『シャーロック・ホームズとバスカヴィル家の犬』

『シャーロック・ホームズとバスカヴィル家の犬』

『シャーロック・ホームズとバスカヴィル家の犬』は2010年に、
カジュアルゲームとして発売されました。

ジャンルは「アイテム探し」(HOG)になります。
ADVとHOGとの新たな関係を示した作品でした。

バスカヴィル家の犬

<概要>


バスカヴィル家では数世紀前からの呪いによって、
地獄から現れると言われる魔犬により一族の者が惨殺されてきました。
一族の最後の正統後継者であるヘンリー・バスカヴィルに、
呪いの調査を依頼されたシャーロック・ホームズは、
ワトソン医師とともにバスカヴィル家の館へと向かうことになります。
新たな犠牲者が出る前に、この恐ろしい呪いを解くことができるでしょうか・・・

オリジナルは同年に発売された、
『Sherlock Holmes and the Hound of the Baskervilles』であり、
本作はその日本語移植版になります。
CE版が2010年で、通常版が2011年ですね。

<ゲームデザイン>


カジュアルゲーム上でのジャンルは「アイテム探し」(HOG)になります。
従って画面上からアイテムを探す要素が多分にあるものの、
かなりADV要素も強くなっています。
なので正確には、HOG+ADVと考えた方が良いのでしょう。

つまり、あちこち移動してアイテムを収集し、
そのアイテムを使用したりパズルを解きながら、
グラフィックやストーリーを楽しむことになります。

HOG+ADVのようなADV要素の強まった作品の場合、
P&C式ADVの劣化版にならないかが気になってしまいます。
画面をクリックしながら進めますので、見ようによっては似ていますからね。

その点、本作は随所に工夫がなされているわけでして。
まずは当然ですが、HOGとしてのアイテム探しの要素があります。
次に、本作ではマップ上から移動先を選ぶことで、瞬時に移動することができます。
ADVの場合、実際にその世界を感じさせたいからか、
チマチマと行動を強いられるものも多いです。
もっとも、それは時に、行動のだるさというストレスにもなりえます。
カジュアルゲームはADVではないのだというアピール。
手軽にストレスなく遊べることは、カジュアルゲームの生命線でもありますからね。
このワープ機能は単に楽に移動できるだけでなく、
違いを生み出す観点からも大きかったように思います。

また、ADVでは取得したアイテムを別の場所で使うことが基本にあります。
本作もその要素は強いのですが、
アイテムを使うだけでなく、様々な能力を駆使することもあります。
本作では進行する過程で、超能力のようなものを得ます。
凄い力で物体を破壊したりとか、暗いところも見える視力であるとか、
時間を進める能力であるとか。
そういう能力を使いこなすことを要求されるわけですね。
こういう要素は必ずしも斬新というものでもないのですが、
従来のADVではあまり多用されてこなかった手法でもありますので、
ここでも従来のADVとの違いを示せたように思います。

<ストーリー>


まず、本作には同名の有名な小説がありますが、内容的には関係ありません。
シャーロックホームズは最も有名な探偵であるものの、
何故かゲームでは純粋な推理ゲーとはあまり縁がないようでして。
本作も上記のようにホームズが様々な能力を駆使しながら進めますし、
物語もホラーとかファンタジー要素の方が強くなっています。
なので純粋なホームズファンが喜ぶのか微妙なところはありますが、
幽霊とかはコナン・ドイルと縁が深いですからね。
そういう意味では、「らしさ」はあるのかもしれません。

ホームズということにこだわらないのであれば、
世界観や雰囲気は抜群なのですけどね。
どちらかと言うと、MYST系のように世界観を楽しむゲームなのでしょう。
バスカヴィル家には変人が多かったらしく、動物だの植物だの星座だの、
各人が何かしらに精通し、部屋の内部も雰囲気が別世界のように異なります。
単純にその世界観を楽しむこともできますし、
これは他方でアイテム探しの場面でも変化により飽きさせない効果を生んでいます。

また、MYST系はキャラが少なく会話に乏しい作品も多いです。
本作ではワトソンらと行動し、新しい部屋に行ったときなど、
随所で会話が挟まってきます。
その点もゲーム内の緩急を生むと共に、MYST系ADVとの違いにもなりえるのでしょう。

<グラフィック>


奇人変人揃いのおかげもあり、屋敷内の各部屋は別世界のような光景であり、
グラフィックを見ているだけでも楽しめます。
それでいて館という統一した雰囲気に纏めているのですから、
これは単純に凄いですね。

ムービーも2010年のカジュアルゲームとしては多い方でしょう。

<総合>


HOGとADVを融合しつつも、単に既存のADV要素を加えるだけではなく、
随所で純粋なHOGとも既存のADVとも異なるような工夫がなされています。
これにより、HOGないしHOG+ADVとしての、
これまでにない新しい方向性を示すことに成功しました。
海外でも高く評価されていますが、それも納得ですね。

この分野は急激に進化している最中であり、
本作より優れたムービーであるとか、優れたストーリーであるとか、
優れたゲーム性の作品なんてのは、いろいろ出てくるのでしょう。
しかし2010年という早い時期にあって、いち早く新しい方向性を見出し、
全ての面で当時の最高水準と高いバランスを示した点において、
本作の魅力はずっと色褪せないのだと思うのです。
少し古い作品ではありますが、この分野に興味がある人には、
ぜひともやってみてもらいたい作品ですね。

ランク:A(名作)

関連するタグ WIN /ADV /HOG /


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