『夏の燈火』

『夏の燈火』

『夏の燈火』は2004年にWIN用として、
Circle Mebiusから発売されました。

一番学んだことは、宣伝の仕方だったのかもしれません。

夏の燈火

<感想>


ジャンルはノベル系のADVになります。

内容的には田舎の妖怪と共存する村を舞台にした伝奇ものになります。
ライターの一人はるーすぼーいさんでしたね。

るーすぼーいさんに関しては、
きちんと設定しストーリーを描く能力は皆無だと思っていますが、
個々の盛り上げたい場面を上手く見せる能力は一級品だと思っています。
つまりアニメだと原作とかシリーズ構成とかには全く向いていないですが、
ここぞの回で脚本や演出を任せるのには適した人だと思っているのですけどね。
作品としては設定が拡がるほどに破綻が大きくなっていくので、
小さな範囲で描いた方がマイナス面が目立たず、
結果として良さが残るように感じるのです。

そのため舞台範囲の広い後の作品には酷評した物も多いのですが、
本作は狭い範囲でこじんまりと丁寧に描いていますので、
盛り上がる場面が少ないために良さも出にくいものの、
逆に悪いところもなかったわけでして。
結果的にライターの作品の中では、後の商業作品より遥かに楽しめています。

まぁ「らしさ」が出きっていないので、
ライターのファンには逆に少しもの足りないでしょうけどね。
私のように、テキストは良いがストーリーがな~と感じてしまう人だと、
まず本作の方が楽しめると思います。

<宣伝>


2004年は『ひぐらしのなく頃に』もありましたが、
冷えかけていた同人への注目度が再び熱くなった年であったと記憶しています。
そんな2004年の同人作品の中にあって、
本作は当時から有名だった作品の中の1本と言えるのでしょう。
もちろん、その有名になった理由としては作品が好きだという意見もあったのでしょうが、
それ以上にインパクトがあったのが返金に応じるとの宣伝文句であり、
少なくとも話題性という面では筆頭クラスだったのではないでしょうか。

まぁ本当に感動を求める人以外は買うなってのは是非が分かれそうですが、
満足度保証、感動できなければ返金に応じると言われてしまうと、
つい手に取ってみたくなりますよね。
それだけ自信があったのかもしれませんが、随分強気だな~と感じたものでした。
作品自体は普通に楽しめるので、そんなに返金を求める人はいなかったと思いますけれど。

そういや、どうするかな~と商品の前で悩んでいた時の、別の人の会話が印象深かったかな。
二人組の一人がやっぱり悩んでいたのだけれど、
もう一人がこんなのは大抵がクソだからやめておけと言ってたわけで。
2004年ともなると感動系は既に下火に入っていたし、
散々やりつくして食傷気味の人も結構いたでしょうからね。
そういう人には本作は胡散臭く見え、手を出しにくくなるし、
他方でハズレを怖がる初心者には有りがたい制度でもあるので、
ある種のベテ切り捨ての機能を有していたのかもしれません。
ベテランやコアなファンが逆に市場を衰退させるという話は、いろんな業界で聞くことがあります。
エロゲの場合は02・03年辺りでユーザー層が入れ替わったように思うけれど、
その原因は探せばいろいろ出てくるわけで、
本作は04年の作品なのだけれど、ゼロ年代前半という少し広めの枠で考えるならば、
ユーザーの入れ替え促進に少しはつながっていたのかなと、今になって思ったりもします。

さて、この時のちょっと過激とも言える宣伝姿勢も、何か関係しているのでしょうか。
翌2005年には『車輪の国、向日葵の少女』が発売されるのですが、
発売直後は特に売れていなかったんですよね。
ところがエロスケ(・・・で意味通じますよね)では、
発売直後から異常な単発高得点が付けられまして。
今はゲーム機にも移植されていますし、どれだけ売れて知名度が上がっているか知りませんが、
発売直後の売り上げに対する票の入り方の多さは異常でした。
こういうのは、今だとすぐにステマだと言われたりするし、
或いは凶信者の工作だと思われるのかもしれません。
しかし当時はステマなんて言葉は普及してなかったし、
そもそもエロスケで工作までする価値も感じられなかったからか
(今世紀に入って出来たサイトなので、まだ当時は新しい方のサイトでしたから)、
ブランド側の自演って言われていたんですよね。
確かに同人時代の動きを知っている人ほど自演っぽく見えそうではあるものの、
本人らの自演なのだか信者による工作なのだか真偽は知らないですし、
まぁ結論自体はどっちでも構わないのでしょう。
何れにしろ単発でも高得点がある程度大量に入ってしまうと、
市場の原理と同じで、それに引きずられて定着してしまうんですよね。
楽しめた人はそのまま高得点を付けるし、
楽しめなかった人は自分に合わなかっただけかもと、
平均点より少し低いけど極端な低得点は付けられなかったり。
今は工作だらけで点は役に立たないサイトという認識も広まっていますが、
私が完全に役に立たないと見切りをつけたきっかけが車輪だったように、
まだ当時は皆に工作に対する免疫がなかったんですよね。
だから単発高得点を抑制する調整みたいな動きも出てこないまま、大勢が決まってしまったと。
中央値で工作に対応できると考える人もいるかもしれないけれど、
そんな人は生の反応を知らずにデータだけしか見ていない人なのでしょう。
結果までの途中経過が一切発表されない統計であれば、
信者・アンチを切り捨てた中央値で対処できるのでしょうけどね、あそこは違いますから。
個々の作品のデータの入り方やユーザーの流され方を見ていれば、
中央値が信頼・対処できるなんてのは嘘でしかないと分るはずです。

で、売り上げが少なくても、BBSでスレがなくても、あそこで点が高いと、
何年か後に「名作として有名な~」とかって語られだすわけでして。
票が少ないと頭に更に「隠れた」とか、
「知る人ぞ知る」とかって言葉も更につくでしょうが。
何れにしろ今世紀に入ってからのエロゲ文化って、
ぶっちゃけエロスケ文化だよねとか思ってしまいます。
まぁ2001年以降のサイトなので、それ以前のデータには誤りや漏れが多く役に立たないのですが
(90年代とかをエロスケのデータから判断する批評家とかいましたが、そういうのは論外です。
発売タイトル数の推移などのデータも全く参考になりません)、
ここ10年に限って言うならば、
現状を作り上げた管理人さんは是非はともかく凄いよねと思ってしまいます。

話が飛びまくっていますが、
特に売れたわけでもなく、2chの個別スレがなくても有名でいられるのは、
エロスケさまさまなわけでして。
どの分野でも売れたというのは一つの指標であり、その時代の世相を反映しているはずですが、
何故かこの業界では軽んじられていますからね。
エロゲを扱った書籍を見ても、俺にとっての名作とかエロスケ人気の作品を中心に扱うから、
その時々で売れた作品の視点が欠けており、そこから世相を感じ取れないですし。

語り出すと長くなるので今回はここで止めておきますが、
とりあえず嘘から出たまことというのか、虚仮の一念とでもいうのか・・・
どの作品に対しても言えることなのですが、
エロゲで名作と言われるためにどうしたら良いかと聞かれれば、
私はあそこでひたすら工作し続けることだと答えます。
それが正しいとは思わないけれど、残念ながら現実はそうなんだと思いますね。

ランク:C-(佳作)

夏の燈火

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