SANITARIUM

SANITARIUM

『SANITARIUM』は1998年にWIN用として、
ASCgamesから発売されました。

ストーリーの良い海外のADVはないかとの話題で、
良く登場するのがこの作品であり、実際に抜群でした。

尚、日本語版はないので、英語版でのプレイになります。
sani5.jpg sanitarium4.jpg

基本的に海外のADVというのは、
国産のADVと比べるとゲーム性重視とされるのでしょう。
しかしそれはゲーム性も必要ということであって、
決してシナリオを疎かにしているわけではありません。
中にはとんでもないくらい素晴らしいストーリーのゲームだってあります。

となると、誰しもが短絡的に聞きたくなるのが、
じゃあ一番ストーリーが良いのってどれよ?ってことでしょう。
もちろん人によって異なるでしょうし、一概に決められないのは確かです。
でも必ず候補には挙がってくるだろうし、
個人的にもストーリー限定ならば最有力候補かなって思うのが、
この『SANITARIUM』なのです。

ゲームのOPでいきなり交通事故にあい、
次に目が覚めたときには主人公は全身包帯だらけになっています。
しかも、自分が何者であるかすらも忘れてしまっています。

舞台は題名で察せられるように、精神障害者ばかりがいる療養所です。
まともな人間がいない異常者ばかりの世界は、強烈な個性を備えています。
この独特のグロテスクな世界観は、ハマる人はかなりハマるでしょうね。
まぁ人を選びそうではありますが・・・
何せ、とにかく病んでますからね~
普通の人ならば、気持ち悪いだけかもしれませんw

しかも、『SANITARIUM』は世界観が秀逸なだけではありません。
ゲームは記憶障害で全てを忘れた主人公が、
自分を求めて自分の内面世界を探索することになります。
自己の内面を徹底的に追求する。
これを文学と言うかどうかはともかくとして、
とりあえず本作自体は非常に良く出来ていました。

世界観が際立っているだけでなく、ストーリーも群を抜いている。
これだけでもね、十分に傑作に値するでしょう。
ただ発売時の背景をも考慮すると、
『SANITARIUM』にはもう一つ重大な意義があると思うのです。

93年に『MYST』が発売されて以来、
海外でのADVの主流はMYST系に移行していきました。
そして出るADVのほとんどがMYST系になったのですが、
MYST系は世界観やCGは良くても、ストーリー自体はほとんどないわけでして。
テキストを廃する方向性のジャンルですから、
必然的にそうなってしまうのです。

シナリオよりもグラフィック・世界観重視のMYST系ばかりという状況は、
飛躍的に進歩した90年代半ばの海外ADV業界にあって、
ストーリーだけは置いていかれるという状況をもたらしました。
MYST系の隆盛は、一方で新たなユーザー層を確保したのも確かなのですが、
他方で古くからのテキストによるストーリーを楽しんでいたファンには、
あまり芳しくない状況だったと言えるでしょう。
つまり、もっとシナリオを堪能できるゲームをさせろよってことですね。
本作の発売された98年というのは、時代的にそういう年なんですね。
そしてそんな状況下で、とんでもなくストーリーの優れた作品が出てきたと。

これを時代の流れに逆行したと捉えるのか、
それとも推理小説における新本格派のように、
昔の主流が現代風に変化して復権を果たしたと捉えるのか。
MYST系に対するアンチテーゼとみる見解もあるだろうし、
解釈は人によって異なってくるでしょう。
ただ何れにしろ、いわゆるMYST系の流行・隆盛が一段落して、
従来のP&C式によるストーリーも重視したADVがまた増えてくる。
99年以降のそうした新たな流れの先端に本作は位置していたのであり、
時代の潮流を読み取る上でも、
本作は外せない一本だったのではないかと思うのです。

sani2.jpg sani8.jpg

以上が一番の特徴となってくるのでしょうが、
シナリオに関して少し補足しますと、
テキストは平易な英語でしたので、これは個人的に非常に助かりました。
辞書に頼ることもほとんどなく集中して遊べましたし、
その分だけ疲労度も少なくて済みましたから。
日本人の英語ゲーム入門としても相応しい作品ですね。

問題があるとすれば、それ以外の部分なのでしょうね。
システムは広い意味ではP&C(ポイント&クリック)式のADVなのでしょうが、
どちらかというとバルダーズゲートとかのような、
洋ゲーのRPGに近い感じでしょうか。

具体的には、『SANITARIUM』はステージ制になっていて、
そのステージをクリアすれば次のステージに進みます。
各ステージでは大きめの1枚のマップが展開されて、
そのマップ上でキャラを動かすのです。

そして、どちらかと言うと戦闘のないRPGっぽい操作感なのです。
ここら辺は、ADV好きには好みが分かれるところかもしれません。
また、移動が結構面倒くさかったです。
全体的に操作性に難があった感じですね。
そういう点も含めると、
ゲーム部分に関しては及第点止まりってところでしょうか。

次にグラフィックなのですが、
独特の世界観が醸し出す雰囲気を描ききったという意味では、
グラフィックも秀逸と言えるのでしょう。
単に眺めてるだけでも、このCGすげえなぁ~って満足できましたし。

ただ、ムービーの画質自体はあまり良くなかったです。
しかも上記のようなRPGライクな操作感のために、
通常のADVのような大きな絵で表示ってことも少なかったですし。
なので、いろんな映像を楽しむって事もあまり出来ませんでした。
何せ、基本は1枚のマップ上を行ったり来たりですからね。

ギャルゲー風に言えば、
原画は最高だけど塗りと枚数がイマイチってな感じでしょうか。
グラフィックとしてトータル的に考えると、
長所と言えば長所ではあるのですが、
別格に凄いとまでは断言しきれないかもしれませんね。

結局はADVに何を求めるかなんですよね。
ストーリー・世界観だけを求めるならば、
このゲームはまさに最高の1本となりうるでしょう。
しかし上記のように、他の部分は欠点とまでは言わなくとも、
必ずしも長所とも言いきれないないわけでして。
そこら辺をどう判断するかが、
このゲームが最高の作品となるか否かの分かれ目なのではないでしょうか。

ランク:AA-(名作)

関連するタグ WIN /ADV /P&C式 /


  面影レイルバック      ヤミと祝祭のサンクチュアリ   それでも妻を愛してる2
カテゴリ「海外ADV」内の前後の記事





管理者にだけ表示を許可する

トラックバック http://advgamer.blog.fc2.com/tb.php/1396-da6a9d01
| ホームへ戻る |