さくらさくら

さくらさくら

『さくらさくら』は2009年にWIN用として、
ハイクオソフトから発売されました。

まだはまれることはあるんだなと再認識できた、
ここ数年で最も楽しめた恋愛ゲームでした。

さくらさくら 初回版

<概要>


ゲームジャンルはノベル系ADVになります。

あらすじ・・・4月は新学期。
芸術系の名門、麟徳学園寮Maison luneを、
目の端に涙を浮かべながら、転校生、稲葉徹は見上げている。
時折通り過ぎる女生徒たちからの視線は痛いが、
今日に至るまでの日々と比べようもない。
男子校の寮で過ごした目に染みるような過去。
おかげ様で、女の子の手なんて握ったことも無いし、
同世代の異性と話をした記憶すらない。
だが信じられないことに、この寮には女の子も住んでいるらしい。
念願の文化系部活動は、
女の子が一番多い所を選ぼうと300日前から決めていた。
不純な動機だとは思わない。これまでが純情すぎただけ。
かと思いきや、編入試験合格ラインギリギリだった徹の入居先は、
Maison luneの裏に建つオンボロ学生寮「月見荘」だった。
高級ホテルと見間違えんばかりのMaison luneと比較すれば
まるで犬小屋。
見た目そのまま、麟徳学園では
功績と部員数によって寮の待遇が大きく変わる。
体育会系の部員ばかりが住む月見荘に入ると、
のんきで図々しい住人たちから勧誘の嵐。
これまでの人生さながら、
流されるままに体育会系部活動に引きずりこまれようとしていた所を
担任兼寮母である桜菜々子 に救われ、断ることに成功する。
恋の始まりであった。

<感想>


身も蓋もない話かもしれませんが、
恋愛ものなんてのは結局は自分に合うか合わないかが大きいです。
本作を私が楽しめたというのも、
どうしてもテキストが合ったからという側面抜きには語れないでしょう。

そのことを踏まえつつ、もう少し掘り下げてみてみたいと思います。
まず本作は、学生寮を主な舞台としていて、
開始時の主人公はドタバタ的な展開に巻き込まれていきます。
ヒロインの1人が寮の管理人さんでもあり、
どことなく「めぞん一刻」的な雰囲気を醸しだしています。

ちなみに、主人公はすっかり周りのペースに振り回されるのですが、
これは人によってはウザイと感じてしまうかもしれません。
この振り回されるという部分はかなりのウェイトを占めますので、
気になる人は苦痛な時間が増えてしまいます。
なので、出来る限りプレイ前には体験版のプレイをおすすめします。

もっとも、私自身はかなり楽しめました。
先のめぞん一刻で言うところの四谷さんみたいなキャラや、
それに振り回されるといったノリは好きでしたから。
また私は、近年のギャグ物に多いパロディの多用や、
或いは意味のないギャグと突っ込みを延々と繰り返すみたいな、
そんな時間稼ぎっぽい展開は苦痛に感じることが多いです。
そういうのが増えているから最近の萌えゲーは苦手なのも多いのですが、
本作にはそういうところはありません。
意味のある自然な流れから掻き乱すって感じなので、
あまり無駄とも思わずすんなり楽しめたのです。
ここら辺は、私はかなり上手かったと思うわけで、
少なくとも近年では出色の出来に感じました。

加えて、魅力的な男性キャラや小動物がいたことも好印象でした。
男性との会話比率も結構高いですし、
男1人に残りは女性みたいな不自然さもなく、その点も良かったですね。

それと、会話主体ってのも大きかったでしょうね。
うだうだと無駄にくどい内面描写や稚拙な思想の押し付けがなく、
会話ベースでテンポ良く進んでいきます。
キャラの思想といっても、
結局はライターの持っているものが表れるわけです。
一見描写が細かそうで世間ではそこが評価されているものほど、
ライターの常識や経験や知識のなさが露呈するケースが多いです。
それが苦痛に感じる作品も多くなってきているのですが、
本作はそれがないから素直に楽しめるのです。
まぁ、単に書いてないだけなので時には分かりにくい部分もありますが、
書かれた部分は不快になりえるしマイナスにもなりえるものの、
書かれてなければマイナスのなりようがないってことですね。

<グラフィック>


他方で、テキストでの描写を削った部分は、
きちんとグラフィックで表現されていまして。
無駄に書かれていないってことを補ってあまるほど、
演出面は良かったです。

昔は当り前だったのに今では減ったことの1つに、
目パチ口パクがあります。
あるからと言って今更大きなプラスになるわけでもないですが、
やっぱりあると見ていて自然に感じます。

また、ノベルゲーで1枚絵にこだわりだした当時は、
立ち絵時には目パチ口パクがあったのに、
イベントシーンではなくなって、
逆に違和感を感じる事態も多々ありました。
本作は1枚絵でも目パチ口パクがあるので、常に自然なのです。
ここら辺は、やっぱり技術の進化を感じますね。

さらに、本作はカットインも豊富でした。
言葉で説明する代わりにカットインで表現する場面も多く、
これが会話主体のテキストとの相乗効果を生み出し、
更にテンポの良さを際立たせていたのです。

私はゲームの在りようとしては、これで良いのだと思います。
小説ではなくゲームなのですから、
テキストで全部書く必要はないのです。
読ませるより絵で見せた方が効果的なところは、絵だけで良いのです。
ここら辺に作品に対する制作陣の一体感やセンスの良さも伺えます。

<ゲームデザイン>


制作陣のセンスの良さは、他でも見ることができます。
本作には豊富なサブイベントがあります。
キャラの掘り下げという観点からは、
こういうのは多い方がありがたいです。

でもサブイベントというものは、
見方を変えればストーリーを冗長にしかねません。
小説ならバランスを図りつつ結局は押し付けるしかないのですが、
ゲームならプレイヤーに委ねることもできます。
本作もサブイベントを見るか否かはプレイヤー次第です。

また、本作ではアイテムを取得することができます。
これは本編中では使うことがありませんが、
1つには収集することで達成感も得られるし、
進行の目安にもなるという効果が得られるでしょう。
加えて、一部のアイテムにはショートエピソードが用意されています。
そこでプレイヤーの疑問を解消してくれたりするのですが、
本筋と関係ないことを全部本編に入れられても、
それはゲームの進行を妨げるだけです。
本編では必要なことだけを展開しつつ、
それ以外は後でプレイヤーが好きな時に見られるようにする。
こうした配慮はゲームのテンポの良さにもつながります。

本編内のサブイベント時は、主に寮のマップ内を移動させて進行します。
チップアニメのキャラは良い味を出していましたし、
ゲーム全体でも良いアクセントになっていたと思います。
シーソーで進行度を表す部分といい、
テンションを上げっぱなしにするのではなく、
上手く緩急を作れていたように思いました。

惜しむらくは、寮の移動でしょうね。
寮は狭いので大した問題でもないかもしれませんが、
それでもちょっとだるかったです。
ここが苦痛になる人もいるでしょうから、
もう少し快適にとかカットすることが出来たら、
更に良くなったでしょうにね。

<サウンド>


本作はグラフィックだけでなく、サウンド面も良かったです。
声優もとても良くあっていましたし、
開始時にOP曲が流れ出すのも良いですね。
さあ始めようって気にさせてくれますし。

1つ難点を言うならば、主人公の声の有無になるでしょうか。
本作は途中で主人公が交代します。それは分かっていたことですし、
作品としては群像劇スタイルとして、
近年増えているパターンでもあります。
だからそれ自体は良いのですが、
群像劇なら群像劇で貫いて欲しかったのです。
最初の主人公は開始時は声がないのに交代した途端に声が出てくるので、
どうしても違和感が生じてしまいますからね。
ちょっとしたことですが、勿体無く感じました。

<総合>


そういうわけで、読んでいてひっかかる要素もなかったですし、
優れた演出やゲームデザインのおかげで最後まで楽しめました。
1つ1つの要素は必ずしも画期的でもないのですが、
ここまで揃えてきた恋愛物もほとんどないように思います。

ただ、唯一の難点はストーリーでしょうね。
爽やかな三角関係を描いた恋愛物なのですが、いたって普通です。
この部分だけならもっと優れたゲームは幾らでもありますし、
ストーリーしか評価しない人にはこのゲームは向かないでしょう。
ここだけはちょっと勿体無かったです。

まぁ、ストーリーが全てではないってことでしょうね。
純粋な恋愛ものでここまで楽しめたのって、
一体どこまで遡らなければならないことやら。
少なくとも、ここ5年で最も楽しめたのは間違いないでしょう。
当初は傑作までには至らないかなと思っていたのですが、
ここまで随所に気の配られたゲームもないですからね。
これはこれで傑作と言っても良いのではないでしょうか。
何より、もう楽しめなくなったのではと恐れていた恋愛物で、
まだ楽しむことができるんだって再認識させてくれたこと、
ノベル全盛の時代になりストーリー偏重になりそうなところで、
それが全てではないんだよって再認識させてくれたことが、
私にとっては非常に大きかったように思います。

本作は爽やか路線ということもあり、
基本的には初心者向きだと思います。
しかし、多少のストーリーの良し悪しの差が気にならなくなったとか、
普通のノベルの恋愛物は飽きてしまったような、
10年以上プレイしている人にこそオススメしたいように思いますね。
もう忘れてしまったかのように思えた昔の楽しき日々、
その感覚はまだまだ消えていないのだと、
この作品は示してくれたように思うのです。

ランク:AA-(名作)

さくらさくら 初回版

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