同級生2
PC98用として発売されました。
アダルトゲーム史上最大の話題作であり、
95年はこの作品1色でしたね。

<概要>
商品紹介・・・卒業を間近に控えた、学生生活最後の冬休み。
未だ決まらぬ進路が気にかかりつつも、
主人公は女のコとの思い出作りに没頭していく。
そうすることで、まるで自分の将来が見えてくるかのように・・・。
甘く切ない青春がたっぷり詰まった本作。純情な欲情、怠惰な情熱。
まるで熱病に浮かされた時の夢のような時間が
もうすぐ終わろうとしている・・・。
何がやりたいのか、何をすべきなのか、何ができるのか、
行く先を決めあぐねて迷う日々。
それでも区切りとしての「終わり」は必ずやってくる。
これから先を誰と歩むのか?
どこへ行くのか?それを見つけるために街に出よう!
「答え」はきっとそこにあるはずだから…。
<総論>
同級生シリーズの第2弾ですね。
前作から再登場するヒロインはいるものの、
主人公や舞台は異なります。
それにストーリーにつながりもないので、
本作からのプレイで全く問題ありません。
前作の舞台が夏だったのに対し、本作は冬が舞台になります。
また前作が夏休みの一か月間を期間としていたのに対し、
本作は冬休みに相当する2週間と期間も変更されています。
システム面については後述しますが、
街の中を動き回りヒロインらと交流し恋愛を育む、
『同級生』タイプの恋愛ADVになります。
さて、95年というのは、オタクにとっては特別な年でありました。
アニメでは『エヴァンゲリオン』があり、
PCゲームでは『同級生2』が発売され、
CSではPS版の『ときめきメモリアル』が発売された年でしたから。
アダルトゲーム史上に燦然と輝く傑作、『同級生』。
『同級生2』は、その続編として発売されました。
前作のほこる圧倒的なまでの自由度と高いゲーム性に加え、
今作ではストーリーを大幅に強化してきました。
またストーリーの量とキャラの数が増えるに従い、
当然のごとく全体のボリュームも増え、
そのボリュームのアップと共に難易度も上がり、
多くのユーザーを寝不足にさせたものです。
攻略用のノートを作った人も多かったのではないかと。
高い自由度+優れたストーリー性+大ボリューム。
もちろんグラフィックも人気絶頂だった竹井氏ですし、
全てが完璧とも思えた『同級生2』。
これをアダルトゲーム史上の最高傑作と語る人も多かったですね。
クリアに時間がかかるので年間を通じて遊んでいた人もいるし、
初動が全てと言われるアダルトゲーム市場において、
本作は1年を通じて売れ続けましたし、
とにかく95年は『同級生2』一色だったと言えるでしょう。
異論を寄せ付けないほどに、圧倒的な勢いがありました。
更に、「萌え」の存在です。
「萌え」という言葉の語源自体は、
『恐竜惑星』の「萌ちゃん」なのか違うのか、
説の分かれるところではあります。
でもいずれの見解によっても言葉自体は、
本作の発売された95年以前に既にあったのは間違いありません。
しかしながらアニメなどで一部のオタクには知られた概念でも、
まだアダルトゲーマーには馴染みのない言葉だったと思います。
少なくとも、コアなアニオタではなかった私には、
全く馴染みのない言葉でした。
それが特定のキャラに対して「○○萌え~」って使われだし、
萌えという言葉を頻繁に耳にするようになったのも、
『同級生2』の「鳴沢唯」ちゃんからでした。
唯ちゃんに「お兄ちゃん」って呼ばれたいがために、
毎日起動していた人もいましたしw
後にアダルトゲームにおいて最も大きなウェイトを占める萌えを、
アダルトゲームに広めた点でも、この作品は偉大だったのでしょう。
1本のゲームが1年を通して売れ続け、また話題を独占し続ける。
そんな事は、今ではほとんど無くなってしまいました。
それをやってのけた『同級生2』は、当時のユーザーにとって、
それほど大きな存在だったと言えるでしょう。
95年とPC-98時代のアダルトゲームの象徴的な作品。
それが『同級生2』だったのだと思います。
<ゲームデザイン>
以上が一般的な意義とか位置付けになるのですが、
個人的にはいろいろ思うところもありますので、
少し見ていきましょう。
システムは『同級生』と同じで、
キングスクエストタイプ(キャラを直接操作)
+P&C(画面クリック)+行動による時間経過ってとこですかね。
ごっちゃにして一言で語られちゃうことも多いけど、
本来は別々なシステムが幾つも導入されています。
細かく分析すれば上記以外にもいろいろ含まれるのですが、
今回は省略します。
興味のある方は、『同級生』の記事であるとか、
コラム「エロゲの歴史」内の、
92年の4回目・5回目を参照してください。
そこで詳しく述べていますので。
本作は同級生のシステムを踏襲していますので、
基本的なゲーム性は高いです。
しかし、それまでのエルフのADVというのは、
何かしら新しい要素を導入することの多かったのですが、
本作は操作性向上のための若干のマイナーチェンジだけであり、
ゲームシステム的に新しい側面がありませんでした。
つまり今回は完成度は高くなったとは言えても、
本作ならではの独自性は低いのです。
その点で独自性を重視する私からすれば、
前作や他のエルフの名作らより見劣りしてしまいます。
次に、上述のように、『同級生2』の最大の特徴は、
ストーリーの大幅強化にありました。
これによってそれ以後のADVは、
恋愛ADVブームに突入していったとも言えるでしょう。
尚、95年は恋愛ゲーム元年と呼ばれることもありますが、
恋愛ゲーム自体は、それ以前からあります。
あくまでもブームのきっかけ、火付け役ということですね。
恋愛ゲームブームの火付け役になった点では意義は大きいのですが、
ストーリーの強化によりフラグが非常に厳しいものになりました。
結果として、一本道に近いような構造のゲームとなり、
前作の持ち味であった高い自由度は失われてしまいました。
ジャンルこそ違いますが、
同じような感覚はRPGの『バルダーズゲート』でも感じましたね。
BG2は一見するとBGの全ての部分、
特にストーリーを強化してきており、
海外ではこれ以上のゲームはないくらいに評価されています。
でも、高い自由度を求めてプレイしていた日本のファンの間では、
必ずしも絶賛とはいかず、初代BGの方が好まれているんですよね。
つまり全てを強化しようとして、
自由度という肝心の一番の魅力が削がれてしまった。
俊足プレイヤーがウェイトトレーニングでパワーもついたが、
肝心のスピードはなくなってしまった。
例えるとそんな感じがするのです。
また、「お兄ちゃん」って慕ってくれる鳴沢唯は、
多くのユーザーの心をとらえたし、
可愛かったのは間違いないのだけど、
住んでる所も一緒で、
街をうろついていても、しょっちゅう出くわすのでは、
あまり自由に街を歩いた気になれませんでした。
冬という時代も相まって、私にはとても窮屈に感じたんですよね、
『同級生2』というゲームは。
前作の良いところを打ち消されてしまった気がして、
素直に褒める気になれないのです。
実質的に自由度が減ったということで、
むしろゲーム性は減少したと言えるのではないでしょうか。
そして何よりも最も大事なことは、
このストーリーを表現するためには、
このゲームシステムは不可欠とは言えないということです。
ストーリーとシステムの融合・一体感という、
ゲームデザイン的な観点からも、このストーリーなら、
このシステムは不要だったようにも思えるわけで、
若干のミスマッチを感じてしまいました。
エルフのADVは、単体でも画期的なシステムの作品もあり、
どうしてもそのシステムに目がいきがちですが、
実はそのシステムがシナリオに不可欠なのだという、
その一体感こそが素晴らしかったのだと思います。
その最大の長所が、今作からは感じられず、
私は本作からエルフらしさを感じ取れなかったのでしょう。
<グラフィック>

さらに、あまり誰も指摘しないことなんですけどね。
全盛期の竹井さんの絵はとても好きなんだけれど、
『同級生2』では微妙に崩れてきてる気がするのです。
そのため、キャラデザがあまり好きになれませんでした。
まぁ崩れて感じるのは一部なので凄く良いと思えるCGもあるし、
それに塗りが業界最高峰ですので、
それでカバーしている面もありますし、
演出も含めたグラフィック全体という意味では、
むしろプラスなんでしょうけどね。
あくまでも、全盛期と比べると下降線に入ったかなってことで。
<ストーリー>
『同級生』(1992)からストーリーを重視するようになったと、
たまにそんな説明も見かけますが、
遅くとも89年頃からストーリー重視の流れはありますし、
感動するシナリオゲーもありますので、歴史的観点からは誤りです。
そもそも蛭田さん自身も言うように、
『同級生』はイベントの集合であり、そこにストーリーはありません。
そんな作品からストーリー重視と語るのは、頓珍漢な話なのでしょう。
本作も『同級生』の後継作ですので、
1本のストーリーを読ませるという類の作品ではないのですけどね。
前作のように街を徘徊し住民との交流を図るというよりも、
特定のキャラを追いかけてストーリーを追うというように、
実質的なプレイスタイルも変更されましたし、
イベントの数や質も向上しているので、
本作に関してはストーリー重視になったと言うのが適切なのでしょう。
ストーリー面に関して言うならば、
一つは上述のように萌えの存在が大きいです。
また、唯と人気を二分した「桜子」のシナリオには、
当時多くのユーザーが涙したものです。
ここも今となっては、少し誤解を招くのかもしれません。
当時は「泣きゲー」という言葉がなかったので、
本作で泣いたユーザーが多数いること、
或いは、この時期に既に泣きゲーと呼べる作品があったことを、
知らないという若いユーザーも増えているようです。
しかし今と10年前だってオタクの方向性が異なるように、
それより昔のユーザーらは更に方向性が異なるわけでして。
昔はレッテルを貼ることに抵抗を感じる人も多かったのです。
私は造語は基本的にしないものの、便宜上ジャンル分けはします。
その方が読み手が分かりやすいかなと思うから使うのですが、
古参の方で、それにすら難色を示す人もいましたからね。
それに特定のレッテル貼りは、
マイナスに捉えられることが多かったですし。
例えばギャルゲーは、今なら美少女に特徴のある作品と、
プラス要素として捉える人が多いのでしょう。
しかし、そもそも、この言葉が使われ出した当時は、
女の子の絵だけの他に何も取り柄のないゲームという認識でした。
だから好きなゲームに対し、
ギャルゲーと言われて憤慨する人も多かったのです。
泣きゲーという言葉は当時なかったけれど、
もし泣きゲーという言葉があったとしても、
それは泣く要素しか見所のない作品に用いられていたでしょう。
本作は確かに泣ける要素も大きな特徴ですが、
萌えもありますし、魅力的な人妻もいますし、
何より高いゲーム性を有していますからね。
泣き(しか価値のない)ゲーなんて言ったら、
信者の猛反発をくらうに決まっています。
同級生2は泣けるゲームであっても、決して泣きゲーではないのです。
だから私も本作は泣きゲーとは言いませんが、
コラムなどでもし泣きゲーの変遷をたどり、
その際の基準として「泣けるゲーム」を探しているのなら、
本作を含めないのは絶対に変だと思いますね。
<感想・総合>
当時最高傑作と呼ばれただけあって、
個々の要素の完成度はずば抜けているのでしょう。
疑う余地もないほどに、名作であることもまた間違いないでしょう。
アダルトゲーム史を振り返る上で、
決して避けては通れない作品です。
(私の感想の中でも、コメント数が一番多いですしねw)
ただ、上記のような理由から、
自分は初代『同級生』程のインパクトを感じなかったのです。
そして上でも少し書いてあり、ここが最大の問題でもあるのですが、
本作はストーリーを強調するあまり、
物語とシステムがマッチしていないというか、
一体この作品を通じて何をやりたかったのか、
その辺が私にはあまり伝わってきませんでした。
このシナリオを活かすならこのシステムは過剰であるし、
このシステムを活かすならこのシナリオは制約が多すぎます。
確かに個々の部分は凄いのかもしれないけれど、
それまでのエルフのADVにあったストーリーとシステムの融合という、
トータル的なデザインセンスが欠けているのです。
そして、そのトータル的なデザインセンスというのは、
従来のエルフ作品の一番優れていた部分だったはず。
それ故に私は、
このゲームにエルフ作品らしさを感じ取れませんでした。
そう考えるとその後のエルフの失速の芽は、
実はこの頃に芽生え始めていたのかもしれないですね。
以上が個人的な感想なのですが、
私は当時のユーザーの中では低く見ている方でしょう。
もちろん名作だとは思うのですが、
例えば周りが100点と言う人ばかりだったのに、私は80点みたいな。
そして周りが絶賛する人ばかりだったから、
私は80点分のプラス要素を語るよりも、
20点分のマイナス要素を語る機会の方が増えたと。
それで上記のような否定的な論調にもなったのですが、
古いサイトとか魅力を伝えてくれたサイトとかも、
最近は閉鎖しちゃってますしね。
今となっては、むしろフォローすべきなのかなと。
本作に対しては私のように苦言を呈する人は極めて稀であり、
当時は人生最高の作品として絶賛する人が多かったです。
それは一過性のものではなく、一年を通して売れまくりましたし、
ゲーム性の高さもあって、ユーザーも長く遊んでいました。
ちょうどPCE版の『同級生』が発売され、TVでCMもやってましたしね。
とにかく話題性が高かったです。
その後のエロゲーを支配する萌えの視点からも重要で、
グッズ戦略にも大きな影響を与えました。
例えば、「ポスタードリーム」という、
ポスターの当たる自販機がありまして。
これはスロットのようにボタンを押して、
数字が3つ揃うとポスターが手に入るのです。
登場したのは正確には知りませんが、
どうやら95年の暮れくらいなのでしょうか。
最初は同級生と同級生2が対象となっていて、
特に大当たりである鳴沢唯の等身大ポスター目当てに、
多くの人が大金を投じていたものです。
今と異なり、90年代後半の秋葉原は男ばかりだったのですが、
皆背中にリュックを背負っていまして、
ポスタードリームで獲得したポスターを、
そのリュックに刺している人が結構多かったのです。
その光景がガンダムに酷似していたので、
サーベルと評されていましたっけ。
今は当時のユーザーの多くが引退してしまって、
WIN以降のノベルゲー世代が中心になっていますので、
本作の評価については、
不当なくらいに過小評価されていると思います。
必ずしも絶賛していない私が言うのも変な話なのですが、
否定的なのは私個人の感想にすぎません。
当時の売上・盛り上がり、萌えや泣きやグッズ展開など、
後への影響などを考慮するならば、
本作ほど後への影響力のあった作品は他にないのでしょう。
全ての起点を同級生2にして書かれると、
それはそれで私なんかは異論も唱えるかもしれませんが、
そういう人が出てきてもおかしくないくらいの作品でしたし、
少なくとも萌えや泣きの観点から記事を書くのであれば、
絶対に外せないタイトルだと思うのです。
ランク:A(名作)

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