『恋色空模様』

『恋色空模様』

『恋色空模様』は2010年にWIN用として、
すたじお緑茶から発売されました。

今後のADVは、こうあるべきなんだろうなと思わされた作品でした。

恋色空模様

<概要>


ジャンルはノベル系のADVになります。

母親の仕事の都合により神那島へとやってきた伊東誠悟は、
以前、島に遊びに来ていた際の幼なじみ服部彩や、
父親と共に幼少の時、島へと移り住んでいた妹の美琴との再会を果たし、
色々と問題はあるものの、次第に島での生活に馴染み始めていた。
そんな矢先のある日、誠悟は神那学院裏手にある山の奥で、
日本刀を携えた謎の少女、加納佳代子と出会う。
更には、金髪ツインテールの風紀委員、篠原聖良からは狙われ、
追いかけっこの最中、生徒会長でお嬢様の内海静奈との出会いも果たす。
彼女たちとの出会いを切っ掛けに、
誠悟の学園ライフは一体どうなってしまうのか?

<グラフィック>


私は昔から洋ゲーのADVを好んでプレイしており、
最近はめっきりプレイする機会は減ったものの、
それでもやっぱり気になってチェックしたり、たまにはプレイすることもあります。
洋ゲーのADVはアダルトゲームより技術的にも上だし、画面の中でも良く動きます。
まぁ比べることが野暮なのかもしれませんが、
洋ゲーをプレイしていて、ふと思うことがありまして。

今の洋ゲーのADVの場合、セリフはしゃべるキャラの傍に表示されます。
枠で囲っていない物も多いので、テキスト「欄」とは言えない場合もあるのですが、
結局はセリフの位置が可動式になっているということです。
可動式テキスト欄の良いところは、
その場面で最も相応しい位置にテキスト欄を設けることで、
プレイヤーの視点をそこに誘導させることができます。
その動きによりテキスト欄の存在そのものを演出として用いることもできるし、
画面内の他の動きや演出がある場合、そこにテキスト欄を近づけることにより、
テキストを読みながらも演出等を見逃すことなく楽しめるのです。

この手法は、とても理に適っていると思います。
テキスト欄が常に下にあると、テキストを読むために視線は下に固定されてしまい、
画面上部の演出や動きを見落とす可能性があります。
どっちを見て良いのか困るという意見も、たまに見かけますから。
立ち絵の動きなど演出が進化していく今日では、テキストを読むために視線を下げ、
絵の動きを見るために視線を上げるという動作の繰り返しは、
非常に無駄な動作を要求しているのであり、
人によっては対応しきれなくなるおそれもあるのでしょう。
見せたい物があるならば、そして漏らすことなくユーザーに見て欲しいのであれば、
該当する物を視線の先にまとめた方が良いのです。

尚、テキスト欄の可変式は疲れるという意見もあるかもしれませんが、
それなのに立ち絵がとか演出がとか言い出す人の存在は、
私には解せません。
移動するテキスト欄の動きにすら付いていけない人は、
画面上の細かな演出にも気付けるわけがないでしょうに。
そんな人にグラフィックだの演出だの語れるはずがないし、
テキストしか見ないのであれば、それこそラノベ読んどけよと思ってしまう。
まぁ漫画も読んだことのない世代には辛いかもしれないので、18禁ゲームではなく、
18歳以上60歳未満向けゲーとかって表示する必要はあるかもしれませんがw

元に戻りまして、本作はテキスト欄が可動式で固定されていませんので、
テキストの表示と画面効果とを連動して表現することができています。
可動式のテキスト欄だけでなくフェイスウインドウも多用しており、
セリフ、立ち絵、フェイスウインドウが絶えず変化しますので、
プレイしていてとても賑やかに楽しめるのです。

もっとも可動式のテキスト欄であるとか、フェイスウインドウの活用であるとか、
PC88やPC98のADVでは、わりと普通に見かけた手法ではあったんですけどね。
それらの他にもいろいろあったし、
各社が自分の作品に応じて様々な方法を用いていたものでした。
それがWINDOSの時代になって、次第に立ち絵に下3行のテキスト欄という、
今日の一番多いスタイルに極端に偏っていき、演出も退化したのです。
時期的には90年代後半からの話ですね。

これは技術も資金もない弱小ブランドでも、
シナリオさえ良ければ評価してもらえるという生き残れる術ではあったので、
一面では評価できることでもあったのでしょう。
しかし楽に儲けられるからノベルが増えたという事実も、忘れてはなりません。
今のスタイルが増えたことに関してゼロ年代前半の自称評論家みたいな人たちは、
昔は何が良いか分らなかったからバラバラだったけれど、
それが洗練されて今の形になったのだとか、
まるで見当違いな事を言い出していたんですよね。
ぶっちゃけ、お前らアホだろと思いましたよ。
言葉が悪くてすみませんが、
いつの時代も自分が一番はまってプレイしている時期こそ最良、
それより前の作品は劣るものだという発想の人が多いものですから。
だからあの時代の人に言わせれば、フェイスウインドウの活用とか、
インターフェースの工夫とかも洗練されていないからバラバラだとなるんですよね。
プログラマーが自分の作品を面白くするためのアレンジもできないでどうするよ、
全ゲームに共通して最適なシステム・構造なんて存在するわけないのですよ。
汎用のゲームデザインで事足りる作品なんて、その時点でたかがしれてます。

本作の用いた可動式テキスト欄やフェイスウインドウなどの各手法は、
確かにそれ自体は斬新なものではないのでしょう。
私自身、新しいものと言うより、
失われつつあったものを「現代的に」蘇らせたという印象を抱きましたから。
また近年でも時々見かけますからね。
すたじお緑茶自身も本作に限ったことではなく、過去作からそうですし。
だから本当は別の過去作の所で書くべきことなのかもしれませんが、
過去作は過去作で他の問題があったりするので、
書くスペースの関係で本作で長々と書いているのですけどね。
何れにしろ手法そのものは過去にあっても、
使い方次第で雲泥の差が生じるものです。
何を使うかではなく、どこにどのように使うかこそが一番大事なのですから。
単に可動式テキスト欄を導入したから褒めるとか、そういう話ではないのです。
その場面で「何を」「どういう風に使う」かが大事なんですよね。
本作は、その場その場で最も相応しい手法を取り入れようとしているのであり、
本当に自分の作品のことを考え理解して作っているのだなと、
製作陣全体の一体感と意気込みが伝わってきます。

もう少し今度はもっと現代的視点で語るならば、本作はワイド画面になっています。
ワイド画面になり横幅が拡がることで、
従来よりも多くのキャラを一度に表示できるようになりました。
多くのキャラが一度に、或いは次々に発言する場合、
その勢いや臨場感を表現するには、やっぱり可動式の方が適しているのでしょう。
ワイド画面が標準になりつつある今こそ、
可動式は必須になっていくように感じるのです。
私が一番言いたいことは、いつまで下3行のテキスト欄にこだわっているんだよ、
そんなのもう時代遅れだよ、そろそろ変わろうぜということなのです。
まぁ頭の固まったオッサンクリエイターには無理かもしれないから、
これから出てくる若いクリエイターに期待したいところでもあるんですけどね。

それと、本作では立ち絵やフェイスウインドウを巧みに使いこなしていて、
2次元の平面の画面のはずなのに、
立体的な空間的なものを感じ取ることができました。
単にすたじお緑茶のスタッフが優秀だっただけなのか、
それともワイド画面という時代の後押しもあったからできたのか。
その辺は定かではないですが、まさに温故知新。
古くからの伝統的手法を現代的要素を取り入れることで、
新たな魅力として作り上げたように感じたものです。

まぁ細かいことはさておき、単純に賑やかで楽しいですからね。
ワイド画面のゲームが増えてはきているけれど、
それを本当に活かした作品なんて数えるほどしかありません。
今でもワイド化に何の意味があるのかと疑う人もいるでしょう。
百聞は一見に如かずです。
この楽しさは、まずプレイしてみた方が良いでしょうね。

<ストーリー>


ストーリーは、一応何かあったのだけれど、あまり関係ないかな。
本作はボリュームも結構あるのですが、
その大半は大勢のメンバーと馬鹿やったりして、
楽しく戯れているだけですから。
個別ルートも複数回のHが繰り返され、イチャラブだけって感じでもありますし。
ある意味、いかにもギャルゲーらしいギャルゲーというか、
萌えゲーって感じですね。
こういうジャンルは読むだけの作品の場合には辛口になることも多いのですが、
演出のおかげもあって本作では、だれずに楽しめました。

それと、ボリュームはかなりあるので、とにかく量を求める人にも向いています。

<総合>


とにかく楽しかったですね~
面白いというより、楽しかったという感じです。
ストーリーそのものは平凡な作品ですので、
ストーリーにしか興味ありませんって人には合わないでしょうが。

ワイド画面標準化時代を迎える今こそ、
今後のアダルトゲームはこうあるべきみたいな、
グラフィックの使い方に優れた作品でした。

ただ、こればっかりは、直にプレイしないと分かりにくい部分もあるからな~
個人的には本作をより多くの人がプレイし、
もう下3行の時代は終わったのだ、これからは変わっていかなければという意識を、
多くの人が持つようになると嬉しいのですけどね。

ランク:B(良作)

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