ようこそシネマハウスへ

ようこそシネマハウスへ

『ようこそシネマハウスへ』は1994年にPC98用として、
ハード社から発売されました。

遊べるADVの代表格であり、
ゲーム性に関してはPC98の中でも屈指の傑作でしたね。

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<総論>


その昔、ハードという会社がありました。
PC88やPC98のユーザーなら、
『はっちゃけあやよさん』の名を一度は聞いたことがあるはずです。
一部では、クソゲーとして非常に有名なシリーズでしたからね。

もっとも、一応誤解のないように書きますと、
好き嫌いの分かれる長所短所のハッキリしたシリーズであり、
独特の世界観やキャラの可愛さ、グラフィックの質の高さから、
根強いファンも多いシリーズではありました。

ただ、当時のADVは、選択式の弊害がモロにでていて短かったんです。
しかも、その中でも初代あやよさんは特別でした。
5分で終わります。 飯を食べ終わる前にクリアです。
あまりのコストパフォーマンスの悪さに、思わず涙がでてきそうでしたよ。
内容もメチャクチャでしたしね。
だから叩かれても仕方ない部分もあったのです。
そしてあやよさんに限らず、ハードの作品には駄目なものが多かったです。
よく潰れなかったものだと思いますが、
まぁ他に代えがたい妙な魅力のある作品も多かったですから、
固定ファンは結構いたのかもしれませんね。

そんな妙な魅力もあるけどハズレ率の高いハードが、
94年に1本のゲームを出しました。
名前は『ようこそシネマハウスヘ』。
PC98時代全てを通じても、 ADVのゲーム性という点では、
『YU-NO』と評価を二分するのではないでしょうか。
あのハードが傑作を生み出したって、当時は話題になったものです。

<ゲームデザイン>


さてその『ようこそシネマハウスヘ』ですが、
映画監督である主人公が主演・脚本・音楽・・・と人材を集めていき、
映画を製作するというのが基本的な流れになります。

基本的なシステムは、マップ上から特定の場所を選んで、
そこにいる人と会話をするというADVパートと、
集めた材料やメンバーらで映画を製作していくという、
SLGパートから成り立っていました。

上記のようにADVパートは簡易マップ上から目的地に移動し、
キャラとの会話を楽しむものです。
キャラはそれぞれが、24時間の行動パターンを持っています。
その行動パターンにあわせ、こちらも行動計画を立てて会いに行き、
脚本を頼んだり主演を頼んだりします。
もちろん、時にはただ単純に交流を図ったりして、
会話を楽しむこともあります。

そして映画制作に必要な全ての人材が揃ったらクランクインです。
ここからがSLGパートですね。
映画制作といっても、それ程本格的なものではありません。
監督である自分が出来ることは限られていて、
当該シーンにOKを出すか否かががほとんどです。
まあ、途中何回か、どういう風に作品をもっていくかの選択肢は出ますけどね。
当然ながら、その選択により映画の方向性は変わっていき、
出来上がる内容も変化します。
映画の完成度を高めたければ何度もやり直したいけれど、
そうなると日程がきつくなります。
また、当然人間関係もあるわけで、思わぬトラブルも出てきます。
つまり、仲間を宥めたり怒ったりしながら、
その場を適切に纏めていくのが監督の仕事なのです。

かようにSLGパート自体は結構単純だったのですが、
できあがった映画のダイジェストを見ることができたので面白かったです。
原作の数も結構ある上に、
同じ原作でも脚本家によってシリアスだったりギャグになったり、
或いはポルノになったりと・・・
組合せ次第でかなりの数を楽しめました。

例えば、「リブル」っていうきつい性格の子役出身の女優がいて、
親もステージママできつかったんですね。
あんたの映画なんかに出させませんって、冷たくあしらわれる事もしばしば。
そのリブルをポルノ映画に出演させて、それで高評価を勝ち取った時の快感。
よっしゃぁって、思わずガッツポーズをしたものです。

まぁゲーム性に関しては、SLG部分単体での作り込みはそれ程でもないです。
ただ、ADVパートもありますから。
両方をこなさなければならない事からすると、
これぐらいで調度良かったのだと思います。
個々のパートだけの面白さというのではなくて、
ADVパートとSLGパートとの連鎖による複合的な面白さ、
ないしゲーム性の高さという意味では、
後の『鬼畜王ランス』などが近いと言えるかもしれません。
エンディングも幾つかありますし、
何より全部の映画作品を見ようとすると、かなりのボリュームになります。
これ1本でしばらく遊べるでしょうね。

ところで、私は別に映像関係の専門でもないので、
必ずしも本格的でなくても構わないのだけれど、
それでももう少し細かく映画作りの設定ができたらなって思っていたところ、
同じ製作陣から発売されたのが「映画監督物語」でした。
これは97年で、WIN用の一般ゲームでした。
舞台は東京。
っていうか、舞台が高田馬場だったり新宿だったりするので、
もの凄く馴染み深いところでした。
めっちゃ、期待したんですけどね・・・
残念ながら、これは少々肩透しな作品でした。
確かにSLGパートは、本作より細かく設定できるようになりました。
でも、ただ複雑になっただけなんですよね。
SLGの続編がよく陥る問題点にモロに該当しますし、
単なるSLGではなく、ADVとしてのゲーム性をも備えた作品の場合、
ADVとしてのゲーム性も踏まえたトータルバランスを考慮すべきであり、
SLGパートを複雑にすることは得策ではないのでしょう。

<ストーリー>


そして何より感じたのが、シネマハウスが面白く感じられたのは、
ADVパートが優れていたからなのだということであり、
また同時に自分はADVが好きなんだなって事です。

シネマハウスは、惑星パライソという架空の世界が舞台で、
戦争の真っ最中です。そんな時代に映画を作りたいなんていう人間は、
皆それなりの情熱を持っているのですよ。
助監督が製作途中で徴兵されていったとか、
軍の検閲が入ったとかいう世界でしたしね。
『ようこそシネマハウスヘ』は、そんな街の中を彷徨って、
パライソに住む個性的な住民達とふれあうのが何より楽しかったのです。
この感覚は、『同級生』系のADVをやった事がある人ならば、
きっとわかるはず。
あの感覚そのままです。
上記の『映画監督物語』の場合は、
住民達が没個性的で面白くなかったということなんですね。

『ようこそシネマハウスヘ』には、
必ずしも素晴らしいストーリーが用意されてるわけではありません。
自由度重視なので、長い1本のストーリーみたいなのはないですから。
でもその世界を歩き回り住人らと触れ合うことで、
その世界にどっぷりと浸ることができる。
これはただ文章を読むのとは、また違った感動を与えてくれたものです。
そして、それはゲームだからこそ味わえる物なのではないでしょうか。
即ち、今だとナラティブなどと表現される感覚ですね。
そういう観点からは、非常に良くできた作品だったと思うのです。

<その他、感想>


他にも、グラフィックはどちらかというと個性が強く、
好き嫌いはあるかもしれません。

もっとも、キャラは極めて個性的な人が多く、
ここは大きな長所と言えるでしょうね。

サウンドも良好でした。

<総合>


総じて、欠点らしき欠点のない、
それでいて魅力の非常に多い素晴らしいADVでした。
文句なしに傑作と呼べる作品と言えるでしょう。

ただ、ADVと言いつつ実質的にノベルゲーしかない今日とは異なり、
そもそもADVにもいろいろあるわけでして。
本作は上記のように1本の固定されたストーリーがあるわけではなく、
ストーリー重視派にはあまり向いてないかもしれません。
逆に、自由度重視・ゲーム性重視な人、
ゲームならではのナラティブな感覚を楽しみたい人にはオススメです。
古くは『同級生』、後には『ファイアーウーマン纏組』や 『リフレインラブ2』、
『ガンパレードマーチ』に繋がる系譜と言えましょうか。
そういうゲームが好きな人、そういうのをやった事はなくても、
自由に動けてかつ個性的な住人とのやり取りを楽しみたい人ならば、
きっと楽しめることでしょう。

ランク:AAA-(名作)

PC-9801 3.5インチソフト ようこそシネマハウスへ

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