アダルトゲームの歴史 1997年 その1

アダルトゲームの歴史 1997年 その1

アダルトゲームの歴史を振り返るシリーズの第39弾ということで、
1997年の1回目になります。

1997年は150~200本の間になると思うのですが、
正確なところは難しいですね。

新作タイトルの数自体は若干減っているか、或いは横ばいとなるのでしょうが、これは前年同様にPC-98版とWIN版の両方が発売されていた時期でもありますし、移植版に力を入れていたブランドもありますので、それで新規タイトルの本数が伸びなかったという事情があるのでしょう。

windows95が95年の末に発売されましたが、96年の時点ではアダルトゲームの新規タイトルの大半はPC-98用でした。96年後半頃からぼちぼちWIN用の新規タイトルが出始めたって感じでしたから。
そしてそのPC-98用とWIN用の新作の比率が逆転したのが、97年でした。
具体的には97年の前半はPC-98用とWIN用の新作が半々くらいで、後半になると大半がWIN用のゲームになるって感じです。だから同じ97年でも前半と後半では雰囲気が異なります。また大手は早めにwindows用のゲームに対応していきますし、人気の恋愛系作品もWIN用で増えていきますが、濃いマニアックな系統のゲームはPC98用で出されることも多く、そのためPC98用のゲームとWIN用のゲームとでもジャンルの傾向が異なりました。
即ちその人の有する環境であるとか、どこに注目するかでも、人によって全然異なる景色が見えたのが97年だったのではないでしょうか。
そのため、どこから話を始めようかと少し迷ったのですが、windows95がもたらした変化という側面から、あまり語られることがないような少しマイナーな部分を見ていきたいと思います。そんなの興味ないよって言われると、ちょっとつらいのですけどね・・・

さて、windows95は1つのOSでしかないのだけれど、windows95の発売に合わせるようにして、PCの価格がかなり下がりました。それでも今よりはずっと高いですけどね。また今なら一度買えば洋ゲーや3Dゲーをプレイしない限り、2次元のアダルトゲームだけの使用なら何年ももちます。でもこの頃はアダルトゲームであってもすぐに買い換える必要がありましたので、今と比べればやっぱり高いものでした。それでもPC-98までの時代よりは、比べ物にならないくらい安くなったんです。
時代の流れもあって、90年代後半は年々PCの普及率が上がっていきました。萌えキャラを使うことで、アダルトゲームにこれまでとは異なる新規のそれまでアニメなどを主な舞台としていた二次元系のオタク層が入ってきました。これはこれで新しい方面の開拓と言えます。
でも、オタクだけが全てではないのですよ。97年で一番印象深かったことは、秋葉原で見た光景でした。

今とは異なり、まだゲームに主題歌があるのは標準ではなかったのだけれど、中には主題歌を付け出すところも出始めていたんですね。windowsの時代になってゲームもそれまでのフロッピーからCDになり、容量にも余裕が生まれました。音声や主題歌がつくようになったというのは、windowsによる一番大きな変化とも言えるかもしれません。そしてそうした主題歌がついたゲームの中に『ハイスクールテラストーリー』(ウラン)というのがあって、その主題歌が「春一番」だったのです。
もちろん、オリジナルのキャンディーズが歌っていたのではなく、別の人がカバーしています。でも、大々的に街頭のデモで「春一番」が流れてましたから、そのインパクトは結構大きかったのです。懐かしい曲が突然流れ出したからでしょうか、アダルトゲームとは無関係そうな多くの年配のサラリーマンが足を止め、デモの前に群がり、何人かはゲームのパッケージを不思議そうに手にとっていました。個人的には、あの光景が今でも忘れられないわけでして。
現在のアダルトゲームは主に二次元のオタク層を相手にしており、年代的にも大学生相当の年代を相手にしています。もっと言うならそれ以下・・・って面もあるのですが、一応自主規制。
それはそれで構わないのだけれど、せっかくの18禁のゲームなんだから、30歳以上を対象にしたゲーム、40歳以上を対象にしたゲーム、50歳以上を対象にしたゲームって感じで、いろいろあっても良いと思うのですよ。小説だって20代にはうけないけど、年配でも好む小説があるわけですしね。
詳しくはストーリーの項目で扱いますが、オッサンが主人公のゲームも97年頃はまだあったわけで、二次元オタク以外のいろんな層を取り込む可能性が、この年までは残っていたのだなと思います。いや残っていたというより、WIN95によりいろんなタイプの人が入ってこられる千載一遇のチャンスだったんですよね。

アダルトゲームの方でユーザー層の拡大を図る一方、逆にそのアダルトゲーム業界に加わってくる動きもあります。その1つが、一般PCゲーからの流入ですね。その典型例が無人島物語シリーズで、97年には15禁の『無人島物語R』を発売し、その後18禁の『無人島物語X』を発売します。もっとも、無印時代よりゲーム性が無くなったため、従来のファンまで失ってしまった感が強いのですが。

この無人島物語シリーズはもともと二次元のキャラによる際どいシーンがあったので、一般PCゲーとは言えゲームの内容的にもユーザー層的にもアダルトゲームに近い立場にあったとは言えるでしょう。
そこでもっと離れた立場から見てみると、そこにはソフ倫の管轄からも離れた分野での展開もありえるのです。前年の項目で実写ゲームの話を書きましたが、それは国内での、主にAV業界からの参戦でした。そして国内があるなら、国外もありえるのです。
この当時はゲームバンクやシエラ・パイオニアが中心となって海外のADVが数多く翻訳されていました。海外のADV事情としてはキャラの極端に少ないMYST系が多数を占めていたのですが、ストーリーも楽しむ従来通りのP&C式ADVも少しはあったのです。そしてキャラもカートゥーン調(アニメ)のが多かったですが、実写を用いたものも多かったです。

これらのほとんどはもちろん一般向けなのですが、例えば95年に発売された『ファンタズム』というゲームがあります。日本には96年に移植されたのですが、『ファンタズム』は背景を実写+CGで、キャラを実写で表現していました。
このゲームが話題になったのはその残忍さであり、数々の猟奇的映像により、海外では18禁指定されたところも出てきました。ソフ倫の基準はわからないのですが、エロさでなく猟奇性によりアダルトゲームとされうるゲームがあるってことですね。
余談ですが、エロゲと言うと、どうしてもエロのあるゲームと限定されてしまうように思い、ひいては表現の可能性を狭めてしまうおそれがあると考えることから、個人的にはアダルトゲームという表現を好んで用いています。
因みに、『ファンタズム』はサターン版もあります。比べたことはないので正確には分かりませんが、この手のPCゲームをゲーム機に移植する場合、ほとんどのゲームが一部をカットしています。そうした事情からすれば、憶測の範囲ではありますが、猟奇的な部分は多くカットされているのかもしれません。

『ファンタズム』は残忍さが理由なので、エロさは伴いません。ベッドシーンから始まるので、15禁程度のエロさは有していたかもしれないですが、エロという観点からはちょっとグレーゾーンにあるゲームってところなのでしょう。
そこで今度は、エロさも伴った97年発売の『ブルーヒート ~背徳の天使達~』になります。『ブルーヒート』は海外のサイトとかだと日本のアダルトゲームの英語版と一緒に「adult」の区分がなされているのですが、日本だとされていなかったかもしれません。ソフ倫自体が自主規制機関なのでどこまで範囲が及ぶのかが分からないのですが、随所に裸体やお色気シーンもありますので、18禁とされて然るべきゲームなんですけどね。個人的に言えば、二次元の同時期のアダルトゲームよりエロさを感じたものですし。
二次元の萌え絵でないとオタク層に見向きもされないために、アダルトゲームとしてはマイナーで、むしろ一般PCゲーのADV好きのようなアダルトゲーマーとは異なるユーザー層の方に認知度がありそうですが、一応こういうのもあったということです。
仮に萌えが蔓延しなければ、こういうゲームはもっと普及しえたかもしれません。90年代後半のWIN以降のアダルトゲームは萌えによりオタク層を取り込むことには成功したのだけれど、他方でとり逃した、或いは去っていった多くの異なるユーザー層もあり、この時点ではそういう異なる層も取り込める余地がまだ残っていたということですね。

かように異なる可能性という意義を有している『ブルーヒート』ですが、もちろんそれだけではありません。多くの点で当時の、或いは今日のアダルトゲームと異なりますので、少し説明します。
『ブルーヒート』のベースとなる部分はP&C式のADVであり、内容的には連続殺人事件の犯人を捜す推理モノになります。分類方法によってはインタラクティブムービーにも属し、実写の背景に実写のキャラが使われています。もちろんキャラはフルボイスで、要所や会話シーンなどでは実写ムービーを用いて表現されます。
そしてグラフィックは実写そのままに180度ぐるりと見渡すことのできるパノラマ映像でした。少し補足しますと、当時の海外のADVはMYST系が流行しており、技術面も先行する傾向がありました。96年には180度のパノラマ映像が登場し、97年には360度全方向見渡せるパノラマ映像が登場します。
でもそれは最先端の話であって、まだ一画面の切り替え方式も多数使われていたのです。特にP&C式では切り替え式も多かったことから、この時点でこの系統の180度パノラマ方式は斬新とは言えないまでも、かなり珍しい方でした。ましてや日本語化されたタイトルとなると、おそらくこのゲームくらしかないように思います。180度見渡せるのは臨場感が全然違いますし、恋愛モノとかはまだしも、探索中心の推理モノには非常に活きてきます。
当時は珍しくても、数年後にはこの水準のゲームが普通に遊べる時代が来るのかと期待していたものですが、10年以上経っても結局そういう時代は来ませんでしたね。いつまで経っても立ち絵の動きが少々増えた程度の進化しかないようで、進化って何なんだろうと時々思ってしまいます。
また、今ではスマートフォンやタブレットにより再び携帯端末が脚光を浴びていますが、この頃はこの頃でPDAという携帯端末が存在していました。現実のPDAはあまり便利なものでもなかったので普及しきれなかったのですが、ゲームでは少し時代を先取りして利便性の増したPDAが登場します。必要な各種情報はロス市警のホストコンピューターにアクセスしてダウンロードできますし、また自身が得た情報を本庁にアップロードすることもできます。イメージ的には今のスマホに近いですね。このようにPDAを用いて進行することが従来の推理ゲームとの違いでもありました。従来からの路線をベースに、そこに新しい要素を加えてくるってことですね。こういう系統のゲームは以後は登場しませんので、結果的には今でもこの方面に関しては最高のゲームとなるのでしょうか。

今回はゲームそのものの話と少しずれていたり、かなりマイナーな話となってしまったのですが、忘れ去られた歴史の中には今とは異なる可能性もありえたのであり、そしてその可能性が存在しえたおそらく最後の時点が97年だったのかなと、今にして思うのです。

今回の話は、全然興味が持てなかった人もいるかもしれません。
「これが日本の音楽業界の現状です」という発言がレコ大でなされて物議を醸しているようですが、それに近いような心境ですね。
私からすれば、こういう話が興味が持たれない時点で、或いは多様性や発展の可能性の話題の中に出てこない時点で、現状は既にそれだけ業界もユーザーも偏ってしまったということでもあるのです。

関連するタグ 


捻くれモノの学園青春物語   イブニクル2    きゃんきゃんバニープルミエール3
カテゴリ「エロゲの歴史」内の前後の記事





管理者にだけ表示を許可する

トラックバック http://advgamer.blog.fc2.com/tb.php/1302-7fb38e12
| ホームへ戻る |