『白夜物語 ウィンチェスター家の末裔』

『白夜物語 ウィンチェスター家の末裔』

『白夜物語 ウィンチェスター家の末裔』は1988年にPC88用として、
イーストキューブから発売されました。

独自性と完成度のどちらを重視するかでも印象が異なりますが、
何れにしろコマンド選択式ADVの在り方を考えさせる作品の一つなのでしょう。

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<簡単なあらすじ>


主人公は大学生で、しかも探検部部長。
探検部では一人で探検し、
その結果をレポートとして提出しなければならないわけでして。

そこで主人公が目をつけたのは、「タツ年フェア」。
12年に1度のタツ年には、ある洋館のそばで必ず女のバラバラ殺人が発生します。
町はそんな暗い雰囲気を払拭するための祭りの真っ最中。
主人公は魔女屋敷とも呼ばれるその洋館、
即ちウィンチェスターの館に興味を持ち進入を決意。

というわけで、メインの舞台はウィンチェスターの館であり、
内容面での分類は館モノであると同時に、ホラーでもあります。
もっとも完全にホラー一色というのではなく、
コメディっぽい軽い独自のノリも結構強い作品でもあります。

<システム>


コメディ要素の混ざったホラーということで、
これはこれで好きな人も結構いると思うのですけどね。
しかしストーリーの本筋部分があっさりしていることもあり、
あまりストーリー重視とかストーリーに特徴のある作品ではないのかなと。
どちらかと言えば、システム部分に特徴のあった作品のように思います。

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ゲームジャンルはコマンド選択式のADV。
画面左側に動詞コマンドが並びますので、テンキーの8と2で上下させて選びます。
画面下部のいわゆるテキスト欄には名詞コマンドが並びますので、
テンキーの4と6で名詞を選びます。
その動詞と名詞の組み合わせで進行することになります。

さて、このようにコマンド選択式のADVと言いつつも、
若干ゲームデザイン部分に特徴があるのですが、
その点は一度後回しにしまして、
まずは最大の魅力でもある狭義のゲーム性から見てみたいと思います。

コマンド選択式という言葉自体はADV好きなら誰でも知っていそうなのですが、
意外と人によって微妙に思い浮かべるものは異なってくると思います。
コマンド選択式は同じコマンドを繰り返す作業が嫌と言う人もいますし、
またそういう、例えば「みるコマンドを3回」というような、
同じコマンドを何回も選択させるゲームが多数あることは否定できないでしょう。

でも、コマンド選択式ADVの全てがそうなのではなく、
「同じコマンドを繰り返す作業」と「コマンド選択式というシステム」は、
決してイコールの関係ではないのです。
そしてその代表例の一つが、今回扱う白夜物語なのでしょう。

白夜物語は同じコマンドを何度も選択する必要は全くなく、
正解のコマンドさえ選んでいけば1時間以内で終わってしまうほど、
すんなりと進行していくのです。
他方で名詞コマンドも動詞コマンドも数が非常に多いので、
これを総当りで試すっていうのは結構大変です。

確かに総当りすれば誰でもクリアは可能かもしれないけれど、
それはあくまでも最終手段。
少なくともこのゲームでは得策とは言えないでしょう。
機械的に総当りするよりも、少し考えて正解を探す方が、
トータル的には近道のように思います。

ゲームの上手い人ほど、優れた人ほど早くクリアできるというのは、
一般的には常識かもしれませんが、
国産のADVでは必ずしもそれが常識とはなっていません。
上手い人の、その努力が報われる構造になっていない作品の方が多いのです。

先に進みたい人は、その気になればどんどん先に進められる。
とてもシンプルかもしれませんが、
ゲーム性という言葉に含まれる中の最も基本的な部分でもあるのでしょう。
これができていないADVが多いだけに、
プレイヤーの努力次第でどんどん進める本作は、
相対的にとても良く出来ているように見えるのです。

他方で優れたADVというのは、
プレイヤーの努力が反映されるかという部分だけで決まるものでもありません。
多くのユーザーは途中でつまるわけですから、
その過程部分をも楽しませてくれるのが優れた作品なのでしょう。
白夜物語は途中で戦闘もあり、飽きさせないようにメリハリもあります。
またマルチエンドであり、その数も多くなっています。
具体的には死ぬパターンがいろいろありますので、
様々なゲームオーバーパターンを全て見るという楽しみ方もできるでしょう。
ノベルゲーではマルチエンドの数が増える方向で発展していきますが、
コマンド選択式は1本道であったり、マルチエンドでもその数が少ないものが多いです。
従って本作のような分岐パターンの多いコマンド選択式というのは、
これはこれで一つの特徴と言えるかもしれませんね。

何れにしろ先にどんどん進むも良し、寄り道していろんな結末を楽しむも良し。
そして何より大事なのは、
どう楽しむかの裁量をユーザーに委ねているってことなのです。
歯ごたえもあり結構難しい。でも、努力次第でどんどん先に進める。
他方で単に先に進めるだけではなく、寄り道して楽しむ横の広がりもある。
ADVにおけるゲーム性とは何かを語りだすと長くなるのでここでは割愛しますが、
少なくとも本作がADVにおける狭義のゲーム性に長けていることは、
おそらく誰も疑う余地はないのでは。
もしあなたが完成度を重視、
そしてその完成度がADVにおけるゲーム性の高さ・作り込みを意味するのならば、
この作品はきっと素晴らしいものと感じられるのではないでしょうか。

<ゲームデザイン>


だから絶賛する人がいても何ら不思議ではないし、
重視するポイント次第でその結論に至ることも十分に納得できますから、
私が異論を挟むことはありません。

ただ、私個人は完成度よりも独自性を重視する方なのでね。
そんな考えの人間の場合、また違った結論にもなりうるのでしょう。
確かに狭義のゲーム性が高いことは喜ばしいことですが、
作りこんであるADVってのは何も本作だけの特徴ではありません。
だから独自性を重視すると少し決め手としては弱くなるわけでして。

そうなると別の決め手として目に入ってくるのが、
本作のコマンド選択の在り方であり、つまりはゲームデザイン部分なわけですね。
上記のように本作では動詞と名詞が分割された構造をしています。
このような分割構造は、例えば同じ88年でも『第4のユニット』があり、
決してこの作品が初めてというわけではありません。
もっとも、分割構造という方向性の中で更に進化させ、
何か突き詰めたものがあれば、それはそれで一つの独自性と言えるのでしょう。
分割構造自体は発展の可能性を秘めていたと思うだけに、
十分長所になる可能性も秘めていたと思います。
しかし残念ながら『第4のユニット』との違いは名詞が絵から言葉になっただけで、
やっぱりここでも本作ならではと言うまでには至っていないのです。

それ以上に、そもそもこの構造を採る必要があったのでしょうか。
近年、特に私が大事にしている要素が、
シナリオやシステムなどの融合という意味での、
トータル的なゲームデザインです。
普通のコマンド選択式ではつまらない、
だから何か変えようという姿勢は個人的には好むところです。
しかしこの分割システムは、
そのままではPCのADVに適していたとは思えないのです。
コマンドにテンキーを割りふったシステムの方が快適ですしね。
むしろこの分割構造は、十字キーはあるけどテンキーのない、
ファミコンなどのゲーム機のコマンド選択式ADVに適しているのでしょう。
ファミコンやディスクのADVでこの構造を採用していれば、
間違いなく素直に賞賛していたと思います。
(そういや、ファミコンのADVでこの構造のってあったかな・・・?)
でもPC88のADVとしては、ハードとシステムがマッチしていないようであり、
その部分で少し疑問を感じてしまったのです。

<総合>


メインストーリー部分が短めということもあり、
その部分にしか興味がない人には合わない可能性もあるでしょう。
しかしそうでなければコメディ混じりのホラーで終始緊張感と楽しさがありますし、
RPGっぽい戦闘や多数のマルチエンドも相まって、
絶えずだれることなく誰でも楽しめる系統の作品なのかなと。
他方で繰り返しコツが分かるごとに短時間クリアもできるようになり、
最短クリアを目指すというやり込みもできますし、
玄人好みな作品でもあるのでしょう。
上記のように、作り込みを評価するのであれば、十分名作足りうる作品です。

もっともその反面、本作ならではの要素として、
しかもそれが長所となっているかとなると、やや物足りなさもあったのかなと。
だからきちんとまとまり良く出来ているなとは思いつつも、
私のいつもの基準では点が伸びないし印象が強い作品でもありません。
よって、総合でも良作としておきます。
繰り返しますようにどこを重視するかということでもあるのですが、
良く作られたADVとはどんなものかに興味があるのであれば、
一見の価値のある作品と言えるのではないでしょうか。

ランク:B-(良作)

白夜物語


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こんにちは〜

これこれ
パソコンサンデーで山下さんが紹介して絶賛してたのを
見てやりたいなぁって思っていたんですよ

先日katanさんのお話で通好みといっておられたから
よけいに興味でちゃって(笑)

通勤中とか出来るようになればなぁ...
今はやる時間がほしいです(´∀`)

あ、このコメント書くのに2回エラーでました

最近新しく分かったことは
もしかしたらプロバイダが関係してる?かもです
(ルーター、モデム等は初期化とリセットは試してるので)

エラーが出てFC2系のブログが全て見れないとき
iPhoneで家のWifi経由でダメでもLTE回線で見ると
大丈夫でした...

こんにちは~

通好みだけれど、私好みではないってところが少しでも伝わればと。
たぶん、あやちだいちさんの方が楽しめるタイプの作品だと思います。
機会があったら、ぜひ挑戦してみてください。

プロパイダの関係は分からないですが、最初はつながらないのに、再度読み込んだら普通につながったとかがfc2のデフォみたいになっているので、余計にややこしくしているような。
早く安定してくれると助かるのですが・・・

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