するのが楽しく、歯ごたえのあるゲームが現れたと喜んだものです。
もし本作が「月姫」と同時期に発売されていたら、同人ノベルゲームの代表作として
ネット上で盛んに考察され、もっと語り継がれてたかもしれませんね。

今思えば体験版公開当初の2006年頃が一番盛り上がっていたような気がします。
katanさんのおっしゃるように「結」がぼやけたことが最大の欠点なのかもしれません。
同じく同人の名作である「ひまわり」を例に出すと、
体験版範囲(アニエスルート)ではそこまで盛り上がっていませんでしたが
(それこそ一部の同人ゲーム好きが注目してるくらいで)、
完成版の過去編とアクアルートで大きく株を上げました。
結果、その後の商業展開に大きく貢献したのではないかと思います。
「MYTH」の完成版発売以降の展開が大人しかったのも、
そこに原因があったのかもしれません。

また、今こそ本作が大好きな私ですが、体験版で序盤をプレイしていた頃は
いつギブアップしようかと思ったものですw
面白くなるまでの「ため」の時間が長いのも欠点でしたね。
そこを越えれば後は止まらなくなるくらい面白いのですが…

あとは音楽が素晴らしいので、本作のサントラは死ぬまでには入手したいですw

この作品は、ある程度下書きしていたものですから。
ただ、こういう作品はプレイ後すぐに感想を書かないと、時間が経てば経つほど書きにくくなるので、少し困った部分はありますけれど。

自分は同人には特に詳しい方ではないけれど、いろいろ難しそうですよね。
作品の完成度が高い方が良いのは当然なのだけれど、それ以外に依存する部分が多いように感じられて。
例えば月姫も、無の状態から出てきたら、やっぱり埋もれていたでしょう。
99年までに同人市場に注目する土台が出来上がって、皆が待ち構えているところに、最初にやってきたのが月姫って感じですから。タイミングって大事なんだと思います。
あとは、ひぐらしの体験版のように掴みが最高であるとか、ひまわりの終盤のように怒涛の展開で一気に持っていくとか、全体の構成とか完成度よりも起と結の勢いによるインパクトの方が、注目されるには重要なのかなと。

本作以外にも良く出来ているのに埋もれている同人はあると思いますが、「出されるタイミング」「起又は結の勢い」のどちらかが欠けているケースが多いのではないかと思うのですけどね。

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