アダルトゲームの歴史 1996年 その4

アダルトゲームの歴史 1996年 その4

アダルトゲームの歴史を振り返るシリーズの第37弾ということで、
1996年の4回目になります。

今回は主にストーリー・シナリオ面の話と、
96年に生じた新しい部分から見てみたいと思います。

まず96年に生じた動きというか新しい側面から見てみますと、96年には前年末のWIN95発売の影響もあって壁紙集やスクリーンセイバー集、その他いろいろ含めたデスクトップアクセサリーの類がたくさん発売され、また大量に売れたのです。それらは大衆向けのものも多かったことから、店舗でも壁紙集とかの類にかなりのスペースを使って売られていました。もちろんアニメを題材にしたものもありますし、オタク市場を狙ったような作品もあります。つまり広範囲にわたり、注目されていたのです。
余談ですが、今は普通の家電屋にあまりPCゲームは置いていないし、ましてやアダルトゲームなんか置いてありません。しかしこの頃は地方の家電屋でもPCゲームの扱いはもっと大きかったし、アダルトゲームも売ってありました。
というか、それまでは影でひっそりだったのがWIN95ブームで拡大し、大手の家電屋でもアダルトゲームが目立つ場所で堂々と売られ出した時期でもあったのです。WIN95ブームが去るとまた縮小していきますから、今となっては唯一の時期なのでしょう。
ゼロ年代半ば辺りからアキバのオタクがTVでとり上げられだして、オタクが市民権を得たと言う人もいます。それも確かに一理あるのですが、オタクが一般化することと、アダルトゲームが市民権を得ることはまた別の話です。2次元オタクは自身の全てが正当化・一般化されたと勘違いするのか、その辺を一緒にしてしまう人が多いですけどね。
一般的なお店で普通に売られているという観点、何の縁もゆかりもない人でもパッケージをつい手にとってみることのできる機会がある方が、市民権を得た状況に近いようにも思うのです。そういう観点からは、96・97年辺りの方が一般に身近だったと言えるのではないでしょうか。今はオタクそのものは一般化したけれど、かえってアダルトゲームとは分離した感じになっていますし。
少し話がずれかけましたが、デスクトップアクセサリー集が無視できないほど大きな存在になっていき、そうなってくると次第にそこにゲーム性を見出そうという考えも出てきます。その流れの中にはアダルトゲームも含まれていて、例えば今でもデスクトップにマスコットを置いたりする人もいますが、それをゲームに転用させたものとして『亜美 ~ときめきパソコンプリンセス~』がありました。
このゲームは、特にプレイヤーがすることがありません。時間に沿ってPC上の仮想空間で亜美ちゃんも生活しており、起動時間や回数によって見られる映像が変化するのです。翌年にはサターンで『ROOM MATE~井上涼子~』が発売されますが、それのアダルト&PC版みたいなものです。
起動回数によってもイベントが変化する軽い育成要素っぽいものもあるのでついつい起動してしまうし、PCの時計機能を活かした面白い試みではあったのですが、常にPCの前にいる人でないと存分に楽しむことができないという難点も有していました。こういうのこそ携帯に向いているだろうにと思っていたら、96年末に「たまごっち」が発売されましたので、なるほどなと納得したものでした。もちろん「たまごっち」はアダルトゲームとは何の関係もないはずですが、世の中いろいろ絡み合っているものであり、そういうご時世だったってことですね。
今でも軽い育成系のゲームはソーシャル系で人気があるようですし、手軽にいつでも遊べる機種の方が向いているのでしょう。だからPCでいろいろ登場しても、比較的早く廃れていったのでしょうね。

他のWIN95らしさという点では、例えば『放課後恋愛クラブ』が挙げられるでしょうか。
PC-98の頃までは、基本的に単一の画面でゲームが進行していました。中にはメイン画面の中に小さなウインドウを幾つか用意するマルチウインドウ的なものもありましたが、演出的な側面で使われることが多く、ユーザーの利便性の向上を目的とした使われ方はほとんどありませんでした。
それがWIN95の時代になってUIが発達し、プレイヤーによるマルチウインドウの管理がとてもやりやすくなりました。
となると、当然ゲームに活かす動きも出てきます。特に一般PCゲームのSLGやRPGでは複数のデータを用いますので、ゲームを進行させつつデータを参照するというような、ユーザーの利便性の向上やデータ管理にマルチウインドウが用いられるれるようになりました。
これはADVにも当てはまって、例えば一般PCゲームのリバーヒルソフトの移植版などでは、複雑な情報やメモをマルチウインドウで表示させることにより、捜査の利便性を図っています。SLGやRPGでは今でも当り前の話かもしれませんが、マルチウインドウが積極的にADVに用いられていたっていうのが、WIN95が登場したばかりの頃の1つの特徴でもあったのです。
アダルトゲームでも『放課後恋愛クラブ』がマルチウインドウを採用していて、UIや画面のレイアウトの方向性としてアダルトゲームの新しい可能性を示していたように思います。

もっとも制作者のそういう意図はハッキリと見えるのですが、残念ながら実際の『放課後恋愛クラブ』では、ゲームに対してあまり有効に活用できていたとは思えませんでした。
これが98年の『臭作』ぐらいになると上手く活用されるようになり、これこそがwindows時代のアダルトゲームなんだと証明していましたが、結局この路線は発展しませんでしたね。時代はその後ゲーム性を廃する簡素化の流れになり、マルチウインドウを必要とするゲームが出なくなりましたから。
もっとも私見ではありますが、DSが2画面ならPCはマルチウインドウを駆使すれば3画面以上のゲームも作れるはずです。解像度の関係もあってこの頃は全画面でプレイする人の方が多かったですが、今は解像度も高くなってウインドウモードでプレイする人も多いし、画面もワイド化して広くなっていますからね。もっと画面を有効に活用できるはずですので、それだけにいつまで1画面3行スタイルという1つの形ににこだわっているのだろうと、個人的には思ってしまいます。

少し話がずれてしまいましたが、96年らしさということでゲーム以外の付属品を見てみますと、『教育実習 ~女子高生マニアックス~』で登場人物のフィギュア(色付き、23㎝程)が付属しました。おそらく本格的なフィギュアが付属されたのはこのゲームが初のはずです。
また『女の子の仕組み』では「女の子の一人エッチCD-DA(生録)」が付属され、ゲーム本編よりむしろこっちの方が評価されたりもしました。
直接にはWIN95とは関係ないのですが、新しい時代の到来に合わせて新たに何かやっていこうという動きがあったということですね。
フィギュアを付けるということ自体は普及しませんでしたが、こういう発想が次第に初回限定版という発想にもつながっていくのでしょう。後にはショップによる独自特典など動きは拡大し、今日の特典商法とも呼ばれる流れへと発展していくのですから、その点ではあまり軽視できない流れなのかもしれません。

さて、ここからストーリー面について見てみたいと思います。
まず一番の傾向としては、恋愛(萌え)特化のゲームと陵辱特化のゲームが増えたことです。
もっとも陵辱特化ゲームは増えたと言っても、まだ今のように大きな勢力ではありません。
前年までの陵辱ゲームは、探せば確かに該当しそうなのが数本あるよねって話であって、それと比べると目立つようになったということです。だからまだ珍しかったからこそ、『悪夢』のような陵辱だけのゲームが逆に新鮮に見えてヒットしたのです。
売上・人気の両面から代表的と言えるのはこの『悪夢』と『脅迫』あたりにになるのでしょうか。これに調教系も含めるなら精神的にヒロインを追い込んだ『虜』も含まれるのでしょう。
作品数こそまだ多くないことから、上では大きな勢力でないと書きましたが、当たれば陵辱オンリーゲームでも売上の上位に食いこめる時代でもあり、その意味では存在感は大きかったと言えるのでしょう。

他方で、恋愛ゲームは前年からブームが始まっていましたので、前年からの傾向を引き継ぎ本格化していったということになります。その結果、96年においても恋愛ゲームの数が更に増えています。
前年は『同級生2』が最も売れましたが、96年は年内の段階では『下級生』が最も売れ、それに『PIAキャロ』や『同窓会』が続くわけですから、売上上位作という客観的な面でも質・量共に完全に恋愛ゲーム全盛の時代に突入しています。
前年まで人気の高かったミステリー・SF・館などの他ジャンルもまだ元気でしたが下降気味でしたし、逆にそれらは細分化されいろいろばらけていたこともあって、相対的にタイトル数の上でも恋愛ゲームが一番多くなっています。

恋愛ゲームの数が増えて最多ジャンルへと成長し、そして今とは方向性が異なるものの萌えが唱えられるようになり、各ブランドは様々なシチュエーションを用意することで差別化を図るようになっていきます。
例えば『同窓会』は大学生間の恋愛を描いており、対象年齢を少し上げています。更に上げたのが『トラベル☆ジャンクション』で、こちらの主人公は社会人になっています。学園モノでも、少し目先を変えてクラブとか課外活動として楽しもうとしたのが『放課後恋愛クラブ』であり、学校から離れたバイト先の話としては『Piaキャロットへようこそ!!』があります。

『Piaキャロ』はヒロインの制服を3種類の中から選択することができて、コスプレ路線を開拓しました。他方で96年には『殻の中の小鳥』があって、これはメイドを調教するという内容で、メイドブームの火付け役にもなりました。
このPiaキャロからのコスプレ路線の流れが発展し、じゃあ実際に店舗を作ってみたらという流れになり、そこにメイドブームの流れが合流していくことになります。それがやがて後のアキバを象徴する「メイド喫茶」に発展するのですから、世の中って分からないものです。
時々アダルトゲームは90年代後半からゼロ年代前半くらいまで、オタクのメインストリームだったという見解を見かけます。逆にそんな時代なんてないと否定する見解もあり、こういうのは自分の経験を中心に語る人が多いので一概には言えないのですが、少なくともこのメイド喫茶へと続く一連の流れは、アダルトゲームが社会に大きな影響を及ぼした一つの証拠と言えるのかもしれません。

話を戻しまして、恋愛の中にも宅配業務を通してもっと多くの人とのかかわりを重視したのが『クロムパラダイス』で、逆に主人公とヒロインのデートだけを描いたのが『チェリージャム』でした。『チェリージャム』は2部構成になっていて、1部がヒロインとのデート、及びヒロイン視点での回想になり、2部では結ばれた後のラブラブな(肉欲の)日々が待っています。
もちろんシチュエーションを重視する路線だけでなく、ストーリーもという路線もあり、『下級生』や『卒業写真2』あたりがここに入ってくるのでしょう。特に『卒業写真2』はズトーリー「だけ」なら前年の『同級生2』以上との声もあったくらいですし。
それと、内容は普通の良質な青春モノなのですが、ヒロインが皆人気アニメのヒロインのそっくりさんということで話題になったのが『さくらの季節』で、これは完全に変化球ですね。

他ジャンルはどれも数はあったのですが、ヒット作が生まれたかという面では明暗が分かれたのかもしれません。前年までの人気路線である推理系では代表作に『Esの方程式』がありますが、続編ものということで新鮮味はやや欠けている感じです。
同じく人気路線の館モノも『グロリア ~禁断の血族~』が話題になったものの、こちらも続編になります。前年にヒット作に恵まれすぎて、新鮮さという観点からは少し停滞モードに入っていった印象でした。
エレベーターという閉鎖空間に閉じ込められた男と女。そこから始まりホラーやミステリーや感動系やコメディタッチと様々なタイプに枝分かれしていく『暗闇』は多くのストーリーを含んだタイプで、こうした様々なジャンルを内包しつつ枝分かれしていく路線も数は減少してますね。

逆に元気だったのが1つはSF系ですね。『この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO』があり『ビ・ヨンド ~黒大将に見られてる~』があったからなのですが、この2作品のインパクトが強すぎただけで数の面ではそうでないのかもしれません。
インパクトが強いという点では変態路線やお馬鹿路線も負けておらず、変態系スカトロお笑いSMゲームの『堕落の国のアンジー ~狂界の牝奴隷達~』や現代版ランスのような『学園KING ~日出彦 学校をつくる~』が目立っていました。『堕落の国のアンジー』のような主流路線でもなく、逆にニッチ狙いでもないような未知の可能性を追求する癖の強い作品は、97年頃までは僅かにあるのですが、数は減っていきます。

個々人の好きな作品や話題となった作品では様々なジャンルのものがあるものの、とにかく発売タイトル数や話題作の数では恋愛系が非常に強いとの印象が残った年でした。時代は萌えと萌えを前提としたシナリオを求め出したということですね。

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