『いちょうの舞う頃』

『いちょうの舞う頃』

『いちょうの舞う頃』は1998年にWIN用として、
Typesから発売されました。

98年当時、シナリオの良い作品として有名だったのですが・・・

いちょうの舞う頃

<概要>


季節の秋を舞台にした、青春恋愛ストーリー。

98年時にシナリオの良い作品はと聞くと、
隠れた名作として名が挙がりやすいのが、
この『いちょうの舞う頃』だったように記憶しています。

<ストーリー>


大枠としてのシナリオは2本で、
端的に言えば上級生ルートと下級生ルートになります。
そして各シナリオに2人ずつのヒロインがいますので、
三角関係を扱ったストーリーが2本となるわけですね。
基本的に幼馴染らヒロインとの何気ない日常を中心にした作品であり、
ごく普通の恋愛ゲーないし三角関係って感じですね。

各シナリオに2人のヒロインがいるというのが特徴と言えば特徴であり、
一人を選べば当然もう片方は身を引くことになります。
こういう二人のヒロインの中のどちらかを選ぶのかという作品は、
98年に急に増えたような印象があります。
どちらかを選び愛を貫くということで、
恋愛ゲーでなく純愛ゲーという言葉の方が相応しい作品が増え、
また実際に純愛ゲーという言葉の使用を多く目にするようになったのも98年でした。
従って本作は、良く言えば当時の流行りの傾向となるのでしょうが、
悪く言えば独自性がないとなるのでしょうね。

余談ですが、二者択一の関係であるとか、選ばれなかったヒロインという問題は、
作品単位で考えれば89年辺りから存在します。
絶対数が少ないと認識されにくいでしょうが、
遅くとも数の増えた98年時には普通に直面すると思うのですけどね。
99年の『Kanon』によるKanon問題として一部で話題になったようですが、
ハッキリ言って、何でその時点で問題にするの?ってな今更感があったわけでして。
葉鍵信者は狂信者が多かったから濃いイメージを持たれる人もいるかもですが、
今風に言えば、むしろ情弱なのではと思うこともしばしばありました。
知識は少ないし、問題意識を持つのも遅いしで、
あれこれ語る人ほど他の作品をプレイしていないように感じられ、
どうにも共感できないケースが多かったんですよね。
まぁ、今更な話ですが・・・

元に戻りまして、普通の日常を扱った作品というのは今も多いのですが、
本作は描写が比較的あっさりしています。
過剰なまでに細かく描写された方が好まれる今だと、
間違いなく描写不足に感じる人もいるでしょうね。
まぁ私は過剰すぎるのはむしろ下手だと思うので、
あっさりしているくらいの方が好きなのですけれど。

あっさりしている上に平凡な日常となると何が良いのかと思われそうですが、
本作が支持された理由は脇役の使い方の上手さにあったのでしょう。
お気に入りは母親ですかね。
アダルトゲームは何かと両親の存在が軽視されがちなのですが、
本作には小説家の母親が出てきて、これが非常に良い味を出していました。
こういう部分は他の作品も十分に学ぶ余地があると思います。

<ゲームデザイン・グラフィック>


ジャンルはノベル系のADVであり、画面全体を文字が覆うタイプ。
キャラが大事なアダルトゲームにこういう形式は合わないと思うし、
案の定今ではほとんどないのですが、当時は幾つかありましたね。
まぁ本作は絵も微妙なので、あまり関係ないのかもしれませんけれど。

っていうか、妙に濃いクセのある絵なので、
これで恋愛ものをやられても主観的にははまりにくかったです。
たぶん、一般的にも一番不満を持たれるのもキャラデザと操作性でしょうし。
システム面は普通のノベルなのに、作り手の若さからか操作性が悪かったですし。

<総合>


良くも悪くもオーソドックスな恋愛ストーリー。
古い作品に対して今やったらと文句言うことは簡単ですが、
当時の視点からも何でネット上で評判になったのかなと。
当時のネット評論家うけしやすい作品だったみたいですし、
その手の傾向から考えれば分らないでもないですけどね。
それでもやっぱり、繰り返される普通の日常を扱っただけの、
平凡なストーリーでも支持される光景は何とも不思議な感じでした。
私はADVと言えば冒険ものや推理もので、
ハラハラしたりワクワクする事を楽しむというイメージを持ってしまうだけに、
時代の変化を感じてしまいましたね。
シナリオ的にはそれでも及第点だと思うのですが、
グラフィックやシステムの弱さもあるので、個人的には凡作としておきます。

ランク:D(凡作)

いちょうの舞う頃

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