『Parallel Harmony ~月曜の扉は水曜の向こうに~』

『Parallel Harmony ~月曜の扉は水曜の向こうに~』

『Parallel Harmony ~月曜の扉は水曜の向こうに~』は2000年にWIN用として、
シーズウェアから発売されました。

覆水盆に返らず。
その言葉が真っ先に浮かんできてしまう作品でしたね。

Parallel Harmony

<概要>


商品紹介は以下の通り。
「パラレルワールドを舞台にしたコメディータッチの18禁恋愛ADV。
都内某所の学園に通う主人公は、
ふとした拍子に明治時代に似た別の世界の女学校への不思議な扉を開けてしまう。
別世界の住人は、猫娘や生き霊、キツネ憑きなど、おかしな連中ばかりで、
想いをよせる後輩に告白しようとするたびに邪魔が入ったり、
事件がおきたりの連続。
果たして無事に気持ちを伝えることができるのか。
原画をことみようじ氏が担当。ドラマCDを同梱。 」

<ストーリー>


パロディーを交えながら進むドタバタストーリー。
アニメのように第何話という構成で進み、終始コメディーに徹した作品でした。

本作の発売されたのは2000年の末であり、時代的には泣きゲーブームだの、
それに伴うシリアス中心のシナリオ重視の作品が増えた時期でもありました。
ブームの中心はkeyであり、基本的な構造は序盤はギャグで進みつつ、
終盤でシリアスな泣ける展開にもっていくわけですね。
泣きゲーは確かに流行りましたし、プレイヤーのツボに上手くはまれば、
ずっと記憶に残る作品にもなれるのでしょう。
ただ上手く作れるブランドは限られているわけで、
真似したからって全てのブランドが泣ける作品を作れるわけではありません。
ゼロ年代前半に鬱ゲーが流行ったという見解もあちこちでありますが、
これは鬱ゲー需要が高まったのではなく、
泣きゲーをやっても泣けなければ単に鬱になるだけであり、
だったら泣きゲーでなく鬱ゲーと言うべきであり、
そういう鬱ゲーが数の上で溢れかえったということだったんですよね。
ユーザーは泣きゲーを求めたのだけれど、
市場に溢れかえったのが泣けない鬱ゲーだったという消極的なブームでもあり、
keyが作品を作らず、他にも泣きゲーを作れるところが次第に減り、
ブームは終息せざるをえなくなったと言えるのでしょう。
アニメでも、シリアスを入れるなという意見がしばしば出てきます。
これは本当にシリアスが嫌なのではなく、
単に下手くそな取ってつけたようなシリアスなら要らないってことです。
途中までのギャグ部分は非常に楽しめるのに、後半からシリアスに転じ、
そのシリアス部分が微妙な内容であるために評判が下がった作品も、
たくさん見てきたものです。
評判が良いのはギャグ・コメディ部分なのだから、
それで最後まで徹すれば評判も落とさないし、皆も楽しめると思うのですけどね。

終盤はシリアスにしなければならないとか、
何かテーマを訴えなければ駄目であるとか、そんなものは、
自称評論家みたいな人の増えた90年代後半からゼロ年代前半辺りの悪しき風潮だと、
個人的には思っています。
もっと単純にエンタメとして楽しませ馬鹿やっても良いと思うのですが、
そういうのが認められにくい時代だったのでしょう。

そのような時代の流れに反するように、泣きゲーの勢いが最も強かったこの時期に、
本作はドタバタコメディだけで勝負してきました。
シリアス部分が武器にならないのであれば、入れなくて十分と思うし、
何となくPC98時代の馬鹿ゲーたちを思い出したものです。

<グラフィック>


私は特にファンでもなかったのですが、
まずは原画である、ことみようじ氏の起用が注目点ではあったのでしょう。

個人的に注目したのはフェイスウインドウやカットインの多用であり、
同時期の他作品より動きが豊富なので、見ているだけでも楽しかったです。
内容がドタバタ系ですからね、
シナリオだけでなく見た目も連動させてくれたのは好印象です。

こういう部分はPC98末期には良く見られたものの、
逆にWINDOWS時代に入ることで減っていっただけに、
PC98時代らしさのようなものを感じたものです。

<ゲームデザイン>


基本はコマンド選択式のADVで、
途中の選択肢による好感度の上下によりルートが変わってきます。

この時期にコマンド選択式は珍しいかもしれませんが、
必要なコマンドしか表示されませんので、
同じコマンドを無駄に繰り返すような総当り的煩わしさはなく、
実質的にノベルゲーに近い感覚でプレイできます。

この点も、私はPC98っぽいなと思ったものです。
PC98の有名どころの大作しかプレイしていない人だと、
ガッツリとハードなコマンド選択式のイメージしかないでしょうけどね。
90年代中期には必要なコマンドしか表示しない、
時には1択のコマンドの連続で最早コマンド選択式と呼べるかも微妙な、
ノベルとコマンド選択式の中間のようなゲームが、
主に中小のブランドから多数発売されていたわけでして。
コマンド選択式であることのメリットを活かした作りではなかったけれど、
面倒臭さや煩わしさからの開放に重点が置かれた作りとも言えたわけです。
本作はそれに近いのであり、
それでPC98後期のゲームっぽいなと感じたわけですね。

加えて、本作のHシーンでは画面クリックの要素もありましたし、
ストーリー、演出、ゲームデザインと、全体的にPC98時代的な雰囲気を感じ、
それを2000年の技術で表現した作品に思えたわけですね。

<総合>


本作は、システム面では少し重かったのですが、
進行に影響を及ぼすような致命的なバグはありませんでした。

windowsの時代になってから、
シーズウェアは他社を先駆け常に挑戦し続けてきました。
まだ音声が当然でない中で、いち早く音声も付けました。
周りが256色で作り始めた頃、ハイカラーの65536色で作っていました。
部分アニメーションを入れたり、演出面にも凝っていました。
プラス面だけを考えるならば、他社を一歩も二歩も先んじていたのでしょう。

しかしながら、それ以上に代償も大きなものでした。
時には進行不能なくらいに、無数のバグがあったものです。
いつしかシーズウェアといえばバグというイメージにもなり、
90年代半ばには人によりエルフ・アリス・アイデスに並ぶ4強の一角に挙げる程の、
それまでに培ってきた信頼までもが失われてしまいました。
今ならパッチですぐに対応できるのでしょうが、
90年代後半は必ずしもネットが当然の存在ではなかったですからね。
一度バグが出ると今以上に影響は大きく、信頼も失われやすかったのでしょう。

いろいろ新しい技術に挑戦してはいるものの、
それ以上に反動の方が大きくなってしまったシーズウェア。
そのシーズウェアが作った本作は、
どことなくPC98時代の雰囲気も漂う堅実な作りの作品でした。
プレイした人の世間での評判も良く、これがもう少し早く出ていれば、
ブランドに対する信頼は回復していたのかもしれませんけどね。
もう度重なるバグで見限った人もいたでしょうし、
コメディー系というこれまでのシーズらしからぬ路線変更に、
今回はスルーと思った人もいるでしょう。
まぁ私自身が後者で、当時は今回はシーズらしくないからスルーと思い、
後になってプレイしてみたわけですし。
そういう人が多かったから、シーズも立て直すまでには行かなかったのかなと。
遅すぎた良作であり、どれだけ良作を作ろうとも、
一度失われた信頼はすぐには戻ってこないのだと。
ドタバタ系の本作そのものに大きなテーマは特にないかもしれませんが、
作品全体及びその内外を通じて信頼の大切さを深く感じさせた作品でした。

ランク:B-(良作)

Parallel Harmony

ダウンロード版
Parallel Harmony dl

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