『Gone Home』

『Gone Home』

『Gone Home』は2013年にWIN用として、
Fullbright Companyから発売されました。

おそらく、2013年で最も話題性の高かったADVになるでしょうね。

GoneHome.jpg

<概要>


まず本作には日本語版がありませんので、英語版でのプレイになります。
尚、購入はSteamなどで出来ます。

ジャンルはADVなのですが、元々別のゲームのMODとして考えられていたらしく、
操作系統的には3DのFPSと同じになります。
簡単に言えば、FPSから戦闘をなくしたような作品ですね。

あらすじとしては館の探索ものであり、
主人公が1年ぶりに旅行から帰ってくると、家には両親も妹も誰もいなかったと。
家族は一体どこに行ったのだと探すことになり、
家の中にある様々なオブジェクトから状況や人間関係を把握し、
少しずつ秘められた真相が分ってくるようになります。

<ストーリー>


この作品はユーザーが増えることで当然否定的な意見も出てきましたけれど、
最初の時点、即ち発売直後の大手サイトとかでは非常に高得点を出しました。
それこそ、10年に1本ってくらいの非常な高得点を。
それで注目せざるをえないってところもあったのですが、
その高評価の一番の理由がストーリー性にあるのでしょう。

もっともストーリーそのもの・・・というよりは、
そのバックボーンとなる思想・文化ですかね。
例えば、その国で最も人気のある映画が海外で高く評価されるとは限りませんが、
そのようなケースの一つに、自国の文化に根差したものがあります。
自国の文化に深く関わっているから、
当該文化に影響された国民には思い入れもあり、特別な感情を抱き、
逆に外国の人には理解しきれないのでしょう。
そういう作品が国内で支持され、海外で支持されないのは、ある意味当然なのです。
まぁ、『ALWAYS 三丁目の夕日』は自分は好きだし日本人にとっては特別だけれど、
外国人がつまらないと思ってもそれは普通だよねって話です。

それと同じで、本作の場合も95年辺りのアメリカ文化に思い入れのある人、
Riot Grrrl(ライオットガール)とかを挙げられると、
何時間でも語れるような人には特別の作品になりうるのでしょう。
そういう意味では当時青春時代を過ごしたような懐古向けでもあるのですが、
何れにしろ何かしらの思い入れがない人が高評価の評判だけを聞いてプレイしても、
肩すかしに感じてしまいかねない作品なのだと思います。

個人的には自身の知識に加え、更に不足分を調べることで、
知識自体は増やすことは容易なのでしょう。
しかし、そもそも幾ら知った所で肝心の興味があまりないこともあり、
それ故に特別な思い入れなどもありません。
従って、そのような視点からのプラス評価は付かなくなります。
もっとも私は、そもそも思い出補正とか主観的思い入れが点数に反映されないので、
評価という点ではあまり関係ないのかもしれませんが。
(なので、名作と評した作品より好きな良作が幾つもあったりします。)

さて、前提知識次第で感じるものも異なりうるだけに、
単純により楽しむ、或いは作品をしゃぶり尽そうとするのであれば、
知識や情報を蓄えることは望ましいと言えます。
しかし、それと作品の評価は別問題のはずです。
そもそも、詳しくは後述しますが、
本作は人によっては2時間程度で終わるくらいの少ないボリュームの作品です。
しかも映画や小説のように常に情報が流し込まれる中での2時間ではなく、
移動やら探索やらを含めた上での話だけに、純粋な情報量は更に少なくなります。
作品外の思想まで補完して評価に含めることは果たしてどうなのかと、
私は少し疑問に思ってしまうのですけどね。
凄かったのは本作の内容ではなくて、当時のアメリカ文化であり、
それに対する思い入れだけではないの?って。
また、ゲーム外の思想・文化に傾倒するあまり、
逆にきちんとゲームそのものには向きあっていない様に感じられてしまいます。
90年代後半以降のオタク層を巻き込んでからのアダルトゲームは、
作品自体よりもむしろ、次第にオタクの自分語りの手段になってしまいました。
私には本作を絶賛する姿と、当時の光景が重なって見えてしまうのです。
そういうのを見てしまっているから、
作品を踏み台にした上での自分語りに嫌悪感を抱いているだけかもしれませんが、
作品の評価は過去の事実は前提として踏まえつつも、
作品外の思想などは排除して考えるべきだよなと思ってしまいます。

もっとも、これら作品外の背景的なものを抜きにしても、本作は普通に面白いです。
ガサ入れの楽しさというのでしょうか。
生活感の溢れる屋敷内をくまなく探し出し、
そこから少しずつ住民の素性や関係性を理解していくと。
この積み重ねられていく感覚は、単純に面白かったよなと思います。

とは言うものの、その辺も、ある意味懐古的な発想なのかもしれませんけどね。
近年の国内のADV、即ち現状におけるノベルゲーを指すことになりますが、
そこでは1から10まで全部語られないと描写不足と言われかねません。
現在は、くどいまでに書かれた作品が信者を生んだりしていますので、
本作のような作品は国内の「今」のノベルゲー好きに向いているとは思えません。
行間を読むように、或いは積み重ねられた事実から自分で多少は考える方が好きな、
一昔前のユーザーのようなタイプの人に向いていると思いますから。

それと海外では近年、ストーリーではなくナラティブが注目されています。
ナラティブとは何ぞやと語り出すだけでコラム1本分になるので、
ここでは割愛してしまいますが、
単純に言えばテキストだけから伝わるストーリーではなく、
映像や音も含めたゲーム体験を通じたストーリー性の感得となるでしょうか。
映画や小説にない物語表現の可能性を感じたことから、
私は昔からADVをたくさんプレイしてきました。
その私の求めていた方向性を一言で説明するのなら、
それがナラティブになるのでしょう。
従ってナラティブ重視というのは、私の基本姿勢と同じとなるのかもしれません。
・・・っていうか、私だけがというのではなく、
80年代とか90年代半ばまでのADVファンって皆そうだと思うのですけどね。
国内では90年代後半から失われた考え方なのだろうし、
海外にしても純粋なADVと異なる方面からナラティブ云々が言われだしたようで、
古くからのADVファンには、それこそ今更な話のようにも思ってしまいます。

もっともナラティブ云々と言いつつも、海外で評価されている作品を見ていると、
単純に日本では雰囲気ゲーと評される類の作品も多く、
少し疑問に感じてしまう部分もあります。
ゲーム体験を通じてという部分が弱くとも、
絵や音が抜群なら良しみたいなケースもあるものですから。
それに対し本作は、グラフィックや音から生じる雰囲気だけに頼るのではなく、
行動により自分の中で少しずつ事実が積み重ねられ、
全体像が解明されていくわけであり、
よりゲームプレイを通じたナラティブな感触を得られるのでしょう。

何年か経つと、何で当時はこんな作品が人気だったのかと、
当時を知らない人に理解されなくなる作品があります。
本作もその危険性があるように思うのですが、
つまりはナラティブを偏重する時代に、ナラティブ重視の申し子みたいな、
ストライクゾーンど真ん中の作品が出てきたということなのです。

<ゲームデザイン>


上記のように、本作は戦闘のないFPSを想像すれば良いでしょう。
FPS中心でプレイしてきたけれど、そろそろ撃つのも飽きてきたって人には、
馴染みやすい構造だと思います。
(まぁ、それが洋ゲーにおける主流の変遷と合致し、多数になるでしょうが。)

ただ、FPSに馴染みのないユーザーには、少し不便なシステムでもありまして。
本作は探索していろいろ物を探し出す作品であり、
その作品構造とFPSの流用システムとの間に必要性を感じないのです。
この物語上の構造からは、ADVとして他にもっと適したシステムがあるように思いますし、
若干物語とシステムの不一致を感じてしまいました。
その時点で、個人的には少し熱が冷めてしまいましたかね。

また単純なADVとして見た場合、
ポイント&クリック式よりも介入できる数は少なく、
逆にMYST系ADVのような歯応えのあるパズルもありません。
かと言って、代わりとなる新たな要素が含まれているわけでもなく、
故にゲーム性は低いとしか言えないでしょう。

更に、価格(当初は20ドル弱でしたか)に比べて、
2~6時間程度のボリュームはやっぱり少なく、ゲーム部分でのコスパも悪いです。

<グラフィック>


ここは個人の好みの問題でもあるのでしょうけどね。
館内を探索し続ける本作は、人によっては統一された世界観として、
プラスに評価されうるのでしょう。
世界的にも評価された作品の中には単一の雰囲気の作品もありますし。

だから、あくまでも個人の意見となるのですが、
私は先の展開が見たくなるような変化を好みます。
そのため単一の雰囲気で進んでしまうと、飽きてしまうのです。
本作は統一された世界観で完成度と芸術性を生んだかもしれないけれど、
エンタメ的なゲームとしての楽しさは殺してしまっているのでしょう。

<総合>


ノベルゲーのユーザーの中には、シナリオしか見ない人も結構います。
それと同じようにストーリー或いはナラティブにしか興味のない人で、
その点だけを評価し、なおかつテーマに思い入れのある人ならば、
本作を非常に高く評価するのも分かります。

高評価する人がいるのも分るのですが、上述のように偏った作品であることも確かです。
名作級の長所も持っているけれど、それを消失させる程の欠点も多数あるわけで、
総合的には佳作としておきます。

国内のゲームは一時期難しく複雑になっていったのですが、
その難解さが飽きられ、ヌルゲーが中心になっていきます。
その傾向が特に強かったのがADVであり、
面白いストーリーと萌えるキャラがあれば十分と、
ノベルゲーばかりになっていき、今日に至ります。
ナラティブ重視は大いに望むところではありますが、
それは必ずしもゲーム性を軽視すべきという話ではないはずです。
ADVとしての面白さの追求を捨てストーリー性ばかりを求めるようになると、
洋ゲーも国内のADVと同じ末路を辿るのではないでしょうか。
本作自体は普通に面白いけれど、本作のようなADVばかりになるのなら、
私はゲームをやめます。
奇しくも本作は90年代を扱っていますが、そうであるが故に、
90年代後半の国内のADVやユーザーの変遷を彷彿させるようで、
複雑な気になってしまいました。

それと、本作をプレイして真っ先に想起されたのは96年の『AMBER』でした。
或いは3D空間における行動を伴う点において95年の『DUST』辺りも挙げられますね。
ストーリーそのものに関しては個人の好みもあるので何とも言えない部分もありますが、
ゲームを通じた物語性の感得という点において、本作はそれら20年前の作品より劣っています。
向上したのは画質だけであり、
ぶっちゃけ、私にとっての本作は『AMBER』の劣化版でしかないですし。
90年代半ばの後期型のインタラクティブムービーをプレイした人が、
本作を素直に褒めるとは、私にはあまり想像できないです。
事前情報なしを前提に判断すれば普通に楽しめるので佳作扱いとしていますが、
前評判との比較という点ではガッカリとしか言えなかったですしね。

最後に佳作にとどめた理由を主観的理由で補足するならば、
荒削りでも先の未来に向かった作品・可能性を見いだせる作品は評価しがちなのですが、
この作品からは逆方向の方向性しか感じられなかったのであり、
その点がどうしても引っかかったということですね。

ランク:C(佳作)

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