イミテーションは愛せない

イミテーションは愛せない

『イミテーションは愛せない』は1989年にPC88用として、
グレイトから発売されました。

ストーリー重視作品として80年代のアダルトゲームを代表する作品ですね。

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<概要>


ジャンルはコマンド選択式ADVになります。
元々、『イミテーションシティ』(1987)という作品が、
データウエストから発売されていまして、
本作はアダルトゲームとしてリメイクした作品になります。
もっともオリジナル版の評判は良くなかったのに、
本作の出来が良かったものだから、
今では本作の方が有名になっているという感じですね。

時代設定は近未来で、女児の出産率は急激に低下しています。
そこで人類滅亡の危機を救うために、
女性の代用としてIW(イミテーション・ウーマン)が開発されました。
その後まもなく出産率は正常化し人類滅亡の危機は免れたのですが、
それは同時にIWの存在価値を奪うことも意味していました。

それでも当初は人間と同じように暮らしていたのですが、
如何せん作られし存在であるIWは男性好みに調整されています。
見た目も中身も男性好みということは、
当然生身の女性には好ましいものではありません。
20年後、復旧した社会の中で、
ついに人間の女性組織による「IW狩り」が始まりました。

主人公のDは、内閣調査室に所属する、
非情で名の通った一級の「IWハンター」です。
彼に新たなIW狩が命じられたところから物語は始まります。

<ストーリー>


淡々と任務を処理する主人公に対し、
「死にたくない、殺さないで」と叫ぶIWたち。
人間とIWの一体どこは違うのかと訴えかける姿は、
まさにSF作品の永遠のテーマの1つと言えるでしょう。

ちょっとネタバレになりますが、
物語は終盤でDの恋人「秋」もまたIWであると分かります。
恋人がIWと知り苦悩する主人公ですが、
それに加え、更なる衝撃の事実が待ち構えています。

淡々と任務を遂行するDに対し、
私自身もプレイ当初は違和感があったのですが、
Dが過去を思い出せないことと、
その理由が分かったときには驚きつつも納得しましたね。
なるほど~って素直に感心したものです。
ストーリー重視のレトロなアダルトゲー好きな人には、
まさに必見の作品と言えるのではないでしょうか。

また、ストーリーの良さに加えて、本作はサウンドが秀逸でした。
物悲しいサウンドが物語にマッチしていて、
始めた瞬間から作品の中に引き込まれていったものです。
ストーリー物では最初からプレイヤーの心を掴むことは大事だよねって、
あらためて思いましたね。

さて、ゲームにはいろんなジャンルがあるものの、
どのジャンル好きの中にも、ストーリーを重視する人はいるでしょう。
特にADVはその傾向の人が多く、またジャンルではなく区分の話になりますが、
アダルトゲーム好きの中にもストーリー重視派は多いかと思います。
もちろんそうでない人もいるでしょうが、
それでもADVやアダルトゲームにおけるストーリーが占める割合の高さは、
誰も否定できないでしょう。

そうなってくるとふと気になってくるのが、
ゲームの普及しだした80年代で最も優れたストーリーのアダルトゲームは何か?
ってことではないでしょうか。
まぁ、そんなのは絶対意見が纏まるわけはないのですが、
間違いなくノミネートはされるであろう作品が、
この『イミテーションは愛せない』でした。

世間での評価だけでなく、私自身も満足できましたし、
名作である点は誰も疑う余地はないかと思います。
今でもストーリーの良し悪しを評価に直結させる人は多いですが、
そういう観点で評価するならば、
本作は80年代アダルトゲームの最高峰に位置するでしょう。

<グラフィック>


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しかしながら私は、ストーリーの良し悪しだけで判断はしません。
そこでまずグラフィックですが、
雰囲気やレイアウトは良いのですが、キャラデザがしょぼいです。
エロ目的やキャラ目的の人には、当時の基準で考えたとしても、
ちょっときついかもしれません。

<ゲームデザイン>


また、ゲームはコマンド選択式のADVなのですが、ここは極めて平凡な作りです。
正しい選択をしていけばすんなり進めますので、
ストレスなく遊ぶことは出来ました。
だからマイナスというわけでもないのですが、
それ以上でもそれ以下でもないって感じであり、
短所でもないですが長所とも言えないでしょうね。

<感想・総合>


それと先程から、80年代のアダルトゲームとしては、
ストーリーは最高峰だと言っています。
しかし、それは一般的にはという観点での意味合いも強く、
実はここに、私の評価の決定的な点が実は含まれていたりします。

私はこの年では『晴れのち大騒ぎ』を傑作(AA-)評価しています。
これは根本的なシナリオの良さに加えて、
可愛いキャラとの楽しい絡みがあったからです。
今ではギャルゲーや萌えゲーが氾濫していますので、
女の子とのラブコメ的展開や楽しい会話なんて極当たり前に思うでしょう。
だから『晴れのち~』を今やっても、たぶんそれほど凄いとは思わないはずです。
でも、当時はそういうのはほとんどなかったんですよね。
メインシナリオの良さとキャラ・ヒロインの両立という、
一般PCのADVとは異なる美少女ADVとしての可能性を見出せた、
だからその存在価値に高い評価をしたわけです。

それに対し本作の基本的なストーリー面は、
単独で見れば『晴れのち~』以上の出来かもしれません。
しかし確かにアダルトゲームの最高峰ではありますが、
世の中にはアダルトゲームしかないわけではありません。
当時は一般のPCゲーも多くあったし、SF物のADVの名作だって一杯あったわけです。
それらの存在も加味して考えると、それでも凄いことは凄いのですが、
ストーリーだけで傑作と言い切るほどには突出もしていないのですよ。
キャラやエロが弱いだけに、
より一層一般PCゲーと比較しやすくなってしまいますしね。

物語性と美少女キャラを融合させ、
アダルトゲームの新たな境地を切り開いていった『晴れのち~』に比べ、
本作にはそういう側面が弱いのです。
名作とは言いつつも傑作評価までしなかったのは、そうした理由からです。

結局は何を求めるかってことですね。
私は総合的な観点からAとしましたが、
ストーリーだけを見てナンバー1という人がいても、
それはそれで気持ちも分かりますしね。

まぁストーリーについての感想は人それぞれなので、
個々人で判断すれば良いことなのでしょう。
私は名作と考えますが、話はそこそこ良いけど、他が不十分だから、
名作と考えないという人がいても、それは十分にありだと思います。
ある意味一番大事なことは、本作への評価ではなく、次の点なのかもしれません。
即ち、本作はゲームシステムが凝っている作品ではありません。
また可愛いキャラがいるわけではなく、綺麗なCGがあるわけでもなく、
キャラ目当ての人に向けた作品でもありません。
Hシーンも乏しく、エロ目的やCG目当ての人に向けた作品でもないです。
明らかにストーリー・シナリオを読ませ楽しませることに、
比重を置いて作られた作品なのです。
実際、ないない尽くしのような本作に根強いファンがいるのも、
そのストーリー・シナリオがプレイした人に高く評価されているからです。
つまり本作は、完全にストーリー・シナリオ重視作品なんですよね。
よく80年代はエロCGを見るだけが目的だったとか、
同級生からストーリーを重視するようになったとか、
ノベルゲーの登場でストーリーを重視するようになったとか、
そんな誤った情報や偏見を見かけることがあります。
そのような情報と本作の存在は明らかに矛盾するのであり、
また89年には本作以外にも、
ストーリー・シナリオに特徴のある作品が幾つもあるわけでして。
ストーリー・シナリオを重視する流れは89年には生じていたのであり、
本作を通じて、その点を理解してほしいなというのが、
個人的な一番の望みでもあるのです。

ランク:A-(名作)

PC-8801ソフト イミテーションは愛せない

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