アダルトゲームの歴史 1998年 その3

アダルトゲームの歴史 1998年 その3

アダルトゲームの歴史を振り返るシリーズの第46弾ということで、
1998年の3回目になります。

今回もストーリー面の話なのですが、主流とは異なる分野を扱います。

まず最初に前回の補足から入りますが、前回扱った恋愛か純愛かという話は、捉え方によってはゲームデザインとも関連しているのでしょう。
例えば恋愛SLGや多人数攻略可能なナンパ型ADVなどでは、後半までどのキャラも登場します。
しかしノベルが普及しヒロインごとの個別ENDが発展するに従い、次第に個別ルートが分量的に充実してくるのですが、個別ルートに入ると主人公とヒロインの2人だけの問題が焦点になりますので、他のキャラが登場しなくなるケースが多かったです。そうなると完全に2者間の話に終始しますので、恋愛というより純愛という方が表現として相応しいのかなと。
また違った側面で見てみますと、ナンパゲーの場合には主人公のライバルとなる存在がいることもあり、主人公とライバルとヒロインという男2人に女1人という三角関係類似の構造がありました。
これが恋愛ノベルになるとライバルの存在がなくなり、逆に浮気対象の別のヒロインとの関係でもって男1人と女2人での三角関係という構造が増えたように思います。
もちろん『同級生』(1992)のように両方を含む作品もありますので、この時代の作品はこうと一概には決められません。しかし古い時代ほど前者が多く、新しい時代になるほど後者が増えてくることもまた、一つの特徴ではないでしょうか。

さて前回は「恋愛」と「純愛」の話だったのですが、言葉が変わってきたという点では、この頃に多く見られた表現が「ダーク系」というジャンルでした。97年の『アトラクナクア』とかの所で宿題にしてしまった話ですね。
「ダーク系」という言葉も昔は散々聞いたのにいつの間にかほとんど耳にしなくなった表現なのですが、この頃は大雑把に分ければ恋愛系・陵辱系・ダーク系といった感じで、ダーク系はかなり大きなウェイトを占めていたのです。
ダーク系という言葉も、誰しも直感的になら何となく分かるように思いますが、これまた非常に曖昧な表現ですし、それ故に人によって微妙に異なった使われ方をしているように思います。
とりあえず雑誌での表記を見てみてみますと、以前は「猟奇」とされていた区分が「ダーク系」に変わってきています。
もちろん、雑誌のライターがたまたま用いただけであり、言葉自体に深い意味はないとの考え方もできるでしょう。その可能性は否定しません。
だから私見とした上で再度振り返ってみますと、windowsの時代になってゲームから淫靡さがなくなったと感じたのですが、淫靡さや陰惨さや猟奇性を表現していたものというのは、ほとんどが「行動」を「伴う」ものです。
雑誌でのダーク系の説明に「恐怖や狂気や悲しみといった暗い想い」とありましたが、こういう心情は必ずしも行動を「伴いません」。
だから猟奇的なものから行動的な要素が削られていったのがダーク系とも思えるわけで、これはゲーム性が簡略化され読み物にシフトしていくゲームデザイン面の過程にも合致する上に言葉の意味からもしっくりきます。

しかし猟奇さを伴うものまでダーク系に含まれていることからすると、これまでの行動を伴った猟奇系作品だけでなく、行動ではなく心理面を重視した系統も含まれるようになり、より広い概念としてダーク系という言葉が用いられるようになったとも考えられます。
どちらとも捉えられるし、こだわる人はいろいろ説明しようとするのでしょうけどね。まぁ細かい部分は他所に委ねましょう。

と言いつつ、一応ここでの結論として一つの考えを記載しておきますが、そもそもジャンルというものは、数が多ければそれだけで単体として扱われるものです。昔は館モノが多かったから館モノだけで1つの項目になっていたものもありますし。だから以前は館、推理、ホラー、猟奇・・・などと単独で扱っていたものが、恋愛ゲー全盛に伴い他ジャンルのそれぞれの数が減少し、少数の作品らを1つの纏まりとしてダーク系に集約したと考えるのが素直なのかもしれません。
館モノ1作品、推理計2作品、ホラー1作品とかっていうのを1つ1つ別に区分する実益はないですから、これらを纏めてダーク系にしてしまったと。
そういう観点からは、「ダーク系」という言葉を作り出さざるを得ないほどに、恋愛系以外のストーリー重視路線が減っていった証拠とも言えるのでしょう。実際、全部纏めてダーク系と扱ったところで、その数は恋愛系に及ばないのですから。

細かい名称は本当は何でも構わないのですが、大事なことは恋愛ゲームと抜き特化の陵辱ゲームとは別に、陵辱なども普通に含まれるストーリー重視の路線が、数こそ減っていったとはいえ、存在したということです。
具体例としてはサイコホラー系としては『luv wave』があり、陵辱の成分を多分に含みつつもシナリオで読ませるゲームとしては『好き好き大好き!』があり、『臭作』も基本は盗撮で進みつつも最後にアッと驚かせる仕掛けを用意しています。
因みに、『臭作』との関連でついでに書いておきますが、オタクの好きな言葉に「メタ」というものがあります。私も好きでしたw
ADVは元々主人公とプレイヤーが半同一的な関係にあり、主人公がプレイヤーに話しかけたり或いは進行役がプレイヤーに問いかけるような理屈だけでは説明しきれない部分が多く、元々メタ的な存在なのです。
ノベルっぽいゲームが増えることで逆にその要素が減っていったわけで、近年の一部の作品でまた見かけるようになったのは、メタ要素が新たに加わったというより、むしろ復活してきただけと言えるように思います。
この辺は世代間のギャップが激しいようで、ゼロ年代の一部のノベルに対しメタ的視点が加わることを斬新に捉える見解もありますが、その場合は古いADVを知らないケースばかりです。古いADVを知っていると既に似たような経験をしてきていますので、メタ的な構造にそれほど新鮮さを感じられないのです。(でも好きなことに変わりはないので、個人的には楽しんじゃいますけどね。)

ところで、このダーク系に属するジャンルは、恋愛系が増えるに従い減るのは必至だったのでしょう。しかし他の遠因を探してみますと、例えばこの手を最も得意とし当時の筆頭格であったシーズウェアが、98年には新作の相次ぐバグ騒動で信頼を失っていきます。そのようなトップブランドの失権も、ジャンルの衰退に拍車をかけてしまったのかもしれませんね。

さて、恋愛系としてストーリー重視のものがあれば、ダーク系として陵辱要素のあるストーリー重視作品もあるわけで、そうなると当然中間的なものもあります。上で少し名前を挙げた『DiaboLiQuE(デアボリカ) 』などが分かりやすい例で、本質としては1人の女性に対する純愛を貫いた作品となるのですが、その過程では陵辱要素もありますし、ファンタジー世界で輪廻転生も扱っています。加えて織音さんの繊細な絵もあって女性にも支持されたことから、ちょっと他とは異なる系統に属するのかなと。単純に恋愛だけというよりも、様々な要素を含んだ作品を好む層に好かれやすかったのではないでしょうか。

また恋愛系と陵辱系と2つの全く異なる色・区分けが鮮明になることで、逆に両方を一緒にし、ルートによっては純愛・萌えを、ルートによってはハードなエロを楽しませ、或いはそのギャップを楽しませる路線もあります。
96年頃から増え始め前年にも幾つか紹介しましたが、98年では大手であるアイデス系のフェアリーテールから『Natural ~身も心も~』が発売され、高い支持を得ています。
96年に発売された大手アリスの『ONLY YOU』は通販専用ですので、市場でもプレミア価格で取引されるなど一般的な存在とは言えませんでした。また97年には幾つかの作品が登場するも、基本的には中小のブランドの作品故に、認知度はまだ高くなかったのでしょう。個人的には好きな路線で早くから知っていたものの、世間一般的にはまだそうではなかったということです。
しかし今回は大手が作り販売したことで、このジャンルに対する認知度・注目度が高まったことが大きかったように思います。他にも『sonnet ~心かさねて~』などもあり、分化した今ではほとんどないのですが、90年代後半にはわりとこうした路線のゲームも見かけることができたものです。

ダーク系という名の読ませる非恋愛路線がある一方で、純粋に何かに特化した陵辱系も存在します。再三繰り返しますように、萌え恋愛系と陵辱系という今の大きな路線の一方たる陵辱オンリー路線も、90年代後半に次第に数が増えていったのです。
こちらはアブノーマルさで発禁処分になった『コ・コ・ロ・・・』のような作品もあった一方で、マインドコントロール系の『魔薬』や露出羞恥系の『P.S.(ぴ~えす)』のような特化系が次第に増えていった感じです。

寝取られものとしては『サキュヴァス ~堕ちた天使~』がありましたが、『サキュヴァス ~堕ちた天使~』からはまた違った側面も見えてきます。つまり音声の話なのですが、音声に関してはまた後で詳しく扱いますので、ここでは必要な範囲で書きます。
今ではアニメなどでも活躍するいわゆる表の声優がエロゲにも登場する場合に、そのギャップを求めて購入するケースも増えています。つまり新たな楽しみ方が増えたわけですね。
もっともこういう表の声優がエロゲにも登場するというのは、ゼロ年代に入ってから登場したわけではありません。96年や97年には旧作のWIN用へのリメイクが多かったと書きましたが、老舗であるD.O.はリメイク作品にいわゆる表の声優を起用することが多く、その声優の豪華さで一部で話題になっていました。
リメイクの場合はプレイヤーが限られるので、新作ではどうだったのかが問題になりますが、そこでこの『サキュヴァス ~堕ちた天使~』が出てくるわけですね。『サキュヴァス ~堕ちた天使~』でも当時有名な表の声優が何人か起用されており、豪華なメンバーだったと言えるでしょう。
そしてもちろんそこに魅力や新たな楽しみ方を感じた人もいたのでしょうが、全体としては少数派だったのかなと。今のように豪華声優が大幅な売上増につながるかというと必ずしもそうではありませんでしたし、認知度事態がまだまだ低かったように思います。
つまり豪華声優を目玉にした作品があったかと聞かれればあったとなるのだけれど、今のようにそれが幅広く認知されユーザーのニーズや一つの市場としてはまだ形成・普及はしていなかったということですね。
その辺りにも当時のユーザーの多数派の音声に対する関心の低さが現れているようで、今と比較すると面白いのかなと。

ところで『P.S.(ぴ~えす)』はメールを用いたゲームでしたが、擬似的にネットサーフィンをさせる『Fifteen ~すくうるがあるずデジタル読本~』など、先端の技術として登場しつつもまだ身近になっていないものを擬似的に体験させるゲームが出てきたのも、この年の大きな特徴なのでしょう。
もう少し広げて近未来を舞台にしたサイバーパンクの『luv wave』なども関連させて話すのであれば、近未来の可能性への憧れをゲーム化したものが比較的多かったとも言え、新世紀を目前に控えつつもまだPCやネットが登場はしても普及しきれないという過渡期の世相が作品のジャンルにも反映されているように思います。

この項目の最後となりますが、いわゆる抜きゲーや陵辱作品というのは、実は今でも年間を通せばかなり売れているようです。(この辺の話は雑誌でのランキングではなく、現に販売している店員の話を聞いたりすると分かるので面白いです。)恋愛系がほとんど初動で決定するのとは対照的です。そして雑誌のポイントは初動が大きくものを言いますから、年間では売れているはずの作品が、年間の雑誌ランキングでは登場しにくいというのが現状でもあるのでしょう。
かように今ではランキング上位に登場しにくい陵辱系作品ですが、98年の上半期はランキングを賑わし元気でした。
98年の前半は当時歴代最高売上の『臭作』の存在もありますが、前年まではPC98で発売されたような特化系やマニアックな類のゲームも、98年はWIN用で新作が出されていますますからね。そういうことも少しは関連しているのでしょう。
とにかく『臭作』を筆頭に、98上半期は陵辱系作品の元気な年でもありました。
また上位作をダーク系を含めた陵辱系作品が多数占めるのも、98年前半くらいが最後になるのかもしれません。



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