闇の血族

闇の血族

『闇の血族』は1990年にシステムサコムから、
X6800及びFM-TOWNS用として発売されました。

いのまたむつみさんのキャラデザで、PCE用にもリメイクされています。
尚これ単体では完結せず、『闇の血族 完結編』との前後編になります。

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<はじめに>


ゲームが傑作である事は、必ずしもゲーム史に繋がるとは思いません。
例えば『CLANNAD』。
自分は凄く好きですし、相対的には現時点で最高峰のノベルだと思います。
しかし、それは自分がストーリやキャラとかにはまっただけ。
ADVの歴史を振り返る場合、特に名を出す必要はないかもしれません。

そしてその逆もあるわけです。
個人的にはそれ程優れているとは思えないけど、
ADVの歴史においてはずすことのできない作品・ブランドが。
で、そのブランドの1つがシステムサコムなわけです。

80年台半ば、コマンド入力式からコマンド選択式に主流が移行しました。
それによりプラスな面もあれば、マイナスな面もありました。
とりあえず一般的な傾向として言える事は、
ストーリー性が増し、代わりにゲーム性が減ったこと。

これに対する対策の方向性として、極端に言えば2つあるでしょう。
1つ目は、コマンド選択式でもゲームとして楽しめるよう工夫する。
2つ目は、ゲームであるこだわりを捨て、物語を楽しめるように特化させる。

ADVは将来小説に近い存在になるだろうと言い、
2つ目の方向性を選んだのがシステムサコムだったのです。
近年で言えば、『ひぐらしのなく頃に』なんかもモロにこの路線ですよね。

システムサコムは88年に『ドーム』を発売しました。
その作品に対し、システムサコムはノベルウェアというジャンル名を付け、
これが今日全盛をほこる読ませるタイプのノベルゲームの、
実質的な元祖にあたるわけです。
(まぁ、それ以前にもノベルゲー的構造の作品はあったのですが、
「読ませる」ことに意識的に一番の重点を置いた最初の作品が、
ノベルウェアってことですね。)

『ドーム』以後も、システムサコムは少しずつ改良を加えながら、
ノベルウェアを次々に発売していきます。

『闇の血族』は、そんなノベルウェアの最後の作品。
発展の過程でテキストを読ませる作品から、
画面上の動きでも魅せる作品へと進化していきます。
本作もゲーム中ではアニメーションがふんだんに使用され、
ノベルウェアのいわば究極系にあたるといえるでしょう。

ふと、思うんですよね。
80年台末期にノベル時代の到来を予言。
実際、ノベル時代は2000年以降今日まで続いています。
また、システムサコムは90年代に入ると、
『夢見館の物語』(93)を始めとし、3D・ADVを製作していきます。
これは、PS2以降のポリゴンADVの先駆けとも考えられるわけでして。
MIDIにだって、80年代にいち早く対応してましたし・・・

時代を先行しすぎていた上に、発売機種がマイナーと、
脚光を浴びる機会が非常に少なかったシステムサコム。
しかし今日のADV市場は、見方によっては、
そんなシステムサコムの後を追ってるだけとも思えるんですよね。

当時のサコムの製作陣たちが、今何をしているかは知りません。
でも、もし会えたならのならば、
ADVの現状をどう考えてるのか聞いてみたいものですね。
そして、今後のADVの行末はどっちに向かってるのかと・・・

<概要>


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さて、システムはノベルタイプのADVになります。

あらすじは以下の通り。
伊澤魅由は、新宿の「スタジオYo」で活躍する、新人アパレル・デザイナー。
一見、普通の「女の子」だが、
実は彼女には幼い頃から「異常に勘が鋭い」といった、
奇妙な「力」が備わっていたのである…。
1990年5月。
Yoのファッション・ショーを数ヶ月後に控え、魅由はその準備に追われて、
大忙しの日々を送っていた。
そんなある日、突然、魅由のモデル仲間のマリーが、変死体で発見された。
死因は不明。警察の話では、体中の血液が抜き取られて、
夜の公園に転がっていたと云う。
そして翌日、魅由の親友だった唯が、同じ様に奇怪な死を遂げる。
魅由の周囲に渦巻く、陰惨とした闇の甘い血の薫り。
やがて魅由は、犠牲者達に秘められた、奇怪な共通点に気付く。
そして、この連続殺人事件の裏に見え隠れする不気味な符号にも、
おぼろげに気づき始めたのである…。

<ストーリー・ゲームデザイン>


本作は1本では終わらず、完結編が存在します。
完結編はより物語に集中させようということで、
本作よりも読ませることに力を入れた作りになっています。
まぁ、今ならそれで十分に受け入れられるのでしょうが、
当時だと読むだけのは味気ないと感じる人も多かったと思うので、
フラグ立てのある本作はまだしも、
完結編辺りになると賛否分かれたかもしれませんね。

ストーリー的には、
長所と言えるほど優れているって感じではないかもしれません。
でも主人公が女性だったり、ファッション業界に属していたり、
設定や雰囲気が今でもあまり見ないタイプなんですよ。
アダルトゲームを探せばレズゲーが幾つかありますので、
女性主人公と広く捉えると他にも幾つかあると言えるのでしょう。
しかし、レズゲーはエロしかありませんので、
ストーリー性は希薄なんですよね。
きちんとした物語性のある作品で女性主人公は非常に珍しく、
これは一つの特徴と言えるのでしょう。

それと、家庭用ゲーム機中心の歴史観しかない人だと、
主人公とプレイヤーの分離がなされたのは90年代後半だと言う人もいます。
でも、それは間違いです。
特定のどの作品からと言うのも難しいのだけれど、
女性主人公で、その主人公視点で内面の心理描写がなされている作品は、
その時点で既に主人公≒プレイヤーという80年代の標準的ADVの構図が、
崩れてしまっているんですよね。
小説の様に読ませることを意識したノベルウェアで、
女性主人公の語りから始まる本作は、
その点でも80年代の標準的なADVの枠からは外れているのであり、
それが新鮮さへとつながって感じられたのです。

他の設定の面でも、あまり今でも見かけませんからね。
それ故に今やってもマンネリ感はせず、
案外新鮮な感覚で楽しめる気もしますね。

<グラフィック・サウンド>


ノベルとはいってもストーリーに重点を置いてるって意味合いなので、
文字を読ませるだけではありません。
いや、当初のノベルウェアはシナリオを読ませる点に比重が置かれ、
そこから始まったんですけどね。
今のノベルだって次第に立ち絵の動きとかも増やして、
画面内の動きを増やす方向に進んでいるでしょ。
それと同じで、『闇の血族』ではアニメーションがふんだんに使用され、
視覚的にも楽しむことができます。
ってか、当時の技術を考えれば、アニメーションをこれだけ使ったってだけも、
大きな長所と言えるのではないでしょうか。

またサウンドも非常に評判の良い作品でしたね。

因みに、上記のように本作にはPCE版もあります。
普段は移植版には興味を示さないのですが、
PCE版は、原画が「いのまたむつみ」さんなのですよ。
個人的には全盛期と思うくらい好きな時期でもありましたから、
オリジナル版よりも絵が好きなんですね。
なので、このPCE版は手放せないですw

<感想・総合>


こういう業界はユーザーが自分の経験を全体の歴史のように語る傾向が強く、
つまり子供時代はファミコンやSFCで過ごしたので、
FCやSFCのADVを中心に語り、WIN95辺りでPCがブームになり、
それに合わせてPCを買って、今度はPCゲー中心に語る人が多いです。
でも、個人の動向とゲームの発展は一緒ではありません。
ファミコンより先駆けてPC88でADVは発展していましたし、
PC88が衰えてPC98のADVが発展する間の期間、
その時期にはX6800やFM-TOWNSでADVが飛躍的に進化していたわけです。
本作も、その中の1本となるわけですね。
グラフィックやサウンドの進化による演出の強化を図ったノベルゲーは、
いまでもADVの大多数を占めます。
その理念を遡って考えると、まさに本作なんですよね。
今でも新鮮に感じられる部分もあるだろうし、
この時期にこんな作品があったのかと、
オーパーツ的に衝撃を受けることもあるでしょう。
そんな作品だけに、できれば多くの人に知っていて欲しい作品なんですよね。

ランク:A(名作)

闇の血族

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