『私は私のまま、誰にでも変われる』

『私は私のまま、誰にでも変われる』

『私は私のまま、誰にでも変われる』は2008年にWIN用として、
匠から発売されました。

物語内出てくる「闇鍋」が全てを象徴しているのかも。
昔のゲームを懐かしむ人向けの作品。

私は私のまま、誰にでも変われる

<概要>


ジャンルはノベル系のADVになります。
ここを訪れる人は結構ゲーム暦の長い人も多いと思うし、
中には今も楽しくて満足している人もいるのだろうけれど、
中には最近のは肌に合わず、昔のゲームが懐かしく感じる人もいるでしょう。
本作は近年の作品でありながら昔の作品のような混沌さも併せもち、
後者に属する人にオススメしたい作品です。

商品紹介によるあらすじは以下の通り。
夏目ともこは、主人公の相羽健太郎の同級生で幼なじみ。
ちょっと人見知りしちゃう、弱気な女の子。
けど、「ともこ」はひとつだけ、他の子にはない不思議なチカラを持っています。
それは他人の性格と声と記憶を、自分にコピーできちゃうこと。
でも、この能力のことはともこと健太郎ふたりだけの絶対のヒミツなのです。

季節は春。修学旅行で訪れた京都。そこで出会う、さまざまな女の子たち。
健太郎は、その旅先で「鬼の滴」という名の奇妙なエキスを手に入れます。
それは平安より伝わる媚薬で・・・

<ストーリー>


物語内で「闇鍋」が出てくるのですが、一言で表現するとまさにそんな感じの作品。
伝奇・ホラー・サスペンス・パロディ・腹ボテ・スカトロ・輪姦・・・
およそ考えつく様なほとんどの属性・ジャンルが、ちゃんぽんされて入っています。
それでいて、絶妙なバランスで最後はきちんと纏まっているわけでして。

作品の客観的側面は以上です。とてもカオスな作品ですね。
後は、ユーザーがそれをどう捉えるのか。
私はこの作品の受け取り方次第で、ゲームの経歴や耐性が分かるように思います。
その点で、ユーザーに対する「物差し」としても、非常に便利な作品でもあると。

近年のノベルゲーで育った世代、
近年と言ってもノベルゲー主流になって以降なので、もう10年以上になりますけどね。
そういうのから入った世代は、えてして作品のテーマがどうとか、主題は何なのかとか、
そういうことを考えがちです。
私はそれを「小説的ないし映画的視点」と捉えています。
読み物系のノベルゲーが増えたことでアダルトゲームも小説等に近くなり、
そのような発想で考える人が増えたのでしょう。
もし、そういう考えしかできない人が本作をやったならば、
こんなに何でもかんでも詰め込んで、この作品は一体何がしたかったのだろう、
どう楽しめば良いのかが分からないと評しがちです。
また様々な要素が含まれているから、初心者にはオススメできないと言うのでしょう。
近年は嫌がられるおそれのある要素をできるだけ廃したものが、
初心者向けって言われやすいですからね。
そうなると、何が飛び出してくるか分からない本作なんかは、
とても初心者向けに思えないのだと思います。
その考え方も1つの考え方として分かりますし、完全に否定するつもりもありません。
分岐なしの一本道の読ませることに重点を置いたノベルであれば、
私も似たような視点で読みますから。

でもね、その考え方が全てではないのですよ。
ノベルゲーが定着する前のADVでは、次に何が出てくるのか分からない、
そして出てきたものを楽しむという発想が根強かったわけでして。
まぁ私はこういうブログをやることにより、
今のアダルトゲームに飽きたとか不満のある人の意見も目にする機会があります。
その意見の中には、昔のゲームは1本やればいろんな要素が含まれていた、
元から好きな属性が満足いく内容であればそれだけでも楽しめるし、
また知らなかったり今まで魅力に気付けなかった属性でも、
そこで新たに知ったり魅力に気付くことができれば、
その部分の濃い他作品をやれるという他作品への足がかりにもなれたのだと。
しかし今は、そういう作品がない。
意外性のない小説家崩れの文章を読むだけなら、
もうアダルトゲームに興味はないってね。
視点が全然異なるわけで、昔の視点からは、
今のノベルゲーはどれもつまらないって見えがちなんですね。

もちろん昔からプレイしていて前者のような視点の人もいますし、
そういう人が何だかんだで今もプレイしているわけです。
で、後者のような視点だと時期を見て卒業してしまうと。

これは逆にも言えます。
今も昔も考え方は1つではないにしても、
大まかな傾向として昔は後者が多く、今は前者が多いのでしょう。
その傾向が時代によって選ばれた名作の方向性にも大きく影響します。
昔とか今とか言われても時代がアバウトなのですが、
一応大雑把には昔というのはゼロ年代より前の特にPC98やPC88世代の話で、
今というのはゼロ年代以降というニュアンスで読んでください。
昔の名作は、後者の視点で選ばれる作品が多いわけです。
仮に今のユーザーがプレイするにしても、後者の視点に理解をもてる人ならば、
画質等の問題をクリアできる範囲内であれば昔の作品も楽しめるでしょう。
これを読んでいる若い人で、俺は後者の視点も持ってるよというのならば、
ぜひ過去の古い名作にも挑んでもらいたいです。
まぁグラフィックが耐えられないという問題などもありますから、
無理のない範囲でとなりますけれど。
逆に前者の視点しか持てないというのであれば、昔の名作をプレイしても時間の無駄です。
例えばゲームデザインやゲーム性などで評価された作品をプレイして、
シナリオがどうのこうのしか言えない、
それで昔はこの程度でも評価されてたのかと言う人がいたのですが、
だったら違うゲームやった方が良いのではと思ったものです。
仮に前者の視点の人が昔のゲームをやるならば、
有名な名作ではなく埋もれたマイナーな方に合う作品が多いでしょうね。
何せ求めるものが違うので、今うけそうな例えば特化作品なんかは、
逆に埋もれやすかったものですから。

古い名作は環境を整えるだけでも大変ですからね。
ハードを用意したりOSを用意したり、それだけでも費用がかかってしまいます。
楽しめるかどうかも分からないのに、
あれもこれもといきなりやれとは、中々言えないものです。
そういう意味では、本作はちょうど良い「物差し」なのです。
この作品にどっぷりはまれる人は、
98時代の頃の過去の名作も楽しめる確率が非常に高いです。
或いは、この作品自体は特別面白いとまでは思えなかった、
でもこういう方向性はありだと思う、
もっと他にもあるならやってみたいと思えるのであれば、
過去の名作も楽しめる可能性があります。
でも逆に、本作が何したいのかどこを楽しめば良いのか、
サッパリ分からないって人ならば、過去の作品をやるだけ時間の無駄でしょう。

他方で昔からやっているという人ならば、
本作の楽しみ方が分からないという人は「皆無」でしょう。
PC98時代からのベテランだと言いつつ、
本作の楽しみ方が全く分からないようなことを言っているのであれば、
それは絶対に嘘だと思います。
ただし、楽しみ方が分かるのと楽しんだのとはまた話が別です。
つまり、こういう作品の楽しみ方は分かる、
でも、いろいろ含まれた路線なら昔に一杯良いのがあったよね、
それら過去の名作には及ばないよってパターンですね。
特に過去の作品を美化しすぎてしまうと、そう思ってしまう危険性は高いです。
本作に対し、私は最初に「闇鍋」を挙げました。
闇鍋なので何でも入っているのですが、
それで本作に登場する闇鍋は奇天烈な味になったのではなく、
予想外に普通の味に仕上がっています。
その作中の闇鍋の味が本作の出来も表現していて、カオスな雰囲気を纏いつつ、
またストーリーもラストで伏線が回収され盛り上がりつつも、
全体の印象としては意外とこじんまりとしていまして。
だから「過去の名作と比べると~」ってなる気持ちも分かってしまうのです。
私も最初はそれで良作止まりかなって考えたのですが、
一体いつまで10年以上も前のゲームを引きずっているのだと、
ゼロ年代後半のカオス系でここまで詰め込んだ作品も他にはないだろうと、
物差しとしうるゲームは現状ではこれ以外に適任なのはないだろうということで、
再評価したんですけどね。
まぁ私は再評価で好意的に見ていますが、
過去の名作と比べてどうのって意見も分かりますし、
どうしてもそこは捉え方次第なのでしょう。
結論自体はどちらでもありだと思います。

<ゲームデザイン>


ちょっと長々と話がそれてしまいましたが、
ジャンル自体はノベル系のADVです。
マルチストーリー・マルチエンディングではあるものの、
各個別ルートが全部つながっており、最後にトゥルールートがあるため、
実質的には一本道となります。
その辺りは、ゼロ年代前半に顕著に増えた構造と言えるでしょう。

他方で、最初の選択肢でいきなり間抜けなBADエンドなったりしますし、
次々と展開が変わったり結末も変わるような、
PC98時代のノベルゲー的構造も有していました。
まだこんなことやってる所もあったんだねと、
私は懐かしくなりましたけれどね。

<サウンド>


このゲームの珍妙なところは随所にありまして。
何でも混ざっているような部分や、いきなりBADのゲームデザインは、
PC98時代の面影を有しています。

他方で実質一本道な構図であるとか、使われている声優さんを見ていると、
ゼロ年代前半っぽい面影もあるわけでして。
安玖深音さんとか、まきいづみさんとか、一色ヒカルさんとか、
青山ゆかりさんとかですね。
もちろん今でも活躍しているのですが、
ブレイクしたのはゼロ年代前半でしょうし、
今はまた更に若い人気声優も出てきていますからね。
ゼロ年代前半であれば超豪華と言われそうなメンバーという意味で、
ゼロ年代前半的雰囲気なのかなと。

個人的にはメインヒロインであるともこ(安玖深音)の変身のときのかけ声、
特に最後の溜めに溜めた後の「リライトォ~」が妙にツボでした。

<総合>


昔ならよくあったタイプなのでしょうけどね、
久しぶりということで余計なことまで長々と書いてしまいました。
個人的には上述のように「物差し」としての価値を再評価しまして、
名作としておきます。
この作品をプレイして面白かったという人もいるでしょう。
逆に自分には合わなかったという人もいるでしょう。
カオスな作品だけに、今現在は感想は分かれうるでしょうし、
結論自体は私はどちらでも構わないのだと思います。
ただ、若いユーザーには、
この作品を通じて自分がどういう視点でゲームに臨んでいるのか、
他人がどこを見ているのかを考えるきっかけになれれば良いなと思います。
他方で近年のゲームを楽しみきれないベテランユーザーで、
自分に合った作品を探す気力も失われてきた方がいるならば、
この作品を検討してみるのも良いのではないでしょうか。
いずれにしろ本作は、様々な意味で試金石となりうる、そんな作品なのだと思いますね。

ランク:A-(名作)

私は私のまま、誰にでも変われる

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このゲーム、確か某通販サイトで送料負担してくれる額にちょい足りなかった時、メインのゲームのついでに買った記憶があります。で、終わってみればメインで買ったゲームよりこっちが面白かったという。

絵がヘタウマ系だったり、序盤に安直なジョジョネタバッドエンドがあったりで容赦なくプレイヤーをふるいにかけてきますが、1人攻略後のエンディングで引き込まれ、ホラー展開(ともこのCGが超怖い)と実は割と濃いエロ描写、強引に全てを纏めるエンディングで未だに強く印象に残っています。終わってみるとオープニングの時点で伏線というかミスリードを誘っている事が分かったり、あなどれない作品でした。

いろいろ含まれているだけに、語れるネタにも欠かない作品でしたね。
注目する点が人によって異なりそうなことも、魅力なのでしょうね。

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