『ザ・キング・オブ・シカゴ』

『ザ・キング・オブ・シカゴ』

『ザ・キング・オブ・シカゴ』は1988年にX68000用として、
ボーステックから発売されました。

ADV史に残る作品の一つと言えるかもしれない作品でしたね。

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<概要>


開発はアメリカのCINEMAWARE社で、オリジナル版の発売は87年だったかな。
本作はそれをボーステックが日本語化して発売した作品になります。
X68000版が1988年に発売され、1990年にはPC98にも移植されたようです。

ジャンルはノベル系のADV。

舞台は1930年代のアメリカのシカゴで、アル・カポネがいなくなった後です。
プレイヤーは若いギャングである「ピンキー」として、
ギャング同士の抗争の中、シカゴの覇権を奪うことが目的となります。

<ゲームデザイン>


ジャンルはノベル系のADVということで、基本は読み進めることになります。
途中で3択の選択肢が登場し、その中から選ぶことで次の展開が変わる、
マルチストーリー・マルチエンドとなっています。
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選択肢は頻繁に登場しますので、分岐も非常に多くなります。
それに加え、殺し屋にどれだけお金を払うかなど、
ちょっとした数値管理のSLGっぽい要素も加わることで、
その展開の幅は更に広がります。
公式の説明によると、その分岐パターンは1億以上とか。
1度見た展開と全く同じものは2度と見ないような、そんな作品です。
基本的に特定のストーリーを追うというのではなく、
プレイヤーの選択により主人公の人生がどう変化するのか、
その分岐・変化していく様を楽しむ作品になると言えるでしょう。

また、この選択肢には時間制限があり、
プレイヤーがもたもたしていると、主人公が勝手に選んでしまいます。
時間制限型の選択肢と言うと、ゲーム機では『サクラ大戦』(1996)が有名で、
それ以前には『学園ソドム』(1995)などもあるのですが、
もっと早くに実現されていたってことですね。

加えて、銃撃戦などちょっとしたミニゲームもありました。
もっとも、これはちょっと厄介でしたが。

<グラフィック>


X68000用ということもあり、画質は当時としては非常に綺麗でした。
口パクとかもありますしね。

まぁ、綺麗とは言っても、リアルなおっさんや爺さんなので、
こわいというかキモイというか、複雑な気分なんですけどねw
個人的にはもっと可愛い方が好きです。
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<感想>


ADV史を振り返る上で、88年というのは面白い年だったよなと思うわけでして。
元々のADVはコマンド入力式だったのですが、
84年に『オホーツクに消ゆ』が登場しコマンド選択式が生まれます。
これにより誰でもクリアできるようになったために、
それまでのようなコマンド探し以外の部分で勝負せざるをえなくなりました。
そこで『ジーザス』(87)のように演出面に力をいれる流れが登場し、
88年にも同じエニックスから『アンジェラス』が発売。
またコナミの『スナッチャー』など、他社からも演出に力を入れた作品が登場します。
これらは今でも有名ですので、ADV史における主流という意味では、
この流れが主流と言えるのかもしれませんね。

他方で、従来のADVは大人向けばかりだったことから、
子供も遊びやすいようにと新規の獲得を目指して作られたのが、
ディスクシステムの『ファミコン探偵倶楽部』でした。
これは内容の変化も伴いますが、
むしろターゲーットとなるユーザーを変えたことが大きかったのでしょう。

これだけでも変化は見てとれるのですが、実は他にもあるのです。
それがノベル分野の開拓ですね。
まぁノベルとADVは構造が少し異なりますので、
当時は両者を分離して考える人も少なからずいたのですが、
大雑把な楽しみ方は似ていますし、今ではADVと題してノベルばっかですからね。
今更両者を一緒に扱うことに異論を唱える人も少ないでしょうから、
一緒のものとして考えます。

さて、ノベルゲーというものは、他のADVより強調された特徴が2点あります。
一つは小説のように読み進め、物語を堪能することに重点を置いたということ。
一つは選択肢により展開が分かれていくということ。

またノベルだのノベルゲーだの皆大雑把に使うのでややこしいのですが、
同じノベルゲーという表現を用いる場合でも、
この2点のどちらを重視するかでも大きく傾向が異なってきます。

近年は後者の展開の変化を重視したノベルゲーは少なく、
前者の物語を読ませることに重点を置いたノベルが多いです。
ところでシステムサコムは、
ADVはより小説に近くなると現在のADV市場の到来を予想し、
読ませることに重点を置いたノベルを88年に製作します。
それが「ノベルウェア」であり、理念的には現在のノベルの元祖に当たるのでしょう。

他方で後者を重視、即ち選択肢による分岐を重視した路線もあり、
これはゲームブックをコンピューターゲーム化したものと説明されやすいです。
このゲームブック型のノベルゲーは、
家庭用ゲーム機で登場したということで『弟切草』(92)が有名でしょうか。
もっとも選択肢で展開が変わるという構造はずっと古くからあり、
『弟切草』はあくまでもゲーム機では最初だったかもね、
というだけにすぎません。
ただ80年代の国産のノベルゲーの場合、分岐なんて言ってもたかが知れています。
数え切れないほど無数に分岐する『弟切草』からすれば子供だましであり、
その点で『弟切草』は違うのだという人もいるのでしょう。
そこで登場するのが、この『ザ・キング・オブ・シカゴ』です。

理論上は1億という数え切れない分岐の多さに、SLGのような管理の要素も加わり、
現在のほとんどのノベルゲーよりも複雑な構造になっています。
全く同じ構造の作品となれば、今でも存在しないかもしれません。
何れにしろ、小説型のノベルだけでなく、
ゲームブック型のノベルゲーもまた、この88年に確立しているのです。

ね? 88年って変化の激しい年でしょ。

この時期にこれだけの作品が登場したということで、
文句なしに名作と言えるのでしょう。
しかも上記のように日本語版はX68000ということで、グラフィックも綺麗でした。

こういう作品なので、凄い傑作だという人がいても、全く不思議ではないでしょう。
ただ、私がギャングの抗争とかそういう類の話に興味がないこともありますが、
ストーリーそのものは、それほど面白いものでもなかったのかなと。
上記のようにキャラも可愛くないですしね。
(これは完全な主観。出てくるおっさんらは十分に個性的であります。)
そのためか、これは凄いなと認めざるをえないものの、
主観的にはあまりはまれませんでした。

『弟切草』をリアルタイムでなく大分後にやって、
それで楽しめなかった若い人の感想を幾つか見たことがありますが、
こんな感じで批判するでしょ。
ノベルを確立した先例的価値は認めるけれど、ストーリーがブツ切れで面白くないって。
その感覚、つまり先例的価値という長所もブツ切れって短所も、
そっくりそのままこの作品に妥当するんですよね。
ゲームブック型ノベルゲーとしての先例的価値、
及び作り込みによる完成度は認めざるをえない。
でも、その凄さほどには楽しめないんだよな~って感じで。

<総合>


少し結論を先取りしてしまいましたが、
本作の持つ意義を考慮するならば、好み関係なしに文句なく名作と言えるのでしょう。
単に分岐要素を持つ作品だけならそれ以前にもありますが、
分岐に重点を置いてここまで作りこんだ作品は以前にはないのですから。

ただ、うざいミニゲームなどもあったことで、
主観的には必ずしも大好きという作品でもありませんでしたね。
しかしそれでもなお、その意義は薄れるわけではなく、
独自性の面でも完成度の面でも優れた作品でした。

ランク:AA-(名作)

ザ・キング・オブ・シカゴ


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